休日の午後、なんとなくテレビをつけていると時々、“上りネット”番組に遭遇する。“上りネット”とは東阪名以外のローカル局が制作しながら東京局をネットする番組のことだ。実は、これらは地方各局の“実力判定テスト”のような一面も持っているという。27日放送のHBC（北海道放送）制作TBS系13局ネット『こんなトコロに絶品グルメ?　お取り寄せレストラン』（後4：00）のプロデューサーを務める山田文裕氏に番組におけるこだわりや制作の裏話を聞いた。

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　TBS系列である北海道放送では年に5度ほど“上りネット”の番組を制作している。「最近は“実力テスト”的な面が強い。ローカル局で上りネットを作らせていただく機会って、もっと小さい規模の局だと年に1回、またはほとんど機会がない。なので僕も他の局さんが作るものに対して敏感に観たり、参考にしたりするようにしています。すごく一生懸命やってるなと思いますし、北海道は腐っても東京・大阪・福岡・名古屋の5都市に入るので、やっぱり『北海道すごいね』と思ってもらえるものは作りたいと常々、思っています」。

　「TBSさんで流してもらうということを考えたとき、普段、TBSさんでやっているコンテンツよりもし、いい数字が獲れるのならば我々がそこでやらせてもらったかいはある。そういう意味での『通信簿』。なのでお粗末なものを作れば、極端に言うと『あれ、北海道放送さんどうしたの？』ということにもなる。北海道に任せておけば良いものができると思ってもらいたい」と強い想いがある。まさにプライドを賭けた戦いなのだ。

　実は山田プロデューサーは本来、同局東京支社のテレビ営業部に勤務するバリバリの営業マン。以前は北海道の制作部に所属し、2013年6月に東京の営業部へと異動。営業と平行して北海道ローカル番組でも年2回ほど番組作りに携わっている異色のキャリアの持ち主だ。そのため、スポンサーへの売り込みも自ら行い「説得力を持って話せる」という敏腕ぶり。
　
　『お取り寄せレストラン』は昨年5月に放送された第1弾に続き千原ジュニア、北斗晶に加え、神田愛花が北海道はもちろん全国各地の意外な場所で生まれたお取り寄せグルメを紹介する。上りネットといえばグルメ番組や旅番組は定番。他と差別化するためにどのような趣向を凝らしたのか。今回からは、『飛行機や電車、バスにフェリーなど交通機関を何度も乗り継がねば買えない』という条件をプラスして、プレミア感ある絶品をラインナップした。

　元々、この番組では視聴者もなんらかの形で参加できるように『お取り寄せグルメ』をテーマに選んだ。「そこ（グルメ）にたどり着くまでの“旅”感もプラスしながら、行けないけど行った気になって手に入れることもできる」という狙いだ。

　「13局といってもかなりの大規模なので、『対応が難しいのでお断りさせてください』というお店が結構あったので大変でした。前回は九州・北海道の美味しいものを単純に選べたのですが…今回はとにかくグーグルアースを毎日見て、面白いお店を発見したらどうやって行けるのか調べて探していきました。普通はプロデューサーの仕事ではないんですけど、僕も50、60件は調べました」とリサーチまでこだわった。

　北海道の商品でいえば『牛乳でもヨーグルトでもない新食感スイーツ』や『丘の上にポツン！幸せを呼ぶチーズ』などを取り上げているが、北海道ネタに限らない構成にもこだわりがある。ローカル局制作とはいえ、ローカル局の身の回りにあるネタやその地域の人々を想定しただけの番組作りでは東京や全国で放送されたときに通用しない、と山田氏は話す。

　「『北海道放送だから』ということに囚われすぎないことが大切。北海道放送だからできることもあると思うけど、それに囚われては呪縛が解けない。だから鹿児島にも行くし、青森や秋田にも行く。北海道ローカルでつくっていますが高クオリティーの番組をつくっていると思う。食のブランド力という意味で北海道の商品も扱ってはいますが、フラットに違和感なく観られるものを目指した」。

　良い番組、とはなにか。明確な尺度があるわけではない。だからこそ視聴率はひとつの指標となる。視聴者のニーズに応えた番組作りに日々邁進しながらも、本音で言うならばやはり「数字は獲りたいです。数字がほしい」。「営業はわかりやすい。行って結果が返ってくる仕事。でも番組作りはそうはいかない。自分が頑張ったからと言って結果がでるものでもないし、機械の誤作動でもいいから数字がほしいですね（笑）」。ローカル局の戦いは続いていく。