3月20日より公開されるアニメ『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり）よ』。おしりたんていのかつての相棒でスイセンの師匠、育ての親でもあるキンモク先生役を担当するのが、俳優としても活躍する声優・津田健次郎（52）。二児の父である津田に作品の魅力と子育てで大切にしていることを聞いた。

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　今回の映画は、どんな時も冷静に、ププッと事件を解決してきたおしりたんていに、絶体絶命のピンチが訪れる。ある事件を境に忽然と姿を消したかつての相棒スイセンとの再会に戸惑いつつも、贋作すり替え（偽物）事件の調査を進めるうちに、世界中の美術館を震撼させる巨大な陰謀に巻き込まれていくストーリー。

■話題の「名探偵津田」に驚き！　推理小説や謎解きゲームは「苦手です（笑）」

――アニメ『おしりたんてい』は、お子さんと一緒に見るうちにハマったそうですが、今回の映画出演は報告しましたか？

【津田】　1〜2年ほど前に子ども（小学校低学年）と一緒に初めて見ました。ギャグシーンもあって、子どもがキャッキャッと笑う姿を見るうちに、いつのまにか自分もハマっていました。映画出演については、まだ子どもに報告していないんです。（取材時）映画が公開されてから一緒に見に行き、「パパの声がする！」と驚かせたいのですが、気づかれない可能性もあるので今、どうしようか迷っています（笑）

　今回の映画のテーマは「本物と偽物」なのですが、大人でも考えさせられる深い内容になっています。演じるキンモク先生は贋作に手を出してしまうキャラクターなのですが、なぜ贋作に手を出してしまったのか？この背景がとても役者として理解できてしまう部分でした。フェイクニュースなど身近に今、真実でない情報があふれたりしていますが、それを気づかずに受け入れてしまうことは多々あると思います。そしてそれが支持されてしまうケースもあり、偽物が注目され評価される出来事に深く考えさせられました。子どもがストーリーの深さを理解できるかはわかりませんが、大人になってからも改めて見てほしいです。

――これまでさまざまな作品に出演してきましたが、お子さんには出演作品を紹介しないのでしょうか？

【津田】　細かくは伝えていないのですが、知らないうちに知っていることが多いです。「これはパパの声でしょう？」と言われることは多く、まだ、私の仕事について理解できていない部分があると思います。

――『おしりたんてい』にちなみ、津田さん自身は推理小説や謎解きゲームは得意でしょうか？　最近、テレビのバラエティー番組の企画で「名探偵津田」が話題となりましたが。

【津田】　謎解きは苦手で全くできないです（笑）。　ただ、推理小説とかミステリー番組は好きです。得意ではないのですが、役者としての職業病なのか『この辺できっとこういう展開が起きるな？』とか『この辺でそろそろ伏線回収するだろう』と脚本や今後の展開を予想することは多いです。序盤から犯人を予想するのですが、当たるとうれしいですし、外れても「えっ!? お前が！」と驚くことが楽しいので、好きなジャンルではあります。

　「名探偵津田」については最初、驚きました。SNSのトレンド「名探偵津田」を見た時、「あれ？　そんな作品に出たり、キャラ演じたかな？」と勘違いしました（笑）とても面白い番組でしたので、「名探偵津田」と共演できる機会があれば、ぜひ！

■新人声優時代、三ツ矢雄二に救われた一言　「頑固」貫いた20年

――作品のキャッチコピーの中に「世界を揺るがす大事件」とありますが、役者人生においての大事件はありましたか？

【津田】　忘れ物をしたり、収録するスタジオを間違えたりとか、小さな事件はよく起こしています（照れ）　印象的な言葉として、とあるアニメに出演した際、音響監督を務めた三ツ矢雄二さんから収録後に呼び出されまして…。まだ、声優経験が浅い時期でしたので、「あなた本当に頑固ね！」と言われたのは今でも覚えています。「その頑固さはすごく苦労するし、生きるのが大変よ。でも、それを貫きたいのであれば頑張りなさい。その代わり大変よ」というエールは当時、役者としての地位を確立できていない中で大変うれしかったです。収録の様子を見て、自分のことを理解してくださった上での言葉でした。

　それを言われたのが20代後半だったのですが、これまでの役者人生を振り返ると、やっぱり周囲からは「わがまま」だと思われていますね（笑）　“わがまま”と“こだわり”は違う思いがあるのですが、どうしても紙一重な部分があります。アニメ作品はチームで制作するものなので、わがままだと思われる誤解は解いていきたいと同時に、これからも自分のこだわりは共有したいです。

■我が子は役者「興味なさそう（笑）」　それでも大切にする成功・失敗体験

――津田さんが演じるキンモク先生は、おしりたんていのかつての相棒で・スイセンの親代わりかつ、絵の先生という役どころです。子育てで大切にしていることを教えてください。

【津田】　毎日、難しいと感じながら子どもと接しています。基本的には子どもの自主性を尊重して、伸び伸びと興味があることを応援する気持ちでいます。家族として「これをやるべき」といった指標を出すよりも、子どもがやりたいことをやらせる。興味を持つ選択肢を増やして、可能性を広げてあげたい思いがあります。なるべく、さまざまなことを体験させて、経験してから自ら答えを出したものであれば、やる気も違うはずです。

　もちろん、結果が出なかったり、失敗することもあると思いますが、それは全く問題ないですし、成功や失敗を問わず何かを経験することはとても良いことだと思います。役者の立場だからこそ言えるのかも知れません。

――ちなみにお子さんは将来の夢で「役者になりたい！」と言ったりしていますか？

【津田】　役者には興味がなさそうですね（笑）　まだ、下の子は職業について理解できていないと思います。例えば現実世界とアニメの世界の境界線って、大人になれば「これは非現実」とすぐにわかりますが。子どもの時は意外と曖昧で理解できていない時があったと思います。自分も子どもの時は、現実とフィクションの境界が曖昧だったりしたので、その影響が出ているのかなと思います。

――今のお話を聞いて感じたのは、子どもの時に見ていた特撮作品がそうだったかもと感じました。特撮ドラマの撮影は現実世界で撮影されていますが、テレビで見る物語はもちろん、現実世界で起きていることではない。でも、リアルな建物も映っているので当時、「これって今、この世界で現実に起きていること？」と感じた記憶があります。

【津田】　まさに、それですね。現実とフィクションの曖昧な境界線の面白さは、大人になるとなくなるものなので、子どもの時に存分に味わうべきだと思っています。例えばサンタクロースは実在しますが、絵本で見かけるような空を飛んだりはしていないわけで。いつかは現実を知ってしまうものですし、子どもの時にしか感じられない、この曖昧な境目の感情は大切にしてほしいです。

　大人になっても答えが出せないことは多々あって、結局、自分の経験から曖昧な答えと結果を出す。正解や真実がわからない、出せないことは大人でもあることですし、子どもには、何事に対しても自分なりの答えを出すことを楽しんでもらいたいです。