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「指針に縛られない」小橋賢児が語る“フェスの未来像”

 国内最大級の屋外ダンスミュージックフェスとしてすっかり定着した『ULTRA JAPAN』。4回目となる今年も、16日〜18日にかけて国内外の豪華アーティストが集結し、ジャンルの垣根を越えた“さまざまな音”で訪れたファンを魅了する。立ち上げから同フェスに関わり、現在もクリエイティブディレクターとして辣腕を振るう小橋賢児に、“これまでのULTRA JAPAN”、そして“これからのULTRA JAPAN”を聞いた。

国内最大級のダンスミュージックフェス『ULTRA JAPAN』のクリエイティブディレクターを務める小橋賢児

国内最大級のダンスミュージックフェス『ULTRA JAPAN』のクリエイティブディレクターを務める小橋賢児

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■一過性の流行ではなく“文化”にしたいんです

――今年の『ULTRA JAPAN』もいよいよ開幕直前ですが、これまでに3回開催し、改めて、歩んできた軌跡を振り返ると、どのような想いが?
【小橋賢児】そうですね……正直、いろいろな想いがあります(笑)。立ち上げることのが、そもそも凄く大変でした。(屋外フェスという)市場が確立されていない状況で、理解を得ていかなければいけない状況だったので、「どう伝えていくのか?」という部分は思い悩みました。さらに、実際に来て頂いたお客さまに、どのように楽しんで頂くのか? 本当に手探りでしたね。

――当時は屋外ダンスフェスという文化が今ほど定着してない状況でしたからね。
【小橋賢児】そうですね。それこそ行政の方とも時間をかけて話し合いをして理解を得て。ありがたいことに完売という形で1回目の終えることが出来ました。

――2年目、3年目と回を重ねるごとに規模も大きくなり、ダンスミュージック・シーンをけん引するイベントに成長しました。
【小橋賢児】『ULTRA』というイベントを日本で開催すると決めたとき、一過性の流行ではなく“文化”にしたいという想いが当初からあったんです。そのためにはどうするべきか? ただ流行を追っているだけではいつか飽きられてしまいます。 ですから、出演者のラインナップだけではない、会場の作りやホスピタリティなども含めて、細かい変化を付けることでお客さんを満足させる。それが文化に繋がるんじゃないかなって

――イベントではなく、フェスという新たな“文化”を定着させたかった。ご自身がマイアミで『ULTRA』で体感して “フェスの楽しみ方”の原体験を共有したかったんですね。
【小橋賢児】そうです。僕自身、『ULTRA』を体感したことで、様々な心の変化がありました。フェスをきっかけに、自分の人生をクリエイトしていく…『ULTRA JAPAN』も、そんな場にしたいんです。

――来場者それぞれが“人生の岐路”となるような体験、そんな場を提供したいと。
【小橋賢児】そういう瞬間って絶対にあると思うんです。まさに僕自身、27歳のときに偶然マイアミに行って、偶然『ULTRA』を体感して人生を左右するような経験をした。そこから世界中のフェスを体感したいという願望が生まれたんです。決して1度の経験で人生が180度変わるワケではないんですけど、自分から動き出すという衝動を生むきっかけにはなるはずです。

■僕らは一度も『ULTRA』を“EDMフェス”と呼んだことはない

――世界のダンスミュージック・シーンにおけるEDMブームと同時並行する形で『ULTRA』も認知され、年々拡大の一途を辿っています。これは嬉しいことではあると思いますが、一方で、ジャンルを狭めてしまう危険性もあるのでは?
【小橋賢児】仰る通りだと思います。もちろんEDMブームがあったからこそ認知された部分もあります。でも、そこだけじゃないんだけどなぁという気持ちはやっぱりありますね(笑)。僕らは一度も『ULTRA』を“EDMフェス”と呼んだことはないんですけど、印象として定着してしまった。でも実際に、本拠地であるマイアミや世界各国の『ULTRA』では、“ミュージックフェスティバル”と銘打っている。その名の通り、本来は様々なジャンルの音楽を楽しめるフェスなんです。

――EDM=ULTRAというカテゴライズ自体がそもそも間違っているんですね。
【小橋賢児】来場して頂いたお客様には色々な音楽を聴いてほしいし、ジャンルの垣根を取っ払って楽しんで欲しい。そして、ユーザーのニーズに合わせてフェス自体も進化していかないといけない。例えば、フェスと1日の過ごし方も、あるシーンでは、ハイエナジーで騒ぎたい、あるシーンでは音にどっぷりハマリたい、また、あるシーンではチル(まったりしたい)したい瞬間もある……1日を通してフェスの中で起こる、お客さまの様々な衝動に応えたいと思っています。

――なるほど。様々なシチュエーションに応えることで、来場者それぞれのストーリーが構築されていくワケですね。皆が同じ方向に進む必要はないと。
【小橋賢児】そうです。それは本場マイアミの『ULTRA』もまったく一緒です。いきなり現在のような10ステージに増えたワケではなく、オーガナイズする側が気づいたこと、欲するものを常に思考しながら年々構築していき、今の形になっていった。そういう意味で言えば僕らの『ULTRA JAPAN』もまだ“過程”なんです。決して完成形ではない。


■「指針に縛られない」ということは常に大切にしたい

――そういった過程のなかで生まれたのが、今年から新たに誕生したLIVE STAGEなんですね。MIYAVIや水曜日のカンパネラなど、これまでの『ULTRA JAPAN』とは異なるアーティストをブッキングしました。
【小橋賢児】今回の試みは、ある意味、本来の『ULTRA』の姿に戻したいという想いから生じたチャレンジでもあります。「『ULTRA JAPAN』ってこんなイベントだよね」という固定観念や風潮をどう回避していくかとの戦いと言いますか(笑)。今までの『ULTRA JAPAN』を好きだった人からも、時として疑問符を投げかけられるようなアクションを起こしていかないと本当の“普遍性”は手に入れられないじゃないかなって。

――それが文化に繋がっていくための通過儀礼なんですね。ただ、その“さじ加減”って難しいですよね。
【小橋賢児】難しいですねぇ(しみじみ)。凄くリスキーな部分はあります。僕だけのフェスではないので、マイアミの意向や日本の市場などを踏まえてのブッキングになりますよね。そこはビジネスの要素もしっかりと考えて動かないといけない。でも、やっぱりそれが楽しいんですよね(笑)。

――上手く成功したときのカタルシスは、何物にも代えがたい。
【小橋賢児】始まる前までは「もう二度とやるか!」っていう気持ちにもなるんですけど(笑)、僕らが何ヵ月も何年も費やしてきた想いをお客さんが汲み取って歓喜している姿を見たら…苦労なんて忘れちゃいますね。

――常に変化してく『ULTRA JAPAN』だけに、未来像を現状で予想するのは難しいですが、10年後はどのような“文化”になっていますかね?
【小橋賢児】難しいですね(笑)。ただ「指針に縛られない」ということは常に大切にしていきたいです。その都度、指針も変わっていくものだし、むしろその変化を恐れてしまうと権威主義に走ってしまう可能性がある。徹底的に打合せを重ねて、いよいよGOするタイミングでハッっと妙案を閃いたら、そちらに変更することも、時には必要だと思うんです。急な方向転換を提言することは凄く勇気が必要ですけど、それを恐れていたら真新しい“指針”も生まれないと思う。

――それが変化を楽しむことであり、文化を生む土壌作りになる…。
【小橋賢児】10年後、『ULTRA JAPAN』のメインステージで鳴っている音が、現状からは想像もできないような形になっていて欲しいんです。それは僕が10年前にマイアミで『ULTRA』を体験したとき、今のような状況なんて想像できなかったようにね(笑)。

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