1954年に誕生した映画『ゴジラ』から昨年大ヒットした『シン・ゴジラ』まで、29作のゴジラ映画が作られてきたが、ついにシリーズ初のアニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』(静野孔文監督・瀬下寛之監督)が公開された。
■客席は往年のファン、アニメファン、声優ファンなどが混在
今月2日、一般の観客向けに初めて上映された完成披露試写会の後、声優の櫻井孝宏がいみじくもこう言っていた。「壇上から客席を見て、アニメ作品の舞台あいさつではあまり見かけないご年配の男性がけっこういらっしゃっているな、と思いました。ずっとゴジラを観てきた往年のファンの方なのかな? 普段アニメの映画は観ないけど、ゴジラだから観てみようと思われたのかな? もちろん、アニメが好きな方、好きな声優さんが出ているから観に来たという方もいたと思うので、老若男女、幅広かったんです。さすがゴジラだな、と思いました」。
本作の狙いはまさに、そこにあるようで…。瀬下監督が続ける。「歌舞伎をあえてニューヨークでミュージカル化するような感じかも知れません。特撮映画の『ゴジラ』には詳しくないけれど、アニメーションになじみ深い若い世代にも、ゴジラの魅力の一部を紹介し、新しい可能性を開拓する。それが、『GODZILLA 怪獣惑星』です」。
■「ゴジラ“エリート”ではない」と公言する監督をあえて起用!?
瀬下監督は「初めて観たゴジラ映画は、『ゴジラVSヘドラ』(1971年)。4歳の時、父と一緒に映画館で観ました。ですが、その後は洋画ばかり観ていました。小2の時に『ジョーズ』(75年/スティーブン・スピルバーグ監督)に衝撃を受け、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(77年、日本公開は78年/ジョージ・ルーカス監督)、『エイリアン』(79年/リドリー・スコット監督)、『シャイニング』(80年/スタンリー・キューブリック監督)など。ハリウッド映画に影響を受けて、中学生の頃には立派な映画少年になっていました。それからですね、日本にもすばらしい映画や特撮文化があることを気づくのは。『ゴジラ』シリーズもほとんどリアルタイムで観ていなかったんです」。
静野監督も「『ゴジラ』といえばローランド・エメリッヒ監督のハリウッド版『GODZILLA』(98年)が最初で、全然観ていなかったんです。だから、最初に依頼があった時は一度お断りしたんですよ」。
「自分たちはゴジラ“エリート”ではない」と公言する両監督に、アニメーション映画『GODZILLA』を託したのには、当然、意味がある。瀬下監督は「もし、往年のゴジラファンを納得させる作品をアニメーションで作ってくれ、と言われていたら、僕らは監督を引き受けてないです(笑)。僕らのゴジラリテラシーが低かった分、これまでのゴジラに縛られず、自由に、挑戦できたと思います。もちろん、ゴジラ“エリート”の方にも、初のアニメーションのゴジラに興味を持っていただけたらいいな、と思います」。
■アニメーションだから描ける『GODZILLA』の新世界
『シン・ゴジラ』は、“現実”の世界に謎の巨大生物ゴジラが現れた時、どう戦うのか、緻密なまでにディテールされた日本の政府・自衛隊の姿が注目されたが、アニメ『GODZILLA』は、“虚構”の鏡のような未来世界が舞台。この振り幅の大きさに、「ゴジラのユニークさを紹介し、新しい可能性を開拓」して、誕生から60年以上の歴史ある「ゴジラ」を後世に残し、さらに大きく成長させようとする東宝の本気度がうかがえる。
巨大生物「怪獣」の出現と、その怪獣をも駆逐する究極の存在「ゴジラ」。半世紀にわたる怪獣との戦いの末、人類は敗走を重ね、ついに地球脱出を計画。2048年、中央政府管理下の人工知能による選別を受けた人間だけが、恒星間移民船・アラトラム号で11.9光年の型にある「くじら座タウ星e」を目指し旅立った。しかし、20年かけてたどり着いたタウ星eは、人類が生存できるような環境ではなかった。危険な長距離亜空間航行を強行し、地球に戻ってみると、すでに二万年もの歳月が経過し、地上はゴジラを頂点とした生態系による未知の世界となっていた。地球を取り戻すため、ゴジラと人類の戦いが再び始まる。
ストーリー原案・脚本を手掛けたのは、アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』『PSYCHO-PASS サイコパス』などで知られる虚淵玄氏(ニトロプラス)。劇場版『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』を手がけた静野監督と、『シドニアの騎士 第九惑星戦役』、『BLAME!』などの瀬下監督のコンビのもと、国内最高峰の3DCGスタジオ、ポリゴン・ピクチュアズが実写では表現することができない圧倒的な映像を作り上げた。
櫻井は「アニメだからできること、その良さを改めて実感しました。二万年後の地球という設定もアニメーションだからこそ表現できた。ゴジラはもちろんですが、登場人物の設定や劇中に出てくる亜空間航行(宇宙空間を高速異動するためのワーク航法)など、SFならではのディテールにあふれていて、かっこいい!と思いました」と、絶賛。
静野監督も「地球人、異星人、そしてゴジラがいるということで、観客それぞれが楽しむポイントを探すことのできる作品になっていると思います。自分はあまり難しく考えるのが得意ではないので、自分がわかるように作れば、多くの人に楽しんでもらえる作品になるんじゃないかと。そこはいつも重要視しているところなので、『GODZILLA 怪獣惑星』も多くの方に観てもらいたいです」と、自信を持って作品を送り出す。
ちなみに、『GODZILLA 怪獣惑星』に登場する移民船には、地球人のほかに、怪獣やゴジラと戦っている半世紀の間に飛来した異星人2種族も乗っていて、主人公のハルオ・サカキ(宮野真守)やユウコ・タニ(花澤香菜)は地球人だが、櫻井が演じるメトフィエス(中佐/大司教)はかなり謎多き存在となっている。取材に快く応じてくれた櫻井だったが、「キャラクターについては、言えないことが多すぎて…」と苦笑い。
瀬下監督が助け舟を出す。「虚淵さんのアニメが好きな方は、言われなくても何かを予感しているかもしれないのですが(笑)、アニメーション映画『GODZILLA』は3部作なので、いろんな憶測を交わして、盛り上がるといいな、と願っています」。
17日に公開された『GODZILLA 怪獣惑星』は、週末(18日・19日)の映画ランキングで7万1200人を動員、興行収入1億300万円をあげて3位に初登場した。
■客席は往年のファン、アニメファン、声優ファンなどが混在
今月2日、一般の観客向けに初めて上映された完成披露試写会の後、声優の櫻井孝宏がいみじくもこう言っていた。「壇上から客席を見て、アニメ作品の舞台あいさつではあまり見かけないご年配の男性がけっこういらっしゃっているな、と思いました。ずっとゴジラを観てきた往年のファンの方なのかな? 普段アニメの映画は観ないけど、ゴジラだから観てみようと思われたのかな? もちろん、アニメが好きな方、好きな声優さんが出ているから観に来たという方もいたと思うので、老若男女、幅広かったんです。さすがゴジラだな、と思いました」。
本作の狙いはまさに、そこにあるようで…。瀬下監督が続ける。「歌舞伎をあえてニューヨークでミュージカル化するような感じかも知れません。特撮映画の『ゴジラ』には詳しくないけれど、アニメーションになじみ深い若い世代にも、ゴジラの魅力の一部を紹介し、新しい可能性を開拓する。それが、『GODZILLA 怪獣惑星』です」。
■「ゴジラ“エリート”ではない」と公言する監督をあえて起用!?
瀬下監督は「初めて観たゴジラ映画は、『ゴジラVSヘドラ』(1971年)。4歳の時、父と一緒に映画館で観ました。ですが、その後は洋画ばかり観ていました。小2の時に『ジョーズ』(75年/スティーブン・スピルバーグ監督)に衝撃を受け、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(77年、日本公開は78年/ジョージ・ルーカス監督)、『エイリアン』(79年/リドリー・スコット監督)、『シャイニング』(80年/スタンリー・キューブリック監督)など。ハリウッド映画に影響を受けて、中学生の頃には立派な映画少年になっていました。それからですね、日本にもすばらしい映画や特撮文化があることを気づくのは。『ゴジラ』シリーズもほとんどリアルタイムで観ていなかったんです」。
静野監督も「『ゴジラ』といえばローランド・エメリッヒ監督のハリウッド版『GODZILLA』(98年)が最初で、全然観ていなかったんです。だから、最初に依頼があった時は一度お断りしたんですよ」。
「自分たちはゴジラ“エリート”ではない」と公言する両監督に、アニメーション映画『GODZILLA』を託したのには、当然、意味がある。瀬下監督は「もし、往年のゴジラファンを納得させる作品をアニメーションで作ってくれ、と言われていたら、僕らは監督を引き受けてないです(笑)。僕らのゴジラリテラシーが低かった分、これまでのゴジラに縛られず、自由に、挑戦できたと思います。もちろん、ゴジラ“エリート”の方にも、初のアニメーションのゴジラに興味を持っていただけたらいいな、と思います」。
■アニメーションだから描ける『GODZILLA』の新世界
『シン・ゴジラ』は、“現実”の世界に謎の巨大生物ゴジラが現れた時、どう戦うのか、緻密なまでにディテールされた日本の政府・自衛隊の姿が注目されたが、アニメ『GODZILLA』は、“虚構”の鏡のような未来世界が舞台。この振り幅の大きさに、「ゴジラのユニークさを紹介し、新しい可能性を開拓」して、誕生から60年以上の歴史ある「ゴジラ」を後世に残し、さらに大きく成長させようとする東宝の本気度がうかがえる。
巨大生物「怪獣」の出現と、その怪獣をも駆逐する究極の存在「ゴジラ」。半世紀にわたる怪獣との戦いの末、人類は敗走を重ね、ついに地球脱出を計画。2048年、中央政府管理下の人工知能による選別を受けた人間だけが、恒星間移民船・アラトラム号で11.9光年の型にある「くじら座タウ星e」を目指し旅立った。しかし、20年かけてたどり着いたタウ星eは、人類が生存できるような環境ではなかった。危険な長距離亜空間航行を強行し、地球に戻ってみると、すでに二万年もの歳月が経過し、地上はゴジラを頂点とした生態系による未知の世界となっていた。地球を取り戻すため、ゴジラと人類の戦いが再び始まる。
ストーリー原案・脚本を手掛けたのは、アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』『PSYCHO-PASS サイコパス』などで知られる虚淵玄氏(ニトロプラス)。劇場版『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』を手がけた静野監督と、『シドニアの騎士 第九惑星戦役』、『BLAME!』などの瀬下監督のコンビのもと、国内最高峰の3DCGスタジオ、ポリゴン・ピクチュアズが実写では表現することができない圧倒的な映像を作り上げた。
櫻井は「アニメだからできること、その良さを改めて実感しました。二万年後の地球という設定もアニメーションだからこそ表現できた。ゴジラはもちろんですが、登場人物の設定や劇中に出てくる亜空間航行(宇宙空間を高速異動するためのワーク航法)など、SFならではのディテールにあふれていて、かっこいい!と思いました」と、絶賛。
静野監督も「地球人、異星人、そしてゴジラがいるということで、観客それぞれが楽しむポイントを探すことのできる作品になっていると思います。自分はあまり難しく考えるのが得意ではないので、自分がわかるように作れば、多くの人に楽しんでもらえる作品になるんじゃないかと。そこはいつも重要視しているところなので、『GODZILLA 怪獣惑星』も多くの方に観てもらいたいです」と、自信を持って作品を送り出す。
ちなみに、『GODZILLA 怪獣惑星』に登場する移民船には、地球人のほかに、怪獣やゴジラと戦っている半世紀の間に飛来した異星人2種族も乗っていて、主人公のハルオ・サカキ(宮野真守)やユウコ・タニ(花澤香菜)は地球人だが、櫻井が演じるメトフィエス(中佐/大司教)はかなり謎多き存在となっている。取材に快く応じてくれた櫻井だったが、「キャラクターについては、言えないことが多すぎて…」と苦笑い。
瀬下監督が助け舟を出す。「虚淵さんのアニメが好きな方は、言われなくても何かを予感しているかもしれないのですが(笑)、アニメーション映画『GODZILLA』は3部作なので、いろんな憶測を交わして、盛り上がるといいな、と願っています」。
17日に公開された『GODZILLA 怪獣惑星』は、週末(18日・19日)の映画ランキングで7万1200人を動員、興行収入1億300万円をあげて3位に初登場した。
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2017/11/21