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2.5次元俳優ドラマ『サクセス荘』 テレビコンテンツへの挑戦

 テレビ東京がまたまた斬新なチャレンジをしている。まるでお茶の間で舞台を観るような臨場感を味わえる木ドラ25『テレビ演劇 サクセス荘』。プロデュースを手がけるテレビ東京の和田慎之介氏に新たな取り組みの狙いを聞いた。

「ドラマ」ではなく「テレビの演劇」がコンセプト(C)「テレビ演劇 サクセス荘」製作委員会

「ドラマ」ではなく「テレビの演劇」がコンセプト(C)「テレビ演劇 サクセス荘」製作委員会

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■若者向けテレビコンテンツとして可能性を感じていた2.5次元舞台

 本作は、原案・プロデュースを2.5次元ミュージカルのパイオニアであるネルケプランニング・松田誠氏、脚本を『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)の徳尾浩司氏が手がけている。キャストは、和田雅成高橋健介高野洸、木俊、黒羽麻璃央有澤樟太郎荒牧慶彦定本楓馬玉城裕規寺山武志の10人。いずれもミュージカルなどで活躍する、2.5次元舞台で人気の役者たちだ。

 このメンバーが集まるだけでもすごいことだが、「リハーサルは1度だけ」「本番一発勝負」という無謀なチャレンジの企画にGOを出したのが、アニメ・ライツ本部に所属しながら、本作のプロデューサーを務めた和田氏だ。

「僕自身はもともとアニメのコンテンツ制作部署の所属です。アニメは世帯視聴率こそそれほど高くはないけれど、爆発的な人気になったりムーブメントを起こしたりします。視聴率だけを考えたら、人口が多くテレビをよく観る中高年をターゲットにすべきところですが、若者にタッチするコンテンツを作り出していかなければ、未来はありません。その点、アニメは強く、その延長線上として2.5次元舞台が視野にありました」

 さらに、親しくしているプロダクションが制作に関わった『情熱大陸』(TBS系)で、ネルケプランニング・松田氏を取り上げた際に、ネットでのバズり方がすごかったこと、DVDとして販売されることになった経緯などを耳にした。そこから「コンテンツとして成立する」と着想。テレ東はもともとネルケプランニングとの関係性が近く、2.5次元舞台の人気や、そこで活躍している役者の可能性も感じていたが、「どこでどう放送するか」という点を1年半ほど前から模索していたという。そんなとき、ドラマを担当するコンテンツビジネス局でドラマ枠の企画を探していたことを知った。

■パイロット版での試行錯誤からいき着いた“リハなし一発撮り”

 ドラマありきで進められていたわけではなく、アニメの延長線上で作られた企画というのが、いかにもテレ東らしい。しかも、「隣の部署の人と話すくらいの感じ」(和田氏)で作られていく距離感が、アニメとドラマの垣根を軽々と超えさせた。

「企画として、最初はジャニーズの方々がやるようなバラエティも考えたんですよ。でも、嵐さんのバラエティは、そもそもテレビでの超絶人気があるから成立するわけです。では彼らが一番輝くのは何かと考えたら、やはり舞台の上。お芝居が一番良いのではないかと考え、舞台のようなドラマになりました」

 そこで、1月頃に15分程度のパイロット版を何本か作った。当初は「2.5次元舞台ではアドリブを盛り込むシーンが盛り上がる」という情報から、ほぼアドリブのみの芝居や、逆にかっちりセリフを固めたドラマなど、いくつかのパターンを制作していった。

「でも、それを2.5次元好きの人たちに内々で観てもらったら、酷評ばかり(苦笑)。そこから、彼らの魅力を引き出す原点に立ち返るとともに、『一発撮りが一番おもしろい芝居が撮れる』という結論に至りました。最初のシューティングはやはり役者さんたちの集中力が違いますし、彼らは舞台役者なので、やり直しのきかない緊張感をもってやっているときこそ一番輝いているんです」

 そうした経緯から、「ドラマを見せる」のではなく、「テレビで演劇を見せる」がコンセプトになった。さらに、演劇の特徴「一発本番」も取り入れられることになる。とはいえ、演劇の場合は稽古がしっかりあるのが当たり前。稽古もなく、リハ1度だけというのは、かなりの緊張を要するはずだが……。

「実はこれは、怪我の功名というか。舞台で人気がある役者さんたちを集めて作っているので、全員のスケジュールをなかなかおさえられないんです。そこで、『役者さんに緊張感を持ってやってもらおう』と稽古ナシにしたところ、役者さんたちの技量に助けられて、思いがけずしっかりとした“演劇”になりました。ただし、カメラマンさんや音声さんなど技術スタッフは本当に大変で、毎回苦労しています(笑)」

■パッケージからイベントまで テレビだけではないコンテンツ戦略

 ちなみに、「スタッフなどの笑い声がないこと」も本作の特徴の1つ。パイロット版では、笑い声が入っているパターンも作ったが、これは役者さんがノリやすい半面、視聴者側としては「笑うところ」を作り手から押し付けられる印象もある。結果、笑い声を入れなかったことで、どこをどう笑うかは、受け取り手の自由となった。それは、ドラマの楽しみ方を広げることにつながっている。

「10台近いカメラを使って、あらゆる角度から撮影しているので、セリフを喋っている人の後ろで小芝居をしている人を観るなど、自分の推しだけを追いかけて観る方もいるようです」

 さらに、役者の私物がときどき入り込んでいたり、テレ東のキャラクター「ナナナ」が毎回どこかに隠れていたりと、何度か観ることによって新たな発見もあるという。また、放送には映らないが、本番以外の打ち合わせやリハ、反省会でもメイキングカメラはしっかりと回っている。もともと2.5次元舞台はパッケージ需要の高いコンテンツでもあるのだが、今回のドラマ企画も当然パッケージ化も含めたビジネスとして企画制作が進められてきている。多くの熱量の高いファンの関心を集めるであろう、ポテンシャルの高い映像コンテンツがもりだくさんなだけに、放送後のパッケージでの盛り上がりも大いに期待できる。

 テレ東といえば、『ゴッドタン』や『青春高校3年C組』などのバラエティでは、テレビ放送とパッケージだけでなく、音楽ライブや舞台などテレビから派生したイベント事業としての成功事例も多数。メディアを超えたコンテンツとしてファンから愛され、シーンをにぎわせている。今回のドラマも、そんなテレ東らしいコンテンツ展開の流れのなかにある、新たな1作となるのではないだろうか。
(文/田幸和歌子)

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  • 「ドラマ」ではなく「テレビの演劇」がコンセプト(C)「テレビ演劇 サクセス荘」製作委員会
  • 『テレビ演劇 サクセス荘』第5回より(C)「テレビ演劇 サクセス荘」製作委員会
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提供元:CONFIDENCE

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