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静野孔文×瀬下寛之×虚淵玄ヒットメーカー3人が語る「アニゴジ」

 ゴジラ映画史上初のアニメ―ション映画『GODZILLA』三部作の最終章『GODZILLA 星を喰う者』が11月9日に全国公開される。監督は、劇場版『名探偵コナンから紅の恋歌(ラブレター)』などの静野孔文氏と『シドニアの騎士第九惑星戦役』、『亜人』、『BLAME!』などの瀬下寛之氏。ストーリー原案・脚本は、『魔法少女まどか☆マギカ』や『PSYCHO-PASS サイコパス』などで知られる虚淵玄(ニトロプラス)氏。このほど、3人そろって取材に応じてくれた。設計図としての原案・脚本にはどこまでのことが指定されていたのか。それを監督たちはどう考えながら、アニメーションにして、声優たちの芝居や音付けなどまでまとめ上げていったのか。完結した今だから話せる、制作の舞台裏を聞いた。

『GODZILLA 星を喰う者』(11月9日公開)スタッフ(左から)静野孔文監督、瀬下寛之監督、虚淵玄(ニトロプラス)氏 (C)ORICON NewS inc.

『GODZILLA 星を喰う者』(11月9日公開)スタッフ(左から)静野孔文監督、瀬下寛之監督、虚淵玄(ニトロプラス)氏 (C)ORICON NewS inc.

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 アニメーション映画『GODZILLA』(以下、アニゴジ)は、二万年後の地球で繰り広げられる、<ゴジラ>とそれに抗う人類たちの物語。第一章『GODZILLA 怪獣惑星』は、2017年11月17日に公開。第二章『GODZILLA 決戦機動増殖都市』は、今年5月18日に公開された。第二章までは、国内の劇場での上映の後、動画配信サービスの大手「Netflix」で世界配信されている。

 最終章『星を喰う者』は、超科学が生み出した<メカゴジラシティ>をも焼き尽くし、地上の覇者となった究極の生命体<ゴジラ・アース>と高次元怪獣<ギドラ>が相まみえる事態に。その戦いの果てに待つのは、何か。

――三部作が完結した、今の心境は?

【静野孔文】無事、完成できてよかったなぁと思います。製作期間が長かったのですが、今は終わってほっとしています。あとは皆さんに観てほしい。それだけです!

【瀬下寛之】4年近くかかりましたので、完成して本当にうれしいです。毎日、苦しくもあり、楽しくもあり、すばらしい企画にかかわらせていただきました。ただ、この『アニゴジ』の世界観の中で、もう少し遊んでいたい、という気持ちで、少し寂しくもあります。

【虚淵玄】今回、特撮ではなく、アニメというアプローチで新しい“ゴジラ”を作るということで、手探りではじめて、相当無茶な提案もさせてもらったんですが、それがことごとく実現したので、皆さんへの感謝は尽きないです。

■静野監督がいなかったら…<メカゴジラ>はこうなっていた!?

――無茶な提案というのは?

【虚淵】我ながら<ギドラ>はヤバかったかな? と思っているんです。ダウンバーストが発生したみたいな感じって(笑)。体長300メートルのゴジラとか、街が全部メカゴジラとか、脚本に文字で書くのは楽ですが、それを絵で表現するのは難しかったと思います。

【瀬下】実は僕らには無茶ぶりされた感覚はないんです。むしろ、虚淵さんの脚本があったからこそ、これほど壮大な物語をまとめることができました。

【静野】アニメーションだからできる表現ということにこだわってくださったので自由にできましたし、最後までアイデアをいただけて逆に助かりました。

【虚淵】普通はコンテまで進んだら、脚本家の出番はなくなっちゃうんですよ。思いついたアイデアにも柔軟に対応していただいて、本当にありがたかったです。

――第二章『決戦機動増殖都市』では、アニメーションならではの<メカゴジラ>の新解釈が話題になりました。

【虚淵】現実世界と乖離(かいり)したものを作れるというのは大きなチャンスだと思いました。実在する「怪獣」というと変な言い方ですが、もしも「怪獣」が実在したらどんな感じなのか、どんな恐怖があるのか、それを生々しく見せるのが特撮。それとは違うアプローチで「怪獣」を描きたいという思いがありました。ビジュアル的なインパクトよりも、どういうメッセージ性で初代ゴジラが作られたのか、といった考察を踏まえた、観念としての「怪獣」。人智を超えた存在としてのゴジラを描きつつ、エモーショナルな映像作品を作れるのがアニメーションの強みですし、そこに勝算があると思って作ってきました。

【瀬下】プロジェクト始動当初から東宝さんが「怪獣プロレスにはしません」と宣言されていました。虚淵さんの原案もそれに基づいています。静野監督は、そもそもゴジラ映画をご覧になったことがほとんどなかったから、そのまま「観ないでいてください」って(笑)。そうしたら、静野監督から、ゴジラをあまり知らない人ならではの視点でバンバン意見が出てくるんです。口から火を吐くのってどうなの?とか(笑)。結果的に、ゴジラを観たことがない若い女性の方にもたくさん観ていただけているようで、新たなファン層の獲得という目的は達成できているのではないか、と。

【静野】自分はもともと、ゴジラもそのほかの特撮・怪獣ものもSFも、そんなに好んで観てこなかったので、ゴジラとは、怪獣映画とは、こうでなければならないといった先入観がまったくなかったので…。

【瀬下】ちなみに、あくまで個人的には、怪獣プロレスが大好きです(笑)。もし、僕と虚淵さんだけだったら、第二章のメカゴジラシティは、最後にシティ全部が飛び立って合体して、高さ1キロのメカゴジラが暴れていたと思います(笑)。

【虚淵】実際、会議でシティにある砲台を全部メカゴジラの頭にしよう、と提案したことがあったんですが、瀬下監督はゲラゲラ笑ってくれましたが、静野監督は仏のような顔で固まっていました(笑)。気持ちはわかるがやめましょう、ということになりました(笑)。

【瀬下】実際、静野監督がいらっしゃらなかったら、エクシフ(アニゴジに登場する異星人種)はX星人(※)のようにサングラスをかけていたでしょうね(笑)。ただ、サングラスをかけていたら女性ファンはつかなかったかもしれない。つまり、そういうことなんですね。

※X星人=1965年公開の『怪獣大戦争』と2004年公開の『ゴジラ FINAL WARS』に登場するヒューマノイドタイプの知的生命体。

■三部作の結末は…初志貫徹

――アニゴジは、脚本家と演出家の関係性もすごくよかったんだなぁと、改めて感じました。優れた作品づくりにチームワークは必要不可欠ですよね。

【瀬下】虚淵さんだったからこその仕事をさせてもらえたなと思っています。静野さんと3人でできたのも幸せなことで、もめることも一切なかったですね。ゴジラという誰もが知っているキャラクターの話でありながら、完全にオリジナルだったのもよかったと思います。虚淵さんが、原案・脚本の中で人間をしっかり作ってくれた。人間って、「人」の「間」って書きますけど、人と人の関係性や立ち位置がすごく明確でしたし、一つひとつのせりふに強い個性と説得力があって、とてもしっかりとした骨組みができていたんですよ。静野さんと僕はその骨に肉付けをしていっただけという感じです。

【静野】虚淵さんや瀬下監督からいろいろ聞いて、なるほど…、怪獣映画とはこういうものなのか、と。虚淵さんが書いたせりふで、目からうろこが落ちることもありました。

【虚淵】何を見せるかを決めたのは僕でしたが、見せたいものをどのアングルで、どういうカメラワークで、どれくらいの時間を使って見せていくかは、おふたりの領域でした。そこにカメラを構えるのかとか、時間の配分とか、期待していた以上の手応えがあって、完成した作品を見るのが本当に楽しみでした。

――アニゴジを作り終えて何か発見や変化を感じることはありますか?

【静野】ゴジラや怪獣映画の面白さを知ったというか、勉強になりました。三部作を作り終えたので、観たくても禁止された過去作品をやっと観ることができます(笑)。ゴジラだけではなく、メカゴジラやキングギドラがここまでファンの心を引き付けるのはなぜか、映画の中で怪獣たちがどのように表現されてきたのかということを、イチから勉強したいと思っています。

【瀬下】僕は、最初、アニメでゴジラは無理だって思っていたんです。東宝特撮という様式美の中にゴジラは存在する、という先入観です。アニゴジ三部作が完成した今、思うのは、ゴジラはアニメになってもいいし、東宝特撮の伝統を引き継いでいってもいいし、ハリウッド映画になってもいいし、もしかしたら2.5次元ミュージカルになる日が来るかもしれない。それくらいゴジラはキャパシティーのあるキャラクターに変容しつつあるんじゃないか、と。ゴジラの可能性をすごく感じました。

――ところで、三部作の結末は最初から決まっていたんでしょうか?

【虚淵】はい、最初に書いた企画書どおり完全に一貫しています。そこには、最後の最後のせりふだけ、書いていました。なぜそのせりふに至ったのかを説明するためには、初稿を書き上げなければいけなかったんですが、このアニゴジチームは待ってくれました。それを読んでなるほどね、と納得してくれて。途中で、妥協しかけたこともあったんですが、ちゃんともとに戻すことができました(笑)。みんなの力を借りてできた初志貫徹です。

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