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ジェーン・スー、父との関係を書籍化したわけ ラジオでの大活躍も謙そん「まだまだ、つかめてない」

 作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティー…“生粋の日本人”であるジェーン・スーの肩書きは実に多彩だ。これまで、いろんな事象に的確に言葉を当てはめてきた彼女が次のテーマに選んだのは、自身の“家族”について。笑ったり、しんみりしたり、ほっこりしたり…読み手をいろんな感情にさせる書籍『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮社)をきょう18日に発売するジェーン・スーに、執筆のきっかけや自身の活動などを聞いた。

ジェーン・スー (C)ORICON NewS inc.

ジェーン・スー (C)ORICON NewS inc.

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■家族をテーマに書いたわけ 連載時の原稿料は「全部、父にダイレクト」

 20代前半で母を亡くしてから、一時は絶縁寸前までいった父との関係を描いた同作。このタイミングで筆を取った理由をたずねた。「実際に書く仕事をしてみると、エッセイでは特に自分自身のことを振り返ることが多くなってきます。そうすると、私の人生の中で母が亡くなったことはどうしても避けられない事実で、その後の父親との関係の再構築は非常に大きなテーマでもあり、ここは避けて通れないというのはありました。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』を書いた時に、父との関係も書いたのですが『あそこが面白かった』と言っていただくことが多くて、やっぱり父親と向き合ったものを私自身の棚おろしとしても書いた方がいいだろうなと考えていました。それで『波』での連載のお話をいただいた時に、機が熟したんだろうなと思いましたね」。

 定期的に一緒に行く母の墓参り、親戚とのやりとりなど、さまざまな場面でのエピソードを通して、父が非常に魅力的な人物であることが伝わってくる。「親としての期待値でいくと、やはり『常にしっかりしていて、娘のそばで守ってあげて、温かくて…』という理想の父親像があって、母親とは違った意味での万能感が求められますよね。そうなると、だいたいの父親が落第すると思うのですが、一個人として多面的に見た時に、今まで知らなかったエピソードをいっぱい聞くことができて『この人と話をしてきたようで、全くしてこなかったんだ』なというのがわかりましたし、ひとりの人間として父親を認識できるようになったことで、私の中での恨みつらみが減っていって、もう少し冷静にお互いに向き合えるようになったので、結果的に非常に良かったです」。

 同書ではつづられていない、父の性格が伝わる最新エピソードをひとつ。今月7日深夜放送のラジオ番組『東京ポッド許可局』(TBSラジオ 毎週月曜 深0:00〜1:00)で、マキタスポーツが同書を激賞。放送後、番組を聴いていたという父から「すごく、あなたの本が褒められていました。おおむね、みなさんに好評でした」との連絡があったという。「その時は『てめぇのことが書いてあるのに、この他人事(ひとごと)感は何だ。えっ、自分のことだけど大丈夫?』と思いました(笑)。『波』での連載中の原稿料は全部、父にダイレクトでいっていたので、私はタダ書きで、いうなれば取材協力費に全部消えていくという感じだったんですけど、この他人事な感じを見る限り、父はまだこれを読んでないですね。今回の本は、よくある『この売上の何%が〇〇に寄付されます』みたいなもので、そういう感じで父のもとにお金が入ります(笑)。それを知らせるシールを貼りたかったくらいです」。

 マキタもラジオで指摘していたが、父と絶妙な距離感を保って書かれている上に、うまく表現できないものをズバリと突く“言語化”のうまさも健在だ。「今回は感情がオーバフローになって、情で水浸しみたいにならないように書こうと思いました。書ける時は一編あたり3〜4時間で一気に集中してやって、次の日に読み直してもほとんど直しがないこともありましたが、実家の話などは書き始めるまでにものすごい時間がかかりましたし、直しもしましたね。日報みたいに、あったことをそのまま書いていたので、最初のうちは本当におもしろいのかなと心配でした。でも、ある程度たまってから客観的に読み返すと、老父と中年の娘の2人が楽しそうで、幸せに見えたので、それはひるがえって自分のことでもあるので、問題なくそこそこやれているんだなと感じました。言語化については、自分のモヤモヤを整理するのが好きなんでしょうね。今までの私の作品を『女の話だから読むもんじゃない』と言っている同世代の男性や、年頃の娘さんを持つ父親にまで届けばいいなと思います」。

■ラジオ界のレジェンド・大沢悠里から引き継いだ2時間の重み 木梨憲武の行動力に発見

 言語化といえば、言葉の力が問われるラジオ界でも大活躍。2011年から『ザ・トップ5』のレギュラーコメンテーターを担当し、切れ味の鋭さで注目を集めると、14年4月からは冠番組『週末お悩み解消系ラジオ ジェーン・スー相談は踊る』のパーソナリティーを担当。そして、16年4月8日に丸30年を迎えたタイミングで終了した『大沢悠里のゆうゆうワイド』の後半枠にあたる、午前11時から午後1時までの2時間を同月11日から任された。そんな経緯で始まった平日昼の生ワイド番組『ジェーン・スー 生活は踊る』も3年目を迎え、すっかり“TBSラジオの顔”のひとりとしておなじみの存在となっているが、当の本人は「えっ、もう3年目ですか…まだ、2年目のつもりでいました(笑)。うっかり! 超うっかり!」と笑みを向けながら、これまでの歩みを振り返る。

 「やればやるほど、悠里さんがやっていたことが身にしみてわかるという毎日です。聴いている人を飽きさせない、楽しませる、だけど生活に入り込みすぎない、ノイズにならないというように…という具合に、午前11時台のラジオは今まで私がやっていた夜のラジオとは全く違います。聴いている層もそうですし、聴きたいもの、寄り添える形も全く違うので、これはまだまだつかめてないです。番組で話が盛り上がってくると、奇声を発することがあるのですが、あとから自分で聴くと本当に耳障りで、病院で聴いている方などはゾッとされると思うので、レベルが低い目標ですが奇声を発さないようにと心がけています。堀井(美香)さんとも一緒に『奇声には気をつけよう』と言い合っているんですが、5分後には『きゃー』と言っているので、ホントにダメですよね(笑)」。

 各曜日パートナーを務める同局のアナウンサー陣の印象も聞いた。「いいバランスだと思います。杉山(真也)さんは世代が一回り違いますが、小笠原(亘)さんとは同い年。長峰(由紀)さんは先輩としてきちんとしてらっしゃるので、大船に乗ったつもりでやっています。蓮見(孝之)さんはリスナー層のお父さん・お母さん世代と一番近いし、家事などもされているので、同世代の意見に寄り添える数少ない男性だと思います。堀井さんは…堀井さんと私がやっている金曜日は完全に『生活は踊る』のふろくですね(笑)。そういえば『たまむすび』の赤江珠緒さんがうちの番組に投稿して採用されなかったという話をされていましたけど、スタッフは気付かなったみたいです。私も『爆笑問題の日曜サンデー』に、いろいろなラジオネームを使ってはがきを出したんですけど、読まれませんでした(笑)。送ったメールが読まれた時は、やっぱりうれしいです。読まれるポイントですか…内容よりも長さとかじゃないかな。長すぎると、まず作家さんが放送中に読めないので、コンパクトにまとまっていた方がいいですね」。

 先月18日の放送で、とんねるずの木梨憲武がゲスト出演した際にはダイナミックな展開が起きた。「映画の仕事に興味がある」という22歳の男性リスナーに、木梨が「才能よりも人との出会いが大事」とアドバイスし「20日に映画の舞台あいさつがあるから。そこに(彼を)来させます」ときっぱり。木梨の行動力によって、夢を追いかけるリスナーの運命が動き始めた。「あれは盛り上がりましたね。うれしかったです。ラジオ的であり、とんねるず的でしたね。本当に実現しましたからね。実際に舞台あいさつに行ったリバティーくん(リスナーのラジオネーム)もさすが。あれによって、ほかの聴いている人たちもなんかやってみようと思えますよね。だから、日本中が顔を知っている著名人がやることってああいうことなんだなと学びましたね。ほかの人ができないところにリーチできる人がやるべき、社会貢献の形のひとつを見せつけられました」。

 自身について「私はどちらかというと、相手に壁を作ってしまうタイプなので…」と謙そんするが、相手を緊張させない雰囲気や、色眼鏡なく見てくれることへの信頼感からか、記者も取材を忘れて、気付けば「スーさん、実は…」と相談を始めてしまっていた。相手が紡ぐ言葉をしっかり聞いて、落ち着いたトーンで、押し付けることなく自身の見解を語る姿に、人気の秘けつが垣間見えたが、最後に「これからやってみたいことはありますか?」と聞くと、すぐさまこう返ってきた。「しばらくは、今の仕事の精度を上げないと干されるぞっていうのがあるので、今やっていることの精度を上げる方が優先的です。しゃべる仕事と書く仕事は相互作用を及ぼしているのでいいですけど、これ以上、何かをプラスしてやる場合は、ほかのものを休むか、あきらめるかしないと、散漫になっちゃうなと思います」。

■書籍のプロモーション動画
ジェーン・スー『生きるとか死ぬとか父親とか』を語る
https://youtu.be/JRhXec0Pswo

家族のことって なにも知らない
https://youtu.be/LwzEuChyrwQ

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