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川端康成の知られざる“BL作品”が刊行1週間で異例の重版 SNSでも歓喜の声

 川端康成の没後50年にあたる4月に刊行された『少年』(新潮文庫)が、発売後7日で重版が決まるという異例の売れ行きを見せている。川端の知られざる“BL作品”として知られる同書は、これまで全集でしか読めなかった、貴重で珍しい作品で、1冊の本になるのは、目黒書店より単行本が刊行された1951年以来、70年ぶりのことになる。

川端康成の『少年』(新潮文庫)が刊行1週間で異例の重版

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 大阪市天満此花町に生まれた川端は、幼くして父母を亡くし、7歳にして祖父と2人で暮らすようになる。家計は貧しく、大坂府立茨城中3年生の時は、学校から帰ると病中の祖父を介護し、世話をする日々。尿瓶の底に響く小水の音を「谷川の清水の音」と表現した感性の持ち主でしたが、客観的にみれば「ヤングケアラー」の典型だった。

 介護の甲斐もなく祖父が死ぬと、文字通り独りになった川端は16歳にして中学の寄宿舎に入り、卒業までここで過ごす。十代の川端が、孤独と屈折を抱えていたことは想像にかたくないが、そんな川端の前に現れたのが、同室の美しい後輩「清野少年」だった。

 川端は2人の関係を赤裸々につづっている。「お前の指を、手を、腕を、胸を、頬を、瞼を、舌を、歯を、脚を愛着した」「床に入って、清野の温い腕を取り、胸を抱き、うなじを擁する。清野も夢現のように私の頸を強く抱いて自分の顔の上にのせる。私の頬が彼の頬に重みをかけたり、私の渇いた脣が彼の額やまぶたに落ちている」(以上本文より)。

 ある出来事をきっかけに、少年と会うことを完全に止めてしまう。川端22歳の夏、京都嵯峨での事だった。唐突な別れの裏に何があったのか。川端が「妬み」と書いたのはなぜなのか…。川端の孤独な魂にとって「少年」とはなんだったのか。後年、50歳になった時に、同書を書くことを決めた。

 同書の反響について、新潮社は「BLファンの女性読者に手に取られていると分析できます。読者全体の3分の1を30~40代の女性が占めています。また、読者が併買した書籍として、よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社)の最新刊や、萩尾望都『ポーの一族 秘密の花園』(小学館)などが上位にランクイン。比較として、同じく川端の『古都』のデータを見ると、上位を占めるのは他の川端作品や、三島由紀夫等が大半。手に取っている読者の傾向から見ても『少年』の売れ方は異例と言えます」としている。

 SNS上でも反響を呼び「ついに『少年』が文庫化! ありがとうございます! 近隣の図書館に川端全集の所蔵がなかったため、県外の図書館に一時間以上かけて赴き、『少年』を読んだ日をおもいだしました。よき時代がきましたね……」などをはじめとした、歓喜の声が広がっている。

■『少年』内容紹介
お前の指を、腕を、舌を、愛着した。僕はお前に恋していた――。相手は旧制中学の美しい後輩、清野少年。寄宿舎での特別な関係と青春の懊悩(おうのう)を、五十歳の川端は追想し書き進めていく。互いにゆるしあった胸や唇、震えるような時間、唐突に訪れた京都嵯峨の別れ。自分の心を「畸形」と思っていた著者がかけがえのない日々を綴り、人生の愛惜と寂寞(せきばく)がにじむ。川端文学の原点に触れる知られざる名編。

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