2023年、デビュー20周年から取り組んできたヨーロッパ三部作(「プラハの橋」「一枚の切符」「サンタマリアの鐘」)で『第65回日本レコード大賞』企画賞を受賞するなど、 “大人の歌謡曲”の旗手として活躍する竹島宏が6月11日、新曲「小夜啼鳥(サヨナキドリ)の片思い」をリリースした。1月にはヨーロッパ三部作をモチーフとしたミュージカルに出演し、表現力にますます磨きをかけている竹島に、新曲に込めた想いやデビュー25周年を控えた今、自身が考えるこれからの歌手・竹島宏の“スタイル”について聞いた。
■表現力の進化を実現した新曲
松井五郎作詞、幸耕平作曲による竹島宏30thシングル「小夜啼鳥の片思い」は、アンデルセンの創作童話『小夜啼鳥』がモチーフになっている。愛する人の命を救うために命を賭けて歌い尽くした小夜啼鳥を主人公に重ね、悲しい運命を背負いながらも、ただひたすら愛した人を思い続ける純愛歌だ。
「『愛しても 愛しても 悲しみは消えない 行かないで 行かないで 幸せだけを残して』というサビから始まる構成になっているのですが、これまで僕が歌ってきたサビ始まりの歌は、力で押していくインパクトのある歌い上げ系がほとんどでした。今回は、その詞の世界観から哀愁を感じさせながらも力強く情熱的に歌い上げていくことが必要で、自分にとって新しい挑戦になりました」
竹島は、本作を歌うにあたって影響力のあった出来事についても明かしてくれた。
「最初に詞を読んだとき、やたらと心に沁みたんです。去年の夏に東京の母親のような存在だった所属事務所の社長が他界したことが影響していたのだと思います。『行かないで 行かないで』という部分は、社長への気持ちが重なって、思いが溢れてしまって。でも、レコーディングでは、気持ちを切り替え、とにかく主人公である女性の物語を歌い上げることに集中しました」
『第65回日本レコード大賞』企画賞を受賞したヨーロッパ三部作では、「プラハの橋」「一枚の切符」「サンタマリアの鐘」の3曲で構成されるストーリー仕立ての男女の愛の物語を歌い、“大人の歌謡曲”のジャンルを確立した。今年1月・2月には、この三部作をモチーフとした舞台『プラハの橋』で初のミュージカルにも挑戦。この経験が、「今回のレコーディングでは非常に活きた」と振り返る。
「ミュージカルでは、イタリア人とフランス人のハーフのジャーナリストという設定の役を演じさせていただきました。これまでは自分自身の気持ちと重ね合わせながら歌うことが多かったのですが、今回まったく違う人物になりきって舞台に立つという経験をして、詞の解釈ひとつとっても前より読解力が深まった気がしますし、歌を語るということを頭の中でイメージしながら歌うなど、本当に多くを学ぶことができました。その経験が今回のレコーディングにも相当活きているのではないかと思いますし、これまでの作品と聞き比べると、“竹島の歌は変わったなと”感じていただけるのではないかと思います」
■コロナ禍を経て、気づきをプラスに転化できるように
さらに竹島は、「コロナ禍も歌手として自分を成長させる大きなきっかけになった」と歌手生活を振り返りながら語る。
「それまではなんでこんなに歌えないんだろう、どこまで行ったら自分はまともに歌えるようになるんだろうと落ち込んでしまうことがありました。でも、先が見えず、なかなか希望が見いだせないコロナ禍では、今しかできないことをするしかないと、いい意味で自分を追い込めるようになったのだと思います。どうしたらもっと皆さんに楽しんでいただける歌を歌うことができるのか、より深く考えられるようになりましたし、自分自身の至らないところに気づいた際も、せっかく生きているんだから、落ち込むのではなく、ステップアップの種ととらえなければと考えるようになりました。今は、課題や気づきをまたひとつ成長ができる、また歌がブラッシュアップできるという喜びに変えられるようになりました」
コロナ禍にファンに歌を届けたいという思いから毎月実施した配信ライブにも、その変化は表れた。
「当時、ファンの方に『宏くん、すごく歌がうまくなった』とよく言われたのですが(笑)、配信ライブを自分で冷静に見返してみると、毎回、表情や歌のピッチ感、声の響き、ブレスの感じなど、いろいろ気づく点が多くて。それらの細かい点を修正して次の配信に向かったことで成長につながったのかなと思います」
配信ライブでは、「介護があってライブには行きたくても行けなかった」「入院中、すごく元気をもらえた」など、竹島が予想していなかった反響も。「そういう役割の果たし方もあるんだと気づき、今も定期的に配信ライブは続けている」という。
それらの経験から、今、自身の歌手としてのあり方についてはこんな考えを持っている。
「竹島宏の歌を聴きに来てくださるお客様の中には、いろいろな経験や思いを抱え、今まさになんとか乗り越えようとしている方やどうしていいかわからない状況の方もいらっしゃると思います。そういう皆さんの気持ちを少しでも温かく包み込んであげられるような優しい歌を歌い続けることがなにより大事なことだと思っています」
■来年デビュー25周年。年齢ごとの表現の楽しみを見つけていきたい
その思いは、「小夜啼鳥の片思い」Aタイプのカップリング曲「こころの詩(うた)」にも表れている。
「悲しいニュースや出来事が多い今、皆さんがほっこりするような、ヒーリング的な歌を歌いたいと思って、作曲家の幸耕平先生と作詞家の松井五郎先生に作っていただきました。個人的な僕の思いをすべて反映してもらった曲なので、途中で歌詞にグッとくるところがあり過ぎて、レコーディングでは中断して休憩をはさむこともたびたびで…。最終的には苦肉の策で、気合を入れるべくシャツを脱いでタンクトップ1枚で歌って乗り切りました(笑)。松井五郎先生は本当に言葉の魔法使いです。この歌が僕の手元から飛び立って、多くの皆さんの心に癒しを届けられたらいいなと思っています。ぜひ聴いてみてください」
Bタイプのカップリング曲「その先の明日へ」は一転、軽快なリズムに乗せて、力強く包み込んでくれる勇気づけられる1曲だ。
「ズンズンと大地の底から突き上げてくるような、エネルギーが湧いてくる、勢いのある人生の応援歌になっています。ライブのエンディングに歌ったら盛り上がるだろうなと思っています」
そのライブについては、推し活ブームに乗って参加型ライブが人気を博すなか、竹島は独自の世界観の構築を目指している。
「僕のライブでは、ペンライトを持ってきたものの振ることなく、歌を真剣に聴きとろうとする方や、歌詞の世界に浸られている方が多いんです。僕自身もそういうタイプなので、参加型というよりは、じっくり音楽をお届けしながらも、皆さんにエールを送れるような、そんなライブをコンセプトにしてやっていきたいと思っています」
来年はデビュー25周年。年齢的にも歌手としての立ち位置としても大人となった今、さらに竹島が目指す“大人の歌謡曲”とはどんな世界なのだろう。
「ロマンティックで切なさがあって、でも癒しがあって、『宏くんの歌を聴くとホッとして気持ちが前向きになれるよね』と言っていただけるような歌を歌っていきたいです。年を重ねるとともに声は変わっていきますけど、その年齢だからこそ出せる声の響きや表現方法が絶対あると思うんです。昔、ブルーノートでジミー・スコットのライブを観た際、当時80歳近かったと思うのですが、第一声にしびれたことが忘れられません。シャルル・アズナヴールが94歳の時の、最後の来日公演での姿もダンディーでカッコよくて脳裏に焼き付いています。そういう素晴らしいお手本が僕の中には息づいているので、少しでも近づけるよう、表現方法を追求していきたい。そして、楽しく歳を重ねていって、お客様に『宏くん、なんかいい年の取り方しているよね』と思ってもらえるように、年齢ごとの表現の楽しみを見つけていきたいと思っています」
年齢を重ねるごとに進化を続ける竹島が描く“大人の歌謡曲”。「小夜啼鳥の片思い」で今後がますます楽しみになってきた。
取材・文:河上いつ子
<作品情報>
竹島宏「小夜啼鳥(サヨナキドリ)の片思い」
発売日:2025年6月11日
■Aタイプ
品番:TECA-25016/価格:1550円(税込)
【収録曲】
1. 小夜啼鳥の片思い(作詞:松井五郎/作曲:幸 耕平/編曲:坂本昌之)
2. こころの詩(作詞:松井五郎/作曲:幸 耕平/編曲:坂本昌之)
3. 小夜啼鳥の片思い(オリジナル・カラオケ)
4. こころの詩(オリジナル・カラオケ)
■Bタイプ
品番:TECA-25017/価格:1550円(税込)
【収録曲】
1. 小夜啼鳥の片思い(作詞:松井五郎/作曲:幸 耕平/編曲:坂本昌之)
2. その先の明日へ(作詞:松井五郎/作曲:幸 耕平/編曲:坂本昌之)
3. 小夜啼鳥の片思い(オリジナル・カラオケ)
4. その先の明日へ(オリジナル・カラオケ)
■表現力の進化を実現した新曲
松井五郎作詞、幸耕平作曲による竹島宏30thシングル「小夜啼鳥の片思い」は、アンデルセンの創作童話『小夜啼鳥』がモチーフになっている。愛する人の命を救うために命を賭けて歌い尽くした小夜啼鳥を主人公に重ね、悲しい運命を背負いながらも、ただひたすら愛した人を思い続ける純愛歌だ。
「『愛しても 愛しても 悲しみは消えない 行かないで 行かないで 幸せだけを残して』というサビから始まる構成になっているのですが、これまで僕が歌ってきたサビ始まりの歌は、力で押していくインパクトのある歌い上げ系がほとんどでした。今回は、その詞の世界観から哀愁を感じさせながらも力強く情熱的に歌い上げていくことが必要で、自分にとって新しい挑戦になりました」
竹島は、本作を歌うにあたって影響力のあった出来事についても明かしてくれた。
「最初に詞を読んだとき、やたらと心に沁みたんです。去年の夏に東京の母親のような存在だった所属事務所の社長が他界したことが影響していたのだと思います。『行かないで 行かないで』という部分は、社長への気持ちが重なって、思いが溢れてしまって。でも、レコーディングでは、気持ちを切り替え、とにかく主人公である女性の物語を歌い上げることに集中しました」
『第65回日本レコード大賞』企画賞を受賞したヨーロッパ三部作では、「プラハの橋」「一枚の切符」「サンタマリアの鐘」の3曲で構成されるストーリー仕立ての男女の愛の物語を歌い、“大人の歌謡曲”のジャンルを確立した。今年1月・2月には、この三部作をモチーフとした舞台『プラハの橋』で初のミュージカルにも挑戦。この経験が、「今回のレコーディングでは非常に活きた」と振り返る。
「ミュージカルでは、イタリア人とフランス人のハーフのジャーナリストという設定の役を演じさせていただきました。これまでは自分自身の気持ちと重ね合わせながら歌うことが多かったのですが、今回まったく違う人物になりきって舞台に立つという経験をして、詞の解釈ひとつとっても前より読解力が深まった気がしますし、歌を語るということを頭の中でイメージしながら歌うなど、本当に多くを学ぶことができました。その経験が今回のレコーディングにも相当活きているのではないかと思いますし、これまでの作品と聞き比べると、“竹島の歌は変わったなと”感じていただけるのではないかと思います」
■コロナ禍を経て、気づきをプラスに転化できるように
さらに竹島は、「コロナ禍も歌手として自分を成長させる大きなきっかけになった」と歌手生活を振り返りながら語る。
「それまではなんでこんなに歌えないんだろう、どこまで行ったら自分はまともに歌えるようになるんだろうと落ち込んでしまうことがありました。でも、先が見えず、なかなか希望が見いだせないコロナ禍では、今しかできないことをするしかないと、いい意味で自分を追い込めるようになったのだと思います。どうしたらもっと皆さんに楽しんでいただける歌を歌うことができるのか、より深く考えられるようになりましたし、自分自身の至らないところに気づいた際も、せっかく生きているんだから、落ち込むのではなく、ステップアップの種ととらえなければと考えるようになりました。今は、課題や気づきをまたひとつ成長ができる、また歌がブラッシュアップできるという喜びに変えられるようになりました」
コロナ禍にファンに歌を届けたいという思いから毎月実施した配信ライブにも、その変化は表れた。
「当時、ファンの方に『宏くん、すごく歌がうまくなった』とよく言われたのですが(笑)、配信ライブを自分で冷静に見返してみると、毎回、表情や歌のピッチ感、声の響き、ブレスの感じなど、いろいろ気づく点が多くて。それらの細かい点を修正して次の配信に向かったことで成長につながったのかなと思います」
配信ライブでは、「介護があってライブには行きたくても行けなかった」「入院中、すごく元気をもらえた」など、竹島が予想していなかった反響も。「そういう役割の果たし方もあるんだと気づき、今も定期的に配信ライブは続けている」という。
それらの経験から、今、自身の歌手としてのあり方についてはこんな考えを持っている。
「竹島宏の歌を聴きに来てくださるお客様の中には、いろいろな経験や思いを抱え、今まさになんとか乗り越えようとしている方やどうしていいかわからない状況の方もいらっしゃると思います。そういう皆さんの気持ちを少しでも温かく包み込んであげられるような優しい歌を歌い続けることがなにより大事なことだと思っています」
その思いは、「小夜啼鳥の片思い」Aタイプのカップリング曲「こころの詩(うた)」にも表れている。
「悲しいニュースや出来事が多い今、皆さんがほっこりするような、ヒーリング的な歌を歌いたいと思って、作曲家の幸耕平先生と作詞家の松井五郎先生に作っていただきました。個人的な僕の思いをすべて反映してもらった曲なので、途中で歌詞にグッとくるところがあり過ぎて、レコーディングでは中断して休憩をはさむこともたびたびで…。最終的には苦肉の策で、気合を入れるべくシャツを脱いでタンクトップ1枚で歌って乗り切りました(笑)。松井五郎先生は本当に言葉の魔法使いです。この歌が僕の手元から飛び立って、多くの皆さんの心に癒しを届けられたらいいなと思っています。ぜひ聴いてみてください」
Bタイプのカップリング曲「その先の明日へ」は一転、軽快なリズムに乗せて、力強く包み込んでくれる勇気づけられる1曲だ。
「ズンズンと大地の底から突き上げてくるような、エネルギーが湧いてくる、勢いのある人生の応援歌になっています。ライブのエンディングに歌ったら盛り上がるだろうなと思っています」
そのライブについては、推し活ブームに乗って参加型ライブが人気を博すなか、竹島は独自の世界観の構築を目指している。
「僕のライブでは、ペンライトを持ってきたものの振ることなく、歌を真剣に聴きとろうとする方や、歌詞の世界に浸られている方が多いんです。僕自身もそういうタイプなので、参加型というよりは、じっくり音楽をお届けしながらも、皆さんにエールを送れるような、そんなライブをコンセプトにしてやっていきたいと思っています」
来年はデビュー25周年。年齢的にも歌手としての立ち位置としても大人となった今、さらに竹島が目指す“大人の歌謡曲”とはどんな世界なのだろう。
「ロマンティックで切なさがあって、でも癒しがあって、『宏くんの歌を聴くとホッとして気持ちが前向きになれるよね』と言っていただけるような歌を歌っていきたいです。年を重ねるとともに声は変わっていきますけど、その年齢だからこそ出せる声の響きや表現方法が絶対あると思うんです。昔、ブルーノートでジミー・スコットのライブを観た際、当時80歳近かったと思うのですが、第一声にしびれたことが忘れられません。シャルル・アズナヴールが94歳の時の、最後の来日公演での姿もダンディーでカッコよくて脳裏に焼き付いています。そういう素晴らしいお手本が僕の中には息づいているので、少しでも近づけるよう、表現方法を追求していきたい。そして、楽しく歳を重ねていって、お客様に『宏くん、なんかいい年の取り方しているよね』と思ってもらえるように、年齢ごとの表現の楽しみを見つけていきたいと思っています」
年齢を重ねるごとに進化を続ける竹島が描く“大人の歌謡曲”。「小夜啼鳥の片思い」で今後がますます楽しみになってきた。
取材・文:河上いつ子
<作品情報>
竹島宏「小夜啼鳥(サヨナキドリ)の片思い」
発売日:2025年6月11日
■Aタイプ
品番:TECA-25016/価格:1550円(税込)
【収録曲】
1. 小夜啼鳥の片思い(作詞:松井五郎/作曲:幸 耕平/編曲:坂本昌之)
2. こころの詩(作詞:松井五郎/作曲:幸 耕平/編曲:坂本昌之)
3. 小夜啼鳥の片思い(オリジナル・カラオケ)
4. こころの詩(オリジナル・カラオケ)
■Bタイプ
品番:TECA-25017/価格:1550円(税込)
【収録曲】
1. 小夜啼鳥の片思い(作詞:松井五郎/作曲:幸 耕平/編曲:坂本昌之)
2. その先の明日へ(作詞:松井五郎/作曲:幸 耕平/編曲:坂本昌之)
3. 小夜啼鳥の片思い(オリジナル・カラオケ)
4. その先の明日へ(オリジナル・カラオケ)
2025/06/13



