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【脱力タイムズ・リレーインタビューVol.5】滝沢カレンのナレが新しい日本語を作る? 言葉のプロ・齋藤孝氏が分析

 お笑いコンビ・くりぃむしちゅー有田哲平がMCを務めるフジテレビ系バラエティー『全力!脱力タイムズ』(毎週金曜 後11:00)が、今春から4年目に突入している。メインMCのアリタ哲平(有田)を筆頭に、同局の小澤陽子アナウンサー、全力解説員、ゲストコメンテーターが“報道番組”という枠組みを使って見せるドタバタ劇。お笑いファンから熱視線を集める人気番組の魅力を探るため、ORICON NEWSでは出演者へのインタビューを行い、リレー形式で毎週掲載していく。

 第5回は、明治大学文学部の教授で書籍『声に出して読みたい日本語』(草思社)シリーズなどでも知られる齋藤孝氏。語彙(ごい)力・コミュニケーション術などの著作も多く、番組での「はずし解説」では、漢字の成り立ちなどを説明している“言葉のプロ”である齋藤氏が、有田のMCとしての手腕、滝沢カレンのナレーションにみる日本語の可能性までを語った。

■初出演時は戸惑いも 解説員として“ブレない”スタンス「正確な情報を伝える」

 昨年の10月から放送時間が10分拡大されたということは、いろんなところに広まってきている証拠ですね。私の周りでも「脱力タイムズ、見ています」という声が非常に多い。それほどインパクトのある番組なのだなということと同時に、ひそかに人気が浸透しつつあるなと感じています(笑)。番組出演のオファーをいただいた時は、僕自身が来た球を打つというスタンスなので、あまり考えずに快く引き受けました。

 初めて参加した時は、かなり戸惑って、どういうスタイルなのかよくわからなくて、有田さんに直接「これは、一体どういう番組ですか?」と聞きました(笑)。出演者がそう感じるくらいですから、視聴者のみなさんは初めて見ると戸惑われるかもしれないですね。ただ、このスタイルに慣れてくると「このパターンだな」とわかってきて、金曜日の深夜に落ち着いて見ていただけるようになるのかなと思います。報道番組との共通点ですか…やはり報道の時は言葉を選んで言わなくちゃいけない。その点は『脱力タイムズ』に出演する際にも気をつけています。

 ほかの解説員の先生方もおっしゃっているそうですが、やはり解説の内容は正確なものでないといけないですね。そこがおかしくなると、ぐちゃぐちゃになってしまうので、その辺りは正確な情報をお伝えしようと心がけております。そこはみなさん共通して持っている部分ですので、出口保行先生、吉川美代子先生、五箇公一先生、岸博幸先生といった一流の解説員のみなさんのお話を聞いて、私自身も「そうなのか」と感心しながら勉強させてもらっています(笑)。

■有田に感じるMCの風格 滝沢カレンのナレーション「新しい日本語領域を開拓した」

 最初の頃は「はずし解説」が中心でしたが、だんだん解説員としての負担も増えてきています。学生たちにライブ力、発想力、勇気などを鍛えてもらいたいので、実は大学での講義で「さぁ、今からこれをやってください」と無茶ぶりをしているんです。そうしますと、学生たちから「先生はやっていないじゃないか」となるのはあまりよろしくないので、私は『脱力タイムズ』という全国放送で無茶ぶりに応えているよという姿を見せているという所はあるかもしれない(笑)。この間の放送では、ドラゴンボールの孫悟空の物まねをしながら「はずし解説」を行ったのですが、実はあれも本番直前に言われたんですよ。

 基本的には楽屋に入ってから台本を見るのですが、スタッフさんから「ここはルパン3世か孫悟空の物まねでお願いします」と直前に言われたので「きょうは、そうなのか」と(笑)。本番まで時間がなく、断るという状況でもないので素直に「じゃあ、悟空にしましょう」ということでやりました。どうせ似ていないので、そんなに練習せずになんとなく悟空っぽく元気よくやるのを意識して、スタッフさんに「『ぶっ殺すぞ』って言うとそれらしくなります」と教えてもらったので、本番では何回かそのワードを繰り返しました(笑)。スタッフさんが非常に優秀で、仕掛けも練られているので、大船に乗った気持ちで任せていくのがいいのかなと思っています。もちろん、台本にないアドリブでのやりとりもあるので、作り込んでいるところとライブのところが混ざっている感じは非常に楽しいです。

 私自身が、このようなきつい無茶ぶりに応えている姿が説得力になっているようで、おかげで学生たちからも「先生のよさが出ています」と言われることが多いですよ(笑)。それもこれも、有田さんとスタッフさんのおかげです。番組に出演して思うのは、有田さんはやっぱりMCの雰囲気がありますね。真面目に語る時、発想力、臨機応変な返しを見ていると、さすがだなと。私が出演させていただいているTBSの『新・情報7daysニュースキャスター』の安住紳一郎くんも大変なライブ力のあるMCですが、有田さんもすばらしいMCの雰囲気を持っているなと思います。

 あとは、やはり滝沢カレンさんのナレーションも魅力的です。爆発力がある日本語、新しい日本語領域を開拓したと言っても過言ではなくて「滝沢日本語」「カレン日本語」というジャンルがあるんじゃないかと思うくらい。不思議な言葉を発しているのですが、何を言っているのかわからないわけではなく、すべて伝わってくる。日本語ではありますが、すべてが滝沢カレン流にアレンジされている。だから、滝沢カレンという一種の新たな方言、領域のようなものが生まれているのではないかと感じているので、滝沢さんのコーナーが始まると毎回笑いがこみ上げてきます。

 特に、台本にない場面を描写していくところ、あそこは秀逸だと思います。ほかの人にはない発想力でどんどん描写していく。ああいうナレーションを、みなさんも今まで聞いたことないのではないでしょうか。「あの人は、一体何しているんでしょう」とか、言っていること自体が面白いし、ナレーションという視点から見ても非常に新しい。料理の解説は、どうしても型通りになりがちで、例えばエビが出てくると“プリプリ”のように形容も同じになりますよね。ところが、滝沢さんはそういう凡庸な言葉は絶対に言わず、独自の言葉で表現するので、この画面に対してこういう日本語がつくのかと感心しています(笑)。

 こうやっていろいろと話していると、もしかすると、滝沢さんは言葉やものに意味がつく前の状態を描写しているのではないか…と考えることもできます。私たちが「カレー粉」だと思ってしまうところを「なぞの黄色い粉」と表現して、肉の塊が出てくると「なんでしょう、この物体は」という言い回しをする。私たちが当たり前のように共有する世界を捉えている前の状態で、いろんなものを表現しようとするという意味では、学問的に言えば現象学にあたります。既存の概念を排除して、その現象自体を描写していく…。その観点でいうと、滝沢カレンさんは非常にチャレンジしている日本語と言えますね(笑)。

◆齋藤孝(さいとう・たかし)1960年静岡生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。同大学院教育学研究科博士課程を経て現職。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(草思社)がシリーズ260万部のベストセラーになり、毎日出版文化賞特別賞、2002年新語・流行語大賞ベスト10入りを果たすなど「日本語ブーム」のけん引に大きく貢献した。



関連写真

  • 『全力!脱力タイムズ』おなじみの出演者・齋藤孝氏(C)フジテレビ
  • 25日放送の『全力!脱力タイムズ』に出演する(左から)吉村崇、榮倉奈々(C)フジテレビ

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