次世代ガールズバンドプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」の最新作として放送中のアニメ『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』。初回放送では第1話から3話まで一挙放送されたことでも話題だが、放送を重ねるごとに注目度が高まってきている。本作が注目を集めている要因の一つとして考えられるのが、ガールズバンドを題材にしながらも、まったく“キラキラしていない”ところ。これまでは目標に向かって一致団結して頑張るというノリのものが定番だったが、近年では本作含め、その流れに変化が起きつつある。2000年代以降のバンドアニメ、特にガールズバンド作品にスポットを当てて比較しながら、『MyGO!!!!!』の魅力をひもといてみたい。
■京アニ『けいおん!』が決定づけたバンドアニメのフォーマット〜王道を発展させた『バンドリ!』の功績
現在は『バンドリ!』シリーズが牽引するバンドアニメシーンだが、古くはアニメ『NANA』『マクロス7』などがあり、あるいは『BECK』で追求されたリアルな楽器/演奏描写も忘れてはならない。しかし、2000年代以降にバンドアニメの転換点となり、後のトレンドに大きな影響を与えた作品はやはり京都アニメーション制作の『けいおん!』(2009年〜2010年)だろう。『けいおん!』の存在なくしてバンドアニメの系譜は語れない。この説にうなずいてくれる人は多いはずだ。
『けいおん!』は軽音楽部の女子高生たちのキラキラ楽しい日常に加え、画と音楽のズレを埋めた緻密な演奏シーンや、音楽市場にインパクトを与えられるクオリティのオリジナル曲、楽器メーカーとのコラボなど音楽面においても極めて“ガチ”な作り込みで、多くのファンを生んだ。第2期オープニング曲「GO!GO!MANIAC」がアニメのキャラクター名義としてオリコン史上初のシングル首位獲得や、(イベントの企画としてではあるが)声優が楽器を手にして作中のオリジナル曲をライブする機会など、後のバンドアニメの在り方に先鞭をつけたと言える作品だろう。
「キラキラした日常」「楽器/演奏(パフォーマンス)の緻密な描写」「作り込まれたオリジナル楽曲」「リアルでの音楽イベント」――2010年代の音楽アニメのフォーマットは『けいおん!』で融合されたこれらの要素を土台に発展し、数多くのメディアミックスプロジェクトが台頭した。
2010年代後半から一大ブームを作り出した『バンドリ!』シリーズも、個性的なガールズバンドのメンバーが絆を深めつつ、夢に向かって奮闘する姿が爽やかでまぶしく、まさに王道的なバンドアニメの一面を備えた作風を送り出してきた。また、プロの歌手をキャラクターの声優に起用するという試みも行い、バンドアニメのさらなる可能性を広げたシリーズとも言える。
また、楽器メーカーとの協力関係も前面に押し出し、“本物感”を演出する手法も洗練され続けている。さまざまなメーカーとのコラボモデルを発売するなど、生粋の音楽好きにも訴求できる演出は『バンドリ!』が進化させてきた戦略の一つだ。
同シリーズではそうした進化の過程でCG技術を積極的に採用し、演奏シーンの実在感を高めることにも成功している。アニメ制作を手がけるサンジゲンの技術力の高さが前提なのはもちろん、モーションキャプチャーのメリットを最大限に生かして表現したリアルな演奏シーンには多くのファンがうならされたはず。全編がライブシーンで構成された『BanG Dream! FILM LIVE』シリーズでは、3DCGとカメラワークが冴え渡り、演奏シーンを見ていると音楽フェスに参戦しているかのような熱気を感じられるほどだ。
さらに、キャストが声優としてキャラクターを演じるだけではなく、“現実”でも積極的にバンドライブ活動を行い、自ら楽器演奏までこなすことで一層ファンの歓心を獲得することに成功した点も画期的だ。これまでもアイドルグループが登場する作品発のライブなども他作品で行われてきていたものの、『バンドリ!』が圧巻なのは継続的にライブ活動を行っていることではないだろうか。
『バンドリ!』から派生したバンド単体はもちろん、シリーズ名を冠した「BanG Dream! 12th☆LIVE」などが定期的に開催され、プロジェクトを支える柱として音楽への注力ぶりがうかがえる。その陰にはキャストがライブに向けて常にレッスンに励んでいる姿が想像に難くなく、キャスト、スタッフ、運営が一丸となっているからこそドーム規模でのライブも実現し、音楽×アニメの融合プロジェクトとして革新的と言えるのだろう。
■10代の「自意識」「こじらせ」」…『MyGO!!!!!』が示すフォーマットへの挑戦状
ストーリー面でも“キラキラした青春”“仲間と夢を追う”など王道の描写で勝負してきたのが、これまでの『バンドリ!』シリーズ。しかし、そんなポジティブなアオハルとは全く違うストーリーを展開しているのが今作『MyGO!!!!!』だ。
自意識をこじらせた若者はどの時代にも少なからずいるが、バンドリ!プロジェクト総合プロデューサー根本雄貴氏も今作について「キラキラドキドキしていない」と明言している通り、『MyGO!!!!!』のキャラクターたちはみな、どこか窮屈さや不自由さを抱えている。そしてキラキラしていないこと自体にさいなまれる心境をはじめ、繊細すぎる感受性を描くことで、“鬱屈とした青春”感を漂わせているのが特徴的だ。バンドアニメとしてもシリーズとしても、これまでの「様式美」を打ち破り、異彩を放っている。
『MyGO!!!!!』のようなテイストの作品が誕生した背景には、『古見さんは、コミュ症です。』や『ぼっち・ざ・ろっく』のように、いわゆる陰キャやコミュ障、ぼっちなど他人とのコミュニケーションが苦痛、もしくはできないキャラクターを主人公にした作品が視聴者に受け入れられるようになった土壌が育ってきたことは疑いようがない。
音楽やバンドに対するアプローチの仕方に現代らしさを取り入れている点は共通するものの、『ぼっち・ざ・ろっく!』がライブハウスをメインにストーリーを展開させていくのに対して、『MyGO!!!!!』は特定のグループ内で巻き起こる人間関係の不協和音にもスポットを当てていて、深掘りの観点や方向性に違いがある。
これまでの『バンドリ!』シリーズにおいても、メンバー同士の思いのぶつかり合いといったギスギス感は描かれていたものの、あくまでバンドとして同じ思いを共有したり目指す夢が同じだったりが前提。ところが『MyGO!!!!!』は、バンド仲間ながら心の奥底では考えていることも向かっている先も異なる人間模様を描いている。現実世界に近いような、バンドの舞台裏とでも言うべきギスギスした関係性を軸にしたストーリーはバンドアニメとしてはかなり新鮮で、興味深い。
■湿度高めの人間ドラマは不思議なほど共感できる(※以下、ストーリーのネタバレあり※)
第1〜3話までは、後にバンド・MyGO!!!!を組むことになる高松燈(ともり)、千早愛音(あのん)、長崎そよ、椎名立希(たき)の出会い、そして燈の過去が描かれるのだが、その不穏さの片鱗は第1話の冒頭からすでにうかがえる。
燈、そよ、立希、若葉睦(わかば・むつみ)、豊川祥子(とがわ・さきこ)で中学時代に活動していた5人組バンド・CRYCHIC(クライシック)が解散する場面から物語はスタート。バンドを始めた祥子が突如バンドをやめると申し出て、一人存続させようとするそよと対照的に、立希が「迷惑をかけないでくれる?」とメンバーから責め立てると、祥子も「人のせいにしないで」と反撃する。
開幕早々にしてギスギス感が満載なシーンで、この作品の方向性を視聴者に提示し、湿度の高さと不穏さがどこまでもあふれ出るような空気感を漂わせる。この冒頭のやりとりだけを見ても、『バンドリ!』シリーズ史上でも最大級の感情の衝突ぶりが印象的な物語になることが想像できる。
しこりを残し解散したCRYCHICの燈とそよと立希、そして燈と同じ高校に通う愛音の出会いを中心に、以降は描かれていく。そもそも愛音とそよがバンドを組みたいと考える思惑はまったく異なっていて、承認欲求強めの愛音は「海外留学の失敗を取り返して目立ちたい」、一方そよは「CRYCHICのメンバーを再び呼び戻したい」という魂胆。バラバラの志が打算的な利害関係の一致で噛み合い、バンドは走り出す。CRYCHIC解散の傷が癒えない燈が、何も知らない愛音の誘いに「一生、バンドしてくれる?」と“激重”な一言を放ってしまうシーンなど、ちぐはぐな人間関係は妙なリアリティーをもって物語の魅力そのものになっていくのだ。
これまでのキラキラした青春音楽アニメの定石から敢えてはずれつつ、なぜか共感と納得の感情を覚えてしまう不思議な力が働くストーリー展開。「SNSやweb上で自己と他者を比較しやすくなった世の中だからこそ、苦しみや、人間性の生々しさを描くことで共感性の高い作品にできると考えました」(バンドリ!プロジェクト総合プロデューサー 根本氏)という制作陣の言葉に狙いの一端が現れていると言えるだろう。
■迷子のキャラクターたちが行き着く先は…?
第4話以降は、そんな彼女たちがバンド・MyGO!!!!!として新たな物語に踏み出すはずなのだが…。誰よりも過去に執着し愛音を含む周りの人間を利用してCRYCHICの再結成に向けて動くそよを中心に、MyGO!!!!の矛盾は膨れていく。
第7話はMyGO!!!!!待望の初ライブ回となるのだが、CRYCHICにとっては大切な思い出の楽曲『春日影(はるひかげ)』を演奏したことから、そよの感情が大爆発。「なんで『春日影』やったの!?」の一言は心の奥底まで突き刺さる。
過去への思いを捨てきれないそよを始め、どこに向かえばいいのかわからず迷子のままであるメンバーたち。しかし、少しずつだが変化するキャラクターも登場し、今後は彼女たちの転換や変革に思いをはせる展開に期待が持てそう。今後の『MyGO!!!!!』の描きたいことについて、ブシロード バンドリ!アニメ制作担当の日下亜美氏からは以下のような回答があった。
「『人間のきれいではない汚い心』に力を入れていきたいです。かわいいだけじゃない、きれいなだけじゃない。よりキャラクターが “生きている”ことを実感できる作品になっていくのではと思います。特にそよに注目いただけますとうれしいです。いつも優しく穏やかなそよが怒りの感情を露わにするほどの思いと、その行く末を見守っていただけますと幸いです」
『けいおん!』を起点とし発展を続けてきて音楽アニメ、バンドアニメの偉大なる遺伝子を受け継ぎつつ、キャラクターの性格や心情、人間関係の濃度、ストーリーにおけるドラマ性の違いなど、多くの面で一線を画す『MyGO!!!!!』。「令和ならでは」の日常系やバンドアニメの「新たなスタンダード」とも呼ぶべき路線を提言したと言えるのでは。クライマックスに向けて音楽描写を楽しみつつ、より一層濃厚かつダイナミックな人間ドラマの楽しませてくれそうだ。
(文:遠藤政樹)
■京アニ『けいおん!』が決定づけたバンドアニメのフォーマット〜王道を発展させた『バンドリ!』の功績
現在は『バンドリ!』シリーズが牽引するバンドアニメシーンだが、古くはアニメ『NANA』『マクロス7』などがあり、あるいは『BECK』で追求されたリアルな楽器/演奏描写も忘れてはならない。しかし、2000年代以降にバンドアニメの転換点となり、後のトレンドに大きな影響を与えた作品はやはり京都アニメーション制作の『けいおん!』(2009年〜2010年)だろう。『けいおん!』の存在なくしてバンドアニメの系譜は語れない。この説にうなずいてくれる人は多いはずだ。
『けいおん!』は軽音楽部の女子高生たちのキラキラ楽しい日常に加え、画と音楽のズレを埋めた緻密な演奏シーンや、音楽市場にインパクトを与えられるクオリティのオリジナル曲、楽器メーカーとのコラボなど音楽面においても極めて“ガチ”な作り込みで、多くのファンを生んだ。第2期オープニング曲「GO!GO!MANIAC」がアニメのキャラクター名義としてオリコン史上初のシングル首位獲得や、(イベントの企画としてではあるが)声優が楽器を手にして作中のオリジナル曲をライブする機会など、後のバンドアニメの在り方に先鞭をつけたと言える作品だろう。
「キラキラした日常」「楽器/演奏(パフォーマンス)の緻密な描写」「作り込まれたオリジナル楽曲」「リアルでの音楽イベント」――2010年代の音楽アニメのフォーマットは『けいおん!』で融合されたこれらの要素を土台に発展し、数多くのメディアミックスプロジェクトが台頭した。
また、楽器メーカーとの協力関係も前面に押し出し、“本物感”を演出する手法も洗練され続けている。さまざまなメーカーとのコラボモデルを発売するなど、生粋の音楽好きにも訴求できる演出は『バンドリ!』が進化させてきた戦略の一つだ。
同シリーズではそうした進化の過程でCG技術を積極的に採用し、演奏シーンの実在感を高めることにも成功している。アニメ制作を手がけるサンジゲンの技術力の高さが前提なのはもちろん、モーションキャプチャーのメリットを最大限に生かして表現したリアルな演奏シーンには多くのファンがうならされたはず。全編がライブシーンで構成された『BanG Dream! FILM LIVE』シリーズでは、3DCGとカメラワークが冴え渡り、演奏シーンを見ていると音楽フェスに参戦しているかのような熱気を感じられるほどだ。
さらに、キャストが声優としてキャラクターを演じるだけではなく、“現実”でも積極的にバンドライブ活動を行い、自ら楽器演奏までこなすことで一層ファンの歓心を獲得することに成功した点も画期的だ。これまでもアイドルグループが登場する作品発のライブなども他作品で行われてきていたものの、『バンドリ!』が圧巻なのは継続的にライブ活動を行っていることではないだろうか。
『バンドリ!』から派生したバンド単体はもちろん、シリーズ名を冠した「BanG Dream! 12th☆LIVE」などが定期的に開催され、プロジェクトを支える柱として音楽への注力ぶりがうかがえる。その陰にはキャストがライブに向けて常にレッスンに励んでいる姿が想像に難くなく、キャスト、スタッフ、運営が一丸となっているからこそドーム規模でのライブも実現し、音楽×アニメの融合プロジェクトとして革新的と言えるのだろう。
■10代の「自意識」「こじらせ」」…『MyGO!!!!!』が示すフォーマットへの挑戦状
ストーリー面でも“キラキラした青春”“仲間と夢を追う”など王道の描写で勝負してきたのが、これまでの『バンドリ!』シリーズ。しかし、そんなポジティブなアオハルとは全く違うストーリーを展開しているのが今作『MyGO!!!!!』だ。
自意識をこじらせた若者はどの時代にも少なからずいるが、バンドリ!プロジェクト総合プロデューサー根本雄貴氏も今作について「キラキラドキドキしていない」と明言している通り、『MyGO!!!!!』のキャラクターたちはみな、どこか窮屈さや不自由さを抱えている。そしてキラキラしていないこと自体にさいなまれる心境をはじめ、繊細すぎる感受性を描くことで、“鬱屈とした青春”感を漂わせているのが特徴的だ。バンドアニメとしてもシリーズとしても、これまでの「様式美」を打ち破り、異彩を放っている。
『MyGO!!!!!』のようなテイストの作品が誕生した背景には、『古見さんは、コミュ症です。』や『ぼっち・ざ・ろっく』のように、いわゆる陰キャやコミュ障、ぼっちなど他人とのコミュニケーションが苦痛、もしくはできないキャラクターを主人公にした作品が視聴者に受け入れられるようになった土壌が育ってきたことは疑いようがない。
音楽やバンドに対するアプローチの仕方に現代らしさを取り入れている点は共通するものの、『ぼっち・ざ・ろっく!』がライブハウスをメインにストーリーを展開させていくのに対して、『MyGO!!!!!』は特定のグループ内で巻き起こる人間関係の不協和音にもスポットを当てていて、深掘りの観点や方向性に違いがある。
これまでの『バンドリ!』シリーズにおいても、メンバー同士の思いのぶつかり合いといったギスギス感は描かれていたものの、あくまでバンドとして同じ思いを共有したり目指す夢が同じだったりが前提。ところが『MyGO!!!!!』は、バンド仲間ながら心の奥底では考えていることも向かっている先も異なる人間模様を描いている。現実世界に近いような、バンドの舞台裏とでも言うべきギスギスした関係性を軸にしたストーリーはバンドアニメとしてはかなり新鮮で、興味深い。
■湿度高めの人間ドラマは不思議なほど共感できる(※以下、ストーリーのネタバレあり※)
第1〜3話までは、後にバンド・MyGO!!!!を組むことになる高松燈(ともり)、千早愛音(あのん)、長崎そよ、椎名立希(たき)の出会い、そして燈の過去が描かれるのだが、その不穏さの片鱗は第1話の冒頭からすでにうかがえる。
燈、そよ、立希、若葉睦(わかば・むつみ)、豊川祥子(とがわ・さきこ)で中学時代に活動していた5人組バンド・CRYCHIC(クライシック)が解散する場面から物語はスタート。バンドを始めた祥子が突如バンドをやめると申し出て、一人存続させようとするそよと対照的に、立希が「迷惑をかけないでくれる?」とメンバーから責め立てると、祥子も「人のせいにしないで」と反撃する。
開幕早々にしてギスギス感が満載なシーンで、この作品の方向性を視聴者に提示し、湿度の高さと不穏さがどこまでもあふれ出るような空気感を漂わせる。この冒頭のやりとりだけを見ても、『バンドリ!』シリーズ史上でも最大級の感情の衝突ぶりが印象的な物語になることが想像できる。
しこりを残し解散したCRYCHICの燈とそよと立希、そして燈と同じ高校に通う愛音の出会いを中心に、以降は描かれていく。そもそも愛音とそよがバンドを組みたいと考える思惑はまったく異なっていて、承認欲求強めの愛音は「海外留学の失敗を取り返して目立ちたい」、一方そよは「CRYCHICのメンバーを再び呼び戻したい」という魂胆。バラバラの志が打算的な利害関係の一致で噛み合い、バンドは走り出す。CRYCHIC解散の傷が癒えない燈が、何も知らない愛音の誘いに「一生、バンドしてくれる?」と“激重”な一言を放ってしまうシーンなど、ちぐはぐな人間関係は妙なリアリティーをもって物語の魅力そのものになっていくのだ。
これまでのキラキラした青春音楽アニメの定石から敢えてはずれつつ、なぜか共感と納得の感情を覚えてしまう不思議な力が働くストーリー展開。「SNSやweb上で自己と他者を比較しやすくなった世の中だからこそ、苦しみや、人間性の生々しさを描くことで共感性の高い作品にできると考えました」(バンドリ!プロジェクト総合プロデューサー 根本氏)という制作陣の言葉に狙いの一端が現れていると言えるだろう。
■迷子のキャラクターたちが行き着く先は…?
第4話以降は、そんな彼女たちがバンド・MyGO!!!!!として新たな物語に踏み出すはずなのだが…。誰よりも過去に執着し愛音を含む周りの人間を利用してCRYCHICの再結成に向けて動くそよを中心に、MyGO!!!!の矛盾は膨れていく。
第7話はMyGO!!!!!待望の初ライブ回となるのだが、CRYCHICにとっては大切な思い出の楽曲『春日影(はるひかげ)』を演奏したことから、そよの感情が大爆発。「なんで『春日影』やったの!?」の一言は心の奥底まで突き刺さる。
過去への思いを捨てきれないそよを始め、どこに向かえばいいのかわからず迷子のままであるメンバーたち。しかし、少しずつだが変化するキャラクターも登場し、今後は彼女たちの転換や変革に思いをはせる展開に期待が持てそう。今後の『MyGO!!!!!』の描きたいことについて、ブシロード バンドリ!アニメ制作担当の日下亜美氏からは以下のような回答があった。
「『人間のきれいではない汚い心』に力を入れていきたいです。かわいいだけじゃない、きれいなだけじゃない。よりキャラクターが “生きている”ことを実感できる作品になっていくのではと思います。特にそよに注目いただけますとうれしいです。いつも優しく穏やかなそよが怒りの感情を露わにするほどの思いと、その行く末を見守っていただけますと幸いです」
『けいおん!』を起点とし発展を続けてきて音楽アニメ、バンドアニメの偉大なる遺伝子を受け継ぎつつ、キャラクターの性格や心情、人間関係の濃度、ストーリーにおけるドラマ性の違いなど、多くの面で一線を画す『MyGO!!!!!』。「令和ならでは」の日常系やバンドアニメの「新たなスタンダード」とも呼ぶべき路線を提言したと言えるのでは。クライマックスに向けて音楽描写を楽しみつつ、より一層濃厚かつダイナミックな人間ドラマの楽しませてくれそうだ。
(文:遠藤政樹)
2023/08/10