昨今のSNSは、生まれつき身体にハンデを背負う人たちが自身の症状を発信することで、病気や障がいの理解、同じ悩みを持つ人の心の拠り所になっている。ORICON NEWSでは、SNSに投稿することで、“生まれつきの悩み”を自らの“武器”に変えた2人をピックアップ。現在に至るまでの幼少期の苦悩やSNS投稿への想いを聞いた。
■アルビノ女性がSNS投稿で得た想い「今の自分でいいんだって、受け入れられるきっかけになった」
りり香さんは、生まれつき皮膚、髪、眼などの色が薄い「アルビノ」という遺伝疾患を持って生まれた。矯正不能な視力障がいを伴う場合も多く、今のところ確立された治療法はないという。
「二卵性の双子の妹もアルビノで、姉、私、妹の三姉妹のうち二人がアルビノだったので、小さい頃はあまり自分が人と違うことを意識せずに生きてきました。小学校で自分の生い立ちについて作文を書く時に、お母さんに教えてもらって知ったのが最初です」
アルビノは視覚障がいを伴うことが多いのに加えて、紫外線に当たることも厳禁とされる。皮膚で紫外線を遮断できないため耐性が低く、当たれば火傷のような症状が表れてしまうからだ。黒板の文字を読むことが難しかったり、日に当たれないと皆と同じ授業が受けられないという理由で、公立の小学校入学拒否される場合も珍しくない。
「前例がなかったので小学校入学にあたって、母は相当苦労したと聞いています。私の場合は、視覚障がい者用に作られた拡大教科書や、近くを見るルーペ、遠くを見る単眼鏡を使って授業を受けていました。体育の授業は長袖長ズボンで対策するなど、基本的には同じ授業を受けていましたが、どうしてもできなかったのが星の観察。見えないので、みんなと同じことができないのを実感する瞬間でもありました」
そんなりり香さんが、SNSで自身について発信を始めたのは、2021年から。日常生活のことからアルビノに対する質問への回答、メイク法などのファッションまで様々な発信をしているが、時には心ないコメントがくることもあった。
「元々眉毛やまつ毛は髪の毛と同じ白なのですが、メイクをしていることによって、『アルビノじゃない人が嘘をついている』と言われることもありました。最初はモヤモヤしましたが、そういう人もいるんだなと慣れてきて、ちょっとしたコメントでは傷つかなくなりました(笑)」
それでも「アルビノで辛いことは、数えきれないぐらいたくさんあった」というりり香さん。子どもから大人まで、彼女に向かって直接投げかけられる「白すぎ」「気持ち悪い」はさすがにこたえた。やがて、大人になるにつれ「そういう風に言う人は知識がないってことだから、逆にかわいそう」と思えるようになったというが、それでも幼い頃に負った心の傷はとても深い。そんな時、りり香さんの心の支えになってくれたのは母親だ。
「気持ち悪いと言われて私が傷ついていると、母が『うちの子、白くてカッコいいでしょ?』って言い返してくれました。いつも、私が自信を持てるような言葉をかけてくれた母には、とても感謝しています
また、SNS投稿を始めて、いろいろな方から温かいコメントをいただけたのは本当に嬉しかったです。今の自分でいいんだなって、受け入れられるきっかけにもなりました」
一昨年には、眼科の定期健診で、緑内障が発覚。視野がない状態なので手術ができず、治療法は点眼で進行を遅らせることだけ。発覚当初は落ちこんだものの、現在は自分にできる好きなことを楽しめるようになった。目が弱い分、嗅覚や聴覚が優れており、別の土地を訪れると様々なことを感じられるそうだ。
「私は大好きな人と結婚できて、家族に花嫁姿も見せられたし、幸せな生活をさせてもらっています。だからこれ以上挑戦したいことはあんまりなくて。それよりも、見えなくなるまでずっと、家族の顔を見ておきたいなって思っています。
SNSはこれからどんどん見えなくなっていくことも明るく受け入れて発信を続けていきたいです。視覚障がいだけじゃなく、いろいろな病気や障がいを持っている人たちに、少しでも自信を持ってもらえるきっかけを作れる存在になりたいと思っています」
■“バチ指”動画が575万再生の反響 「体に特徴があるほうが利点かなと感じることは多い」
指の先端が丸く広がり、太鼓のバチ状に変形してしまう“バチ指”を持つのは美容師の吉田彰吾さん。世界でも数少ない症状で、重大な疾患を持つ人が稀になると言われている。そんな彼が投稿したYouTubeショート動画「実は兄弟でバチ指」は575万再生されるほど大きな反響を呼び、1.6万件のコメントが寄せられた。
「『グロテスク』とか『炎上目的で載せている』とか結構言われますけど、僕はずっとこれで生きてきたので。形がちょっと違うというだけで、ここまで人は反応を示すものなんだと驚いたのが率直な感想です」
一方で「障がいやコンプレックスでお金稼ぎをするのは最低だ」などと、ときには厳しい意見も寄せられることも。
「『見た目が気持ち悪い』という誹謗中傷もありますが、それよりもSNSの発信の仕方を指摘されることが多いです。『見た目にインパクトがある動画は苦手な人が多く不快に思う人がいる』などと言われることもありますが、『いろんな人が自由に発信しているのに、なぜそんなことを気にしなければいけないの?』というのが本音です」
吉田さんがバチ指の症状に気づいたのは、思春期の頃。もともと肥厚性皮膚骨膜症という指定難病を持っており、その症状の1つとしてバチ指が表出した。
「兄が中学3年生くらいの頃に、指がおかしいということで病院に行く機会があって、そのときに僕も確認してみたら、兄ほどではないけど、指の形が変わり始めて違和感があることに気づいて…。それが小学生のときでした」
同級生の何気ない言葉にショックを受けたこともある。なかでも、中学生のときにクラスメイトの女子が発した「手が綺麗な男の人が好き」という一言は衝撃的だった。
「中学校の高学年くらいまで、自分が気にしていたからこそ、思春期の頃はショックでした。テレビに出てくる有名人の指などもいちいち目について過敏になっていましたね」
そんな吉田さんがバチ指についてコンプレックスに感じなくなったのはSNSを発信するようになってからだという。
「体に何かしらの特徴があったり、体以外でも特技などがあったりしたほうが、たくさんの人の視界に入ることができる。きっかけが多いという点では、体に特徴があるほうが利点かなと感じることは多いです。あと、全国の病院でも診てくれる先生がなかなかいないレベルの病気なので、同じ病気の人とつながれて、症状の共有や情報交換ができるのもSNSのいいところですね」
どんな意見があろうとも、今後もSNSなどを通して、「『自分の体がこうだからできない』といった思いをする人が少なくなるような発信をしていきたい」と語る吉田さん。それは“バチ指”である自分を受け入れ、まっすぐに向き合ってきたからこそ生まれた想いなのかもしれない。
「僕がバチ指で悩んだように、人にはそれぞれコンプレックスがあります。それについては解決できるものに関しては、できることをすべてやればいいと考えています。自分の体のことを卑下するようなことがなく、前向きにいろんなことにチャレンジできる人が増えるきっかけになれたらいいなと思います」
■アルビノ女性がSNS投稿で得た想い「今の自分でいいんだって、受け入れられるきっかけになった」
りり香さんは、生まれつき皮膚、髪、眼などの色が薄い「アルビノ」という遺伝疾患を持って生まれた。矯正不能な視力障がいを伴う場合も多く、今のところ確立された治療法はないという。
「二卵性の双子の妹もアルビノで、姉、私、妹の三姉妹のうち二人がアルビノだったので、小さい頃はあまり自分が人と違うことを意識せずに生きてきました。小学校で自分の生い立ちについて作文を書く時に、お母さんに教えてもらって知ったのが最初です」
アルビノは視覚障がいを伴うことが多いのに加えて、紫外線に当たることも厳禁とされる。皮膚で紫外線を遮断できないため耐性が低く、当たれば火傷のような症状が表れてしまうからだ。黒板の文字を読むことが難しかったり、日に当たれないと皆と同じ授業が受けられないという理由で、公立の小学校入学拒否される場合も珍しくない。
「前例がなかったので小学校入学にあたって、母は相当苦労したと聞いています。私の場合は、視覚障がい者用に作られた拡大教科書や、近くを見るルーペ、遠くを見る単眼鏡を使って授業を受けていました。体育の授業は長袖長ズボンで対策するなど、基本的には同じ授業を受けていましたが、どうしてもできなかったのが星の観察。見えないので、みんなと同じことができないのを実感する瞬間でもありました」
そんなりり香さんが、SNSで自身について発信を始めたのは、2021年から。日常生活のことからアルビノに対する質問への回答、メイク法などのファッションまで様々な発信をしているが、時には心ないコメントがくることもあった。
「元々眉毛やまつ毛は髪の毛と同じ白なのですが、メイクをしていることによって、『アルビノじゃない人が嘘をついている』と言われることもありました。最初はモヤモヤしましたが、そういう人もいるんだなと慣れてきて、ちょっとしたコメントでは傷つかなくなりました(笑)」
それでも「アルビノで辛いことは、数えきれないぐらいたくさんあった」というりり香さん。子どもから大人まで、彼女に向かって直接投げかけられる「白すぎ」「気持ち悪い」はさすがにこたえた。やがて、大人になるにつれ「そういう風に言う人は知識がないってことだから、逆にかわいそう」と思えるようになったというが、それでも幼い頃に負った心の傷はとても深い。そんな時、りり香さんの心の支えになってくれたのは母親だ。
「気持ち悪いと言われて私が傷ついていると、母が『うちの子、白くてカッコいいでしょ?』って言い返してくれました。いつも、私が自信を持てるような言葉をかけてくれた母には、とても感謝しています
また、SNS投稿を始めて、いろいろな方から温かいコメントをいただけたのは本当に嬉しかったです。今の自分でいいんだなって、受け入れられるきっかけにもなりました」
一昨年には、眼科の定期健診で、緑内障が発覚。視野がない状態なので手術ができず、治療法は点眼で進行を遅らせることだけ。発覚当初は落ちこんだものの、現在は自分にできる好きなことを楽しめるようになった。目が弱い分、嗅覚や聴覚が優れており、別の土地を訪れると様々なことを感じられるそうだ。
「私は大好きな人と結婚できて、家族に花嫁姿も見せられたし、幸せな生活をさせてもらっています。だからこれ以上挑戦したいことはあんまりなくて。それよりも、見えなくなるまでずっと、家族の顔を見ておきたいなって思っています。
SNSはこれからどんどん見えなくなっていくことも明るく受け入れて発信を続けていきたいです。視覚障がいだけじゃなく、いろいろな病気や障がいを持っている人たちに、少しでも自信を持ってもらえるきっかけを作れる存在になりたいと思っています」
■“バチ指”動画が575万再生の反響 「体に特徴があるほうが利点かなと感じることは多い」
指の先端が丸く広がり、太鼓のバチ状に変形してしまう“バチ指”を持つのは美容師の吉田彰吾さん。世界でも数少ない症状で、重大な疾患を持つ人が稀になると言われている。そんな彼が投稿したYouTubeショート動画「実は兄弟でバチ指」は575万再生されるほど大きな反響を呼び、1.6万件のコメントが寄せられた。
「『グロテスク』とか『炎上目的で載せている』とか結構言われますけど、僕はずっとこれで生きてきたので。形がちょっと違うというだけで、ここまで人は反応を示すものなんだと驚いたのが率直な感想です」
一方で「障がいやコンプレックスでお金稼ぎをするのは最低だ」などと、ときには厳しい意見も寄せられることも。
「『見た目が気持ち悪い』という誹謗中傷もありますが、それよりもSNSの発信の仕方を指摘されることが多いです。『見た目にインパクトがある動画は苦手な人が多く不快に思う人がいる』などと言われることもありますが、『いろんな人が自由に発信しているのに、なぜそんなことを気にしなければいけないの?』というのが本音です」
吉田さんがバチ指の症状に気づいたのは、思春期の頃。もともと肥厚性皮膚骨膜症という指定難病を持っており、その症状の1つとしてバチ指が表出した。
「兄が中学3年生くらいの頃に、指がおかしいということで病院に行く機会があって、そのときに僕も確認してみたら、兄ほどではないけど、指の形が変わり始めて違和感があることに気づいて…。それが小学生のときでした」
同級生の何気ない言葉にショックを受けたこともある。なかでも、中学生のときにクラスメイトの女子が発した「手が綺麗な男の人が好き」という一言は衝撃的だった。
「中学校の高学年くらいまで、自分が気にしていたからこそ、思春期の頃はショックでした。テレビに出てくる有名人の指などもいちいち目について過敏になっていましたね」
そんな吉田さんがバチ指についてコンプレックスに感じなくなったのはSNSを発信するようになってからだという。
「体に何かしらの特徴があったり、体以外でも特技などがあったりしたほうが、たくさんの人の視界に入ることができる。きっかけが多いという点では、体に特徴があるほうが利点かなと感じることは多いです。あと、全国の病院でも診てくれる先生がなかなかいないレベルの病気なので、同じ病気の人とつながれて、症状の共有や情報交換ができるのもSNSのいいところですね」
どんな意見があろうとも、今後もSNSなどを通して、「『自分の体がこうだからできない』といった思いをする人が少なくなるような発信をしていきたい」と語る吉田さん。それは“バチ指”である自分を受け入れ、まっすぐに向き合ってきたからこそ生まれた想いなのかもしれない。
「僕がバチ指で悩んだように、人にはそれぞれコンプレックスがあります。それについては解決できるものに関しては、できることをすべてやればいいと考えています。自分の体のことを卑下するようなことがなく、前向きにいろんなことにチャレンジできる人が増えるきっかけになれたらいいなと思います」

2023/04/20