人気漫画『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の原作や特撮ドラマ『仮面ライダーW』の脚本などを手掛けた漫画原作者・脚本家の三条陸氏(58)。彼の創作秘話を収録した本『三条陸HERO WORKS』が19日に発売されることから、ORICON NEWSはインタビューを実施し、これまでの創作人生や作品秘話を聞いてみた。
国民的ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズの世界観をもとにした漫画『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』は、1989年に「週刊少年ジャンプ」で連載がスタート。その原作を担当した三条氏だが、彼の経歴は学生時代からホビー、特撮、アニメの雑誌・ムックでライターとして活動していた。
『ダイの大冒険』をきっかけにその後、漫画原作者、特撮ドラマ・アニメの脚本家として広く活躍。現在、『冒険王ビィト』を「ジャンプSQ.RISE」にて、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王』を「Vジャンプ」にて、『風都探偵』を「週刊ビッグコミックスピリッツ」でそれぞれ連載している。
■連載前はライターとして活躍!『ドラクエ』生みの親が先輩 意見が言いやすい環境で苦労なしの『ダイの大冒険』現場
――「書き手」の仕事に就くまでの経緯が気になります。どんな漫画を読んだり、テレビを見ていたのか、若いころはどんな人生を送っていたのでしょうか。
【三条】 1964年生まれの僕は、いわゆる「第二次怪獣ブーム」の世代なので、幼少時は『ウルトラマン』の再放送、小学校で『帰ってきたウルトラマン』『仮面ライダー』『マジンガーZ』などのブームに直撃されました。その後も『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』が現れて卒業できないまま成人してしまいました(笑)。大学在学中からアニメ誌などでライターの仕事をするようになり、卒業後もそれを仕事にした形です。
――ゲームライターの仕事をしていたことから、当時のジャンプ編集部からお声がかかり、『ダイの大冒険』原作を担当することになったそうで。当時から人気だったゲーム『ドラクエ』を題材にした作品ということで緊張があったと思います。当時の心境を教えてください。
【三条】 ジャンプ誌上での『ドラクエ』の仕掛け人の一人だった編集の鳥嶋和彦さんに、当時の最新作『ドラクエ4』のバックアップ企画の一つとして読み切り漫画の原作を依頼されたのが始まりです。それが予想以上に好評だったので連載されることになりました。『ドラクエ』の生みの親である堀井雄二さんはアニメ誌のライター時代の先輩でもあったので、これははずすわけにはいかないな、と身が引き締まりました。
ゲームの内容をそのままコミカライズするのではなく漫画のオリジナルの物語で展開するのは普通ならなかなか許諾していただけないことだと思うのですが、こうした『ドラクエ』の中核にいる方々が周りに存在したことで奇跡的に成立した作品だったと思います。
――三条先生の親しい人が『ドラクエ』の中核にいたことにより、意見も言いやすい環境もあって成立した作品だったんですね! ただ、当時としては珍しいゲーム題材の作品ということで、普通の漫画原作とは特殊なものだったと思います。その中でもオリジナルの呪文を作中に出すなど、作り手として挑戦を感じました。当時の関係者との打ち合わせでの苦労や、制作で大変だったことを教えてください。
【三条】 自分自身が『ドラクエ』シリーズの熱烈なプレイヤーだったのでほとんど苦労はしませんでした。「ゲーム内だとこういう表現だけど実際やったらどうなるんだろう? こんな感じかな?」という普段の妄想をそのまま形にするだけでしたので。
呪文に関してはまずゲームに登場する中から使いづらいものを外しました。例えば死者が生き返るザオリクなどはあると物語上緊迫感がなくなるので出しませんでした。もちろん世界観的にはある設定なのですが「今は使い手がいない」的な描き方にしました。逆に生き返る確率が半々ぐらいのザオラルはドラマ的に使えるなと思って残しました。
その中で漫画の殺陣や物語のキーポイントとしてどうしても欲しい能力に関しては新たにオリジナル呪文として追加させていただきました。空を飛ぶトベルーラ、雷雲を呼ぶラナリオン、相手を押しつぶすベタンなどがそれです。ベタンはそもそもゲームに存在しない概念だったのでそのまま命名しましたが、前者二つはルーラやラナルータなど『ドラクエ』に存在する呪文の派生に感じられるようなネーミングにして極力世界観を損なわないよう気をつけました。
■アバンストラッシュの誕生経緯 特徴的な逆手持ちは「出るぞ!」読者の期待感が狙い
――『ドラクエ』好きのプレイヤーだったからこそ、次々と案が出たんですね! 私個人も小学校のころ、傘やホウキをもって「アバンストラッシュ」の構えをマネしていました。今の小学生もマネをしているという「アバンストラッシュ」の誕生の経緯を教えてください。持ち方などのこだわりもあれば、ぜひ!
【三条】 当時ゲームの『ドラクエ』にはオリジナルの剣技がなく、呪文以外は大まかに「通常打撃」という概念でした。ジャンプ漫画の主人公としてはやはり直接ぶちかます必殺技が欲しいなと思って剣の必殺技を考えることにしました。剣がフィニッシュ技のヒーローというと『宇宙刑事』シリーズが印象的だったので「ギャバンダイナミック」みたいな技名にしようと思ったのですが、「ダイ」という名前が短くてあまり技名にはまらないのと、そもそも自分の名前を技名にするような感じのキャラではないというのがあって、そこで「師の名前がついた技を継承する」という序盤の物語の流れを思いついたのです。
逆手持ちは「これから出すぞ!」という漫画的なタメの演出として何か特徴的な予備動作が欲しくて考えたものです。パシッと剣を持ち替えただけで「出るぞ!」という読者の期待感がわくんじゃないか、と。
■「正義は勝つ」作劇の注意点 漫画のバトルは過程が大事 勝手に化けたキャラはハドラー
――『獣電戦隊キョウリュウジャー』など特撮の脚本を担当しておりますが、『ダイの大冒険』も含めて「正義は勝つ」という王道の結末が決まっています。その結末に向かって、主人公の困難や敵を魅力的に表現していくかと思いますが、物語を作るにあたって大切にしていること、決めている制作の過程、苦労している点があれば教えてください。
【三条】 子どもたちに「正義が勝つ」ところは見せてあげたいのですが、「正義は勝つ」だと正義側が勝つのが当たり前のようで重みも面白みもないかな、とは思います。基本的に自分は同じ戦力なら正義より悪の方が強いと思っていますので。悪は常識をはみだせるし、ルールも守らなくていいですからね。最後には正義が勝つと信じたい、でもそこに至るまでに優位な悪側に対して正義側は尋常じゃないものを賭けたり捨てたりして挑んでいるんだ、ということをきちんと描くということが自分の作劇上の注意点かな、と思います。「正義側が勝ったけど、それは普通のことじゃないんだな」と子どもたちに伝われば、ベストですよね。
――「正義は勝つ」物語において、三条先生の作品は敵キャラが特に魅力的です。『ダイの大冒険』の魔王軍は魅了的なキャラが多く、特にハドラーは物語が進むにつれて人間臭さが増した屈指の人気キャラです。主人公の仲間たち以上に、敵キャラの設定は特に気を付けていたように思いましたが、制作で気を付けた点を教えてください。
【三条】 バトル漫画でいう「バトル」はゲームにおいてはプレイそのものなので、戦っているだけで楽しめるように作られていますが、物語として読むようになった場合登場人物AとBの『ケンカ』なので、戦いそのものだけでは面白くないわけです。これがケンカならむしろ殴り合う前のやり取りとか、戦いの中の罵倒のしあいみたいな「フレーバー」に相当する部分が個性的でないといけません。
子どもたちは戦いのシーンが大好きですが「戦ってるだけ」だとあからさまに飽きてしまうんですよね(笑)。敵キャラがどんな性格なのかはバトルを面白く見せるために一番重要な要素の一つだと思っています。
なので書いている間にどんどん敵キャラの内面に触れていくことが多くなります。ハドラーは自分が想定したよりもはるかに人間味のあるキャラに変わっていき、思いもしない動きを見せるようになりました。作品の中で勝手にキャラが化けた典型かと思います。
■死ぬ可能性あったポップ…読者人気は狙い通り 成長する姿に共感は「確信がありました」
――すでにファンの間では知られていることですが、『ダイの大冒険』ポップは途中で亡くなる予定だったと、今回の本でも明かされています。「クリリンがフリーザを倒したらびっくりしませんか?」という説得などで命が繋いだそうですが、なぜそこまでポップに想い入れがあったのか、連載初期段階からポップが第2の主人公という立場で考えていたのか、ポップが作品に不可欠だった理由を教えてください。
【三条】 ジャンプ誌上で『ドラクエ』の漫画を成功させるために大きく二つの方針を決めました。一つは今まで成功したジャンプ漫画の黄金パターンを総動員して『ドラクエ』の世界観に融合させること。これはもう基本戦略とも言えることだったのですがもう一点、それまでのジャンプ漫画があまりやっていなかった要素を入れて他作品との差別化を狙うということを考えました。
その意味でやりたかったのがポップのように「主人公の引き立て役のように見える脇キャラ」が成長して最強のメンバーの一人に昇格する、ということでした。当時のジャンプは人気・実力が優れたキャラだけが選抜されてレギュラーに残っていく作品がほとんどでしたので、上手くいけば全然違う支持のされ方をする作品になるのではないかと思ったのです。自分が映画やアニメを見ていても気にも止めていなかったような脇キャラが後半大活躍するような作品の方がより好きでした。
でもそのために前振りとして最初はポップのダメな部分が強調されますから、当然の反応として鳥嶋さんから「こいつ、早く殺そう」と言われました。一生懸命、それが狙いであることを説明し、ポップは一命を取り留めました(笑)。
勇者のダイと対比される一般人代表であり、連載という冒険を共にする読者のアバターとしてポップは第2の主人公なのだ、と自分の中では最初から考えていました。ですからそのポップがどんどん強く成長することに関しては多くの読者が喜んでくれるだろうという確信がありました。結果上手くいったんだな、というのは最近当時の読者の方々からのお話を聞いて実感しているところです。
■『三条陸HERO WORKS』内容
『ダイの大冒険』『冒険王ビィト』『仮面ライダーW』『風都探偵』『仮面ライダードライブ』など、三条陸氏が手掛けた40以上の作品を語り尽くす集大成本。各作品の制作秘話や裏話はもちろん、三条氏を形成した少年時代の話、雑誌ライターとして手掛けた記事の再録、『ダイの大冒険』の作画担当にして盟友・稲田浩司氏&初代担当との鼎談などスペシャルな企画が掲載されている。表紙は『冒険王ビィト』のビィト、『ダイの大冒険』のダイ(稲田浩司氏)、『勇者アバンと獄炎の魔王』の勇者アバン(芝田優作氏)、『風都探偵』の翔太郎&フィリップ(佐藤まさき氏)が、4作品のヒーローが描かれている。全160ページ、価格は2200円。
国民的ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズの世界観をもとにした漫画『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』は、1989年に「週刊少年ジャンプ」で連載がスタート。その原作を担当した三条氏だが、彼の経歴は学生時代からホビー、特撮、アニメの雑誌・ムックでライターとして活動していた。
『ダイの大冒険』をきっかけにその後、漫画原作者、特撮ドラマ・アニメの脚本家として広く活躍。現在、『冒険王ビィト』を「ジャンプSQ.RISE」にて、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王』を「Vジャンプ」にて、『風都探偵』を「週刊ビッグコミックスピリッツ」でそれぞれ連載している。
――「書き手」の仕事に就くまでの経緯が気になります。どんな漫画を読んだり、テレビを見ていたのか、若いころはどんな人生を送っていたのでしょうか。
【三条】 1964年生まれの僕は、いわゆる「第二次怪獣ブーム」の世代なので、幼少時は『ウルトラマン』の再放送、小学校で『帰ってきたウルトラマン』『仮面ライダー』『マジンガーZ』などのブームに直撃されました。その後も『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』が現れて卒業できないまま成人してしまいました(笑)。大学在学中からアニメ誌などでライターの仕事をするようになり、卒業後もそれを仕事にした形です。
――ゲームライターの仕事をしていたことから、当時のジャンプ編集部からお声がかかり、『ダイの大冒険』原作を担当することになったそうで。当時から人気だったゲーム『ドラクエ』を題材にした作品ということで緊張があったと思います。当時の心境を教えてください。
【三条】 ジャンプ誌上での『ドラクエ』の仕掛け人の一人だった編集の鳥嶋和彦さんに、当時の最新作『ドラクエ4』のバックアップ企画の一つとして読み切り漫画の原作を依頼されたのが始まりです。それが予想以上に好評だったので連載されることになりました。『ドラクエ』の生みの親である堀井雄二さんはアニメ誌のライター時代の先輩でもあったので、これははずすわけにはいかないな、と身が引き締まりました。
ゲームの内容をそのままコミカライズするのではなく漫画のオリジナルの物語で展開するのは普通ならなかなか許諾していただけないことだと思うのですが、こうした『ドラクエ』の中核にいる方々が周りに存在したことで奇跡的に成立した作品だったと思います。
――三条先生の親しい人が『ドラクエ』の中核にいたことにより、意見も言いやすい環境もあって成立した作品だったんですね! ただ、当時としては珍しいゲーム題材の作品ということで、普通の漫画原作とは特殊なものだったと思います。その中でもオリジナルの呪文を作中に出すなど、作り手として挑戦を感じました。当時の関係者との打ち合わせでの苦労や、制作で大変だったことを教えてください。
【三条】 自分自身が『ドラクエ』シリーズの熱烈なプレイヤーだったのでほとんど苦労はしませんでした。「ゲーム内だとこういう表現だけど実際やったらどうなるんだろう? こんな感じかな?」という普段の妄想をそのまま形にするだけでしたので。
呪文に関してはまずゲームに登場する中から使いづらいものを外しました。例えば死者が生き返るザオリクなどはあると物語上緊迫感がなくなるので出しませんでした。もちろん世界観的にはある設定なのですが「今は使い手がいない」的な描き方にしました。逆に生き返る確率が半々ぐらいのザオラルはドラマ的に使えるなと思って残しました。
その中で漫画の殺陣や物語のキーポイントとしてどうしても欲しい能力に関しては新たにオリジナル呪文として追加させていただきました。空を飛ぶトベルーラ、雷雲を呼ぶラナリオン、相手を押しつぶすベタンなどがそれです。ベタンはそもそもゲームに存在しない概念だったのでそのまま命名しましたが、前者二つはルーラやラナルータなど『ドラクエ』に存在する呪文の派生に感じられるようなネーミングにして極力世界観を損なわないよう気をつけました。
■アバンストラッシュの誕生経緯 特徴的な逆手持ちは「出るぞ!」読者の期待感が狙い
――『ドラクエ』好きのプレイヤーだったからこそ、次々と案が出たんですね! 私個人も小学校のころ、傘やホウキをもって「アバンストラッシュ」の構えをマネしていました。今の小学生もマネをしているという「アバンストラッシュ」の誕生の経緯を教えてください。持ち方などのこだわりもあれば、ぜひ!
【三条】 当時ゲームの『ドラクエ』にはオリジナルの剣技がなく、呪文以外は大まかに「通常打撃」という概念でした。ジャンプ漫画の主人公としてはやはり直接ぶちかます必殺技が欲しいなと思って剣の必殺技を考えることにしました。剣がフィニッシュ技のヒーローというと『宇宙刑事』シリーズが印象的だったので「ギャバンダイナミック」みたいな技名にしようと思ったのですが、「ダイ」という名前が短くてあまり技名にはまらないのと、そもそも自分の名前を技名にするような感じのキャラではないというのがあって、そこで「師の名前がついた技を継承する」という序盤の物語の流れを思いついたのです。
逆手持ちは「これから出すぞ!」という漫画的なタメの演出として何か特徴的な予備動作が欲しくて考えたものです。パシッと剣を持ち替えただけで「出るぞ!」という読者の期待感がわくんじゃないか、と。
■「正義は勝つ」作劇の注意点 漫画のバトルは過程が大事 勝手に化けたキャラはハドラー
――『獣電戦隊キョウリュウジャー』など特撮の脚本を担当しておりますが、『ダイの大冒険』も含めて「正義は勝つ」という王道の結末が決まっています。その結末に向かって、主人公の困難や敵を魅力的に表現していくかと思いますが、物語を作るにあたって大切にしていること、決めている制作の過程、苦労している点があれば教えてください。
【三条】 子どもたちに「正義が勝つ」ところは見せてあげたいのですが、「正義は勝つ」だと正義側が勝つのが当たり前のようで重みも面白みもないかな、とは思います。基本的に自分は同じ戦力なら正義より悪の方が強いと思っていますので。悪は常識をはみだせるし、ルールも守らなくていいですからね。最後には正義が勝つと信じたい、でもそこに至るまでに優位な悪側に対して正義側は尋常じゃないものを賭けたり捨てたりして挑んでいるんだ、ということをきちんと描くということが自分の作劇上の注意点かな、と思います。「正義側が勝ったけど、それは普通のことじゃないんだな」と子どもたちに伝われば、ベストですよね。
――「正義は勝つ」物語において、三条先生の作品は敵キャラが特に魅力的です。『ダイの大冒険』の魔王軍は魅了的なキャラが多く、特にハドラーは物語が進むにつれて人間臭さが増した屈指の人気キャラです。主人公の仲間たち以上に、敵キャラの設定は特に気を付けていたように思いましたが、制作で気を付けた点を教えてください。
【三条】 バトル漫画でいう「バトル」はゲームにおいてはプレイそのものなので、戦っているだけで楽しめるように作られていますが、物語として読むようになった場合登場人物AとBの『ケンカ』なので、戦いそのものだけでは面白くないわけです。これがケンカならむしろ殴り合う前のやり取りとか、戦いの中の罵倒のしあいみたいな「フレーバー」に相当する部分が個性的でないといけません。
子どもたちは戦いのシーンが大好きですが「戦ってるだけ」だとあからさまに飽きてしまうんですよね(笑)。敵キャラがどんな性格なのかはバトルを面白く見せるために一番重要な要素の一つだと思っています。
なので書いている間にどんどん敵キャラの内面に触れていくことが多くなります。ハドラーは自分が想定したよりもはるかに人間味のあるキャラに変わっていき、思いもしない動きを見せるようになりました。作品の中で勝手にキャラが化けた典型かと思います。
■死ぬ可能性あったポップ…読者人気は狙い通り 成長する姿に共感は「確信がありました」
――すでにファンの間では知られていることですが、『ダイの大冒険』ポップは途中で亡くなる予定だったと、今回の本でも明かされています。「クリリンがフリーザを倒したらびっくりしませんか?」という説得などで命が繋いだそうですが、なぜそこまでポップに想い入れがあったのか、連載初期段階からポップが第2の主人公という立場で考えていたのか、ポップが作品に不可欠だった理由を教えてください。
【三条】 ジャンプ誌上で『ドラクエ』の漫画を成功させるために大きく二つの方針を決めました。一つは今まで成功したジャンプ漫画の黄金パターンを総動員して『ドラクエ』の世界観に融合させること。これはもう基本戦略とも言えることだったのですがもう一点、それまでのジャンプ漫画があまりやっていなかった要素を入れて他作品との差別化を狙うということを考えました。
その意味でやりたかったのがポップのように「主人公の引き立て役のように見える脇キャラ」が成長して最強のメンバーの一人に昇格する、ということでした。当時のジャンプは人気・実力が優れたキャラだけが選抜されてレギュラーに残っていく作品がほとんどでしたので、上手くいけば全然違う支持のされ方をする作品になるのではないかと思ったのです。自分が映画やアニメを見ていても気にも止めていなかったような脇キャラが後半大活躍するような作品の方がより好きでした。
でもそのために前振りとして最初はポップのダメな部分が強調されますから、当然の反応として鳥嶋さんから「こいつ、早く殺そう」と言われました。一生懸命、それが狙いであることを説明し、ポップは一命を取り留めました(笑)。
勇者のダイと対比される一般人代表であり、連載という冒険を共にする読者のアバターとしてポップは第2の主人公なのだ、と自分の中では最初から考えていました。ですからそのポップがどんどん強く成長することに関しては多くの読者が喜んでくれるだろうという確信がありました。結果上手くいったんだな、というのは最近当時の読者の方々からのお話を聞いて実感しているところです。
■『三条陸HERO WORKS』内容
『ダイの大冒険』『冒険王ビィト』『仮面ライダーW』『風都探偵』『仮面ライダードライブ』など、三条陸氏が手掛けた40以上の作品を語り尽くす集大成本。各作品の制作秘話や裏話はもちろん、三条氏を形成した少年時代の話、雑誌ライターとして手掛けた記事の再録、『ダイの大冒険』の作画担当にして盟友・稲田浩司氏&初代担当との鼎談などスペシャルな企画が掲載されている。表紙は『冒険王ビィト』のビィト、『ダイの大冒険』のダイ(稲田浩司氏)、『勇者アバンと獄炎の魔王』の勇者アバン(芝田優作氏)、『風都探偵』の翔太郎&フィリップ(佐藤まさき氏)が、4作品のヒーローが描かれている。全160ページ、価格は2200円。
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2023/05/20