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『コナン』『ドラえもん』…名作のコミック1巻、今でも毎年重版 デジタル時代の謎

 国民的漫画『ドラえもん』と『名探偵コナン』のコミックス第1巻は、今でも年に数回は増刷されている――。先日、出版元である小学館マーケティング局でこんな話を聞き、とても驚いた。

毎年重版されている『名探偵コナン』『ドラえもん』コミックス1巻

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 同社によると、『ドラえもん』はてんとう虫コミックス1巻が発売された1974年以来、『名探偵コナン』は少年サンデーコミックス1巻が発売された1994年から、どちらも毎年必ず増刷されているとのこと。「出版不況」や「デジタル化」が叫ばれるようになった2000年代以降も“紙”の単行本、しかも長尺物の第1巻が毎年毎年増刷されているとは驚きを禁じ得ない。マーケティング局の担当者に“紙”が売れ続けている謎を分析してもらった。

 『ドラえもん』は小学館の学年誌『よいこ』『幼稚園』『小学一年生』『小学二年生』『小学三年生』『小学四年生』の1970年1月号にて連載がスタートし、単行本は74年7月から刊行。73年にテレビアニメが放送開始、そのほか映画やゲーム、グッズ化とメディアミックス展開がされてきた。そしてコミックスは45巻まで発売されており、12月1日には連載開始50周年を記念して、第0(ゼロ)巻が刊行。各メディアで大きな話題となっており、発売前に二度も、さらに発売当日にも大規模増刷が決まるなど、異例の売れ行きを見せている。

 作者の藤子・F・不二雄さんは96年に亡くなったが、現在もテレビアニメが放送され、劇場アニメが毎年公開されるなど愛され続けている。人気作品であるためコミックスの増刷は当たり前のように思えるが、約半世紀前に発売されたコミックス1巻が発売時とほぼ同じ形で“毎年”増刷され続けているのは「他社様の作品でも一切ない」と同社マーケティング局の担当者は話す。

 「テレビアニメが放送され続けていること、毎年新作映画が公開されていることもあって、『ドラえもん』の認知度は国内外でも高い。それでも約半世紀前に発表された漫画を毎年、新しく購入する読者が多くいることには驚かされます。他の長期連載のコミックスでも1巻が増刷されることはありますが、『ドラえもん』の場合は毎年、しかも年に数回ですから、改めて偉大な作品と感じます」と愛され続けていることに感謝した。

 毎年増刷される理由は何だろう?「アニメを見て面白いと感じた新しい視聴者である“子ども”たちの影響が大きいと思います。ドラえもんの原点、『どのようにのび太君と出会ったのか?』が気になる子も多いのでは」と担当者は考察する。「また、親が安心して買い与えられる作品として選ばれていることも大きな理由のひとつでしょう。自分たちも見たり読んだりしてきた作品ですので、安心して読ませることができる。さらに、らんぼう者だけど男気のあるジャイアン、ちょっと意地悪なスネ夫、真面目で優しいしずかちゃんなど、小学校に入学する前にクラスの人間関係を学ばせるためにも丁度いい。あとは、かつての読者が大人となり、改めて買い集めていることも想像できますね」と分析した。

 一方で、『名探偵コナン』の重版理由は「正直、完全に把握できているわけではない。作品が面白いということはわかるのですが」と語る。

 『名探偵コナン』は94年より『週刊少年サンデー』で連載がスタート。同誌史上最長の連載作品として現在も連載中。テレビアニメ化はもちろん、劇場版の興行収入も毎年のように過去最高記録を更新。2019年の最新作はなんと90億円を突破しており、こちらも大人気だ。 『ドラえもん』との共通点は現在もテレビアニメが放送中で、新作映画も毎年公開されているところ。こちらも、アニメを見て「面白い!」となり、コミックスを購入する流れも想像できる。だが、担当者いわく「確かにアニメや映画で作品の魅力に触れた方が原作コミックスを読みたくなる心理は理解できるのですが、紙よりもデジタルと呼ばれる時代に、『コナン』の新しい読者も電子版ではなく紙で単行本を購入される方が多いことに驚いています」。

 「コミックス1巻を買うということは、ストーリーを順に追っていきたい読者の心理が伺え、大変うれしいことです。一方で『今から、すでに発売されている90巻以上まで紙で購入してくださるのか』と考えると、驚きもあります。保管場所を取らない電子書籍なら、気軽に1巻目から買われる方も多いと思いますが、“紙”のコミックスが売れていて、毎年増刷しているのですから」と本音を明かしてくれた。

ただ、映画やアニメにより親子ファンが増えている可能性もある。そこでここ1年の1巻目の購買層を尋ねたところ、30〜40代の女性が多いとのこと。学生時代にコナンに触れていた母親が、子供と映画やアニメを見て、改めて“紙”のコミックスを親子で回し読みしているのかも知れないという。

 なお、出版科学研究所が2018年に発表した17年の漫画市場規模によると、単行本の電子書籍の売り上げが前年比17・2%増の1711億円となり、初めて紙(1666億円)を上回る結果に。紙は前年比14・4%減で過去最大の落ち込みとなり、漫画単行本の販売額が電子版が紙を初めて逆転し、デジタル化が進んでいるのは周知のとおりだ。

 そんな中で『ドラえもん』『名探偵コナン』の第1巻がフィジカルメディアで売れ続ける現状は、「うれしくもあり“謎”だらけ」とし、作品の魅力があれば“紙”も“デジタル”も関係ないことを伝えてくれた。

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