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『エンタの神様』スタートから15年 総合演出・五味一男が語る人気の秘けつ

 はなわアンジャッシュ陣内智則ドランクドラゴンアンタッチャブルサンドウィッチマン…今をときめく人気芸人たちの面白さにいち早く注目し、世の中に送り出してきた日本テレビの人気番組『エンタの神様』。2003年4月から10年3月まではレギュラー放送、12年4月からは特番での放送を続けている同番組は今年で丸15年を迎える。ゼロ年代のネタ番組、お笑いブームのきっかけとなり、未だに特番として放送を続けている『エンタ』の総合演出を手がける五味一男氏に、『エンタ』立ち上げから独特な演出にこめた信念、今のテレビ界への思いなどを聞いた。

■お笑いブームの起点となった“はなわ” 毎週300組のネタ動画集めスター発掘

 2003年4月時点では、深夜に放送していたNHKの『爆笑オンエアバトル』や、漫才師のナンバーワンを決める『M-1グランプリ』も年に1度放送していましたけど、ゴールデンタイムでのネタ番組はひとつもなかったんです。そんな状況の中で「土曜の夜10時にバラエティー番組を始める」となったんですけど、さすがに最初から「じゃあ、ネタ番組でいきましょう」と提案しても、前例もないし、ヒットするとも思われてないから、その案は通るわけがないと思いました(笑)。スタート時の『エンタの神様』がネタ番組に特化していないのは、そういった背景があって、音楽、お笑い、スタントショー、マジック…というように、まずはエンターテイメント全般を扱っていく番組としてスタートさせることに決めました。

 「ゆくゆくは、お笑いだけでやりたい」という気持ちはあったんですけど、実はその当時ブレイクしていたのは、テツandトモダンディ坂野綾小路きみまろ、いつもここからの4組くらいしかいなかったんです。そこで「ネタ番組をやります」と言っても、その4組に毎週出てもらうわけにもいかないという事情もあって、最初はエンタメ全般に焦点を当てていたんですけど、1ヶ月半くらい経った時に「もしかしたら、これはお笑いだけでもいけるんじゃないかな」という出来事がありました。それが、はなわくんのネタだったんです。

 きょうは、その時の毎分視聴率を資料として持ってきたので、それを参考にしながら話をしますね。まだブレイクする前のはなわくんが、千葉県や埼玉県を題材に歌ネタをやったんですけど、グラフを見てみると数字が良かった。実際に視聴者からの反響もあったので「明石家さんまさんやダウンタウンといった大物じゃなくて、無名の芸人でも数字が取れるんだったら、これからはお笑い一本でいけるんじゃないか」と思って、ネタ番組の路線に舵を切っていきました。はなわくんの反響に勇気づけられて、そこから「まだ無名だけど、ちょっと試してみようか」ということで、アンジャッシュ、だいたひかる、陣内智則、パペットマペットとかに出てもらったという流れだった。だから、あの時代の“お笑いブーム”を作る突破口になったのは、はなわくんだったと言っても過言ではないんです。

 ネタ番組に特化することを決めてからは、とにかく出てもらう芸人さんの数が必要になってくるので、都内近郊でやっているライブにスタッフを総動員させて、カメラを回してきてもらうことにしました。毎週300組くらいのネタ動画が集まるんですけど、そこからディレクターのチェックを通過した50組くらいのネタを僕が3時間くらいかけて一気に見ていって「これはイケる」という芸人さんを数組程度ピックアップするという感じでしたね。よく「何を基準で選んでいたんですか?」と聞かれるんですけど、こればっかりは僕の感性で決めていたとしか言いようがないんです。

■エンタ流の演出の真意とは? 人気の理由は小中高生からの圧倒的な支持

 この間『エンタ』の取材会があった時に、アンジャッシュの渡部(建)くんが「自分たちが出てすぐの頃は、ライブでネタをやってきたキャリアがあったので、自分たちのネタにテレビ向けにテロップを入れたりすることが耐え難くて、収録当日まで五味さんとケンカしていました」と振り返っていましたよね。確かに『エンタ』の演出は、一部のお笑いファンから逆風が吹いていたという認識はあります。だけど、僕としては基本的にお笑いファンだけじゃなくて、お茶の間に笑いを翻訳して、なるべく多くの人に広めようと思って、わかりやすくしていった結果がテロップをはじめとした演出だったんです。これって、僕はバイリンガルの人が字幕付きの洋画を見る時の心境に近いと思っているんです。洋画の字幕は日本人がついていけるように文字数をできるだけ少なくしないといけないので、直訳から離れるって言いますよね。だから、バイリンガルの人たちは違和感があるから「字幕を外してくれ」と言うんですけど、一緒に見ている大多数は英語が話せないから字幕が必要なんです。それと『エンタ』のテロップは同じだと思っていて、そこまでお笑いに詳しくない人や、ながら見の人にも楽しんでもらうためには必要だと思ったので、テロップを入れました。

 はなわくんの場合は歌ネタだから、テロップを入れることに抵抗はなかったと思うんですけど、やっぱりアンジャッシュとか陣内くんは最初の頃は抵抗があったと思います。だって、劇場では笑いがダイレクトにくるわけですから、お茶の間での受け止められ方を理解するのはすぐには無理ですよね。だから、半年がかりで徹底的に議論しながら、時には児嶋(一哉)くんや陣内くんと朝まで一緒に麻雀をしたりしながら、関係を作っていきました。そうやって根気強く話を続けていくうちに、テレビと劇場の笑いは違うということをわかってくれたという感じでしたね。そうそう、この前ビックリしたことがあったんです。アンジャッシュが『笑点』に出ていたんですけど、その時に『エンタ』みたいにそれぞれの役割を文字を使って説明していたんです(笑)。そこまでになったんだなと思いましたね。

 2010年に一旦レギュラー放送を終えたのですが、充電期間を経て12年からは特番を継続してやらせてもらっています。始まってから丸15年経ってもゴールデンで『エンタ』をできるのは、ありがたいことです。実は『エンタ』の大きな特徴があって、それは小・中・高校生にいつの時代も圧倒的に支持されているということなんです。例えば、去年の9月の毎分視聴率を見てみると、6歳から12歳、13歳から19歳の世代では6〜7割が『エンタ』を視聴しているんです。03年に始まった頃に生まれてない世代もいるのに、時代が変わってもそこの世代からずっと支持されています。逆に50歳以上の層では、一番下なので、これは僕の感性がいつまで経っても中高生のままっていうことでしょうね(笑)。

 『エンタ』がきっかけになってブレイクした芸人が、ほかの番組で活躍してくれていることもうれしいですね。コウメ太夫は、藤井健太郎くんの『水曜日のダウンタウン』(TBS)や、フジテレビの『全力!脱力タイムズ』によく出ていますよね(笑)。どちらの番組にも“やんちゃ”精神みたいなものを感じて、スゴく面白いなと思いながら見ています。うちの局でいえば『世界の果てまでイッテQ!』にも、そういったものを感じるんですけど、やっぱりそうしたツッコミ目線を持ったクリエイターが今の時代の視聴者が求めるものと合っているんじゃないかなと思いますね。藤井くんが去年の年末にやった『人生逆転バトル カイジ』なんて最たるもので、僕は食い入るように見ていました。だって、素人が水2リットルをがぶ飲みして、思わず吐き出してしまう衝撃的なシーンをそのまま流しちゃうわけですから(笑)。

 話を『エンタ』に戻しましょう(笑)。今月24日には『エンタの神様2018春SP』を放送しますが、やっぱり視聴者のみなさんに支持してもらうことが必要なので、そこは大事にしていきたいです。ただ、毎分視聴率というデータだけで判断してもダメなんです。アンジャッシュだって、最初の頃は毎分視聴率が落ちていましたし、アンタッチャブルは1年間数字が上がらなかった。だけど、彼らの笑いには人間の本能に触れる部分があって、これは長い間やり続けることで視聴者のみなさんにも伝わるんじゃないかと思って、ずっと出し続けたんです。そうすると1年後には本当に毎分視聴率がバッと上がっていったので、それは本当にうれしかったです。サンドウィッチマンもそうだったんですけど、彼らは『M-1グランプリ』を取った翌々日くらいに『エンタ』の収録があった時に、王者になったばかりで忙しい中、わざわざ来てくれて、ネタをやってくれたんです。究極の恩返しですよね。だから、これからも結果にこだわる部分と発掘する部分のバランスをうまく取って、番組を作っていきたいと思います。



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