あす23日より公開されるアニメーション映画『かがみの孤城』の公開前夜祭舞台あいさつが22日、都内の劇場で行われた。観客の前にクリスマスを意識した服装の、原恵一監督、声優を務めた當真あみ、芦田愛菜、宮崎あおい（※崎＝たつさき）、さらに原作者の辻村深月氏が登壇。映画公開を迎える喜びなど、思いの丈を語った。

【写真】その他の写真を見る

　2018年本屋大賞を史上最多得票数で受賞した同名小説を、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ！オトナ帝国の逆襲』などを手がけ、泣けるアニメーションの名手としてファンの多い原監督がアニメーション映画化。5年ちかい歳月をかけて公開にこぎつけた原監督は、「いい夜ですね。あしたから公開されて、否応なく、数値化される。観客動員、興行収入、ポイント評価。今夜はそんなことを考えずに過ごしたいです」と本音をポロリ。しかし、「できあがったものに関しては自信がある」と語った。

　アニメ化に当たり、原作者の辻村氏からは「注文はほぼ、いや全然なかった。それですごく作りやすかった」と原監督。辻村は「原監督は、主人公のこころが、すごく内気だった女の子からヒロインになるまでの映画にしたいとおっしゃっていて、こころ役の當真さんがこころと同じようにこの作品のヒロインになっていくところを間近で目撃できたこと、當真さんの等身大の時間をいただけたことを原作者としてとても感謝しています」などと語り、今回のアニメ化に大満足の様子だった。

　声優初挑戦で主役の大役を務めた當真にふれ、アフレコをすべて終えた瞬間に「すてきな涙を流していた」と原監督が明かすと、當真は「初めて声優をやって、初めての経験にワクワクして、楽しかった半面、不安というか、作品に対するプレッシャーもあって、頑張らなきゃという気持ちがあったので、無事に終えられて、肩の荷が下りて安心したのと、終わっちゃうことへのさびしさと、いろんな気持ちがあふれて涙が出た」と振り返っていた。

　本作は、学校での居場所をなくし、部屋に閉じこもっていた中学生・こころが、ある日突然、不思議な鏡の城に招かれ、見ず知らずの中学生6人とともに、城に隠された鍵を探す、ファンタジーミステリー。

　當真は「迷った時、悩んだ時、背中を押してくれる映画。原作を読んだ時も、完成した映画を観た時も、こころちゃんたちみんなが成長していく姿に背中を押された」と作品をアピール。

　辻村作品の大ファンで、オオカミのお面をかぶった謎の少女「オオカミさま」役の芦田は「味方になってくれるような映画。こころちゃんたちが頑張る姿を見ると私たちも頑張ろうという勇気をもらえるし、つらさにもがいている自分もありのままでいいんだよと受け止めてくれるような温かさのある作品。この映画だけは私の味方でいてくれる、と思える」とコメント。

　こころを見守るフリースクールの喜多嶋先生役の宮崎は「世界を変えてくれる映画。学生の頃は学校という世界がすべてで、学校でうまくいかなかったり、友達とうまがあわなかったりすると、それですべてが終わりだと思ってしまう。だけど、世界はもっと広いし、違う世界がいっぱいある。大人になった私たちにも当てはまることで、今いる場所がすべてではないから、視点が変えて、違う世界があることに気づいて、心を軽くしてくれる映画なんじゃないかな」と、役柄そのままに語っていた。

　辻村も「小説書いている時に目標としていることの一つが、自分のために書かれた本だと思ってもらうこと。私もいろんな本や映画を自分のためのものだ、と思って読んだり、観てきたりしました。この映画はあなたのための映画、あなたの居場所になってくる映画だと思います」と話していた。

　イベントの締めくくりには、鏡のように光り輝く特製「氷の孤城」が登場し、當真の「かがみの孤城、開城です」のかけ声で映画の公開を祝った。