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供給過多? 子役バブルは崩壊したのか

 2010年代に巻き起こった“バブル”とも言える空前の子役ブーム。それをけん引した芦田愛菜をはじめ、鈴木福、本田望結、小林星蘭、谷花音、鈴木梨央らが、来年一斉に中学生になり、最近では、テレビなどで見るたびに「大きくなったね」という話題も多くなった。その一方で、寺田心など新たな子役も出てきているものの、一時期のようにブームと言えるほどの新顔は続いておらず、落ち着いてしまった印象だ。果たして“子役バブル”は崩壊してしまったのだろうか?

2010年代の子役バブルの火付け役となった芦田愛菜 (C)oricon ME inc.

2010年代の子役バブルの火付け役となった芦田愛菜 (C)oricon ME inc.

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◆“子役”の枠超えたひとりの役者としての演技力

 TVドラマ『OUR HOUSE』(フジテレビ系)でW主演を務める芦田愛菜のセーラー服姿に、「もうこんなに大きくなったの!?」と驚いた人もいるはず。芦田の実年齢は小学6年生だが、同ドラマでは中学生役を演じている。その確かな演技力に加え、子どもっぽさを抜けつつある風貌から、中学生役を演じていてもなんら違和感はない。“天才子役”として一世を風靡した芦田だが、もはや子役というよりも、ひとりの女優としての佇まいを醸し出しており、今後は子役というカテゴリーを外れた活躍が期待されるだろう。

 芦田をはじめ、古くはNHK朝の連続テレビ小説『おしん』の小林綾子や、『北の国から』の吉岡秀隆、『家なき子』(日本テレビ系)の安達祐実、NHK大河ドラマ『天地人』やトヨタの「こども店長」CMでブレイクした加藤清史郎など、大人顔負けの演技力で世間を驚かせた名子役は定期的に出てきている。その中でも、2010年代の“バブル”とも言える流れへとつながったのが、芦田愛菜と鈴木福が出演した2011年のTVドラマ『マルモのおきて』(フジテレビ系)と、その主題歌「マル・マル・モリ・モリ!」の大ヒットだろう。また、同年、最終回が平均視聴率40.0%を記録した『家政婦のミタ』(日本テレビ系)の本田望結など、続々と人気子役が出てきた。

 彼らが引っ張りだことなった理由としては、“子役”というよりも、ひとりの俳優、女優としての力量を感じる卓越した演技力だろう。時には周囲の大人を食ってしまうほど、完成された演技。2010年代の子役ブームでは、芦田が主演の『明日、ママがいない』(日本テレビ系)や、“ママ友”をテーマに小林星蘭、谷花音など多くの子役が出演した『名前をなくした女神』(フジテレビ系)など、子役をメインにしたドラマや、多数の子役が出演するドラマが制作されたことからも、彼らの演技に期待が集まっていたことがうかがえる。

◆子役がぶつかる“成長”の壁 心無い言葉も

 しかし多くの子役は成長過程でとある壁にぶつかることになる。それは子役から大人の俳優、女優への転換だ。例えば、一昨年に主演映画『花宵道中』で初の濡れ場に挑んだ安達祐実は「(同作品で)これまでのイメージを崩せるかもしれない」と、30代になってなお縛られていた“子役の呪縛”を告白しているが、子役時代のイメージがいつまでたっても抜けず、大人になって苦戦を強いられる俳優・女優も多い。また、子役の可愛いイメージから成長すると、“劣化”などと心無い言葉を投げるものもいる。そのため、映画『崖の上のポニョ』主題歌で注目をあつめた大橋のぞみのように早々に引退してしまったり、AKB48の大島優子のように、いったん別の道を歩んでから、また演技の仕事に戻ってくる女優などもいる。

 一方で見事に転身に成功した例も多い。例えばTBS系の昼ドラマ『キッズ・ウォー』シリーズで注目を集めたのちに、学業に専念するために芸能活動を一時休止し、復帰後に主演ドラマ『花より男子』(TBS系)で再び大ブレイクした井上真央。井上の場合は、ある程度のブランクがあったため、復帰する頃には子役のイメージが良いバランスで払拭できたことが、再ブレイクの要因と言えるだろう。2012年に学業優先を理由に芸能界を引退した大橋も、子どもらしさを抜けきった姿で再び芸能界に戻ってくる可能性もあるかもしれない。また、神木隆之介は6歳でドラマデビューして以来、コンスタントに作品を重ねる中で、実年齢と足並みをそろえるように子役のイメージを脱していった稀有な例だ。転機として特に印象深いのが、高2から出演してきた『SPEC』シリーズで演じた狂気と悪をはらんだ役どころで、以降のさらなる活躍は周知の通り。現在、中学3年生の加藤清史郎も映画『暗殺教室』で「こども店長」のイメージを覆すダークな役どころで話題になったばかり。“イケメンに成長した”という声も多く、今後の動向にも注目したい一人だ。

 2011年以降の子役ブームについては、東日本大震災などで日本中に不安な空気が漂う中、無邪気な子役たちに癒しが求められたという意見もある。子どもらしさを保ちつつ、プロとしての立ち居振る舞いもできる子役たちはバラエティでも引っ張りだことなり、テレビで見ない日はないほど、子役バブルとも言える状況になった。しかし露出過多になれば、それだけ消費されるのも早くなる。ブームで登場した子役たちは、大人になっていく今が正念場。慎重な作品選びや露出の仕方、子役とは異なる方向性を見出すことで、明るい未来へと歩んでいってもらいたい。

(文/児玉澄子)

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