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52年目の『オールナイトニッポン』 現プロデューサーが語る“ブランド価値と使命”

 「ラジオはある種のカウンターカルチャーで、いかに早く世の中に出る前に『ヒト・モノ・コト』を引っ張ってくるかがストロングポイント。それを生かすために、新しい企画にどんどん挑戦していきたいですし、そのための体制作りも順調に進んでいて、最近では20代のディレクターが増えてきています」。こう語るのは、毎週月曜から土曜の深夜1時より放送されている、ニッポン放送の人気枠「オールナイトニッポン」(ANN)をはじめとする「オールナイトニッポン」ブランドの放送枠のプロデューサーである冨山雄一氏。一昨年から2年間にわたって盛大におこなってきた『オールナイトニッポン50周年プロジェクト』がひと区切りし、52年目を迎えたこのタイミングで、番組にまつわるさまざまな取り組みとこれからのANNについて話を聞いた。

「オールナイトニッポン」ブランドの放送枠のプロデューサーである冨山雄一氏

「オールナイトニッポン」ブランドの放送枠のプロデューサーである冨山雄一氏

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■芸人で勝負の「オールナイトニッポンPremium」話芸を生かす“オードリー方式”とは?

 プロ野球中継のない時期である昨年10月から3月までの半年間限定で編成した午後7時からの2時間番組『オールナイトニッポンPremium』。昨年は『オールナイトニッポン50周年プロジェクト』の一環として、「オールナイトニッポン」らしく、芸人・アーティスト・劇作家など幅広いジャンルのANNパーソナリティ経験者たちが登場した。今年は“笑い”をテーマに据えて、放送時間を2時間30分に拡大。月曜から木曜まではココリコ中川家オリエンタルラジオ中田敦彦よゐこの順でパーソナリティを担当している。放送時間を昨年から1時間前倒しして、午後6時からのスタートとしたのは理由があったという。

 「2016年からラジオの制作現場を離れてイベントの部署に2年間ほどいて、そこから今年4月にANN枠をはじめとした夜の時間帯のプロデューサーとして戻ってきたのですが、その時にまず感じたのが午後6時からの番組の姿が大きく変わったなと感じました。TBSラジオさんはナイターの野球中継をやめて、ライムスター宇多丸さんの『アフター6ジャンクション』を始められていました。僕は『オールナイトニッポンサタデースペシャル大倉くんと高橋くん』を担当していましたが、(裏番組にあたる)宇多丸さんの『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』や『アトロク』は非常に濃厚な密度でカルチャーを取り扱っている番組という印象を持っていました」。

 午後7時からは、J-WAVEはニュース路線で『JAM The World』を放送しているが、ニッポン放送では“ニッポン放送を体現するコンテンツ”として「ANN」の冠を掲げて、統一感のある編成を目指した。

 「僕が2年ぶりに帰ってきて思ったのは、想像以上にradikoで聞く習慣が浸透しているなということと、radikoのタイムフリー利用の多さでした。そこで聴いてくださる方が多いということもあり、これからはいかにタイムフリーにひっかかるかというのも要素として外せないと考えました。こうした背景があって、コンテンツとしてタイムフリーでわざわざ聴きたいと思うようなもので勝負したいと。『アトロク』はカルチャー、『JAM The World』はニュースというところでいうと、ウチはお笑いのストロングなしゃべりで勝負したいと考えました」。

 芸人たちの“しゃべりの熱量”には、リスナーを引き寄せるパワーがあると感じていた。「それこそ、木曜ANNの岡村隆史さんや土曜ANNのオードリーさん、金曜ANN ZEROの三四郎さんなどを聴いていると、やっぱり芸人さんって何でも面白くネタにできるなということはすごく感じてました。オードリーさんは、1時からオープニングトークを48分間ずっとしゃべることもあって、そこから2時台にも2人がそれぞれフリートークをやって、そのしゃべりに対する熱量は本当にすごいなと。それって、他局でも伊集院光さんの『深夜の馬鹿力』をはじめとする『JUNK』などにも通じるのですが、芸人さんがある程度の尺でしっかりしゃべるってものすごいパワーがある。それを『Premium』に落とし込めたらなという思いはありました」。

 芸人たちの話芸を堪能してもらうため、『Premium』では“ある試み”を行っているのだという。「ニッポン放送の従来の番組フォーマットでいうと3分間で1テーマというか、3分を1つのユニットと考えて話題が変わったり曲が流れたりすることが多く、流れをわりと小刻みに作っている傾向です。そうした中で今回の『Premium』に関しては、番組が始まってから25分くらいまでは流れをかえずに長尺で好きなことをしゃべってくださいということを意識的にやっています。それを僕は勝手に『オードリー方式』と呼ばせてもらっています(笑)。7時台、8時台に関しても同様に20分くらいまでしっかりとしゃべっていただくような構成にしています」。

■キスマイ起用「生放送との相性」に手応え 次なる50周年に向けて“新星”発掘

 一方で、金曜日のパーソナリティには人気グループ・Kis-My-Ft2を起用。ジャニーズグループのメンバー全員がパーソナリティを務めるのは、ANN史上初の試みとして話題となった。「僕のイメージではジャニーズのパーソナリティと生放送は相性がいいなと感じていました。それを、身をもって体験したのは、立ち上げから関わっていた関ジャニ∞大倉忠義さんと高橋優さんがパーソナリティの『オールナイトニッポンサタデースペシャル大倉くんと高橋くん』です。やっぱりツイッターのハッシュタグが非常に活発に動いてリアルタイムに実況コメントが溢れる様子といい、生放送でのドキドキ感、リアルタイム感とハマっているなという手応えがありました」。

 キスマイは、24日の正午から25日にかけて24時間生放送される同局恒例のクリスマス特番『第44回ラジオ・チャリティ・ミュージックソン』のパーソナリティにも抜てきされた。「ANN」を基点として、いい流れが生まれている。「10月から『Premium』で毎週2時間半の生放送をやって頂いていることが、『ミュージックソン』に向けての流れとしては理想の形となっています。キスマイの皆さんが生放送で平日の午後6時からしゃべっているのを聴く機会ってなかなかないと思うので、そういった意味でも楽しんでもらえているのではないかと思っています」。

 現在、同局内で放送されている番組表を眺めてみると、深夜1時からの放送以外にも、平日の午後6時から放送されている『Premium』、午後10時からの『MUSIC10』(金曜は『GOLD』)、深夜3時からの『ZERO』、そして土曜日の午後11時30分から放送されている『サタデースペシャル』と『ANN』の冠がついた番組が数多く存在している。それぞれの番組でどのような色分けを行っているのだろうか。「新しいパーソナリティを発信していくというのを担っているのは、深夜1時からの『ANN』、3時からの『ZERO』だと考えています。『Premium』の半年限定感、『MUSIC10』の音楽番組感、『GOLD』『サタデースペシャル』のスペシャリストというのとは、意味合いもターゲットも違っています」。
そこで、同局の編成部長である柴田篤氏に『ANN』のパーソナリティに求められる“資質”を聞いてみた。

 「先日、ANNの50周年記念パーティーを行ったのですが、その時に弊社の社長である岩崎(正幸)から『ANNは時代に即した、新しい試みを続けていく使命がある』という話をさせていただきました。そういった意味においては、その時代に即した試みができる人、『ANN』から何かを生み出せるパワーのある人にパーソナリティをやっていただきたいと考えております。もちろん、それはスタッフもしかりです」。冨山氏も次のように続ける。

 「どれだけリスナーと向き合えるかというのが大事ではないかと感じています。例えば、岡村さんの生放送での発言がよくネットニュースになっていますが、実際にラジオを通して聴いていたら、まったく違った印象になると思います。岡村さんがうまい具合に料理して、面白おかしく、決してご意見番という意味ではない感じで仕上げていて…、というのは、ラジオを熱心に聴いている人にしかわからない。ある種、リスナーだけがネットニュースだけで読み取れない本当の意味をわかっているみたいな部分もあるので、ラジオは最終的には炎上しにくいメディアだと僕は考えています」。

 柔軟な発想を持ったパーソナリティを発掘するため、『ANN NEXT50オーディション』を行い、そこから『ZERO』の月曜パーソナリティに劇作家の根本宗子と演劇モデルの長井短、木曜パーソナリティにはお笑いトリオの四千頭身を抜てき。根本と長井は、両親が番組にゲスト出演したり、声優を使った盛大なドッキリ企画を行ったりと、アイデアを存分に生かした放送を展開。四千頭身も新しいアプローチを仕掛けている。「四千頭身さんは、本番前の打合せ室からYouTubeライブをやっていて『このあと、ラジオやります』みたいな生配信をしているんです。僕たちの考え方だと、本番までフリートークの内容を考えたり、ネタコーナーのメールをチェックしたり生放送への準備ってなるのですが、四千頭身さんは今までのラジオ番組への向き合い方とは違う部分にマインドがあって、新しいパーソナリティだなという実感があります」。次なる世代に向けて、ANNはこれからも若者に向けて新たな文化を発信し続ける。

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  • 「オールナイトニッポン」ブランドの放送枠のプロデューサーである冨山雄一氏
  • 50周年プロジェクトとしてさまざまな取り組みが行われたオールナイトニッポン

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