4人組ロックバンド・クジラ夜の街が12日、配信シングル「マスカレードパレード」をリリースした。この楽曲はテレビ東京アニメ『闇芝居 十一期』のエンディングテーマ曲であり、バンドにとって初のアニメタイアップ楽曲として話題になっている。
ORICON NEWSはそんな注目作について話を聞くべく、宮崎一晴(Vo&Gt)、山本薫(Gt)、佐伯隼也(Ba)、秦愛翔(Dr)へインタビューを行った。本作の制作でこだわったポイントはもちろん、全国6ヶ所のメジャー1stツアーで得た手応え、ツアーファイナルで制作中であることが明かされた次なるアルバムの内容なども含め、本インタビューではバンドの“現在地”を浮き彫りにしていく。
■メジャー初の全国ツアー完走 最終公演で披露された新曲
――メジャー1stツアー『クジラ夜の街ワンマンツアー“6歳”』の感想は?
【山本】廻った6ヶ所ともボルテージが高くて、「こんなに待ってくれていたんだ」と驚きました。
【佐伯】広島と福岡でのワンマンは初めてでしたが、すごく盛り上がってくれて。
【秦】素直に「バンドって楽しい」と思えたツアーでした。僕らは音楽が好きだから仕事にしているわけですけど、その自分たちの好きなことが誰かの幸せに直結していることを感じられたツアーになったと思います。
【宮崎】どんどん自分たちが鳴らす音に磨きがかかっているなという感覚があって、密度の濃いツアーでした。
――ツアーファイナルの恵比寿LIQUIDROOM公演でも披露された新曲「マスカレードパレード」は、初のアニメタイアップ曲です。
【宮崎】もともとアニメの制作スタッフの方が「クジラ夜の街のライブが好きだ」と言ってくださっていて、今回オファーしていただけたんです。そこがまずうれしかったですね。『闇芝居』はダークホラーということで、おどろおどろしい楽曲を目指して書き下ろしました。
――アニメの制作サイドからリクエストは?
【宮崎】「仮面」というキーワードをいただき、そこから「和洋折衷」をテーマにして曲を作っていきました。スネアロールが出すマーチ感などは洋風ですが、歌詞やサビの裏の音階などは和風のものになっていて。そういった“不詳感”を意識したんです。
■アレンジのキーワードにもなった「仮面」 4人それぞれのアプローチとは?
――セッションでアレンジを練っていくという手法は、今回も変わらず?
【宮崎】僕がリズム進行や構成について具体的に提示したという点で、普段とはちょっと違ったかもしれませんが、最終的にはいつも通りセッションで練っていきました。
【秦】リズム面では、サビ直前でシャッフルビートになるんですけど、そこが難しいなと思いました。小学生みたいな感想ですけど…(笑)。ただ、あまり日本のロックシーンで見ないような展開になっているので、ぜひ注目してほしいですね。
【佐伯】僕は同じコード進行の中でベースをどう変化させていこうかと考えました。結果、全体的に動きが多いフレーズになりましたね。特に間奏はボサノバ風の動き方になっていて、個人的にも気に入っています。
――ギターの面ではどんな解釈を加えていったのでしょうか?
【山本】不気味な雰囲気と歌詞に注目しました。Aメロでは、モジュレーションとリバースディレイをかけつつ、フィードバックを長めにして重ねているのですが、そうすることで「仮面を何枚も被っている」というところを表現していて。リズムの変わり目でパッと別のディレイに切り替えるのも、「表情の変化」という観点で採り入れています。あと、間奏でエッジの効いたファズで強めのフレーズを弾いていて、これも仮面の奥にある“核”というか、「表情を隠しているけど自分を出していきたい」という心情を表現しているんです。
――歌詞を読み解きながらアプローチしていったんですね。作詞者である宮崎さんに意見を求めた場面もありましたか?
【山本】いえ、特に聞いていません。歌詞の意味を深く知るというよりも、自分が感じた雰囲気や印象を広げていった方がマッチすると思ったんです。今回は、今までで一番歌詞とリンクした音作りやフレージングができたと思っています。
――冒頭では、ギターだけでなくボーカルにもリバースディレイがかけられていて、楽曲の世界観や音像を作っています。
【宮崎】ああいったAメロの雰囲気は、曲を書いているときから浮かんでいました。ドライな音像にしたくないなと思いつつ、何をやっているのか分からないようなモヤモヤっとした雰囲気にもしたくない…と。
――Aメロではベースの歪みも深くなっていて、異様な雰囲気を演出しています。
【佐伯】あそこまで深く歪ませたのは、「ここにいるよ」(2022年11月発売『夢を叶える旅』収録)以来でしょうか。「ここにいるよ」ではラインで録って歪みを後がけしましたが、今回はBOSSのODB-3(オーバードライブ)を踏みながら録りました。
■こだわりが詰め込まれたフレーズの数々…メンバー自ら聴きどころを紹介
――楽器パートごとに聴きどころを挙げるなら?
【山本】ギターの聴きどころは、2番のAメロです。歌の裏にしてはかなり細かいフレーズなんですけど、僕は「歌メロを立たせるために引き算をする」という考えではなくて、「歌メロをなぞることで歌を前に出す」というフレーズが弾きたいんですね。
――クランチ気味のトーンで弾いている上昇下降フレーズですね。
【山本】はい。このフレーズでは僕のそういった志向が顕著に出ていると思います。コピーしてもらえたら技術的にも上達すると思いますが…かなり難しいです(笑)。
【佐伯】ベースは、最後の<Masquerade Parade>の連呼から終わりまでをコピーしてほしいです。展開としては同じコード進行が3回続く中で、3回ともまったく違うフレーズを弾いていて。その流れが気に入っているので、ぜひ挑戦してほしいですね。
――<Masquerade Parade>というコーラス部分はかなり特殊な符割りになっていますので、挑戦の難易度も上がりますね?
【佐伯】最初からコーラスパートを歌いながら弾くのは…正直言って無理だと思います(笑)。まずはベースのコピーにチャレンジしてみてください。僕自身もかなり練習したので、コーラスまで歌えるようになったら本当にすごいです。
【秦】ドラムで気に入っているのは、1サビの展開の仕方です。行進曲みたいなスネアロールから始まり、<“やあまた会ったね”>でハーフの8分音符に落として、<ところであんたは現在どちら様>でいきなり16分音符のスネアのアクセント移動フレーズにいき、<Masquerade Parade>のマスロックっぽいセクションに突入するという。最初は優等生みたいな雰囲気を出しているのに、どんどん狂気的になっていくんです(笑)。
――歌唱面で意識したことは?
【宮崎】「仮面を被る」という歌なので、自分でも大げさなんじゃないかって思うくらい、セクションごとに声色を変えていきました。カラオケやバンドでコピーをしてくれる場合、Bメロ最後の<世を忍ぶ仮の姿で夜へ踊り出せ>で調子が一気に変わるので、すごく難しい部分になると思います。自分の閉じ込めていた気持ちを、徐々にではなく一気に開放して押し出す。そんな歌い方にこだわって録りました。
――前回のインタビューでは押韻へのこだわりも明かしてくれましたが、今回は?
【宮崎】今回も韻は隠したいと思いつつ、ただ隠すだけだとつまらないじゃないですか。なので、Bメロの部分とかは、誰もが気づけるような踏み方にしています。その一方で<混じり気のないリアルより>からのセクションでは、“i・a・u”という母音踏みを5個くらいこっそりと入れていて。こういうやり方も「仮面の中に仮面を被っている」という曲のテーマに沿っていますね。
■アニメ作品と曲への“解釈”を具現化させた使用機材
――レコーディングで特に重宝した機材や、演奏する際のセッティングでポイントになる機材は?
【山本】間奏で踏んでいるファズですね。(Z.VEXの)Fuzz Factoryというファズなんですが、COMPというツマミをMAXまで上げると、弾いたときだけ音が鳴るようになるんです。ファズってわりと踏んだらずっとノイズが出続けるんですけど、このセッティングにすると鳴らした瞬間だけバキバキの音が出せて、そこがポイントになると思います。
――1曲の中で歪みのキャラクターも多彩ですよね。
【山本】よく使うのはPROCOのRAT(ディストーション)です。ライブでは歪みのレベルを1時くらい、ボリュームを3時くらいまで上げていますが、レコーディングでは抜けの良さを重視して抑えています。そこにLine 6のM9に入っているモジュレーションエフェクトをかけるのが、「マスカレードパレード」のベーシックになります。
【佐伯】「マスカレードパレード」ではオーバードライブをずっと踏んでいるので、BOSSのODB-3は必須です。歪みを深めに設定しているんですけど、ベースラインをしっかり聴かせたいので、マルチ(ZOOM製MS-60B)に入っているコンプレッサーで厚みを出しつつ、音を引き締めるようにしています。
【秦】ドラムは、真似しやすいところで言うとキックペダルのビーターですね。Low Boy Custom BeatersのLightweight Leather Daddyという、木製ビーターにレザーのヘッドを組み合わせたモデルを使っていて。本当にいい音が鳴るんですね。「マスカレードパレード」のレコーディングで初めて使って、そこで惚れ込んでからライブも採用するようになりました。踏み心地が軽いのにアタック感と低音を両立させてくれるのでオススメです。
【宮崎】僕のギターに関してはかなりニュートラルです。この曲では3人の楽器の音を最大限に活かすべきだと思ったんですね。なので、レコーディングでも特殊なことはやっていませんし、ライブでも僕はハンドマイクで歌に徹しています。
【山本】僕、一晴のレコーディング風景で面白いなと思ったところがあるんですよ。アンプのマイキングなんですけど、マイクをスピーカーからすごく離して録っていたんですね。
――しかもフロントパネルを外して…?
【宮崎】ライブでも使っているFenderのAcoustasonic Juniorなんですけど、クリーンの音がすごくキレイに出せるアンプなんです。2Aメロ冒頭の音がまさにそれで、僕の中の理想にかなり近い音になっています。録るときは、基本的にパネルを外すようにしていますね。よりダイレクトにアンプの特性を活かせるようになりますし、レンジも拡がるのでミックスの幅が拡がるんです。ライブだとその開けた音がちょっと下品に聴こえてしまう場面もあるので、パネルをつけて抑えるようにしています。
■全国ツアー、アニメタイアップ…さまざまな“挑戦”を経て向かうアルバム制作
――前回のツアーファイナルでは「アルバムを制作中」との報告もありましたが、現在の進捗状況は?
【宮崎】今までに感じたことのない手応えを感じていますね。クジラ夜の街史上、過去最高傑作になることが確定しているなと。加えて、楽曲を作る上での姿勢も変わってきていて。今まではライブ志向で、曲作りもライブでお客さんに届けることを前提にしていた結果、シンプルで単一的なアレンジに落ち着いくことが多かったんですよ。でも最近は、曲もパフォーマンスももう少し立体的にしたいと思っているんです。ライブだけでなく音源としても面白いもの。音源としても、聴く時間や場所、環境などさまざまなものを加味しながら作っている状況です。
【山本】まだ一晴のデモを聴いた段階でアレンジもこれからなんですが、メロと詞がダントツでいいです。マジで鳥肌が立つくらいでした。
【佐伯】「マスカレードパレード」からドロドロしたアルバムになるんじゃないかって予想する人も多いかと思うんですけど、今作っている曲はメロディーがキャッチーだし、詞もストレートなんですよ。初見の人でもノリやすい曲だと感じています。
【秦】「マスカレードパレード」を録ったのが今年の3月だったんですけど、個人的にそれからの4ヶ月間が、今までで一番ドラムに向き合った期間だったんです。自分でもスキルの上達や引き出しの増加を感じていますし、次のアルバムは本気で「日本で一番ドラムがカッコいい作品にしたい」と思っています。ドラマーじゃなくても腰抜かすドラムを叩きます。
【宮崎】現時点でできている楽曲は、決して運よくできたものではないと感じていて。今まで出してきた曲たちはすべてカッコいいと自信を持っていますが、それを超えていく曲を選んでいます。僕の中でのオールスター。捨て曲一切なしのアルバムを、早くみなさんに届けたいなと思っています。
ORICON NEWSはそんな注目作について話を聞くべく、宮崎一晴(Vo&Gt)、山本薫(Gt)、佐伯隼也(Ba)、秦愛翔(Dr)へインタビューを行った。本作の制作でこだわったポイントはもちろん、全国6ヶ所のメジャー1stツアーで得た手応え、ツアーファイナルで制作中であることが明かされた次なるアルバムの内容なども含め、本インタビューではバンドの“現在地”を浮き彫りにしていく。
――メジャー1stツアー『クジラ夜の街ワンマンツアー“6歳”』の感想は?
【山本】廻った6ヶ所ともボルテージが高くて、「こんなに待ってくれていたんだ」と驚きました。
【佐伯】広島と福岡でのワンマンは初めてでしたが、すごく盛り上がってくれて。
【秦】素直に「バンドって楽しい」と思えたツアーでした。僕らは音楽が好きだから仕事にしているわけですけど、その自分たちの好きなことが誰かの幸せに直結していることを感じられたツアーになったと思います。
【宮崎】どんどん自分たちが鳴らす音に磨きがかかっているなという感覚があって、密度の濃いツアーでした。
――ツアーファイナルの恵比寿LIQUIDROOM公演でも披露された新曲「マスカレードパレード」は、初のアニメタイアップ曲です。
【宮崎】もともとアニメの制作スタッフの方が「クジラ夜の街のライブが好きだ」と言ってくださっていて、今回オファーしていただけたんです。そこがまずうれしかったですね。『闇芝居』はダークホラーということで、おどろおどろしい楽曲を目指して書き下ろしました。
――アニメの制作サイドからリクエストは?
【宮崎】「仮面」というキーワードをいただき、そこから「和洋折衷」をテーマにして曲を作っていきました。スネアロールが出すマーチ感などは洋風ですが、歌詞やサビの裏の音階などは和風のものになっていて。そういった“不詳感”を意識したんです。
■アレンジのキーワードにもなった「仮面」 4人それぞれのアプローチとは?
――セッションでアレンジを練っていくという手法は、今回も変わらず?
【宮崎】僕がリズム進行や構成について具体的に提示したという点で、普段とはちょっと違ったかもしれませんが、最終的にはいつも通りセッションで練っていきました。
【秦】リズム面では、サビ直前でシャッフルビートになるんですけど、そこが難しいなと思いました。小学生みたいな感想ですけど…(笑)。ただ、あまり日本のロックシーンで見ないような展開になっているので、ぜひ注目してほしいですね。
【佐伯】僕は同じコード進行の中でベースをどう変化させていこうかと考えました。結果、全体的に動きが多いフレーズになりましたね。特に間奏はボサノバ風の動き方になっていて、個人的にも気に入っています。
――ギターの面ではどんな解釈を加えていったのでしょうか?
【山本】不気味な雰囲気と歌詞に注目しました。Aメロでは、モジュレーションとリバースディレイをかけつつ、フィードバックを長めにして重ねているのですが、そうすることで「仮面を何枚も被っている」というところを表現していて。リズムの変わり目でパッと別のディレイに切り替えるのも、「表情の変化」という観点で採り入れています。あと、間奏でエッジの効いたファズで強めのフレーズを弾いていて、これも仮面の奥にある“核”というか、「表情を隠しているけど自分を出していきたい」という心情を表現しているんです。
――歌詞を読み解きながらアプローチしていったんですね。作詞者である宮崎さんに意見を求めた場面もありましたか?
【山本】いえ、特に聞いていません。歌詞の意味を深く知るというよりも、自分が感じた雰囲気や印象を広げていった方がマッチすると思ったんです。今回は、今までで一番歌詞とリンクした音作りやフレージングができたと思っています。
――冒頭では、ギターだけでなくボーカルにもリバースディレイがかけられていて、楽曲の世界観や音像を作っています。
【宮崎】ああいったAメロの雰囲気は、曲を書いているときから浮かんでいました。ドライな音像にしたくないなと思いつつ、何をやっているのか分からないようなモヤモヤっとした雰囲気にもしたくない…と。
――Aメロではベースの歪みも深くなっていて、異様な雰囲気を演出しています。
【佐伯】あそこまで深く歪ませたのは、「ここにいるよ」(2022年11月発売『夢を叶える旅』収録)以来でしょうか。「ここにいるよ」ではラインで録って歪みを後がけしましたが、今回はBOSSのODB-3(オーバードライブ)を踏みながら録りました。
■こだわりが詰め込まれたフレーズの数々…メンバー自ら聴きどころを紹介
――楽器パートごとに聴きどころを挙げるなら?
【山本】ギターの聴きどころは、2番のAメロです。歌の裏にしてはかなり細かいフレーズなんですけど、僕は「歌メロを立たせるために引き算をする」という考えではなくて、「歌メロをなぞることで歌を前に出す」というフレーズが弾きたいんですね。
――クランチ気味のトーンで弾いている上昇下降フレーズですね。
【山本】はい。このフレーズでは僕のそういった志向が顕著に出ていると思います。コピーしてもらえたら技術的にも上達すると思いますが…かなり難しいです(笑)。
【佐伯】ベースは、最後の<Masquerade Parade>の連呼から終わりまでをコピーしてほしいです。展開としては同じコード進行が3回続く中で、3回ともまったく違うフレーズを弾いていて。その流れが気に入っているので、ぜひ挑戦してほしいですね。
――<Masquerade Parade>というコーラス部分はかなり特殊な符割りになっていますので、挑戦の難易度も上がりますね?
【佐伯】最初からコーラスパートを歌いながら弾くのは…正直言って無理だと思います(笑)。まずはベースのコピーにチャレンジしてみてください。僕自身もかなり練習したので、コーラスまで歌えるようになったら本当にすごいです。
【秦】ドラムで気に入っているのは、1サビの展開の仕方です。行進曲みたいなスネアロールから始まり、<“やあまた会ったね”>でハーフの8分音符に落として、<ところであんたは現在どちら様>でいきなり16分音符のスネアのアクセント移動フレーズにいき、<Masquerade Parade>のマスロックっぽいセクションに突入するという。最初は優等生みたいな雰囲気を出しているのに、どんどん狂気的になっていくんです(笑)。
――歌唱面で意識したことは?
【宮崎】「仮面を被る」という歌なので、自分でも大げさなんじゃないかって思うくらい、セクションごとに声色を変えていきました。カラオケやバンドでコピーをしてくれる場合、Bメロ最後の<世を忍ぶ仮の姿で夜へ踊り出せ>で調子が一気に変わるので、すごく難しい部分になると思います。自分の閉じ込めていた気持ちを、徐々にではなく一気に開放して押し出す。そんな歌い方にこだわって録りました。
――前回のインタビューでは押韻へのこだわりも明かしてくれましたが、今回は?
【宮崎】今回も韻は隠したいと思いつつ、ただ隠すだけだとつまらないじゃないですか。なので、Bメロの部分とかは、誰もが気づけるような踏み方にしています。その一方で<混じり気のないリアルより>からのセクションでは、“i・a・u”という母音踏みを5個くらいこっそりと入れていて。こういうやり方も「仮面の中に仮面を被っている」という曲のテーマに沿っていますね。
■アニメ作品と曲への“解釈”を具現化させた使用機材
――レコーディングで特に重宝した機材や、演奏する際のセッティングでポイントになる機材は?
【山本】間奏で踏んでいるファズですね。(Z.VEXの)Fuzz Factoryというファズなんですが、COMPというツマミをMAXまで上げると、弾いたときだけ音が鳴るようになるんです。ファズってわりと踏んだらずっとノイズが出続けるんですけど、このセッティングにすると鳴らした瞬間だけバキバキの音が出せて、そこがポイントになると思います。
――1曲の中で歪みのキャラクターも多彩ですよね。
【山本】よく使うのはPROCOのRAT(ディストーション)です。ライブでは歪みのレベルを1時くらい、ボリュームを3時くらいまで上げていますが、レコーディングでは抜けの良さを重視して抑えています。そこにLine 6のM9に入っているモジュレーションエフェクトをかけるのが、「マスカレードパレード」のベーシックになります。
【佐伯】「マスカレードパレード」ではオーバードライブをずっと踏んでいるので、BOSSのODB-3は必須です。歪みを深めに設定しているんですけど、ベースラインをしっかり聴かせたいので、マルチ(ZOOM製MS-60B)に入っているコンプレッサーで厚みを出しつつ、音を引き締めるようにしています。
【秦】ドラムは、真似しやすいところで言うとキックペダルのビーターですね。Low Boy Custom BeatersのLightweight Leather Daddyという、木製ビーターにレザーのヘッドを組み合わせたモデルを使っていて。本当にいい音が鳴るんですね。「マスカレードパレード」のレコーディングで初めて使って、そこで惚れ込んでからライブも採用するようになりました。踏み心地が軽いのにアタック感と低音を両立させてくれるのでオススメです。
【宮崎】僕のギターに関してはかなりニュートラルです。この曲では3人の楽器の音を最大限に活かすべきだと思ったんですね。なので、レコーディングでも特殊なことはやっていませんし、ライブでも僕はハンドマイクで歌に徹しています。
【山本】僕、一晴のレコーディング風景で面白いなと思ったところがあるんですよ。アンプのマイキングなんですけど、マイクをスピーカーからすごく離して録っていたんですね。
――しかもフロントパネルを外して…?
【宮崎】ライブでも使っているFenderのAcoustasonic Juniorなんですけど、クリーンの音がすごくキレイに出せるアンプなんです。2Aメロ冒頭の音がまさにそれで、僕の中の理想にかなり近い音になっています。録るときは、基本的にパネルを外すようにしていますね。よりダイレクトにアンプの特性を活かせるようになりますし、レンジも拡がるのでミックスの幅が拡がるんです。ライブだとその開けた音がちょっと下品に聴こえてしまう場面もあるので、パネルをつけて抑えるようにしています。
■全国ツアー、アニメタイアップ…さまざまな“挑戦”を経て向かうアルバム制作
――前回のツアーファイナルでは「アルバムを制作中」との報告もありましたが、現在の進捗状況は?
【宮崎】今までに感じたことのない手応えを感じていますね。クジラ夜の街史上、過去最高傑作になることが確定しているなと。加えて、楽曲を作る上での姿勢も変わってきていて。今まではライブ志向で、曲作りもライブでお客さんに届けることを前提にしていた結果、シンプルで単一的なアレンジに落ち着いくことが多かったんですよ。でも最近は、曲もパフォーマンスももう少し立体的にしたいと思っているんです。ライブだけでなく音源としても面白いもの。音源としても、聴く時間や場所、環境などさまざまなものを加味しながら作っている状況です。
【山本】まだ一晴のデモを聴いた段階でアレンジもこれからなんですが、メロと詞がダントツでいいです。マジで鳥肌が立つくらいでした。
【佐伯】「マスカレードパレード」からドロドロしたアルバムになるんじゃないかって予想する人も多いかと思うんですけど、今作っている曲はメロディーがキャッチーだし、詞もストレートなんですよ。初見の人でもノリやすい曲だと感じています。
【秦】「マスカレードパレード」を録ったのが今年の3月だったんですけど、個人的にそれからの4ヶ月間が、今までで一番ドラムに向き合った期間だったんです。自分でもスキルの上達や引き出しの増加を感じていますし、次のアルバムは本気で「日本で一番ドラムがカッコいい作品にしたい」と思っています。ドラマーじゃなくても腰抜かすドラムを叩きます。
【宮崎】現時点でできている楽曲は、決して運よくできたものではないと感じていて。今まで出してきた曲たちはすべてカッコいいと自信を持っていますが、それを超えていく曲を選んでいます。僕の中でのオールスター。捨て曲一切なしのアルバムを、早くみなさんに届けたいなと思っています。
2023/07/21