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SMAPメンバー紹介曲に秘められた、5人が乗り越えた試練の歴史

 様々な角度からSMAPに迫る連載番外編。ファン投票によるベストアルバム『SMAP 25 YEARS』を元に、毎回、彼らの音楽を紐解いていきたい。今回注目するのは、“FIVE”で繋がれた3つのメンバー紹介曲。これまで、“27時間テレビ”や“めちゃイケ”などでもフィーチャーされたことがある。この3曲には、中居正広のプロデュース力と、SMAPが乗り越えてきた試練の歴史が詰まっている。

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◆中居により驚くほど緻密に計算され、進化を遂げた“FIVEシリーズ”

 SMAPには、“FIVEシリーズ”と呼ばれるメンバー紹介ソングが3曲ある。ベストアルバム『SMAP 25 YEARS』では、ファン投票で選ばれた50曲が発売順に3枚のディスクに分けられているが、1枚目には「Five True Love」、2枚目には「FIVE RESPECT」、3枚目に「CRAZY FIVE」がそれぞれ収録される。3曲とも、楽曲制作を手がけたのは中居正広だ(「Five True Love」の歌詞は香取慎吾)。90年代は“True Love”、00年代は“リスペクト”、10年代は“クレイジー”と、時代時代のSMAPのグループとしての姿勢が、これらの曲に集約されている。

 今回、ベストアルバム10曲ずつをレビューする試みの中で、たまたま11曲目から20曲目の中に、2曲のFIVEシリーズが入っていた。よって、ベストアルバムレビューの2回目は、SMAPのメンバー紹介ソング“FIVEシリーズ”について考察してみたい。あらためて3曲を聴き比べ、パフォーマンスの映像を見比べてみると、中居正広のプロデュース力がいかに優れているかがよくわかる。“音楽”に対する“Love”と“RESPECT”はもちろんのこと、ダンスやファンとの一体感に関しても、中居は、驚くほど緻密に計算し、また経験を経て、見せ方を進化させているのである。

◆リレー形式でメンバーを紹介、ライブ演出でより輝く

 99年に発売されたアルバム『BIRDMAN 〜SMAP 013』は、ある意味、SMAP初の“コンセプトアルバム”と言っていい、世界観のはっきりした仕上がりになっていた。SMAP30枚目のシングル曲「fly」のミュージックビデオは、「BIRDMAN」というタイトルで製作されたショートムービーで、悪の組織(?)に拉致された“ゴロー”を救出すべく、それぞれの日常を捨てて仲間が結集。追っ手から逃げるために全員で屋上から飛び降り、最後は鳥の羽だけが宙を舞う、というハードボイルドかつファンタジックなストーリーだ。「Five True Love」は、このアルバムの最後に収録されていて、ライブでも終盤に差しかかる、まさにクライマックスのタイミングで披露されていた。

 アルバムを聴いた段階では、「面白い歌だな」とか「盛り上がりそう」とか、漠然とした印象しかなかったこの曲だったが、初めてライブでのパフォーマンスを見たときは、その演出力に仰け反った。最初に中居のDJ風の前振りがあって、ラップで木村拓哉を“限界を超えても逃げない男”と紹介、木村が稲垣吾郎を、稲垣が草なぎ剛を、とリレー形式で紹介していく。間奏の時にステージ上で木村と草なぎがイリュージョン風のダンスを披露したり、草なぎのラップから、「慎吾!」と呼びかけるところはファンと息を合わせたり、ジェットコースターのような変化の中で、5人が揃ってサビを歌うと、強烈な一体感が生まれる。

 SMAPであっても、それ以外のグループでも、アイドルのライブDVDを観ながら、ついリピートしてしまう場面はダンスのコーナーがどうしても多くなるものだ。そういう意味でも、『LIVE BIRDMAN』の6曲ノンストップのダンスコーナーは、今見ても強烈にカッコイイ。また、ダンスコーナーの曲の世界観に特化したダンスとは違う意味で、「Five True Love」のダンスは新鮮だし楽しいし、チームワークが伝わってきて嬉しくなる。このライブでSMAPは、たぶん限界まで踊っている。SMAPのシングル曲に、「セロリ」や「夜空ノムコウ」や「朝日を見に行こうよ」などの“踊らない曲”が増えてきていた時期に、ライブの演出を担当していた中居は、ライブでは“とことんまで踊るSMAP”を見せたかったのではないだろうか。

◆森の脱退後、SMAP解散の噂に対する意思表明のよう

 歌詞についても、「Five True Love」はとても思わせぶりだ。“後ろを振り返っても戻れるわけじゃない”など、まるで自分に言い聞かせるかのようなフレーズが散りばめられ、特に中居のソロでは、“探す”“失くす”“壊す”“迷う”などの言葉が並び、最後に「目指す 笑える時まで」とつなぐ。それは、森且行を失ったその事実をなんとか受け止めようとしているようにも取れるし、当時から度々取りざたされていた解散の噂に、等身大の意思表明をしているようにも取れる。

 もう一つ深読みをすれば、ライブでこの曲を歌った時に、メンバーは全員白の衣装で登場したことも興味深い。“白”は、6人のSMAPが、「スマイル戦士 音レンジャー」という企画もののCDを発売した時の、森のメンバーカラー。『SMAP×FNS 27時間テレビ』(フジテレビ系)のノンストップライブなど、ここ一番の時、中居はいつも、白い衣装を選んでいるような気がする。5人の愛が、そこにいないメンバーにも届くようにと。

◆稲垣、草なぎの活動自粛を乗り越え歌う、「ピンチはチャンス」

 「FIVE RESPECT」は、2002年発売のアルバム『SMAP 015/Drink!Smap!』収録曲。稲垣の活動自粛からの復帰を受けて、新たな局面を迎えたSMAPをテーマに、中居が作詞作曲を手がけたものだ。これもメンバー紹介曲に違いはないが、全体的に迷いや憂いを感じさせる「Five True Love」に比べると、「ピンチはチャンス」と歌う、試練を乗り越えた後のメンバーへの強い信頼感から生まれた積極性が加わっている。また、「どこにいてもわかってる」「どこにいても感じてる」と、“5人でこそSMAP”という骨太のメッセージを貫き、だからこそ、『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)でナイティナインの岡村隆史が中居のパートを乗っ取るようなバラエティ的な演出にも、余裕で対応できたのかもしれない。

 1番での中居、木村、草なぎの歌とダンスの“掛け合い”、香取から中居の紹介に移行する際のテンポの変化、中居の元に4人が結集し一斉にジャンプしたり、大サビ前にジャケットを脱いでタンクトップ姿になる演出など、中居プロデュースらしいサービス精神とイキの良さに溢れていて、この曲は、基本に忠実なパフォーマンスであればあるほど痺れる。

 また、この「FIVE RESPECT」は、発売から8年後の2010年のツアー『We are SMAP!2010 CONCERT』でも披露されている。このDVD発売のタイミングで、演出を担当した香取にどういう経緯でセットリストを決めたのか、演出の裏話などをインタビューしたことがあった。香取は、「過去の曲で、ガシガシ踊れる曲を探していて、“FIVE RESPECT”のメロディーが頭の中にガンガン鳴ってたんだけど、スタッフさんにうっかり『“Five True Love”を用意して』って言っちゃったみたいで(笑)。『香取さん、これです』って聴かせてもらった曲が、『違う! これじゃない!』ってなって、一瞬焦りました」と、失敗談を話してくれた。ツアー前年の2009年、親友の草なぎが飲酒による不祥事で活動を自粛した経緯もあり、5人でのチーム感を発揮できる曲といえば、やはり“FIVEシリーズ”を置いて他になかったのだろう。当時、最新の“FIVEシリーズ”が「FIVE RESPECT」だったのである。

◆SMAPの5人にしか歌えない、“FIVEシリーズ”

 香取のリクエストがあったのか、これもリーダー中居の発案か。2012年のアルバム『GIFT of SMAP』に、中居は「CRAZY FIVE」という曲を書きおろす。ファンとメンバーが一緒になって「木村君」と呼べば、「な〜あ〜に」を基本に、「なんざんしょ」などアドリブを交えて、呼ばれたメンバーが返事をする演出は無条件で楽しいし、草なぎはバック転、他のメンバーもそれぞれ得意なダンスを披露するなど、エンタテイナーSMAPの魅力を余すところなく伝える構成だ。でも、何より感動的なのは、草なぎのソロの「過ちを犯し続け」というフレーズで、全員で真ん中にいる草なぎの肩に手を添えるシーンだ。ハードなダンスを経て誰もが肩で息をして、真ん中の草なぎは叫ぶように吠えるように、いつも以上の激しさで“熱唱”する。「FIVE RESPECT」が稲垣への“おかえり”ソングだとすれば、「CRAZY FIVE」は、中居からの草なぎへのメッセージソングだ。大サビの後、“いつか謎を解き”と涼やかな声で歌う稲垣の言葉は、“We are all one”というフレーズへと続く。俺たちは、いつも一つ。涙を越え、明日へ。

 ピンチをチャンスに変え、皆が迷わぬように、拳を挙げてきた男たち。たとえ「夜空ノムコウ」が他のミュージシャンにカバーされても、「世界に一つだけの花」がずっとずっと歌い継がれても、試練を乗り越えるごとに生まれたこの“FIVEシリーズ”だけは、SMAPの5人でしか、歌えない。
(文/菊地陽子)



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