きのう1日、平成に代わる新たな元号として「令和（れいわ）」が発表された。政府の会見が予定されていた午前11時30分には、テレビはNHKと民放各局が官邸から生中継して、歴史的な瞬間を伝えていたが、ラジオの現場も熱かった。TBSラジオへの潜入取材から、その様子を振り返りたい。

　『伊集院光とらじおと』の生放送が終わった午前11時。25分後に始まる特番の生放送仕様に変えるため、スタジオでは慌ただしく準備が進められていた。普段であれば『ジェーン・スー 生活は踊る』が午後1時まで2時間にわたって生放送されるが、この日は11時25分から15分間は新元号発表の特別放送に切り替わることとなっていた。手際よくスタジオのセットが整えられて、ブース内には同局のニュースデスク・中村尚登氏がスタンバイ。これまでの経緯や、今回の発表にいたるさまざまな情報がまとめられた原稿に目を落としながら、じっとその時を待っている。

　ブースの外にはスタッフと崎山敏也記者らが本番に向けて準備を進めながら、最新情報をいち早くキャッチするために、9階のニュースルームに常時電話をつなぎ、必要に応じて官邸で取材にあたっている記者にも電話しながら、番組スタートへの態勢を整える。そして迎えた午前11時25分。中村氏が落ち着いたトーンで「こんにちは。TBSラジオの中村尚登です。この時間は、いつもと番組を変更いたしまして、新しい元号の発表に関するJRN報道特別番組をお送りいたします」とあいさつした。

　スタジオ内にある各局のテレビモニターを眺めながら、スタッフたちが今や遅しと、菅義偉官房長官が会見場に姿を現すのを待つ。予定の30分を過ぎても一向に菅官房長官が登場しない様子を受けて、スタッフたちから「しびれるなー」「これ、40分までで収まるか」といった声が飛び始める。11時35分を過ぎたあたりに「これは45分までいくか？」「今、来たとしても5分で終わるわけにはいかないから、45までいかざるを得ない」との話になり、担当者が「わかりました。これをもって、45分までで決定にしましょう」と放送中に延長が決定。崎山記者もスタジオに入って、2人体制で新元号の発表まで、トークを続けていった。

　そうこうしているうちに、11時40分手前となると「45も厳しい」「これは（安倍総理の会見が予定されている）12時まで直結でいった方がいい」との意見が飛び交いはじめ、再び話し合いの場が設けられると「それでは、そのまま12時からの放送まで直結ということにしましょう」との決断が下された。その直後、菅官房長官が会見場に到着して、新元号が「令和（れいわ）」に決まったと発表。映像であれば、菅官房長官が色紙を見せた状態で文字がわかるが、ラジオは聴覚のみのメディアであるため、中村氏が「命令の『令』に、平和の『和』。令和ということです。菅官房長官が色紙に黒々と書かれたものを右に左に見せているところです」と丁寧に説明する。

　新元号の発表が行われたのもつかの間、スタッフやスタジオ内の中村氏と崎山記者の関心は「12時の会見まで、どんな情報を提供すればいいか」という点に移っている。菅官房長官が出典について、『万葉集』より梅の花の歌、三十二首の序文「初春の令月にして気淑（よ）く風和（やわら）ぎ　梅は鏡前（きょうぜん）の粉を披（ひら）き　蘭は珮後（はいご）の香を薫（かお）らす」によるものであると解説したが、それ以外の情報については安倍総理から直接話があるとコメント。菅官房長官の会見が終わったのは11時47分で、そこから総理の会見まで、あと13分間ある。

　まずは、崎山記者が令和の出典を振り返ると、中村氏が続けてこれからの予定を解説。官邸からの中継もつなぎ、現場の記者の声も取り入れながら、新元号の情報を伝えていった。正午を迎えてからも気持ちは休まらず、次は安倍総理の会見が待っている。会見の情報も中村氏と崎山記者の2人体制で、スタッフたちが新しい情報が書かれた原稿を慌ただしくスタジオに持っていく。結果的に番組は12時15分まで続き、約50分間にわたる新元号発表特番が無事に終了となった。張り詰めていた緊張の糸が切れ、スタジオには安堵の声が広がっていた。