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クジラ夜の街 メジャー1stアルバムだからこそ目指した「アルバムの曲順で聴いていくことの重み」

 4人組ロックバンド・クジラ夜の街が6日、14曲収録のフルアルバム『月で読む絵本』をリリースした。同作は、メジャーデビュー決定をファンに伝えた後の“プレデビュー作”となった「踊ろう命ある限り」から、約1年の歩みを総括したメジャー1stアルバムとなっている。

クジラ夜の街

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 ORICON NEWSでは、今年7月に続いて宮崎一晴(Vo&Gt)、山本薫(Gt)、佐伯隼也(Ba)、秦愛翔(Dr)へのインタビューを実施。当時から「今までに感じたことのない手応え」と自信のほどを伝えていた同作が、どのようにして完成へと至ったのか語ってもらった。

 取材の直前には、本作収録曲がTOKYO MXで放送される2話連続ドラマ『うしろ姿でもわかる』の主題歌に起用され、宮崎と秦が出演するというニュースも。バンドとして新たなフェーズへと突き進む4人の思いを、余すところなくお届けする。

「全体が1曲になっているような感覚」が導くアルバムである必要性

――まさか俳優デビューとは!

【宮崎】ハハハ(笑)。ありがとうございます。

――ドラマ『うしろ姿でもわかる』では、本作収録の「Memory」と「Time Over(Postlude)」が主題歌に選ばれています。

【宮崎】実は、監督の磯部鉄平さんが僕らのライブでこの2曲を聴いてくれたそうで、曲を主題にして脚本を書いてくださったんです。なので、“逆輸入”のような感じなんですよ。

――では、楽曲ありきで出演のオファーが?

【宮崎】はい。主題歌とドラマへの出演がセットでした。ただ、ここまで曲に寄り添っていただけるとは思っていなくて。特に2話目では、「Memory」という曲が持つ意味みたいなものを物語のコアにしてくださったので、すごく光栄でした。

――7月のインタビューでは、宮崎さんから「今までに感じたことのない手応えを感じている」という言葉も出ていました。

【宮崎】マスタリング作業まで入れると、完成したのは10月。7月の時点ではまだ6割もできていませんでした。

――どのような構想のもとに仕上げていったのですか?

【宮崎】僕たちは「ファンタジーを創るバンド」と名乗っていますが、今回はその「ファンタジー」とちゃんと向き合いたかったんです。それを前提として、歌詞では「生きる」「死ぬ」ということに臆することなく向き合おうと。サウンドの方向性は、クジラ夜の街というバンドの集大成で、かつ原点回帰をしようという意識でした。

――アルバムとしてのまとまりのよさも感じました。

【宮崎】メジャー1stアルバムということで、「アルバム全体が1曲になっているような感覚」は絶対に残したかったんです。そうじゃないと、アルバムである意味がない。「アルバムで音楽を聴く」という文化がだんだんと廃れてきてしまっている中で、「アルバムの曲順で聴いていくことの重み」みたいなものを意識して、曲を作っていきました。

バンドとして成長したレコーディング合宿 満身創痍の中で生まれた“奇跡の曲”

クジラ夜の街・宮崎一晴(Vo&Gt)

クジラ夜の街・宮崎一晴(Vo&Gt)

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――本作で特に思い入れのある曲や、聴きどころとしてアピールしたいポイントは?

【佐伯】僕は「海馬を泳いで」です。レコーディング合宿の最終日に、「Memory」の前奏曲を作ろうとなって取りかかった曲なんですが、さすがにみんな疲れ果てていて、なかなか制作が進まなかったんです。そんなとき、僕が適当に「Memory」のキーでフレーズを弾いていたら、一晴が「いいんじゃない?」って。ベースのフレーズから生まれた曲でしたし、今までベース始まりの曲はあまりなかったので、すごく思い入れがあります。

【宮崎】「そのままずっと弾いていて!」と頼んで、そこにギターとキーボードを入れて…とやっていたら、1時間でできちゃいました(笑)。合宿で全員限界だったんですけど、この曲に関してはあの状況だからこそ生まれたんだろうなと…。佐伯発信の曲というのも新鮮でしたね。

【佐伯】いつもの東京のスタジオで、たくさん寝た後に作り始めていたら絶対に生まれていなかったと思います(笑)。

クジラ夜の街・佐伯隼也(Ba)

クジラ夜の街・佐伯隼也(Ba)

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【秦】僕も「海馬を泳いで」が印象に残っています。アルバムを通して「曲を大切にする」という意識を持ちつつ、その中でドラマーとして面白いこともできたと思うのがこの曲。2人も言ったように体力がもう限界を迎えていて、加えて僕は朝5時まで飲んでいて…。

――それは自業自得では…?(笑)

【秦】(笑)。「あれ?シンバルが2枚に見えるぞ?」っていう状態でレコーディングに臨んだところ、クラッシュシンバルのカップの音程の低さに意識が向いたんです。普通はライドシンバルの方が口径がデカいから、カップの音程も低くなるものなんですけど、僕が使っているK Zildjianシリーズのスイートクラッシュはライドよりも音程が低いんです。

クジラ夜の街・秦愛翔(Dr)

クジラ夜の街・秦愛翔(Dr)

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――なるほど。

【秦】で、この曲ではその音程の差を活かして、一番左手側に設置しているクラッシュのカップと、右手側のライドのカップで、アルペジオみたいな16分の刻みをやってみたんです。こんな組み合わせで叩いているのは、たぶん僕だけじゃないでしょうか…(笑)。

【宮崎】いないと思う。だって、叩いているときの様子が「ドラマーあるまじき姿」だったし…(笑)。叩き方がすごく面白かったんですよ。僕らも早くライブで観たいです(笑)。

【秦】いかにカッコよく叩けるようになるかが課題です(笑)。ただ、音色的には“銀河感”というか、この組み合わせでしか出せないギラギラした感じが出せたと思っています。

互いを補い合うギターサウンドの作り方

――ギターはいかがですか?

【山本】ギターは今回、ソロの入り方を全曲で変えているのがポイントですね。今まではチョーキングから入ったりすることが多かったんですけど、このアルバムでは全部のソロの印象を変えたかったんです。それをテーマにした結果、ちゃんと全曲で違う入り方ができました。

――ソロはもちろん、リフやエフェクトの使い方なども振り切っているなと感じました。

【山本】そうですね。これはちょっと…ライブでどう弾こうかなって。ライブバンドの腕の見せどころです(笑)。

――ピッチシフターの登場頻度の高さも特徴ですね。

【山本】確かに…そう言われると結構使っていますね。(Digitech製)Whammyを1オクターブ分踏み込んだり。でもこれは無意識というか、曲に合わせて考えていったら自然とそうなっていったんです。

クジラ夜の街・山本薫(Gt)

クジラ夜の街・山本薫(Gt)

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――宮崎さんは?

【宮崎】僕はバンドを結成したときから、自分のギターは細かいことを表現するものじゃなくて、とにかく薫を引き立てるためにあると思っていて、その上で大まかなチャンネルを3つ作っているんです。1つ目が、すごく柔らかで、綺麗なニュアンスの音。2つ目が、クジラ夜の街のド真ん中というか、どんなスタイルの楽曲にも馴染む音。そして3つ目が、少し主張を強めてコード感やノリを底上げしたり、こじんまりしたものを押し広げるために使う飛び道具的な音なんです。

――今作では、その3チャンネルをすべて駆使している?

【宮崎】はい。「欠落」「華金勇者」「ロマン天動説」「踊ろう命ある限り」が1チャンネル目、「輝夜姫」「RUNAWAY」「Memory」が2チャンネル目です。3チャンネル目は、「BOOGIE MAN RADIO」と「マスカレードパレード」、あと「ショコラ」と「Time Over(Postlude)」で使いました。

――「ショコラ」と「Time Over(Postlude)」で3チャンネル目を使ったというのが意外です。

【宮崎】特に「ショコラ」は、僕のギターだけを少し注力して聴いてもらうと、すごく歪んでいることに気づいてもらえると思います。きっと1か2の音の方が相性はいいんですが、綺麗にまとまりすぎた楽曲にしたくなかったんですよ。実際、「ショコラ」のギターはすごく歪んでいるからこそ音が前に出てきていなくて、曲全体のニュアンスをいわゆるフォークソングの型の中にハマらせない役割を果たしていると思うんです。この塩梅がとても絶妙で、結構こだわったポイントですね。

――「ショコラ」の歪みはどのように作ったのですか?

【宮崎】アンプだけで作りました。Marshall JCM2000 TSL100のLEADチャンネルで、プレゼンスは最大、レベルもフレーズのラインがギリギリ見えるくらいまで上げて…。要するに、リードフレーズで使うような音色でバッキングを録ったんです。「ショコラ」はちょっとほかの楽曲と雰囲気が違うので、僕らの楽曲として出すためにちゃんと背骨を作ってあげたかったんですよ。

それぞれのこだわりが詰め込まれたレコーディング機材

――今回のレコーディングで重宝した機材も教えてほしいのですが、宮崎さんはMarshallでしょうか?

【宮崎】はい、今回はMarshallに助けられました。僕はもともとライブでMarshallを使っていたんですが、今回のレコーディングを通してMarshallの底力を見たというか。曲の邪魔をせずに役割を果たしてくれるので、僕のバッキングとの相性はやっぱり抜群だなと感じました。FenderやHughes&Kettnerなどを使ってきた上で、Marshallに帰ってきたときの安心感はすごかったですし、これからの指標にもなりました。

宮崎's レコーディング用アンプ

宮崎's レコーディング用アンプ

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――以前まではFenderのAcoustasonic Juniorをメインアンプにしてきましたが、今後のライブではMarshallに変更する可能性も?

【宮崎】機会があればやってみたいですね。今の薫の音と正反対のアプローチができる気もしますから。薫は基本的に透き通るような音の中で、その音質が潰れないように底上げする…みたいな音色が多いけど、Marshallだったらその形ごと包み込めると思うんです。

――佐伯さんはいかがでしょうか?

【佐伯】僕は「ショコラ」で使ったFenderのPrecision Bassです。この曲のレトロ感をどうやって出そうか考えたとき、自分の持っているIbanezのアクティブベース(SR1345B-DWF)じゃ難しいなと。で、マネージャーさんが偶然自宅から持ってきていたプレベがあって、試しに使ってみたらもう…見事にハマって。このベースがなかったら危なかったですね。

佐伯's レコーディング機材・Fender Precision Bass

佐伯's レコーディング機材・Fender Precision Bass

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――これを機にパッシブベースに目覚めたり…?

【佐伯】「海馬を泳いで」もアクティブよりもパッシブの方が相性が良くて、パッシブで録りました。ただ、ライブはバンド全体のバランスやほかの曲との相性もあるので、アクティブで弾く予定です。

――秦さんが重宝した機材は、やはりシンバルですか?

【秦】はい。僕はライブだとすべてZildjianのシンバルで統一していて、その中からレコーディングでは、A CustomシリーズのチャイナとK Zildjianシリーズのクラッシュを使いました。特にチャイナは本当にきらびやかな音で、とにかくクジラ夜の街の曲に合うんです。例えば「Memory」のイントロの”始まった感”は、A Customのチャイナでしか出せなかったと思いますし、同じく「Memory」全体の”宇宙感”みたいなものは、ハンマリング加工が施されたK Zildjianの19インチのダーククラッシュならではだなと思っています。

秦's レコーディング時ドラムセット全景

秦's レコーディング時ドラムセット全景

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――シンバルを選ぶ基準は、ライブとレコーディングでどのように変わるのでしょうか?

【秦】ライブだとシンバルを曲によって変えられないので、各シンバルが持つ役割をちゃんと理解する必要があると思っています。僕は、18インチのK Zildjianスイートクラッシュの甘い響きや音程の低さ、きらびやかさがクジラ夜の街に合っていると思うので、メインクラッシュにしているんですけど、それだけだとパワーが足りないから右手側のA Customクラッシュで補強していて。で、その2枚が「音の広がり」を担う分、21インチのK Customハイブリッドライドで粒立ちをよくして…と、役割ごとに考えています。

――山本さんが重宝した機材は?

【山本】今回一番使ったのは、BOSSのアナログディレイのDM2です。「欠落(Prelude)」「輝夜姫」「華金勇者」「ショコラ」「海馬を泳いで」「Memory」は基本的にかけっぱなしでした。僕は、これまで音源化された自分のギターについて「馴染んでいるけどもう少し密着感が欲しい」と思っていたんですが、DM2を導入したらそれが解消されたんです。あと、電源もいろいろなパターンを試した結果、DCからしっかり個別で取った方が馴染みがよくなるとわかったので、そこも発見でしたね。

山本's レコーディング機材・BOSS DM-2

山本's レコーディング機材・BOSS DM-2

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――使用したギターは?

【山本】今回は録った時期がバラバラなので、使ったギターもバラバラですね。今ライブのメインにしているBacchusのBJM、『春めく私小説』のレコーディング中に買ったIbanezのTalman、昔からずっと使い続けているGrecoのLPスタイル…。あと、GibsonのES-335でも録りました。

山本's レコーディング用ギター・Bacchus BJM

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自身最長の全国ツアー ファイナルは初のZepp Shinjuku公演へ

クジラ夜の街

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――最後に、来年1月からスタートする『全国ワンマンツアー2024「輝夜を捜して」』への意気込みをお願いします。

【佐伯】前回のツアーが全国6ヶ所で、今回が15ヶ所。だから、僕らにとっては挑戦です。まだワンマンをやったことがない場所にも行くので、不安はありつつも、全公演を全力でやれたらなと思っています。

【山本】僕たちは常に「前回を更新していきたい」という気持ちを強く持っていて、これまでのワンマンツアーでもいいライブができていたと思いつつ、今回は変化を加えるために新しいことに挑戦しようと話し合っています。まだ決まったわけではないんですが、いま出ているアイデアが採用されると、僕と佐伯が結構重要な役割を担うかもしれません(笑)。

【秦】僕は、いつもステージへ上がるときに「今日が最後かもしれない」と必ず言い聞かせていて。僕もメンバーもお客さんも、いつが最後になるかわからないじゃないですか。だけど、いつ最後が訪れるかわからないからこそ、また会える保証がないからこそ、ステージに立つときには人に恥じないように、一片の悔いも残さないようにやっているんですよ。で、そうやって考えると、やっぱりツアーって素晴らしいなと。自分たちの方からたくさんの人に会いに行けるなんて、絶対に当たり前のことじゃないので。だから感謝を持って、1ステージ1ステージ後悔のないように本気でやるだけだと思います。

【宮崎】自分は一言で言うならば、「楽しくない瞬間が1回もないツアーにしたい」と思っています。もう全力で楽しみたいですね。「ツラいとか悲しいと思わないツアーにしたい」ということではなくて、そういったネガティブな状態になったとしても「楽しくない」と思わないようにしたい。ツラさすら楽しみたいです。


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