先月25日に行われた『RIZIN.38』（さいたまスーパーアリーナ）で、1年9ヶ月ぶりに日本のリングに立ち、対戦相手の金太郎に2ラウンドで肩固めで一本勝ちした“日本のエース”堀口恭司。世界中の格闘技ファンが注目したこの試合の直後、ORICON NEWSでは堀口選手の独占インタビューを行った。

【写真】その他の写真を見る

　全2回の2回目は、リングで対峙した金太郎の印象や前日計量で挑発されたときの本音、ブームとなっている格闘家のSNSバトル、UFCへの再挑戦、さらにはプライベートまで、さまざまな話題を語ってもらった。なお、今回は動画撮影も行っており、YouTube「ORICON NEWSチャンネル」と「堀口恭司チャンネル」のコラボとして、前編は「ORICON NEWSチャンネル」、後編は「堀口恭司チャンネル」で公開される。

■金太郎の挑発には「この野郎、ナメてるな」　試合後にはアメリカの練習を提案

――金太郎選手との試合について、実際に戦ってみた感想を教えてください。

【堀口】すごくいい選手で、自分の癖とかをすごい研究したんだろうなと思います。練習してきたんだろうなっていうタイミングでカウンターを打ってきたり、強かったですね。

――前日計量で向かい合ったとき、金太郎選手が堀口選手の顔に拳を近づけて挑発するシーンがありましたが、あのときの精神状態は？

【堀口】まぁ冷静ですけど「この野郎、ナメてるな」っていう気持ちはありますよ。イラッとはしないですし表にも出さないですけど、「この野郎」ってなりますよね（笑）。

――堀口選手が相手を挑発したことってあるんでしょうか？

【堀口】ないですね。もちろんプロとして、多分そういうパフォーマンスも必要だと思うんですけど、 自分は空手をずっとやってて、やっぱ礼儀も大事にしたいうので、ああいう挑発はできないです。リングの上で見せればいいかなと思ってるんで。

――金太郎選手は試合後に「いろいろ条件が許せば堀口選手のところで練習したい」と発言し、堀口選手もツイッターで「機会があれば一緒に練習しましょう」と呼びかけていました。

【堀口】自分も日本で練習をしていて限界があると感じたからアメリカに行ったので、金太郎選手もすごくいい選手だからアメリカで練習すればもっと強くなれるんじゃないかと思って、誘ってみました。でもわからないですよ、自分がいいって言えばATTはOKって言うけど、自分がダメって言ったらATTもNGになるので（笑）。

――試合が終わってから、日本でどんな事をして過ごしていますか？

【堀口】地元の渓流釣りに2日くらい行って、自分の休みは終わりで、それからはもうずっと仕事です。この時期しかできない仕事だし、やらなきゃいけないことなんですけど、たまに寝てバックレようかなって（笑）。

■SNSの挑発は「自分のスタイルじゃない」試合後の握手にも疑問を感じて…

――バンタム級から階級を下げてフライ級への転向は本格的に検討している？

【堀口】そうですね。条件とかタイミングになると思いますし、いまベラトールにフライ級がなくて新しく作ってくれるのか交渉しているとこです。RIZINバンタム級のベルトは返上することになりますが、またトーナメントができるんじゃないですか。

――UFCへの再挑戦についても発言されていましたが、可能性はある？

【堀口】はい、視野に入れてやっていきたいなと思っています。今のRIZINとベラトールの契約が1番ではありますが、常に上を見てやっていきたいし、UFCにはやり残したことがあるので。

――金太郎選手との試合前の煽りVTRで「自分は駆け橋になって、犠牲になっていくタイプ」という発言がありましたが、その意味をもう少し教えてください。

【堀口】うーん、道を切り開いて、なんか事故で死んじゃうみたいな（笑）、自分はそういう感じかなと思ってます。後から来る人たちのために道を作る役割。ほかにできる人がいないので、まあ俺しかやる人がいないんだろうなと思ってます。本当は整理された道を歩くほうがラクですけど、道がないなら作ればいい。犠牲になってるとまでは思わないけど、自分を客観視したらそうだろうなっていう感じですかね。

――同じく煽りVTRで「黙って練習してれば強くなる」ともおっしゃっていました。当然のことなのですが、最近はSNSで過激に挑発して試合を盛り上げていく流れが格闘技界のトレンドにもなっています。この流れをどうお考えですか？

【堀口】プロとしてそういうのもやるべきなのかな、と考えたことはありますけど、やっぱり自分のスタイルじゃないな、と。自分は正直に生きてきて、キャラを作らないというか、作れないんで。文句を言ったりするのも、プロとして盛り上げるっていう意味ではいいですけど、すごい行き過ぎてる部分が多いので、自分は乗れないですね。

――アメリカでも増えてますよね？

【堀口】ありますけど、試合前に煽っておいて、仲が悪いのに試合後に握手をしちゃうのも「違うんじゃない？」って自分は思っちゃいます。だったら試合後も仲が悪いままのほうが、きれいなんじゃないかなって。「それで全部チャラか」って、そういうのも納得がいかないので。でも、お金のことを考えたら、そういうふうに煽って盛り上げたほうが稼げるのかなとも思います。そこは難しいですよね。

■引退後のプラン、結婚の予定、好きな女性のタイプ、子供時代…日本最強ファイターのプライベート？

――今年で32歳となりますが、引退後の人生プランは考えますか？

【堀口】40歳まで続けることを目標にしていますが、引退後は釣り船屋をやりたいなと考えてます（笑）。せっかくグリーンカード（アメリカ永住権）を取ったので、アメリカでは海釣りのチャーター便みたいなこともやって、日本とアメリカを行ったり来たりしたいですね。

――プライベートなことですが、ご結婚のご予定は？

【堀口】予定はないですけど、結婚したいなっていう気持ちはあります。いつになるのかわかんないですけど（笑）。アメリカで（愛犬の）ロイしかいないし、家とジムの往復ばっかりなので。

――好きな女性のタイプは？

【堀口】昔の日本的な気遣いができる人ですね。自己主張が強くてもいいのですが、人前に出たときに気が遣えないとか、ちょっとイラッとしちゃうなと思います。試合前とかでも、自分はあんまりピリピリしないんですけど、そういう時でも「もっとかまって」みたいなことを言われたら、「この野郎…」ってなるじゃないですか（笑）。外見の好みとかはあまりないですし、好きな女優さんとか聞かれてもテレビを見ないのでわからないです。好きになった人がタイプって感じですね。

――将来お子さんが誕生したら、自分と同じように格闘技をやらせたいですか？

【堀口】やらせたいと思います。いまの日本って、教育的にいいのか悪いのか自分はわからないんですけど、「叩いたらダメ！」ってなってて、人の痛みがわからない子が多いんじゃないかと思っていて。叩かれたらこれだけ痛いっていうのがわからないと、人の痛みもわからないじゃないですか。だから、やり過ぎは良くないけど、少しぐらいはやらないとダメじゃないかと自分は考えるので、人の痛みを知るためにも格闘技っていいと思います。

――アメリカで育てるとなると、どんな競技がいいのでしょう？

【堀口】いい先生がいれば空手とか武道がいいですよね、礼儀とかも学べますし。そういうのって、だんだん失われつつあるじゃないですか。さっきの話でもあったSNSがすごい発達してきて、ちょっと言い方が悪いかもしれないですが、不良がいきがってブイブイ言わせる時代になってしまったので。だからこそ礼儀をちゃんとできる子に育てたいです。アメリカはレスリングが盛んなので、外でレスリングをやらせて、自分の家で礼儀や日本人の精神を教えるとかもいいですね。

――『RIZIN.38』の会場で堀口選手を応援する小さい子がたくさんいましたし、PPVで応援していた子も多いと思いますが、堀口選手のように強くなりたい子にアドバイスはありますか？

【堀口】よく聞かれるのですが、そういう質問には答えていなくて、自分で考えることが強くなるための一番の近道だと思うんです。自分の体験談で教えることはできますけど、人に教わったことってすぐに忘れてしまうし、でも自分で体験したことって絶対に忘れない。何かになりたいと思ったら、どうしたら自分はそうなれるかを考えて、自分で体験しようとする気持ちが一番大切です。

――親として子どものやりたいことをなるべく体験させることも、大事ですね。

【堀口】でも、子どもって自分から「こうなりたい」って最初は思わないですよ。自分の場合は親が無理やり空手を始めさせて、だんだん中学ぐらいになって「俺こいつに勝ちたい、ぶっ飛ばしたい」と思って強くなったんです。だから、最初は無理矢理でも何でも始めさせて、そこから目標を与えてあげられる親が1番いいんじゃないかな。子どもなんて最初は辛いことは何でも嫌がりますから。

――堀口選手も最初は空手が嫌だった？

【堀口】自分も無理やり空手教室に入れられて「嫌だ嫌だ」って泣いても、親に車から落とされて「バイバイ」って置いてかれて（笑）、そのうち耐えられちゃったって感じです。だんだんと子どもが自分で考えられるようになると、それが目標や夢になるし、何かを我慢てきたっていう経験は、すごくその子のためになりますよ。忍耐力って、人間にとってすごい大事だと思うんです。特にこの日本のぎゅうぎゅう詰めの窮屈な生活の中で、耐えられる力ってすごい武器になると思います。

○堀口恭司（ほりぐち・きょうじ）
RIZIN、Bellatorの二大タイトル同時制覇という偉業を成し遂げた史上最強の日本人ファイター。2010年に修斗でプロデビューし、13年からUFCに参戦。17年にRIZINと契約し、18年大みそかにRIZINバンタム級、翌19年6月にBellatorバンタム級の王座を獲得した。19年11月に負傷により両タイトルを返上。20年大みそかの朝倉海戦で王座を奪還した。現在はRIZINとBellatorの両団体で活躍中。

★YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」