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「著作権保護期間の延長」はなぜ必要か

著作権保護期間の延長はなぜ必要か
論点が明確になり、議論も活発化



 著作権の保護期間延長が国際的な趨勢となっている中、日本でも権利者団体等では数年来の課題として捉えられてきたこの問題について、ここにきて活発な議論が交わされ始めている。昨年発表の『知的財産推進計画2006』にも「検討を行い、07年度中に結論を得る」と盛り込まれ、今年度の文化審議会で具体的な検討が始まると見られる著作権保護期間の延長問題について、賛成、反対両派の間で交わされている議論の論点などもまじえ、まとめてみた。

クリエーターのインセンティブを確保するための保護期間

 昨年12月、英国でレコード会社やミュージシャンらがレコード、実演の権利保護期間を、現行の50年間から米国並の95年間に延長することを求めていた問題で、英財務省に調査委託された知的財産権に関する独立調査委員会がいったんこれを退ける裁定を行っている。12月7日にはポール・マッカートニーら4000人以上のアーティストがこれを不服とし、同日付『フィナンシャル・タイムズ』紙に「ミュージシャンにフェアプレイを」とのスローガンで抗議広告を掲載するという動きが見られた。現行制度のままなら、例えばビートルズの「ラブ・ミー・ドゥ」のレコード音源、実演に関する権利については2012年に保護期間が切れることになる。

 英国のこの動きは、日本で言う著作隣接権についてのものだが、その英国も、例えば音楽分野なら詞やメロディにまつわる権利である著作権については、保護期間は米国同様70年だ。
 これら権利保護期間の延長は世界的な傾向で、日本国内でも音楽関連に限らず、様々な分野の権利者団体が特にここ数年、取り組むべき課題の一つとしてきた。

 現在、日本の著作権法では、著作権保護期間を著作者の“死後50年”と定めている。法人等の団体が著作者名義を持つ著作権や、レコード、実演といった著作隣接権の保護期間は“発行後(実演後)50年”だ。一方、映画の著作権は04年の著作権法改正で、“公表後50年”から“同70年”に延長された。同じ視覚芸術である写真の場合、例えば、撮影者が20歳の時に発表した写真があって、その撮影者が70歳で亡くなったとすれば、その写真の著作権は合計で100年間保護される。04年の映画著作権の保護期間延長は、こういった他の分野との不均衡を是正するという側面もあったわけだが、一方、現在論じられているのは、むしろ国際的な不均衡の是正という側面が強い。

 前述の通りの英国、米国の例の他、「著作権」の保護期間については、次ページ表の通り、フランス、ドイツ、イタリアといった欧米先進諸国を中心に著作者の“死後70年”とする国が多い。また、米国の場合は団体名義の著作権やレコードなどの保護期間を“公表後95年”と定めているが、例えば“死後70年”、“公表後95年”とされる米国の著作物が日本で扱われる場合は、日本の保護期間である“死後50年”、“公表後50年”が適用される。

 こういった国際間での著作権の取扱いは、互いの国における保護期間の短い方が適用されるというのが原則で(米国内では例外的に内国作品、外国作品とも米国の保護期間を適用)、例えば英国では、英国の作品が“死後70年”保護されるのに対して、日本の作品は“死後50年”しか保護されない。国際協調を図り、かつ著作物についての国際的な不均衡を是正するためにも、“国際標準”に近づける必要があるわけだ。

 昨年9月には日本音楽著作権協会や日本レコード協会、日本芸能実演家団体協議会ら音楽団体の他、日本文藝家協会、日本美術家連盟、日本写真家ユニオンら16団体で構成する(後、日本演劇協会も参加し、現在は17団体)“著作権問題を考える創作者団体協議会(以下、協議会)”が発足。「人々の生活を豊かにする文化芸術の振興のために、国際的なレベルの著作権保護が必要です」とする声明を発表するとともに、保護期間を「50年から70年に」延長することなどを盛り込んだ要望書を文化庁に提出している。

 11月には参加団体のうちの一つであるJASRACが、この著作権保護期間延長をテーマとするシンポジウムを開催。今年1月25日には協議会とJASRACが合同で、同テーマも大きく盛り込んだ記者懇談会を開催している。

 一方、昨年11月には「国民的議論を尽くさずに保護期間延長を決定しないよう、要望」するとし、弁護士、ジャーナリスト、劇作家、コンテンツ配信事業者らが発起人に名を連ねる“著作権保護期間の延長を考える国民会議(以下、国民会議)”も発足。12月11日には、協議会側の日本文藝家協会副理事長で作家の三田誠広氏らも招いての公開シンポジウムを開催している。「いたずらに反対するものではなく、議論を促す」ことを目的とする団体であり、延長問題に対しての“反対派”だけではなく、日本漫画家協会理事として協議会の会合にも参加する漫画家の松本零士氏らもその発起人に名を連ねるこの国民会議の発足で、この問題にまつわる論点がより明確に報道されるようになったとは言えるだろう。

 米国の場合、78年以前に発表された著作物の著作権保護期間を“死後50年”から“同70年”に、いわゆる法人著作物の保護期間を“公表後75年”から“同95年”に延長したソニー・ボノ法が98年に成立する過程でも、いわゆるパブリックドメインにまつわる議論が活発に行われた。「一定期間が過ぎた著作物は大衆のもの」というものだが、結局は、クリエーターの権利が保護され、それを基盤として創作活動が活性化されることが、ひいては国民の生活を豊かにする知的財産を生み出していくという考え方が是とされたわけだ。英国、フランスも含め、90年代後半にこれら主要先進国の保護期間延長が次々になされており、著作権保護期間が“50年”のままという国は、いわゆる“サミット(主要国首脳会議)”参加国中では日本の他、カナダのみ。コンテンツの輸出入の比較的多い国としても中国、韓国が挙げられる程度だ。逆に“死後100年”とするメキシコや、“同99年”とするコートジボワール、“同80年”とするコロンビアなどという国すらある。

コンテンツ主要国のほとんどが日本よりも長い「70年」

 “反対派”の論点の一つに、「70年以上という国は決して多数派ではない」とするものがある。著作権に関する国際条約であるベルヌ条約加盟全158ヶ国中、「70年以上」とする国は68ヶ国であり、半数にも満たないとする主張だ。しかし、上記表を見るまでもなく、著作物の流通量を想像すれば、単に国の数だけで比較することが、まったく説得力のないものであることがわかるだろう。韓国文化コンテンツ振興院の05年の試算では、全世界におけるコンテンツ産業規模の国別1位である米国の占有率は41.7%。2位である日本以下、欧州諸国や中国、韓国が名を連ねる上位10ヶ国の占有率は8割を超え、10ヶ国中「70年以上」とする国だけでも7割近くに達する。

 また、同様に反対派の意見の中には「日本はコンテンツの輸入大国ではあるが、輸出大国ではなく、保護期間延長は結果的に諸外国に有利に作用する側面が大きく、国益に反する」とするものがあるが、これについても前述25日の協議会による記者懇談会の席上で、日本文藝家協会・三田氏が明確な反論を行った。ぴあ総研発行の『エンタティメント白書 2005』によれば、02年のエンターテインメント関連産業の総輸入額が1兆6562億円だったのに対して、輸出額も1兆4347億円と、大きな差はない。この実態を示した上で、三田氏は、著作権はクリエーター個々の「私権」であり、国家対国家といった構図での損得の問題として考えるべきではないと退けている。

 さらに、前述ソニー・ボノ法成立の過程でも上がっていた「古いコンテンツほど権利の所在や使用条件が不明確になり、権利処理が難しくなるが、保護期間の延長はその傾向を助長する」とする懸念の声に対しては、協議会を構成する団体それぞれにおける作品情報等のデータベース化の状況を、協議会として把握。それらデータベースとも関連付けた権利情報のポータルサイト構築も検討するとした。需要があるにも関わらず権利処理できないために流通させられないといういわゆる“孤立作品”の増大への対策でもあるが、記者懇談会の前日である24日に行われた協議会の第2回会合では、その他、著作権者が著作物の自由利用を認める場合の条件や作品の表示方法についても検討するなど、それら使用者の利便性向上に向けた方策の検討を行うワーキンググループが設置されることも決定している。

 加えて、3月上旬にはこの問題についての周知を図るため、一般紙での意見広告も掲載するが、その3月に07年度の新体制が固まる文部科学大臣・文化庁長官の諮問機関、文化審議会著作権分科会でもこの著作権保護期間の延長に関する問題が取り上げられる見込みだ。議論が重ねられたあと、順調にいけば来年の国会にこれを盛り込んだ著作権法改正法案が提出されることになる。

 なお、協議会ではこれと並行し、いわゆる「戦時加算制度の撤廃」も併せて主張していく。第二次世界大戦中に日本が連合国側の著作権を保護していなかったとして、連合国民の著作物について、原則約10年分の保護期間を加算する義務を負っている制度だが、「保護していなかった」こと自体、戦勝国、敗戦国とで変わるものではなく、なおかつ同じ敗戦国であるドイツ、イタリアはその義務を実質的に負っていない。この不平等な制度の撤廃を求め、協議会では著作権協会国際連合(CISAC)に対し、解消に向けての理解と支援を求める書簡を送付するとともに、3月に開催されるCISAC理事会等の場でも説明を行っていくとしている。







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