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ベスト盤が55万枚超え、共感性高い歌詞生むback numberの葛藤とは?

 ベストアルバム『アンコール』が55万枚を超える大ヒットを記録、先ごろドームツアーの開催も決定したバンド・back number。オリコンが発表した『第14回 音楽ファン2万人が選ぶ“好きなアーティストランキング”2017』では初の総合TOP10入りを果たし、特に若い世代から大きな支持を得ている。そんな彼らが、映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』主題歌であるシングル「瞬き」を発表。普段は共感性の高い歌詞を書くボーカル・清水依与吏(いより)が、「なるべく届かないでくれ」と考えた理由とは?

シングル「瞬き」を発売したback number

シングル「瞬き」を発売したback number

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◆若い世代から支持を得ているということは、少し責任を感じる

――2016年末発売のベストアルバム『アンコール』が、55万枚を超えるロングヒットを記録中。達成感の大きな1年だったのでは?
【清水依与吏】本当にいろんな意味で磨かれた1年でした。なかでもアリーナツアーは大きかったですね。今まで以上の覚悟を持って臨まないとダメだなと思いました。でも、そのおかげで今はフラットな状態でいられるので、ありがたいなと思っています。
【栗原寿】大変さもありましたけど、その経験を今年後半のレコーディングに生かせました。ツアーで得たものが体の中に残っていて、意識しなくても音に出せるようになったんです。
【小島和也】だから、3人でスタジオに入るのが今すごく楽しい。ツアーでは緊張していたので、今はゆっくり音楽をやれている気がします。

――『第14回 音楽ファン2万人が選ぶ“好きなアーティストランキング”2017』では、総合部門で6位、世代別ランキング10代部門で1位、20代部門で4位と躍進しました。
【清水依与吏】特に若い世代から支持を得ているということは、やはり少し責任を感じる部分もあります。自分たちもそうですけど、若い頃に聴いてきたメロディや歌詞ってすごく大事で、一生大切にしたいものだったりする。僕らがMr.Childrenさん、スピッツさん、サザンオールスターズさんを聴いてきたのと同じような感覚で聴いてくれている人もいるだろうし、少なくともその人たちの人生に関わることになる。皆さんがいい人生を送るため、僕らの音楽が少しでもお手伝いできればと、あらためて思います。

◆今まで以上に誰かの人生に関わること

――ニューシングル「瞬き」は、映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』主題歌に。
【清水依与吏】実話を元にしたお話なので、今まで以上に誰かの人生に関わることだというのは最初に考えました。いろんな意味に受け取れる、曖昧さのある曲だとダメだなと思って。映画も、ものすごく強い意志の塊のような作品なので、その隣に立つ音楽として、これは何かきちんと言い切らなきゃいけないんじゃないかと思ったんです。最初に「幸せとは」という言葉が出てきたんですけど、実は僕は、そうやって言い切るのはあまり好みじゃないんですよ。そういうことは、本当に何かを悟ってる人がやるべきだと思うので。でも、「星が降る夜と」という言葉が続いたときに、きちんとその先を言い表せるならいいかなと思ったんですよね。間違いを恐れずに、「自分の今のところの答えはこれです」という曲にしないといけないと思いました。

――すべての人にとってではなく、今の自分にとっての答えだと。
【清水依与吏】書いた後から、詞の中に「清水依与吏が書いた詞だ」という証を探したし、微調整をたくさんしました。どうしても説教くさくしたくなかったからこそ、「なるべく届かないでくれ!」っていう部分があったのかもしれない。この感覚は初めてでした。

◆プロデューサーの小林武史さんがキラキラ成分を入れてくれる

――サウンド的に意識したところは?
【清水依与吏】曲で言いたいことは明確だけど、整頓されすぎちゃうとものすごく美しい歌になってしまうので、それは避けたかったんです。3人のオケとしては、現代の流行りと真逆の音をしているけど、そこにプロデューサーの小林武史さんがキラキラ成分を入れてくれる。毎回そうなんですが、back numberの音って裸にするとけっこう無骨。無骨な男性がパンダの着ぐるみを着て、汗だくでやってます、みたいな感じなんですよね(笑)。
【小島和也】最初にスタジオ入ったときは、何も飾り付けのない状態だから、「これ、バラードなのかな?」と思うくらいの楽曲でした。
【清水依与吏】歌入れが終わるまで、どうなるかわからないんです。

◆今の自分のテーマである、“自意識の壁”を崩せた

――シンプルに人の心を揺さぶる、新しいタイプのラブソングですね。
【清水依与吏】きっとそれは、自分の手をちゃんと離れた曲にできたからだと思います。今の自分のテーマである、“自意識の壁”というのも崩せたことになる。本当に、自意識の壁から抜け出せないんです。前よりいろんなことがクリアにわかっているはずなのに、なぜもっと客観視できないんだろう、なぜ自分の歌だと思った瞬間に音程が裏返ったりするんだろうと、よく思うんです(笑)。でも、自分の歌だからこそずれる理由がそこにはあるはずで、今後はそこをきちんとコントロールできたらなと思うんですよね。そういう意味でも、この曲を書けたということは、back numberがまた少し前に進めたってことなのかなと感じています。
(文:川上きくえ)

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