ドラマ『silent』が本日22日のクライマックスに向けてますます視聴熱が高まる中、聞こえない夫と聞こえる妻がありのままの日常を配信する「みゆみゆチャンネル」がYouTubeで話題となっている。中でもドラマの感想をろう者と聴者それぞれの視点から語り合う動画は「silentが伝えようとしていることがより深くわかった」と、ドラマの行方と共に注目する視聴者が多い。紬と想の未来への希望も抱かせてくれる“リアルsilent夫婦”に話を聞いた。
■『silent』を通して感じる、ろう者・夫の率直な想い「聴者と一緒にいて『負担じゃないか』と心配になってしまう」
ドラマ『siient』は、川口春奈演じる主人公の青葉紬が、かつて本気で愛した目黒蓮扮する佐倉想と、音のない世界で再び出会う恋愛ストーリー。いよいよ本日最終話を迎えるが、聴者である紬と後天的にろう者になった想の距離は縮まるにつれて、気持ちがすれ違っていく。多くの視聴者が見守る中、どこよりも考察が深いとして話題を呼んでいるのが、YouTubeの「みゆみゆチャンネル」だ。
チャンネルを配信するのは聞こえない夫・ととさんと聞こえる妻・ゆうこさん。2人は手話で会話するが、字幕付きでろう者も聴者も問題なく視聴できる編集になっている。
「最初はドラマの人気にあやかって若い視聴者を獲得するぞみたいな気持ちで(silent考察トークの)動画を作ったんです(笑)。ところが想像以上にドラマにハマってしまって。ドラマの感想を語り合うことで『こんなふうに考えてたんだ』とお互い改めて知ることも多いですね」(ゆうこさん)
ととさんは作中に出てくる奈々(夏帆)と同じく、生まれつき耳が聞こえない。
「中途失聴の想くんの気持ちは『考えすぎじゃないかな』と思うこともありますね。ただ聴者と一緒にいて『負担じゃないか』『気を使わせてしまってるんじゃないか』と心配になってしまうことがあるのは僕も同じです。でもゆうこさんとは出会ったときから、聞こえる/聞こえないを意識しないで一緒にいられたんですよ。自分でも不思議だったんですけど」(ととさん)
■めったに笑わない彼の笑顔を見たい――子連れ再婚へ 大好きだったカラオケも「ととさんと溝ができてしまうくらいなら、別にいいかな」
ご夫婦はゆうこさんが2人の娘を連れて再婚する形で家族になった。現在は三女も生まれている。出会いは同じ職場で、ゆうこさんが手話通訳を担っていたことから距離が縮まったという。
「ただ当時は私の手話も下手で、たぶんろう者にも100%は伝わってなかったと思うんです。でも、ととさんは全部を読み取ってくれたんですよね」(ゆうこさん)
母国語が違うカップルが、互いにつたない言語で語り合うようなものなのだろうか。
「たしかにろう学校時代の友人のほうが手話もスムーズですけど──。でもゆうこさんとは最初のデートから、会話がすごく弾んだ記憶があるんですよ」(ととさん)
ととさんの性格を「最上級に優しい」と言うゆうこさん。その笑顔に惹かれてゆうこさんが積極的に口説く形で交際が始まった。
「彼は当時めったに笑わない人だったんです。だから笑ってくれるとうれしくて。そのうち彼の笑顔に幸せを感じるようになっていきました」(ゆうこさん)
ろう者と聴者を"隔てる"ものとして、ドラマ『silent』では音楽が重要なエッセンスになっている。ゆうこさんもととさんと付き合うようになってから大好きだったカラオケをやめたというが、そこにはどんな想いがあったのだろうか。
「ととさんと溝ができてしまうくらいなら、別にいいかなって思うようになったんです。カラオケができないことが、それほど苦だとも思わなかったですしね」(ゆうこさん)
ドラマではバリアフリー映画を提案する紬に、想が「自分と一緒でなければ自由に映画のラインナップを選べるのでは」と気にかけるシーンもあった。そんな想に紬は「ただ一緒にいたいだけ」と伝える。
「ゆうこさんがカラオケをやめたと聞いたときは驚きましたね。でも一緒に過ごす時間も増えるわけですし、自然とそうなってくれたんだったら──。夫婦ってそういうものなのかなとも思うようになりました」(ととさん)
■ろう者、聴者のそれぞれの立場ゆえに、寂しく感じることも
YouTubeの「みゆみゆチャンネル」は聞こえないパパと聞こえるママ、そして3人の娘たちという仲良し家族によるファミリー動画チャンネル。もともとは長女・みゆかさんとゆうこさんでスタートしたが、みゆかさんが結婚して実家を離れてからは主にご夫婦と三女のありのままの日常を配信している。
「ととさんはシャイなのでYouTubeは合わないかなって勝手に思い込んでたんです。だけど撮影の前に洋服を選んだり髪型を整えたりしてるのを見ると、意外に楽しんでるじゃんって思いました(笑)」(ゆうこさん)
「それと映りはやっぱり多少気になります(笑)。YouTubeを始めてから出かける機会が多くなったし、何を撮ろうかといった会話も増えて、家族がもっと仲良くなったように思いますね」(ととさん)
交際を深めてゴールインした2人だが、結婚に際してのハードルはあったのだろうか。
「私は特になかったですね。思春期だった次女に『新しいお父さんができて嫌じゃなかった?」と聞いたら、『別に嫌じゃなかったけど、それはととさんだったからかもしれない』と言っていました」(ゆうこさん)
ドラマでは「ろう者の約8割はろう者同士で結婚する」というセリフがあった。ととさんは「実際そうだし、『silent』はきちんと現実に向き合ってくれている」と証言する。
「これを言っていいかどうかわからないんですが──。ろう者としてはろう者と一緒にいるほうが気持ち的に楽なところもあるんです。僕も正直、聴者といて緊張してしまうことは今でもあります。おそらく聴者もそうだと思うんですけど」(ととさん)
「ととさんがろう学校時代の友だちと話が弾んでいる横で、寂しいなと思ったことはたしかにありましたね。私は手話が完全に完璧というわけではないですから」(ゆうこさん)
それでも2人は「ほかの誰でもなく、この人と人生を送りたい」と家族になった。人間は1人1人違うものであり、夏がだめだったりセロリが好きだったり、耳が聞こえたり聞こえなかったりする。そうした違いを受け入れながら距離を縮めた先に、夫婦やパートナーという形がある。ととさんとゆうこさんはそんなシンプルな幸せの答えにたどり着いた2人だ。
「紬ちゃんと想くんも大丈夫だよって言ってあげたいですね。周りが心配するのはとてもよくわかるけど大丈夫」(ととさん)
多くの視聴者と同じように、ととさんもゆうこさんも『silent』の2人のハッピーエンドを願っている。恋愛ドラマを見ながら恋人時代のような気持ちになることもあるのだろうか。
「ありますね、昔を思い出してちょっとときめいたりとか(照)」(ととさん)
「私はそれはないですね(キッパリ)。純粋にドラマとして楽しんでいます」(ゆうこさん)
ただ、伝える手段が違うだけ。2人のやりとりを見ていると、それは“障害”ではなく、また違うベクトルでお互いの気持ちを見つめ直すあり方なのだと思わされた。
(取材・文/児玉澄子)
■『silent』を通して感じる、ろう者・夫の率直な想い「聴者と一緒にいて『負担じゃないか』と心配になってしまう」
ドラマ『siient』は、川口春奈演じる主人公の青葉紬が、かつて本気で愛した目黒蓮扮する佐倉想と、音のない世界で再び出会う恋愛ストーリー。いよいよ本日最終話を迎えるが、聴者である紬と後天的にろう者になった想の距離は縮まるにつれて、気持ちがすれ違っていく。多くの視聴者が見守る中、どこよりも考察が深いとして話題を呼んでいるのが、YouTubeの「みゆみゆチャンネル」だ。
チャンネルを配信するのは聞こえない夫・ととさんと聞こえる妻・ゆうこさん。2人は手話で会話するが、字幕付きでろう者も聴者も問題なく視聴できる編集になっている。
「最初はドラマの人気にあやかって若い視聴者を獲得するぞみたいな気持ちで(silent考察トークの)動画を作ったんです(笑)。ところが想像以上にドラマにハマってしまって。ドラマの感想を語り合うことで『こんなふうに考えてたんだ』とお互い改めて知ることも多いですね」(ゆうこさん)
ととさんは作中に出てくる奈々(夏帆)と同じく、生まれつき耳が聞こえない。
「中途失聴の想くんの気持ちは『考えすぎじゃないかな』と思うこともありますね。ただ聴者と一緒にいて『負担じゃないか』『気を使わせてしまってるんじゃないか』と心配になってしまうことがあるのは僕も同じです。でもゆうこさんとは出会ったときから、聞こえる/聞こえないを意識しないで一緒にいられたんですよ。自分でも不思議だったんですけど」(ととさん)
■めったに笑わない彼の笑顔を見たい――子連れ再婚へ 大好きだったカラオケも「ととさんと溝ができてしまうくらいなら、別にいいかな」
「ただ当時は私の手話も下手で、たぶんろう者にも100%は伝わってなかったと思うんです。でも、ととさんは全部を読み取ってくれたんですよね」(ゆうこさん)
母国語が違うカップルが、互いにつたない言語で語り合うようなものなのだろうか。
「たしかにろう学校時代の友人のほうが手話もスムーズですけど──。でもゆうこさんとは最初のデートから、会話がすごく弾んだ記憶があるんですよ」(ととさん)
ととさんの性格を「最上級に優しい」と言うゆうこさん。その笑顔に惹かれてゆうこさんが積極的に口説く形で交際が始まった。
「彼は当時めったに笑わない人だったんです。だから笑ってくれるとうれしくて。そのうち彼の笑顔に幸せを感じるようになっていきました」(ゆうこさん)
ろう者と聴者を"隔てる"ものとして、ドラマ『silent』では音楽が重要なエッセンスになっている。ゆうこさんもととさんと付き合うようになってから大好きだったカラオケをやめたというが、そこにはどんな想いがあったのだろうか。
「ととさんと溝ができてしまうくらいなら、別にいいかなって思うようになったんです。カラオケができないことが、それほど苦だとも思わなかったですしね」(ゆうこさん)
ドラマではバリアフリー映画を提案する紬に、想が「自分と一緒でなければ自由に映画のラインナップを選べるのでは」と気にかけるシーンもあった。そんな想に紬は「ただ一緒にいたいだけ」と伝える。
「ゆうこさんがカラオケをやめたと聞いたときは驚きましたね。でも一緒に過ごす時間も増えるわけですし、自然とそうなってくれたんだったら──。夫婦ってそういうものなのかなとも思うようになりました」(ととさん)
■ろう者、聴者のそれぞれの立場ゆえに、寂しく感じることも
YouTubeの「みゆみゆチャンネル」は聞こえないパパと聞こえるママ、そして3人の娘たちという仲良し家族によるファミリー動画チャンネル。もともとは長女・みゆかさんとゆうこさんでスタートしたが、みゆかさんが結婚して実家を離れてからは主にご夫婦と三女のありのままの日常を配信している。
「ととさんはシャイなのでYouTubeは合わないかなって勝手に思い込んでたんです。だけど撮影の前に洋服を選んだり髪型を整えたりしてるのを見ると、意外に楽しんでるじゃんって思いました(笑)」(ゆうこさん)
「それと映りはやっぱり多少気になります(笑)。YouTubeを始めてから出かける機会が多くなったし、何を撮ろうかといった会話も増えて、家族がもっと仲良くなったように思いますね」(ととさん)
交際を深めてゴールインした2人だが、結婚に際してのハードルはあったのだろうか。
「私は特になかったですね。思春期だった次女に『新しいお父さんができて嫌じゃなかった?」と聞いたら、『別に嫌じゃなかったけど、それはととさんだったからかもしれない』と言っていました」(ゆうこさん)
ドラマでは「ろう者の約8割はろう者同士で結婚する」というセリフがあった。ととさんは「実際そうだし、『silent』はきちんと現実に向き合ってくれている」と証言する。
「これを言っていいかどうかわからないんですが──。ろう者としてはろう者と一緒にいるほうが気持ち的に楽なところもあるんです。僕も正直、聴者といて緊張してしまうことは今でもあります。おそらく聴者もそうだと思うんですけど」(ととさん)
「ととさんがろう学校時代の友だちと話が弾んでいる横で、寂しいなと思ったことはたしかにありましたね。私は手話が完全に完璧というわけではないですから」(ゆうこさん)
それでも2人は「ほかの誰でもなく、この人と人生を送りたい」と家族になった。人間は1人1人違うものであり、夏がだめだったりセロリが好きだったり、耳が聞こえたり聞こえなかったりする。そうした違いを受け入れながら距離を縮めた先に、夫婦やパートナーという形がある。ととさんとゆうこさんはそんなシンプルな幸せの答えにたどり着いた2人だ。
「紬ちゃんと想くんも大丈夫だよって言ってあげたいですね。周りが心配するのはとてもよくわかるけど大丈夫」(ととさん)
多くの視聴者と同じように、ととさんもゆうこさんも『silent』の2人のハッピーエンドを願っている。恋愛ドラマを見ながら恋人時代のような気持ちになることもあるのだろうか。
「ありますね、昔を思い出してちょっとときめいたりとか(照)」(ととさん)
「私はそれはないですね(キッパリ)。純粋にドラマとして楽しんでいます」(ゆうこさん)
ただ、伝える手段が違うだけ。2人のやりとりを見ていると、それは“障害”ではなく、また違うベクトルでお互いの気持ちを見つめ直すあり方なのだと思わされた。
(取材・文/児玉澄子)
2022/12/22