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ロケット団声優、21年間マンネリなし 「3人で一人前」悪役意識せず互いにフォロー

 人気テレビアニメ『ポケットモンスター』に悪の組織“ロケット団”の一員として出演している声優・林原めぐみ(ムサシ役)、三木眞一郎(コジロウ役)、犬山イヌコ(ニャース役)。このほど、ポケモン映画第1作『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』(1998年公開)を全編フル3DCG映像として新しく描いた最新22作目『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』(公開中)に出演中の3人にインタビューを実施し、「チームワークは意識していないですが、フォローし合う重要さを理解している」「ロケット団は悪役として見ていない」「20年以上演じてきていますがモチベーションは高い。お約束シーンはありますが、演者側はマンネリ化していない」など、20年以上ロケット団を演じ続けた心境を語ってもらった。

ロケット団が登場する映画『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』

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■「受け手側のキャパシティーを作り手が勝手に決める」風潮に逆行…今作の意義

 2017年公開の『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』を始めとしてポケモン映画は原点回帰の流れを取り入れているように思う。今作は第1作を再び描いたが演者側はどう感じているのか。三木は「僕らロケット団の登場フレーズである『なんだかんだと聞かれたら〜』を生み出した首藤剛志さん(2010年死去)が脚本で、オーキド博士役の石塚運昇さん(18年死去)の声も聴けるという、最初のメンバーが集結するので本当の原点回帰」、犬山も「色んなことを思い出して…。今作はロケット団のビジュアルもフル3DCGによって再び描かれているので、原点回帰と言ってもストーリーを含めて進化していると思います」と感慨深い様子。

 今作のテーマは、最強のポケモン・ミュウツーが心に抱える「葛藤」や自分を生み出した人類への「逆襲」。その内容に三木は「ミュウツーが悪として大きく描かれているので、僕らロケット団の悪が霞んでしまっている部分はありますよね。僕らは強大な悪には勝てないので…」と笑いながら、大人でも考えてしまう緊張感あふれる内容に、ロケット団の“ゆるい”存在が必要だと伝えた。

 続けて「21年前の作品ですが、ポケモン同士の戦いを人間に置き換えた場合、人間の業の深さと言いますか、人間の根本的な問題は何も変わってないんだなと思いました」と話す犬山。林原も口を開き「このテーマを今の時代にゼロからやるのは難しいですよね。今の時代、『子どもが理解するのは難しいのではないか』と受け手側のキャパシティーを作り手が勝手に決めて発信することが多い傾向になっている。『〇〇に受けるもの!』とユーザーを決め込んでいるのですが、今作も脚本・首藤さんの『この時代に発信しなくてはならないもの!』という想いが強く伝わっています」としみじみ。

 三木も「ポケモンは『友達のように寄り添っていくもの』というテーマがあるように思うのですが、その中で、ミュウツーが人類へ逆襲していくという…、『劇場版の1作目でやることか!?』とは思いました。ポケモンというエンターテインメントの分野がある中で、よくこの企画を通したなと。色々と考えてしまいます」と当時の制作陣がこのテーマを世に伝える行動に驚いたと話した。

■20年演じるロケット団「悪役の意識はない」 “3人そろって一人前”フォローし合う テレビアニメ、映画シリーズともに20年以上ロケット団として出演している3人。主人公のサトシやピカチュウ、仲間たちの前に悪役として登場しつつも、ドジを踏んだりするなど息の合った掛け合いで視聴者を笑わせている。「チームワークとか考えたことないですね〜」と笑いながら話す3人だが、林原は「野球に例えるとそれぞれが、球を投げるだけではなく、拾うことも大事だと理解している。彼らは活躍したい気持ちはそれぞれあるんでしょうけど、逆にフォローしなくてはいけない重要さもわかっていて、演者側の私たちもそれを大事にしています」と告白。

 具体的なエピソードとして「水の中でグルグル回るシーンがあったのですが、脚本には『ぎゃー!』しか書いていなかった。そしてコジロウが『ぎゃー! 掃除機の気持ちがよくわかる〜』と言ったので、私が『それ、洗濯機じゃね〜』とフォローしたりしましたね」と振り返ると、三木は「ゲームでよくある能力を六角形で表すグラフがあると思いますが、我々ロケット団の場合、3人そろうとキレイな六角形になる。それは1人1人別方向を向いていたりという意味で、3人でフルコンプ。基本、セリフを噛んでも、笑いすぎて倒れ込んでも収録は止めないですね。誰かがその後、面白く拾ってくれるので」と明かした。

 さらに、犬山も「もちろん、全員が球を投げすぎてフォローしないこともあるのですが、それがロケット団の人間臭さであり、魅力なんだと思います。みなさんも友人と会話をしている時、盛り上がり過ぎて誰も止めないことがありますよね? あんな感じがロケット団にもあるので、共感を呼んでいるのかな?」と言うと、林原は「『次のカットは、こうしない?』と話し合うことは、ほぼないですね。ウソ臭くなってしまうと言いますか、信頼できる仲間なので、余計な気を使っていない関係性がある。3人のリアルな距離感、心の距離感、空間について言葉にしなくても共有できているんです」とアニメと同様に演者側の信頼関係が視聴者に面白く伝わっていると分析する。

 そんな悪の組織“ロケット団”を演じている3人だが、口をそろえて言うのが「悪役を担当している意識はない」。三木は「最初、悪寄りなキャラクターとして作られていたのですが、ある時期で本当に悪ワルしたことがありました。ニャースが発する『ニャ』もコメディーぽくなるのでカットされたりと、悪になったことに複雑な感情がありました。(今は)悪の組織と名乗っていながら、悪役という意識はまったくない」と語ると、林原も「悪すぎて『私は誰?』と違和感がありましたね」と複雑な心境があったと話す。

 続けて林原は「悪役だと思って演じていない理由は『ピカチュウをゲットする』という職務に対して正義感があって、それが結果“盗む”という悪なのですが、サカキ様の命令で任務を遂行しようという使命感が大きいからですね」と語ると、犬山も「悪役の割に義理人情があったりする。コジロウがチリーンやサボネアと別れる時に泣いたり、ポケモンへの愛情はサトシたちと変わらない。ロケット団のニャースはポケモンですけど、それを自分でも忘れるくらい人間みたいな所もいいなぁと思います」と悪役だが人々に愛されているキャラクターを務められていることに感謝しつつも「そんなに人気を実感したことはない」と笑う。

■ロケット団のお約束、演者側のマンネリ化なし「お互いに尊敬し、僕らは成長している」

 主人公のサトシは新シリーズとなると新地方に冒険に旅立ち成長していくが、ロケット団は「ピカチュウをゲットする」という使命だけで行動に変化がない。長期シリーズならではのモチベーション維持はどうしているのか。林原は「サトシにやられて空に飛んでいくという毎回のお約束があるのですが、そのシーンはマンネリに見えても、我々、演者側はマンネリしていると考えたことがないので、モチベーションが常に高い」と告白。

 理由について犬山は「色々な物事の考え方に対して共感できる3人がそろっているので、口に出さずとも理解し合えている。この関係性はもちろん、林原さんが先ほど言っていたそれぞれのボールをフォローしあう行為を積み重ねた結果なのですが、その行為をやり続けてもマンネリ化していない。今でも林原さん、三木さんのお芝居を見て『すごい!』と思う瞬間がたくさんあります」。

 三木も「お互いに尊敬の気持ちを持っているので、マンネリが生まれないと思うんですよね。少しでも相手に油断してしまうとロケット団の関係性が崩れてしまいますし、会話のやり取りも手を抜いてしまう。林原さん、犬山さんが突然、とんでもない演技をしてくるので、それに僕も応えなくてはいけない。その繰り返しが20年以上続いて、ロケット団たちの行動はマンネリに見えても、僕らは成長し続けているのです」と熱弁した。

 そんなロケット団の関係性に林原は「後輩に『ロケット団はアドリブで楽しくやり取りをしていて羨ましい』と言われたことがあったのですが、20年の積み重ねがあるので『ロケット団は1日にしてならず』と伝えています。簡単そうに見える行為って、この声優業だけでなくほかの職業にも言えることかなと。大工さんの釘打ちも簡単そうに見えて、真っ直ぐすばやく打つのは技術が必要ですよね」と20年前から違和感なくロケット団を演じてきていたが、今も楽しく見せることができるのは“信頼”の積み重ねと伝えてくれた。

(取材・文/櫻井偉明)

(c)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku(c)Pokemon(c)2019 ピカチュウプロジェクト

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  • 『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』のメインビジュアル
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