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好調『ANN』番組同士の積極交流で新規開拓 狙いは「完全にradikoリスナー」

 今年2月に実施された「ビデオリサーチ首都圏ラジオ聴取率調査」において、ニッポン放送の深夜1時からの帯番組『オールナイトニッポン(ANN)』と深夜3時からの『オールナイトニッポン0(ANN0)』が、月〜土平均で同時間帯単独首位を獲得した(個人全体:12歳〜69歳男女)。ANNでは水曜の乃木坂46、木曜のナインティナイン岡村隆史、土曜のオードリー、ANN0でも水曜の佐久間宣行、木曜のKing Gnu・井口理が単独首位。これらの番組は世代別聴取率でも多くの年代で首位となっており、ANN全体が幅広い世代のリスナーから強く支持される結果となった。

『オールナイトニッポン(ANN)』と『ANN0』のチーフディレクターの石井玄氏 (C)ORICON NewS inc.

『オールナイトニッポン(ANN)』と『ANN0』のチーフディレクターの石井玄氏 (C)ORICON NewS inc.

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 このポジティブな流れはどのように生み出されたのか。ANNとANN0のチーフディレクターの石井玄(いしい・ひかる)氏に、『ANN』の好調の要因や深夜ラジオを取り巻く環境、ライバル局との比較などを聞いてみた。

■チーフD最初の目標は「打倒JUNK」対抗策は“ANNの強み”を生かす

 ラジオ制作会社に所属する石井氏は現在、チーフディレクターとして『ANN』と『ANN0』の全曜日、そしてきょう4日からスタートした毎週土曜の『SixTONESのANNサタデースペシャル』(後11:30)を統括する。同時に自身もディレクター(D)として『ANN』の星野源(火曜)、三四郎(金曜)、オードリー(土曜)、『ANN0』の佐久間宣行(水曜)の4番組と、『銀シャリのほくほくマネーラジオ』(毎週日曜 後6:50)を担当。そして、TBSラジオの『アルコ&ピース D.C.GARAGE』(毎週火曜 深0:00)も手掛けている。「最初は週に生放送1本、収録1本くらいだったのが、担当番組が終わらず増える一方で。6本やってANNのチーフもって、、、やりすぎですよね(笑)」。

 ANNチーフDとしての役割は「各番組のDと番組の方向性とかスペシャルウィークのゲスト案を相談したり、スポンサーとの調整もあったり、パーソナリティが他の曜日にゲストで出る時の協力をお願いしたり、ANNに関わる全部を見ています。ただ、基本は各番組のDに一任しているので、自分が担当する以外の番組はなるべく聴かないようにしています。聴いてしまうとDとして『もっとこうしたほうがいい、自分ならこうする』って口を出したくなるんです。僕が番組Dだったときに上の人からいろいろ言われるのが嫌だったので(笑)、自分からあまり動かないようにして、番組の内容ではなく数字の結果だけでジャッジしています」。

 石井氏がチーフDに就任した2018年4月、最初に掲げた目標が「ANNの裏番組のTBSラジオ『JUNK』に聴取率で勝つこと」だった。そのために取り組んだのだが「ラジオを聴いてない人を取り込むのはもちろん、俳優、アーティスト、アイドル、お笑い芸人とパーソナリティの幅が広い“ANNの強み”を生かそうと考えました。各番組のリスナーはそれぞれのファンが中心ですが、横や縦のつながりで他の番組も聴いてもらえるように意識的に仕掛けて、それが聴取率やradikoの再生数の向上という結果につながっています」。

■パーソナリティの積極交流で認知度アップ ターゲットは「完全にradikoリスナー」

 この1年でも、月曜の菅田将暉と火曜の星野が相互の番組に出演したほか、火曜ANN0のCreepy Nutsが菅田のANNに、土曜のオードリー若林正恭が佐久間の水曜ANN0にゲスト出演した。金曜ANNの三四郎と金曜ANN0の霜降り明星は、ぶち抜きで4時間放送も実施。木曜の岡村のANNに木曜ANN0のKing Gnu井口がたびたび乱入して交流を深め、井口の最終回直前には岡村のほうからゲスト出演した。さらに岡村は、今年の『日本アカデミー賞』で「優秀助演男優賞」を獲得したが、リスナー投票で決まる「話題賞」も狙い、“俳優目線”で星野と菅田をライバル視して番組内でたびたび牽制。結果は星野が受賞したが、授賞式の壇上では星野が岡村の10年前の“迷スピーチ”を引用し、さらに岡村も乗っかるなど、リスナーにはたまらない展開で盛り上げた。

 「パーソナリティのみなさんも交流に積極的で、これをきっかけにほかのANNも聞いてくれる人も増えてきました。今まではANNからANN0という縦のつながりだけでしたが、今はradikoのタイムフリー機能で1週間以内ならいつでも聴けるので、横のつながりが効果的になっています。生放送は“ながら聴き”をしたり、消し忘れで数字としてカウントされている人もいると思いますが、タイムフリーは『その番組を聴こう』という人の数字なので、評価基準にしやすいです。若林さんが結婚を発表した回や、井口さんがゲストのaikoさんと『カブトムシ』を熱唱した回などは、特にタイムフリー再生が多かったですね」

 radikoが誕生して今年で10年が経ち、ラジオを聴くツールとして若年層を中心に広く普及した。石井氏は「極端に言うと、僕がやってる番組はradikoで聴く人をターゲットにしていますし、ANNでは従来の聴取率ではなくradikoの数字が完全な判断基準になっています。ラジオ局全体としては従来のラジオで聴いてくださる方も対象にして番組作りをしますが、ANNとしてはそこを考えなくていい」と断言する。

 また、ANN0は動画配信アプリ「Mix Channel」を通じて、パーソナリティが話している姿を配信している。長年ラジオに親しんでいるリスナーにとっては「耳からの情報だけで楽しむのがラジオ」という常識があるが、物心ついたときからスマホでYouTubeに触れている若い世代にとっては、動画があることが入口となっている。「動画を意識して番組を作っているわけではないですが、SNSでの拡散も含めて付加価値としては大きいと思っています」。

■予想外の反響だった三四郎の「エアライブ」 TBSラジオとの社風の違いとは?

 放送中のSNSでの盛り上がりも意識的に取り組んでいる。「無料の宣伝ツールですし、トレンドに入ることで気がついて聴いてくれる人もいるので、放送前や放送後に担当スタッフがツイートしています。意外に反響があるのが金曜の三四郎で、番組にツッコミどころが多いし、『これって面白いのかな?』って思わず誰かと共有したくなる内容だからか、よくリアルタイムでトレンドに上がるんです」。ANN0では異例の4年という長期間を担当した三四郎は、昨年4月からANNに昇格。そこから1年も好調で、トータル5周年となる今年3月に番組最大規模のイベントを予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、直前に中止となってしまった。

 多くのリスナーから嘆きの声があがったが、三四郎は開催予定だった番組イベントに“行っている風”のツイートを「#三四郎ANN」で実況ツイートしてほしいとリスナーに呼びかけた。人気バンド・L'Arc〜en〜Cielのファンがやった「エアライブ」をオマージュした結果、土曜日の午後という時間帯でも見事にトレンド入りを果たす。予想を超える反響に石井氏も「深夜にはトレンド入りしていましたが、日中にもすごく盛り上がったので、僕らもビックリしました」と振り返る。こういった取り組みからも、ANNとリスナーの信頼関係が強くなっていることが感じられる。

 石井氏はニッポン放送の中核を担いながら、現在もTBSラジオの番組を制作する。両社を知る立場として、その違いを聞いてみた。「ニッポン放送は体育会系、TBSは文化系ですね。番組の打ち上げがあって、チーフDが『二次会に行こう』と言うと、ニッポン放送のADはみんな行くけど、TBSのADはみんな帰る(笑)。どっちがいいとかじゃなくて、明確に違いますね。番組もTBSは文化的なものが多いと思います」。

 番組作りへの取り組みの違いも明かしてくれた。「JUNKは昔からANNをはじめとする裏番組をしっかり研究していて、『このゲストのときに盛り上がっていた』とか分析をしていた。一方のニッポン放送は、JUNKに聴取率で負けていたのに対策を十分にやっていなかったんです。なので、僕が最初にチーフDになったときに『裏番組をちゃんと気にしましょう。JUNKはいい番組で、どんな企画をやっているのか調べて聴くのも勉強になるし、それを踏まえての戦い方もあるはずです』と話しました。同世代のDが作っているので、ちゃんと聴いていいところは参考にしようと。ANNがナンバーワンという奢りを捨てることから始めました」。さまざまな取り組みが実を結び、50年以上の歴史を誇るANNは、またさらに飛躍の時を迎えている。

◆次回公開の第2弾の記事では、石井氏のラジオ体験や制作者を志したきっかけ、これまでのキャリア、そしてラジオファンを熱くさせた“あの”ツイッターの真意などに迫る。

石井玄(いしい・ひかる)1986年、埼玉県生まれ。明治大学政治経済学部卒業後、東放学園専門学校を経て、2011年、サウンドマンに入社。 以来、主に深夜ラジオ番組の制作を担当する。現在はMIXZONE所属。『星野源のANN』では箱番組パーソナリティとして、出演も果たした。

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  • 『オールナイトニッポン(ANN)』と『ANN0』のチーフディレクターの石井玄氏 (C)ORICON NewS inc.
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