劇作家・演出家の野田秀樹が率いるNODA・MAPの2年ぶり書き下ろし新作『兎、波を走る』が、東京・池袋の東京芸術劇場プレイハウスで上演中。今日性を持つテーマ、圧倒的な語彙を持って語られるせりふが目まぐるしく複雑に絡み合い、物語が進むにつれて表層とは違う世界が姿を現す、野田秀樹らしい作品だ。
ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」がモチーフの一つになっている。ウサギを追いかけて「不思議の国」へと迷い込んだアリスが、不条理で意味のないようなことに次々と振り回されたり巻き込まれたりしながら、最後には自分の世界に戻ってくるファンタジーだが、本作の“アリス”が巻き込まれるのは、もっと不条理なものだ。
チラシに載っていた野田の直筆コメントにも、「『なんともいたたまれない不条理』を感じとっていただければと切に願う。」と書いてあった。「全力で書いたけれども作家の無力をこれほど感じることはない」とも書いてあった。世の中は不条理に満ちているけれど、本作が付きつけてくる「不条理」は「なんともいたたまれない」。ただ、観客に「無力」を感じさせたり、「本当に無力なのか?」と考えさせたり、心をざわつかせる物語を生み出した作家は決して「無力」ではないと思う。
舞台全面の鏡を使った演出や映像を使った演出なども印象に残る。おなじみのスタッフ、美術の堀尾幸男、照明の服部基、衣裳のひびのこづえ、音楽の原摩利彦らに加え、今回が初参加となる人形劇師の沢則行と映像作家・上田大樹の仕事ぶりは、テレビ番組やYouTuberの動画に慣れた観客の目にもやさしくて、なおかつ新鮮だった。
俳優たちの熱演は言わずもがな。前作『フェイクスピア』でも主演を務めた高橋、昨年の『Q』ワールドツアーで国内外の観客を魅了した松たか子、さらに、2010年に『農業少女』(作:野田秀樹/演出:松尾スズキ)で初舞台を踏み、NODA・MAP作品は初登場となる多部未華子。さらに、秋山菜津子、大倉孝二、大鶴佐助、山崎一、野田も出演する。
前売り券完売の人気公演だが、全公演で当日券を販売している。観劇するチャンスはまだある。東京公演は7月30日まで。大阪公演は7月8日よりチケット一般発売、新歌舞伎座にて8月3日〜8月13日。博多公演も7月8日よりチケット一般発売、博多座にて8月17日〜8月27日。
■NODA・MAP第26回公演 『兎、波を走る』 初日開幕コメント
●高橋一生
開演前、野田さんから皆に改めて「言葉を大事にしてほしい」という話がありました。それを念頭に、今日はとても落ち着いてこれまでと同じようにやれました。僕が発したひと言で、お客様が虚構の世界から現実にぐっと引っ張られる瞬間を感じたような気がします。野田さんの演劇の力のすごさと、それを構築するチームワークの重要性をしみじみ実感しました。劇場で圧倒され、受け取ったものを帰り道や家で改めて感じる……そんな観劇体験ができる作品だと思います。
●松たか子
「ああ、初日が開いた、よかった」というのが、今の率直な気持ちです。ワークショップ、稽古(けいこ)場での稽古、劇場入りしてからの稽古……そういった全てを経た上での初日だったなという感覚があります。お客様も緊張されていたと思うんですけれども、最初からたくさん笑ってくださって、役者それぞれが各々の役目を果たせているのだなと感じられて力をもらいました。まだまだ公演は続きます。劇場でお待ちしています。
●多部未華子
「始まってしまった」という気持ちです。これから回数を重ねていく中で、自分がどうなっていくかもわからない。そんな未知の世界へのスタートを切ったなと感じています。まだいっぱいいっぱいで、手応えもお客様の反応を感じる余裕もありません。きちんと伝えなければいけないことを背負った複雑な役柄ではありますが、野田さんの作品の一員として舞台に立っていることを楽しめるところまでいきたいなと思います。明日からもまた頑張ります。
●野田秀樹
他者の人生を預かっている作品なので、今回はことさらに、ちゃんと届けなくてはという思いが強くありました。それだけに、後半、客席の空気がズーンと重たくなって以降、これはいいことなのか? どうなんだ?と内心ドキドキしていたんですが、客席からの拍手の第一音を聞いて、これは嘘じゃない拍手だな、いい芝居になってよかったと感じました。今後も気を引き締めて、素晴らしい役者たちと最後の1ステージまで真摯(しんし)に届けていきます。
ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」がモチーフの一つになっている。ウサギを追いかけて「不思議の国」へと迷い込んだアリスが、不条理で意味のないようなことに次々と振り回されたり巻き込まれたりしながら、最後には自分の世界に戻ってくるファンタジーだが、本作の“アリス”が巻き込まれるのは、もっと不条理なものだ。
チラシに載っていた野田の直筆コメントにも、「『なんともいたたまれない不条理』を感じとっていただければと切に願う。」と書いてあった。「全力で書いたけれども作家の無力をこれほど感じることはない」とも書いてあった。世の中は不条理に満ちているけれど、本作が付きつけてくる「不条理」は「なんともいたたまれない」。ただ、観客に「無力」を感じさせたり、「本当に無力なのか?」と考えさせたり、心をざわつかせる物語を生み出した作家は決して「無力」ではないと思う。
舞台全面の鏡を使った演出や映像を使った演出なども印象に残る。おなじみのスタッフ、美術の堀尾幸男、照明の服部基、衣裳のひびのこづえ、音楽の原摩利彦らに加え、今回が初参加となる人形劇師の沢則行と映像作家・上田大樹の仕事ぶりは、テレビ番組やYouTuberの動画に慣れた観客の目にもやさしくて、なおかつ新鮮だった。
前売り券完売の人気公演だが、全公演で当日券を販売している。観劇するチャンスはまだある。東京公演は7月30日まで。大阪公演は7月8日よりチケット一般発売、新歌舞伎座にて8月3日〜8月13日。博多公演も7月8日よりチケット一般発売、博多座にて8月17日〜8月27日。
■NODA・MAP第26回公演 『兎、波を走る』 初日開幕コメント
●高橋一生
開演前、野田さんから皆に改めて「言葉を大事にしてほしい」という話がありました。それを念頭に、今日はとても落ち着いてこれまでと同じようにやれました。僕が発したひと言で、お客様が虚構の世界から現実にぐっと引っ張られる瞬間を感じたような気がします。野田さんの演劇の力のすごさと、それを構築するチームワークの重要性をしみじみ実感しました。劇場で圧倒され、受け取ったものを帰り道や家で改めて感じる……そんな観劇体験ができる作品だと思います。
●松たか子
「ああ、初日が開いた、よかった」というのが、今の率直な気持ちです。ワークショップ、稽古(けいこ)場での稽古、劇場入りしてからの稽古……そういった全てを経た上での初日だったなという感覚があります。お客様も緊張されていたと思うんですけれども、最初からたくさん笑ってくださって、役者それぞれが各々の役目を果たせているのだなと感じられて力をもらいました。まだまだ公演は続きます。劇場でお待ちしています。
●多部未華子
「始まってしまった」という気持ちです。これから回数を重ねていく中で、自分がどうなっていくかもわからない。そんな未知の世界へのスタートを切ったなと感じています。まだいっぱいいっぱいで、手応えもお客様の反応を感じる余裕もありません。きちんと伝えなければいけないことを背負った複雑な役柄ではありますが、野田さんの作品の一員として舞台に立っていることを楽しめるところまでいきたいなと思います。明日からもまた頑張ります。
●野田秀樹
他者の人生を預かっている作品なので、今回はことさらに、ちゃんと届けなくてはという思いが強くありました。それだけに、後半、客席の空気がズーンと重たくなって以降、これはいいことなのか? どうなんだ?と内心ドキドキしていたんですが、客席からの拍手の第一音を聞いて、これは嘘じゃない拍手だな、いい芝居になってよかったと感じました。今後も気を引き締めて、素晴らしい役者たちと最後の1ステージまで真摯(しんし)に届けていきます。
2023/06/25