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佐久間宣行×藤井健太郎(下) GOサインの基準は「ウケるかウケないか」 演出の上での心得も「絶対に大丈夫はない」

 動画配信サービス・DMM TVで “地上波では放送できないコント番組”「インシデンツ」を制作した佐久間宣行と、“脱出系ロケバラエティ”「大脱出」を手がけた藤井健太郎。これまでさまざまな面白さを生み出してきたふたりに、番組を作る上で考えること、視聴者の見方や価値観の変化について今感じていることを話してもらった。

DMM TV『インシデンツ』の佐久間宣行氏と『大脱出』の藤井健太郎氏が対談

DMM TV『インシデンツ』の佐久間宣行氏と『大脱出』の藤井健太郎氏が対談

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■出演者も何の企画かわからぬまま… これまでの積み重ねで生まれた信頼ゆえの演出

――おふたりとも自分が面白いと思うことを追求しているイメージがあるのですが、演出・プロデューサーとして、製作陣や演者と同じ方向に進むためにしていることはありますか?

佐久間 僕は仕組みから作るより人から考えることのほうが多いので、ある程度たたき台を作ったところでディスカッションすることが結構あって。そのときに「ここは実現したい」と先に言って、そこが壊れるような提案は飲めないという基準で考えることが多いです。僕は出てもらうキャストの、特にメインクラスの人に負担を強いるというか、頑張ってもらわなきゃいけない企画を考えるので、そこも話し合うことが多いですかね。

――そこは演者さんを含めて話していくのでしょうか。

佐久間 そうです。「あちこちオードリー」を立ち上げるまでは(オードリー)若林(正恭)と何回かディスカッションしていて、「ノーアンケート、ノー打ち合わせでやりたいんだけど」というのはやっぱり演者がGOしてくれないとできないじゃないですか。逆にドッキリ企画とかは事務所としか話し合わないですけど(笑)。

藤井 僕は「水曜日のダウンタウン」で言うと、ダウンタウンさん以外とは中身の話をほとんどしないので、同じ方向を向くという意味だとスタッフのほうが強くなりますね。そこは好みをなんとなくわかってもらうというか、企画の選定をしている中で「ここは乗らないんだ」みたいなことが見えてくるじゃないですか。だから言葉で伝えるよりは、普段のチョイスとかで「こっちが好きなんだな」となんとなく感じて、あわせてくれているんだとは思うんですけど。

――長く続けていくと、そういう好みが近い方と一緒に作る機会が増えていくものなのでしょうか。

藤井 近いというか、向こうがこっちに寄せてくれているとは思うんですね。だから本来の好みが近いかどうかは分からないですけど。

佐久間 僕は好みというか、最終的に変なことはしないだろうなという信頼感があるから、わけのわからない提案にものってくれる分量がどんどん増えていく気がしますね。「インシデンツ」は(さらば青春の光)森田(哲矢)は全体像を完全に把握していたけど、他の芸人さんは自分のコントしか知らないから、仕組みを全く把握してないわけですよ。でも「まあ佐久間がやってるんだったら、大丈夫だろうな」くらいの感じで、これまでの積み重ねで信用してくれている部分があったと思います。

藤井 全体を知らないという意味では、「大脱出」も演者は何の番組だかも知らずに始まっていて、DMM TVだとわかったのも撮り終わってからですからね。

佐久間 そうだよね、みんな閉じ込められていたもんね(笑)。

DMM TV『インシデンツ』より

DMM TV『インシデンツ』より

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■演者と制作とのバランスに変化? 佐久間氏は演者経験がプラスに「やってみて分かること」

――最近では「佐久間さんが作ったから」「藤井さんが作ったから」という作り手を基準にしてバラエティを見る方も増えていますが、それはどう思われていますか?

佐久間 でも僕は昔からそういう見方をしていたんで。

藤井 まあ同業者は「この作家が入ってるんだ」ってもともと見ていますよね。一般の視聴者はわからないけど、他業種でも同業の中では「あの人の仕事だな」とチェックするのがもうちょっと表に出るようになってきたというか。ジャンルの人気が出てきたっていうことなんですかね?

佐久間 お笑いがすごい量になったんで、選ぶ理由がもうちょっとほしくなったんだと思いますけどね。だって、ドラマとかは昔から監督や脚本家で見たりしますよね。それと同じような気がします。

藤井 あと、演者の主導権の握り方がたぶん昔ほど強くなくなっていますよね。これは合っているか分からないけど、「元テレ(天才・たけしの元気が出るテレビ!!)」より以前は、VTRメインのバラエティ番組ってあんまりないですよね。

佐久間 そうだね。

藤井 そうするとおのずと板の上での勝負だからどうしても演者のウエイトがでかいし、現場で起きたことをガラッと変えるような作り込む編集もないはずなんで、もちろんスタッフが主導する部分もあるんですけど、ダウンタウンさんの番組なら、ダウンタウンさんが全体をコントロールしているという印象が強くなる。でもだんだん作りが複雑化していって、VTRもあれば編集も込み入ったものになってきたから、言い方が正しいかわかんないですけど、オンエアに対する主導権の中で演者と制作とのバランスは変わってきたのかもしれないですね。

――作り手で見られていることは、実感としてあるものですか?

佐久間 どっちかというと、企画で見られている感じがするかな。僕はフリーになってから、まあ不安もあってたくさん仕事を受けちゃって(笑)、それで去年大変なことになったんですけど、やっぱり響く企画とそうじゃない企画があったんで。僕がやりすぎたからというのもあるかもしれないけど、作り手・出演者・企画の掛け合わせがどううまく転がるかが重要で、どれかひとつだけということはないなと思いました。やってみて、なおのこと。

藤井 僕ももちろん感じないことはないですけど、だから見ろとか、注目しろという気持ちも別にないので、意識はしてないですね。

――佐久間さんは最近、出られる側としてのお仕事も増えていますが、その経験が番組を作る際に影響することはありますか?

佐久間 もうラジオ(「佐久間宣行のオールナイトニッポン0」)も4年目も終わろうとしているからね、「いやいや出る側じゃないですよ」って言えないですよね(笑)。ちょっと自分でもうコントロールできない状態になっていて、秋元(康)さんもそうだけど、おじさんくらいのディレクターがオレを出したがるんですよ(笑)。今度「Nスペ」のテレビ70周年企画を撮るんですけど、(爆笑問題)太田光さん、指原莉乃さん、黒柳徹子さん、オレっていう並びで(笑)。

藤井 いや、いいじゃないですか。もうここまで来たらどこまでもじゃないですけど、楽しんでいますよね。「人生こんなことあるんだな」って(笑)。

佐久間 もう横浜アリーナ(昨年開催した「佐久間宣行のオールナイトニッポン0 presents ドリームエンターテインメントライブ in 横浜アリーナ」)で諦めて、あとで思い出になるなと思ってやってますよ(笑)。でもね、ラジオパーソナリティをやったりして、「このくらい準備してくれたほうがいい」とか、「ここまで言ってもらわないほうがいい」というのは感じました。それは俺の演者としてのタイプかもしれないけど。出る側としてだけじゃなくて、例えばYouTubeで「全然この動画は回らない」とか、このジャンルはどのくらいの若さのお客さんがいるんだなとか、やってみて分かることは少なからずありますね。

DMM TV『大脱出』より

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■西加奈子の言葉をもとに演出の心得「どんなものも絶対に大丈夫だとは思わない」 藤井氏「ウケる・ウケないは日々更新」

――もし藤井さんが佐久間さんをご自分の番組に出すとしたら、どんな企画をやりたいですか?

藤井 普通に出しても面白くないなと思っちゃうんですよね〜(笑)。

佐久間 絶対イヤですよ。知っているディレクターの番組には絶対出たくないです(笑)。

藤井 確かに、近いところではやってないですね。

佐久間 やってないやってない。それはもうね、基本的にはほとんどお断りしている。

藤井 考えたことはなかったですけど、やるなら他でやってないことにしないとなと思っちゃうから。変な期待もありそうだし、おそらく過酷を強いることになりそうな気はします(笑)。

佐久間 オレも芸人さんにやってもらっているから、断るのもおかしいじゃないですか。受けないことはあるかもしれないけど、受けたら文句をつけられないから、やりたくないです(笑)。

――ちなみに、先日佐久間さんが、ラジオで理想の上司の話をされていましたが、藤井さんが思う理想の上司像もぜひ教えていただきたいです。

藤井 番組作りだけをしていると、上司も何もないんですよ。なくはないんですけど、密にコミュニケーション取るのはそのチームの中だけになるので、それほど上役と話す状況がないんですよね。

佐久間 それに、藤井くんはほぼ同世代と一緒に作ってきているよね。

藤井 そうですね。もちろん下もいるんですけど、ディレクターたちはお互いタメ口が多いですし、みんなフリーランスだったりするんで、一般的な上司・部下とはちょっと違うかもしれないですね。番組作りのための目標に向かう作業を日々こなしている感じなので、向き合い方はちょっと特殊かもしれないです。

佐久間 でもそれは番組を当てたからですよ。当てて続けられているから、そんなに上役を気にしなくていい(笑)。そうじゃないと、番組を立ち上げるために組織と向き合う必要があるから。

藤井 確かに、企画を通すとなると編成とかとのやりとりも多く出てくるから、もうちょっと組織の話になってきますよね。僕はレギュラー番組があるから、その中で完結しているところはあるかもしれないですね。

佐久間 大事なのは仕事で当てることなんで(笑)。当てると、組織の中でもやりやすくなりますね。

――今回のDMM TVでの配信もそうですが、プラットフォームが変化したり、SNSで視聴者の言葉が可視化されやすくなったりする中で、価値観をアップデートしていくことも必要になるかと思います。そういった部分と、自分のやりたいこととのバランスはどう取っているのでしょうか。

佐久間 「ここは受けなくなったな」とか「笑ってくれる人が少なくなっているから、本当にウケてほしいところのために外そう」みたいなことは考えるんですけど、僕の作るジャンルがほぼお笑いなんで、基本的には芸人さんと一緒でウケる・ウケないで考えていますね。あと西加奈子さんが言っていたんですけど、どんな表現だって人を傷つけるので、どんなものも絶対に大丈夫だとは思わないようにしています。絶対大丈夫だと思うと、とんでもない地雷を踏む気がするんですよね。

藤井 確かに、ウケる・ウケないは日々更新されていて、「水曜日のダウンタウン」の初期にやっていた企画にも、今だったらやらないものはいっぱいありますね。あとは「これ、怒る人もいるだろうな」とわかりながらやっている部分もあって、でも比べたら面白さのほうがちょっと勝っているんじゃないかと信じながら作っていて。まあ失敗もあるんですけど、そこの感覚は自分の中にしかないはずで人にジャッジされる ものでもないんで、それを信じて作っています。最近だと、「水曜日のダウンタウン」で「砂かけババア、部屋に出たら最悪説」という企画をやって、芸人さんの部屋に砂をまいたんですけど(笑)。当然、申し訳ないなと思いながらやっているんですよ。でも、面白さのほうが少しだけ勝っていると信じてます(笑)。

――これからテレビ以外のプラットフォームにも触れて育った人が出演者や作り手になっていくと思うのですが、番組の作り方やスターになる人は変化していくと思われますか?

佐久間 どうなんだろう。いいか悪いかはわかんないですけど、僕らの世代より今の若い子のほうが作り手の名前が前に出て来ているのかなと思いますけどね。僕って古い世代で、オードリーとの掛け合わせとか、「佐久間と誰か」という感じがあると思うんですよ。でも若い世代が作っている番組は、たまたまかもしれないけど、「原田くんの企画(「ここにタイトルを入力」などで話題になったフジテレビディレクター・原田和実)」「大森の企画(「奥様ッソ」などを手がけたテレビ東京プロデューサー・大森時生)」とか、クリエイターの名前が先にくる番組が多いから、これからどうなっていくんだろうなとは思っています。

藤井 スポーツは地上波でやっていなくて、DAZNとかに入らないとトップクラスの試合が見られないことが増えているじゃないですか。現状のように面白いバラエティがテレビにたくさんあれば、そんなに大きく変わらないんじゃないかなという気がしているんですけど、今後、本当に面白いものは有料じゃなきゃ見られないようになると、知るきっかけが減って情報に格差が生まれていって、影響が出てくるのかもしれないですね。

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  1. 1. 佐久間宣行×藤井健太郎(上) それぞれの強みと映像作りにおける思い「ずっと記憶に残るようなオンエアを」
  2. 2. 佐久間宣行×藤井健太郎(中) バラエティーのスターが生まれる出発点は「あの人のここ、いいよな」
  3. 3. 佐久間宣行×藤井健太郎(下) GOサインの基準は「ウケるかウケないか」 演出の上での心得も「絶対に大丈夫はない」

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