日々話題を集めるエンタメニュースも、経済目線で知ればもっと面白くなる。そこで『ORICON NEWS』は、エンタメをこよなく愛する経営コンサルタント・坂口孝則氏に、エンタメにまつわるニュースを経済視点で解説してもらう連載企画『オリコンエンタメビズ』を開始した。今回は、ライブエンターテイメントの隆盛をテーマに解説してもらった。
『JAPAN JAM 2024』の出演アーティストが発表されました。今年の開催は、4月28日(日)から5月5日(日)まで断続的に5日間。おそるべき布陣です。昨年に引き続き出演しているアーティストも多くいます。個人的に注目しているのはchilldspot、Kroi、マキシマム ザ ホルモン、INI、そして我らがBE:FIRSTです。
すでにチケット入手が困難と予想されます。ほんの少し前までは、コロナ禍で人がたくさん集まるだけで非難を浴びていました。さらにステージ上で声出しを促しただけで炎上したのは、わずか2022年の夏のことです。そこから考えると隔世の感があります。やっぱり私たちはアーティストを生で見たくてしかたがない。
ここでフェスなどのライブエンターテイメントの隆盛をビジネスとマーケティングの観点から分析してみましょう。
【1】サブスク時代ゆえの逆説的なリアルニーズ
コロナ禍で人々はSNSや動画、サブスクのストリーミングに時間を費やしました。また、多くのアーティストがライブ配信を試行錯誤しました。しかし、やはりリアルにアーティストを見たい欲求は止まることはありません。いや、むしろコロナ禍でサブスクを聽いていたから、その反動でフェスにアーティストをリアルに感じたいはずです。
ライブエンターテイメントの公演数は1999年、2000年あたりから増加しています。もちろんコロナ禍で落ち込みました。しかし、ライブ市場は強力に復活しています。日本国内でも、この15年ほどで約1000億円から約4000億円へと、倍以上に成長する「優良市場」です(コンサートプロモーターズ協会調査より)。
さきほどコロナ禍でサブスクばかり聽いていたから、反動としてリアルへの回帰が起きたといいました。これはコロナ禍に限らない全体の潮流です。
かつて私は90年代に「コンサートは儲からない。コンサートはCDを販売するための認知づくり」と聞きました。しかし、その立場が逆転し、現在は音源が宣伝で、ライブのチケット、グッズ、会場の飲食代が主要な収益源になりました。
これはビジネスでもマーケティングの変容といえますが、狙ったというより必然というほうがいいでしょう。
なお鬼才デビッド・フィンチャーは大傑作映画『ファイト・クラブ』で肉体と肉体のぶつかりあいに惹かれる男たちを描いたのは1999年で、まさにeメールなどの非身体的なITツールが世界を覆った反動でした。
【2】アーティストに会う意味の変容
私は15歳からライブハウスに入り浸っており、いまでも週に一度はライブハウスでヘヴィ・メタルを聴いています。30年前のライブハウスは、危うげで近寄れないイメージがありました。実際に喧嘩(けんか)や争いは多かったです。一般的には数年に一度、近くの市民ホールに歌手がやってきたときに行ってみる、くらいだったと思います。しかし、ライブハウスでアイドルが公演するようになったのが象徴で、パンク、メタル、ロック以外に小さなハコ(≒ライブハウス)が開放されました。そして生のアーティストに会うことが慣習化され、人々がライブやコンサートに行く機会が増えました。
これは、前述の【1】と同じ意味と思うかもしれません。ただ、人々は「自分が音楽を聴いて楽しむ」から「自分がアーティストを楽しませに行く」に変容しています。メタルやパンクを聴いて自分が暴れて楽しむだけではありません。現代的なファンは、推しアイドルの公演会場に行って「気持ちよく歌ってもらう」ことに主眼があります。そして、これが“推し”時代にライブエンターテインメントが流行する真の意味です。
だから現代のビジネスやマーケティングでは、“推し”に出会うことと、応援することと、アーティストのための消費が強調されます。しかしこれも狙った、というより必然だったのでしょう。
もちろんライブでは圧倒的な音圧が私たちを魅了します。さらに、Apple Musicなどでは、フェスが近づくとプレイリストが用意されます。予習ができるとともに、新たなアーティストらとの出会いになります。と同時に、ライブエンターテインメントが現代で不可欠なのは私たちの歴史上、当然とすらいえると私は確信しています。
■プロフィール
『JAPAN JAM 2024』の出演アーティストが発表されました。今年の開催は、4月28日(日)から5月5日(日)まで断続的に5日間。おそるべき布陣です。昨年に引き続き出演しているアーティストも多くいます。個人的に注目しているのはchilldspot、Kroi、マキシマム ザ ホルモン、INI、そして我らがBE:FIRSTです。
ここでフェスなどのライブエンターテイメントの隆盛をビジネスとマーケティングの観点から分析してみましょう。
【1】サブスク時代ゆえの逆説的なリアルニーズ
コロナ禍で人々はSNSや動画、サブスクのストリーミングに時間を費やしました。また、多くのアーティストがライブ配信を試行錯誤しました。しかし、やはりリアルにアーティストを見たい欲求は止まることはありません。いや、むしろコロナ禍でサブスクを聽いていたから、その反動でフェスにアーティストをリアルに感じたいはずです。
ライブエンターテイメントの公演数は1999年、2000年あたりから増加しています。もちろんコロナ禍で落ち込みました。しかし、ライブ市場は強力に復活しています。日本国内でも、この15年ほどで約1000億円から約4000億円へと、倍以上に成長する「優良市場」です(コンサートプロモーターズ協会調査より)。
さきほどコロナ禍でサブスクばかり聽いていたから、反動としてリアルへの回帰が起きたといいました。これはコロナ禍に限らない全体の潮流です。
かつて私は90年代に「コンサートは儲からない。コンサートはCDを販売するための認知づくり」と聞きました。しかし、その立場が逆転し、現在は音源が宣伝で、ライブのチケット、グッズ、会場の飲食代が主要な収益源になりました。
これはビジネスでもマーケティングの変容といえますが、狙ったというより必然というほうがいいでしょう。
なお鬼才デビッド・フィンチャーは大傑作映画『ファイト・クラブ』で肉体と肉体のぶつかりあいに惹かれる男たちを描いたのは1999年で、まさにeメールなどの非身体的なITツールが世界を覆った反動でした。
【2】アーティストに会う意味の変容
私は15歳からライブハウスに入り浸っており、いまでも週に一度はライブハウスでヘヴィ・メタルを聴いています。30年前のライブハウスは、危うげで近寄れないイメージがありました。実際に喧嘩(けんか)や争いは多かったです。一般的には数年に一度、近くの市民ホールに歌手がやってきたときに行ってみる、くらいだったと思います。しかし、ライブハウスでアイドルが公演するようになったのが象徴で、パンク、メタル、ロック以外に小さなハコ(≒ライブハウス)が開放されました。そして生のアーティストに会うことが慣習化され、人々がライブやコンサートに行く機会が増えました。
これは、前述の【1】と同じ意味と思うかもしれません。ただ、人々は「自分が音楽を聴いて楽しむ」から「自分がアーティストを楽しませに行く」に変容しています。メタルやパンクを聴いて自分が暴れて楽しむだけではありません。現代的なファンは、推しアイドルの公演会場に行って「気持ちよく歌ってもらう」ことに主眼があります。そして、これが“推し”時代にライブエンターテインメントが流行する真の意味です。
だから現代のビジネスやマーケティングでは、“推し”に出会うことと、応援することと、アーティストのための消費が強調されます。しかしこれも狙った、というより必然だったのでしょう。
もちろんライブでは圧倒的な音圧が私たちを魅了します。さらに、Apple Musicなどでは、フェスが近づくとプレイリストが用意されます。予習ができるとともに、新たなアーティストらとの出会いになります。と同時に、ライブエンターテインメントが現代で不可欠なのは私たちの歴史上、当然とすらいえると私は確信しています。
■プロフィール
坂口孝則(さかぐち・たかのり)
1978年生まれ。福岡放送『めんたいワイド』(隔週)、TBSラジオ『日本リアライズpresents 篠田麻里子のGOOD LIFE LAB!』など出演。日本テレビ系『スッキリ』木曜コメンテーターも担当していた。趣味はメタルのライブに行くことで、音楽をこよなく愛する調達・購買コンサルタント、講演家。未来調達研究所株式会社所属。大阪大学経済学部卒業後、電気メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買に従業。現在は、製造業を中心としたコンサルティングを行う。著書は『牛丼一杯の儲けは9円』『営業と詐欺のあいだ』『未来の稼ぎ方』『製造業の現場バイヤーが教える 調達力・購買力の基礎を身につける本』『調達・購買の教科書』など。直近で『買い負ける日本』(幻冬舎刊)を発売した。■エンタメニュースを“経済視点”で解説【オリコンエンタメビズ】
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2024/02/27