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ネトフリアニメ『エデン』、国際色豊かなスタッフを率いた入江泰浩監督の胆力

 Netflixにて独占配信中のオリジナルアニメシリーズ『エデン』(全4話)。本作は、『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』で世界中に熱狂的なファンを多く生み出した入江泰浩監督が、世界各国のクリエーター&スタッフと作り上げたSFファンタジーだ。「いい形で結実できたと思います」と語る監督の思いを聞いた。

Netflix オリジナルアニメシリーズ『エデン』入江泰浩監督 (C)ORICON NewS inc.

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 本作に携わったスタッフの顔ぶれは――原案・プロデューサーは『イノセンス』のジャスティン・リーチ(米国)。キャラクターデザインは『カウボーイビバップ』の川元利浩(日本)。コンセプトデザインは『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』のクリストフ・フェレラ(フランス)、脚本は『クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃』のうえのきみこ(日本)、アートディレクターは『上海バットマン』のクローバー・シェ(中国)、音楽は『メイドインアビス』のケビン・ペンキン(オーストラリア)、そして、アニメーション制作は『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』や『ヒックとドラゴン』シリーズを手がけた制作会社CGCG(台湾)、背景はNice Boat Animation(中国)――ここまで国際色豊かなチーム編成で制作するというのは、日本ではとても珍しい試みだ。

 言葉の問題もあるだろうし、工程管理も難しそうだし、いろいろ苦労したのではないかと聞いてみたら、とてもポジティブな答えが返ってきた。

 「海外のスタッフと一緒に作るからといって、これまでの自分のやり方を変えることはありませんでした。自分が培ってきた手法であるとか、技術であるとか、チョイスの仕方というのをそのまま『エデン』に注ぎ込みました。やはり、自分が一番得意とするやり方でベストを尽くすことが、ベストな作品につながると思っているからです。企画としていろんな各国の優秀なクリエーターたちを集めただけですと、お互いにぶつかりあって空中分解してしまうこともあり得ますが、今回はみんなが一つの作品のためにそれぞれの力を発揮しあってくれたので、その部分ではすごく良かったと思います。制作中は、作品づくりに専念することができましたし、こちらからこうしてください、と投げたらちゃんと返ってくる、よい関係で作業を進めることができました。いい形で結実できたと思います。大きな満足を得ているのは間違いないですね」

■ロボットたちの“子育て”も見どころ

 多国籍なスタッフで作り上げた『エデン』は、“無国籍”な作品だ。物語の舞台は、ロボットしかいない自然豊かな完璧な世界<エデン>。農業用ロボットのE92とA37はある日、サラという名の“人間” の赤ちゃんが入ったカプセルを偶然発見し、眠りから目覚めさせてしまったことから物語が始まる。

 この世界では人間が悪者だとされていた。2体はサラに危険が及ばぬよう、安全な場所に隠しながら密かに育てることを決意する。充電はできない、楽しいときに笑う――E92(お父さん)とA37(お母さん)は手探りでサラを育てるうちに、お互いを想い合い、家族のような“絆”を育んでいく。やがてサラは好奇心いっぱいの少女に成長し、“なぜ人間は自分だけなのか、ほかの人間たちはどうしてしまったのか…”と疑問を抱くようになる。そんなある日、ロボットしかいないはずの<エデン>で遠くから自分を呼ぶ声に気づく――。

 ほかの人間たちはどうしてしまったのか。まさかウイルスに!? 昨年から世界中で猛威を振るっているコロナウイルスのことを想起することもできるが、本作は2019年末にはほぼほぼ完成していたそう。

 「世界的な問題が起きた時に、人はどういう行動をとるのか、とってしまうのか、いろいろとシミュレーションを重ねながら『エデン』は作っていったのですが、図らずも、ですよね。『エデン』の中で描いたようなことが、コロナ禍で実際に起きている。あくまでも僕らが作っているのは娯楽作品ですので、全く意図していなかったのですが、そういう現実とのリンクというのもあり得ること。それが作品にとっていい方向に作用するのか、マイナスなのか、まだ見えないところはありますね」

 本作では、ロボットたちの“子育て”も見どころ。「私たちの現実の生活の中でも似た状況というのは、おそらくあるんじゃないか、というのは作りながら感じていました」と入江監督。SFファンタジーの姿を借りて、現実の世界に突きつけてくるものがある。

 「例えばロボットが記憶をリセットされるシチュエーションは、人間が歳を重ねて認知症になってしまうことと近いものがあるんじゃないか、といったことを感じながら作っていきました。作品の中で各キャラクターはそれぞれ大切なものを抱えています。失うものもあれば、得るものもある、というところでのキャラクターの気持ちは大切に描写しました。“家族”というコミュニティに形容できると思うのですが、劇中にはサラの家族的な存在として2体のロボットがいて、ほかにもう一組家族が出てきますが、大切なものを失ったら、奪われたらどういう気持ちになるのか、その結果どういう行動をとるのか、視聴者の方にもいろいろ感じ取ってもらえたらいいな、と思っています」

■誰も手をつけていないものに挑戦したい

 ストーリーだけでなく、ビジュアル的にも無国籍な印象を抱いた。日本のテレビアニメとも、米国のディズニーやピクサーとも、ヨーロッパのアートアニメーションとも違う、文字通り『エデン』だけのオリジナルアニメーションに仕上がっているのではないだろうか。

 「アニメーターから背景会社まですべて日本国内でつくっていたら、また違った印象のアニメーションになっていたと思います。いろいろなバックボーンを持つ人たちの要素、感覚が作用して、『エデン』が唯一無二のアニメーションになっているのだとしたら、自分としてもとてもうれしいですね。意図してやろうとしても難しいことですから」

 だが、入江監督自身は出来上がった作品を観て、むしろ逆の気づきがあったという。

 「完成してから自分でも気づいたことなのですが、自分で思っている以上に、好きな映画や好きな監督の作品から影響を受けているんだな、と思いました。先程、自分が良いと思うものをチョイスしてきたと言いましたが、その選択に多大な影響を与えていたのが、10代の頃に観た『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』、『となりのトトロ』といった宮崎駿監督の作品群だったり、『スター・ウォーズ』シリーズだったり。自分の創作の源泉みたいなものを感じました」

 『エデン』の影響を受けて育った次世代のクリエーターがいつか現れるかも。もちろん、本作にまつわるさまざまな経験は、入江監督自身の今後の作品づくりにも生かされることだろう。

 「作品づくりというのは、ここまでできるなら、もっとできたんじゃないか、という欲がつきまとうものなのですが、今回、海外のスタッフとのやりとりを含め、制作過程で得たものは、今後に大きく役立つものだと思っています。さらに純度、クオリティーを上げていきたいというのが一つと、もし、まだ自分がチャレンジしたことがないジャンル、まだ誰も手をつけていないものがあるなら、積極的に関わっていきたいと思っています」

■Netflixオリジナルアニメシリーズ『エデン』公式サイト
https://www.eden.netflix.io/

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