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和牛解散で再び注目 2019年の『M-1』とは何だったのか 上沼「横柄」発言の背景を探る

 吉本興業は12日夜、お笑いコンビ・和牛が来年3月末で解散すると同社公式サイトを通じて発表した。華麗な経歴を誇り、これからの漫才界を背負っていく存在と言っても過言ではない2人の“電撃解散”に、芸人仲間はもちろんのこと、多くの人々が衝撃を受けた。解散発表にあたって2人のコメントがそれぞれ公開となったが、それをきっかけに和牛が敗者復活で上がった『M-1グランプリ2019』(ABC・テレビ朝日系)における、上沼恵美子のコメントに注目が集まった。当該の発言ばかりが注目されてしまうが、ここでどういった背景だったのかも含めて、当時の審査員のコメントを紹介してみたい。

上沼恵美子 (C)ORICON NewS inc.

上沼恵美子 (C)ORICON NewS inc.

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 2019年の『M-1』を振り返るにあたって、今回の和牛のコメントから紹介する。水田信二は「きっかけは、3年程前に気の緩みから複数回の遅刻が重なったことでした。加えて漫才のパフォーマンスにおいて川西の要求に応えられないことがあり、漫才への取り組み方について川西との差を感じるようになりました。お客さんに笑ってほしいという目的は同じでしたが、川西の求めるものと自分のやりたいこととのギャップが徐々に開いていき、相方に対して意見することができなくなり、楽しかった漫才が苦しいだけの毎日になっていました」としたためた。

 一方の川西賢志郎も「3年ほど前から、僕はより舞台に力を入れたいという思いが強くなる一方で、水田の劇場出番への遅刻が続いたことをきっかけに、自分と彼との漫才に対する姿勢の違いが目立つようになりました。徐々に彼を信頼できなくなり、節度を保てず厳しく言葉をかけることもありました。それが彼を苦しめることに繋がり、求めるような漫才もできなくなってしまいました」と記した。2人そろって言及している時期となる「3年ほど前」は、2019年を最後に『M-1』から卒業すると発表したことから、この19年『M-1』決勝にスポットが当たることになった。

 その上で、当時の『M-1』を振り返っていく。史上初の2年連続同じ顔ぶれでの審査員となり、オール巨人松本人志、上沼、中川家礼二富澤たけし立川志らく塙宣之の7人が担当。審査員の去就で一番注目を集めていたのは上沼と松本だった。カンテレ『快傑えみちゃんねる』では、前年の18年『M-1』決勝直後の上沼への暴言騒動が話題となり、上沼自身が「紅一点っていうのはしんどいよね。審査員を審査しよるもの。いろんなこと言われるから。島田紳助さんに来てくれって言われて断れなかったんですよ。義理でね」と率直な思いを吐露すると、松本は「はっきり言うときますけど、僕は上沼さんが(M-1の審査員を)やめたら、やめますからね」と断言。上沼が「それは脅迫ですね」と笑顔で切り返すと、松本は「自分より先輩で尊敬できる人がいないと、自分が上に立つものではないですし」と真面目なトーンで語っていた。

 こうした経緯があることから、番組冒頭でMCの今田耕司が「今年も来ていただいてありがとうございます」と向けると、上沼は「ありがとうございます。本当に。きょうは真剣に、だって将来が決まるわけですから。それを私たちが選んでいるわけですから、いらんこと言うなよ。頑張ります」と先制ジャブをしっかりと放った。

 ある種“異質な空気”をはらむ中でスタートし、和牛が3組目の「敗者復活枠」として登場。塙が「また新しいネタを見させていただいて、毎年進化しているというか。型がない。いろんなことを毎年やるっていうのが、和牛の魅力なので。和牛とかまいたちがちょっとすごすぎるので、ほかの出演者が大変」とこぼすと、巨人が「後半がグッと盛り上がって。最後にちゃんと持っていって、うまいこといって、安心感がありましたね。川西くんの普段のツッコミよりもボキャブラリーが少ない」と期待の高さゆえに注文をつける一幕もあった。

 ここで、上沼が2人に言及する機会はなかったものの、5組目のからし蓮根への論評を行う流れで“上沼節”がさく裂した。「(からし蓮根に)初々しいね。あの、和牛には悪いんだけど、去年もその前も、私は和牛にチャンピオンに入れました。でも、横柄な感じが和牛に対して感じました。『このステージは僕のもの、リサイタル』みたいな、コンテストの緊張感もない、そういうぞんざいなものを感じました。でも、からし蓮根には初々しいものを感じて、この必死さ、チャンピオンを取ろうという気持ちが伝わってきて、私は大ファンよ!頑張ってね!それがいいの!それがM-1じゃないの?和牛のような、大御所みたいな出方をして…昨年もその前も押しているわけです!それなのに、決勝まで残らなかった、それに腹が立っているんですよ」。

 当時の状況を鑑みると、上沼からすれば審査員の立場を退くという選択肢もあった中、改めて決心して『M-1』の舞台に出ることを決めた。そこで、昨年まで2年連続で、最終決戦で1票を投じ続けてきた和牛がまさかの敗者復活枠で上がってきて、塙の言葉を借りると「型がない」という魅力を見せる漫才を披露したものの、その漫才が上沼にとって「必死さ」を感じるものでなかった。SNS時代に突入し審査員も審査される中、重責も大きい中にあって“本気”で挑んでいる自分にとって、和牛の漫才は「緊張感がない」ものに映り、期待の大きさゆえに強い口調で論評した…というのが、前後の様子を改めて見てみた上で感じることだった。

 そんな中で登場したのが、ミルクボーイの“コーンフレーク”漫才だった。ファイナルステージに進む前に、上沼がふとつぶやいた。「今年面白いです。すごいです。初めて拝見するコンビばっかりなので、今年は面白いですね。こんな上手な人ばっかり。久しぶりに興奮しています」。ミルクボーイが優勝に輝いた直後、上沼は手で涙を拭う仕草をしながら「感動しました。本当に、ちょっと泣いているんだけど」と呼びかけ、松本も「過去最高って言ってもいいのかもしれないですね。数年前だったら、誰が出ても優勝していたっていう」と口にしていた。ハイレベルな『M-1』をファイナリストとして経験し、後に卒業を発表するにいたった和牛の2人の胸中には、当時何が去来したのだろう。もう語られることはないかもしれないが、2人の漫才師人生にとって大きな節目のひとつとなったのは間違いないだろう。

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