昨年夏にオンエアされていた、桐谷健太が三線を奏でながら、海に向かって切なく歌う、auのCMを覚えている人は多いに違いない。あの曲「海の声」が今、各配信サイトで大ヒットを記録している。このCMを制作した電通第3CRプランニング局の篠原誠氏に、CM制作の背景を聞いてみた。
■「シンプルで無添加の魅力」と、酒井政利氏も絶賛の楽曲
CM総合研究所による2015年度CM好感度ランキングで、過去最高のポイントを獲得して年間首位に輝いたauのCM“三太郎シリーズ”。松田翔太、桐谷健太、濱田岳が桃太郎、浦島太郎、金太郎として登場するこのシリーズの昨年夏のキャンペーンで、桐谷扮する“浦ちゃん”がCM中で歌ったオリジナルソング「海の声」が、今、大きなムーブメントを巻き起こしている。
当初はCMのオンエアに合わせて1ヶ月間、うたパス・LISMO限定で配信。さらにYouTubeで映像を公開するだけだったが、ユーザーからの熱い要望を受け、12月2日にはiTunesをはじめ主要サイトで一斉配信を開始。同日、桐谷がフジテレビ系特番『FNS 歌謡祭』で生披露したことで、その後全13サイトでデイリー1位を獲得。さらに快進撃は続き、3月1日現在、YouTubeでは2600万を超すアクセス数を記録。音楽プロデューサーの酒井政利氏もCMを観てこの曲に魅せられた1人で「すべてがデジタル化しているなかで素朴に訴えかける桐谷さんの声が心に響きました。シンプルで無添加の魅力というか、やはり直球は強い」と絶賛する。
ネット上でも「切ない歌声に泣いた」など桐谷の声への賛美が多いが、この歌が誕生したきっかけも桐谷のその歌声だった。CMを担当し、作詞も手がけた電通の篠原誠氏は語る。
「桐谷さんの歌声を聴いて、前々からすごく心に来る感じがカッコイイと思っていました。CMでは愚鈍で可愛くて面白い浦島を演じてもらっていますが、桐谷さんのあのキャラと歌声で乙姫に対する恋の曲を流したら、視聴者は驚き、また共感もしていただけるのではと考えました」
篠原氏がCMで作詞を手がけたのは本作が初めて。その世界観は、子供の頃の記憶から生まれたという。
「僕はすごい田舎の山の中で育ったんです。その経験から、昔話の世界で誰かに会いたいとか声が聞きたくなったらどうするかを想像したとき、自然の音の中に面影や声を探したり、風の音に乗せて自分の声が届けられたらと思ったかもしれないと考えた。その思いを浦島のセリフに書くつもりでストレートに綴りました」
CMが跳ねる自信はあったが、配信でヒットになることはまったく予想していなかったそうだ。
「本当はみんな誰からも関与されない1人の時間が必要なんだけど、今、世の中はすぐに繋がり、悪く言えばせせこましくなっている。その感じに少し疲れているから、BEGINのメロディー、桐谷さんの歌声含め、日本人本来の大らかさのあるこの曲が受け入れられたのかもしれません」
調査結果を見ると、この曲の購入者はライブにはあまり行かず、音楽を聴きながら考え事をするタイプ。せせこましい世の中に疲れた人たちがヒットを作ったといえるだろう。(文/河上いつ子)
(コンフィデンス 16年3月14日号掲載)
■「シンプルで無添加の魅力」と、酒井政利氏も絶賛の楽曲
CM総合研究所による2015年度CM好感度ランキングで、過去最高のポイントを獲得して年間首位に輝いたauのCM“三太郎シリーズ”。松田翔太、桐谷健太、濱田岳が桃太郎、浦島太郎、金太郎として登場するこのシリーズの昨年夏のキャンペーンで、桐谷扮する“浦ちゃん”がCM中で歌ったオリジナルソング「海の声」が、今、大きなムーブメントを巻き起こしている。
当初はCMのオンエアに合わせて1ヶ月間、うたパス・LISMO限定で配信。さらにYouTubeで映像を公開するだけだったが、ユーザーからの熱い要望を受け、12月2日にはiTunesをはじめ主要サイトで一斉配信を開始。同日、桐谷がフジテレビ系特番『FNS 歌謡祭』で生披露したことで、その後全13サイトでデイリー1位を獲得。さらに快進撃は続き、3月1日現在、YouTubeでは2600万を超すアクセス数を記録。音楽プロデューサーの酒井政利氏もCMを観てこの曲に魅せられた1人で「すべてがデジタル化しているなかで素朴に訴えかける桐谷さんの声が心に響きました。シンプルで無添加の魅力というか、やはり直球は強い」と絶賛する。
ネット上でも「切ない歌声に泣いた」など桐谷の声への賛美が多いが、この歌が誕生したきっかけも桐谷のその歌声だった。CMを担当し、作詞も手がけた電通の篠原誠氏は語る。
「桐谷さんの歌声を聴いて、前々からすごく心に来る感じがカッコイイと思っていました。CMでは愚鈍で可愛くて面白い浦島を演じてもらっていますが、桐谷さんのあのキャラと歌声で乙姫に対する恋の曲を流したら、視聴者は驚き、また共感もしていただけるのではと考えました」
篠原氏がCMで作詞を手がけたのは本作が初めて。その世界観は、子供の頃の記憶から生まれたという。
「僕はすごい田舎の山の中で育ったんです。その経験から、昔話の世界で誰かに会いたいとか声が聞きたくなったらどうするかを想像したとき、自然の音の中に面影や声を探したり、風の音に乗せて自分の声が届けられたらと思ったかもしれないと考えた。その思いを浦島のセリフに書くつもりでストレートに綴りました」
CMが跳ねる自信はあったが、配信でヒットになることはまったく予想していなかったそうだ。
「本当はみんな誰からも関与されない1人の時間が必要なんだけど、今、世の中はすぐに繋がり、悪く言えばせせこましくなっている。その感じに少し疲れているから、BEGINのメロディー、桐谷さんの歌声含め、日本人本来の大らかさのあるこの曲が受け入れられたのかもしれません」
調査結果を見ると、この曲の購入者はライブにはあまり行かず、音楽を聴きながら考え事をするタイプ。せせこましい世の中に疲れた人たちがヒットを作ったといえるだろう。(文/河上いつ子)
(コンフィデンス 16年3月14日号掲載)
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2016/03/12