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菅田将暉「独立は向いてない」仕事への向き合い方 この10年で感じる芸能界の変化

 木村佳乃、中村倫也、佐々木希、杏、松坂桃李、菅田将暉、趣里、萩原利久、杉野遥亮、夏子、堀田茜、TAKAHIROら、幅広く活躍するアーティストが所属するトップコートが、芸能マネージャーをテーマにした書籍『芸能マネージャーが自分の半生をつぶやいてみたら』(ワニブックス刊)を発売した。実態が見えにくい「芸能マネージャー」という仕事について、マネージャー本人が自身の体験談を赤裸々に語る内容。芸能マネージャーに対するタレントの生の声も収録されている。ここでは同書から、菅田将暉が話したエピソードを一部抜粋。「独立は向いてない」と語る思いを紹介する。

菅田将暉 (C)ORICON NewS inc.

菅田将暉 (C)ORICON NewS inc.

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『芸能マネージャーが自分の半生をつぶやいてみたら』(ワニブックス)

『芸能マネージャーが自分の半生をつぶやいてみたら』(ワニブックス)

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■マネージャーは最初の伴走者

 アーティストにとってマネージャーは、近い遠いで測れる存在ではありません。常に一緒にいるようでも、マネージャー陣のプライベート全てを知っているかというとそんなことはないし。アーティストもなあなあになって甘え過ぎてもいけない。この絶妙なバランスが多分、アーティストそれぞれのマネージャーとの距離と相性に繋がるのでしょう。

 僕の場合マネージャーというのはある意味、最初に喜ばせなきゃいけない人達で。試写会や、自分が表でプレイするのを一番近くで観るお客さんです。社長である(渡辺)万由美さんもそうですが、ワクワクさせなくては、という緊張感がずっとあって、それは家族や友達に対しては抱かない感覚です。

 仕事なのは確かですが、いわば心の仕事ともいえる。マネージャー陣の、仕事をする人間としての皮のようなものをはがさなきゃいけないような気持ちもあります。志というか、そう在れたらいいなと。

 同じチーフでも、アーティストによって距離感は全然違います。僕の場合はとても仲が良いし、二人だけでご飯を食べに行くことも、仕事の合間に遊んだりも多々あります。でも、現場マネージャーやチーフマネージャーが僕のことを面白いと思わないことには仕事は進まない。プライベート面でお世話になることもありますが、まずは仕事の面で認めてもらうこと。「この人のためなら」と思ってもらう、ある意味ファンであり続けてもらうのが一番の理想です。暴言に聞こえなければいいのですが。

 最近はウチのチーフの下に付くマネージャー陣、新入社員が現場研修のように僕の現場に来ます。菅田のところは芝居も音楽も色々な現場があって、「この人は嫌だ」ということもないので、「教育係ね」と言われたりして。自分にマネジメント能力に関して教えられるものはないけど、確かに年上ではあるし、作品を作るクルーとしての心構えなどについては伝えられるものがある。だから現場マネージャーに関しては上司、ではないけどそんな立場で、説得力を持たせられるようにいなければいけないなと思っています。そうはいっても、朝寝坊して起きれないこともあるんですけど。

■チーフとの関係性

 チーフとの間に、特に決めごとはありません。ただ、これは! という時だけハイタッチをします。お互いに、ハイタッチが出来るくらいの瞬間をわかっているのです。例えば『あゝ、荒野』(2017年)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞させていただいた時、そして初めての武道館公演の時がそう。そういう景色を目標に設定し、ベストを尽くしてきました。

 そのチーフとの関係性が、ある時少し変わりました。それこそ日本アカデミー賞の後、仕事のやり方を変えようと話し合っていて。決してもめた訳ではないのですが、その時にチーフが、「菅田君が素直に今、私がマネジメントするべきじゃないと思ったらそう言ってね」と伝えてきたのです。

 ずっと今のチーフとやり続けるのではない、そんな思いは常にあります。チーフも「もう菅田君はいいや」と思うかもしれないし、そういう選択肢はお互いに持っていないと良い意味での緊張感は生まれません。そのことをチーフがちゃんと言葉にしてくれた時、やっぱり同じ感覚を持っているのだなと改めて感じました。

 始まりは、僕がまだ高校を出たばかりの頃でした。そんな自分に社内の人事の背景なんてわからないし、色々な事情で新しくチーフになった人、最初はそれだけの間柄で。そこから長い時間が経ちました。そうしてこのタイミングで、お互いにお互いを、ちゃんと選んだ上で一緒にやっていこう――。そういう感覚に変わったのです。

 それでいて、これだけ長い間一緒にいると、もうチーフの体が心配で。やっぱり情も生まれるし、健康であってほしいなあと思ったりします。

■トップコートの変化

 最近は事務所から独立する俳優さんも多いですし、全部を自分でやりたい人、それが向いている人もいるでしょう。でも僕はそうではなくて。人に任せないと出来ない仕事はあるように思うし、任せられる人にお願いして事を進め、自分は自分の仕事に集中するほうが向いています。もし全部を自分で出来るなら既に独立しているはずで、逆にそれが、独立には向いていない証明かもしれません。

 作品選びはチーフと一緒にやりますがその窓口業務、対社会、対作品、またお客さんに向かう姿勢? 広告をやらせていただくための業務は? 芸能界、テレビ業界、映画業界の中に、どんな在り方で立つのか? 僕個人ではまかなえないと思うことが多過ぎる。更に目に見えない仕事もあって、そこに時間を割き過ぎると、作品を作る時間がなくなるという問題が起きます。だから改めて僕にはマネージャーが必要で、自分がこうやって活動出来ているのも事務所のおかげだと純粋に思えるのです。

 トップコートは、どんな事務所に見えるでしょうか? 僕としてはこの10年で変わったなあと思うのです。入所した当初と今とでは、事務所全体で目指すところが違うなと。いい意味で、とても流動的なのです。

 もちろん会社としての理念自体は変わってませんが、フェイマスとかメジャーみたいなものへの志向があったところから、よりインディペンデントなもの、作家性の強い、アートなものへと関心が向かうようになったなと。『共喰い』(2013年)のオーディションは当初チーフ以外の全員から反対されましたし、そうした作品に前向きな雰囲気はなかった気がします。あの頃は(松坂)桃李君が、舞台や映画で『娼年』(2016年/2018年)をやるという未来はまだ存在していなかった訳ですから。

 メディアの在り方、芸能界全体が変化した時期でもありました。日本アカデミー賞でここ数年、インディペンデント系の映画が高く評価されているのもその証拠のひとつです。また以前はテレビ、映画、舞台と活動の場によって、俳優はそれぞれにカテゴライズされていました。もちろんたまに行き来する人はいましたが、映画中心に活躍する俳優がテレビドラマに出ると驚かれたりする、そうした違和感があった気がします。

 そこでチーフとは最初に、とりあえず全部をやろう! という目標を掲げました。インディペンデントなもの、作品の規模としてミニマムなものもやり、そっちにもお客さんを呼び込んで、それ自体をメジャーなものにする。それでいていわゆるメジャーな作品もちゃんとやると。なぜみんな全部をやらないのだろう? と思っていましたが、それが一番難しいからだというのはやってみてよくわかりました。

 トップコートが請け負ってきた作品を洗い出して並べてみたら、その質はかなり違ってきているはずです。今はインディペンデントなもの、ミニマムなものも、多くの人に観てもらえるようになりました。そうした環境の変化にちゃんと対応し、シフトしている気がします。 また次の段階として、僕らの業界の仲間が足りないからと、こうしてマネジメントという仕事を伝えるために本を作ってもいます。この本の話を聞いた時は、さすがだなと思いました。その世界を知らないと、入ろう! とは思えないはず。万由美さんは無意識な部分と意識的な部分の両方を備えている、第六感みたいなものがある人で、そこがやっぱり面白いなと思うのです。

■芸能マネージャー陣の知られざる半生とアーティストが本気で語るマネージャーとは
『芸能マネージャーが自分の半生をつぶやいてみたら』(ワニブックス)

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