フル3DCGによるアニメーション制作は、世界的に主流となりつつある。中でもアニメ制作会社・サンジゲンは、「セルルック」と呼ばれる新たな表現手法を追求し、圧倒的なクオリティで国内外から高く評価されている。そのサンジゲンが10周年記念作として初のオリジナル作品『ブブキ・ブランキ』を制作。16年1月期からアニメ放映がスタートする。
■フル3DCGを“セル画アニメ風”に表現
「セルルック」とは、3DCGでモデリングされたキャラクターなどを2Dの手描きのように見せ、動かす手法。動きのタイミングは昔ながらの手描きアニメのノウハウを継承しながらも、自在なカメラアングルや空間表現が可能になるため、近年注目されている。サンジゲンでは、設立当初からこの手法に挑戦してきた。
「ロボットなど3DCGが必要な部分を下請けで作りながら、機会があるごとにキャラクターも作らせてほしいとお願いしていました。『咲 Saki-』という麻雀がテーマのアニメでは、最初は牌だけCG化するオファーだったものを、それを扱う手の部分までも担当。結果、手と牌が映るカットはほぼすべて、CGで作らせてもらいました」(サンジゲン/松浦裕暁社長)
試行錯誤しながらも、次第に業界内での評価が高まり、12年公開の映画『009 RE:CYBORG』でこの手法を一般に認知させることになる。続くTV版および劇場版「蒼き鋼のアルペジオ」では、さらにその表現の可能性を大きく開花させた。特に「〜アルペジオ」TV版は、放送ごとに表現力が豊かになっていくこともファンの間で話題となった。
「2Dの作画は全カット、ゼロから描かれますが、3DCGは、例えばキャラクターの表情を最初に数十パターン作ります。そこからカットごとに微妙な修正をかけ、それも保存する。結果的にどんどん映像表現が豊かになっていくわけです。もちろん、最初のCGモデルは、時間をかけて入念に設計する必要があります。「〜アルペジオ」では、今まで3DCGでは見たことがないような表情も演出できていました。手描きにも通じる揺らぎというか、そうした領域まで3DCGでも包摂できるというのが、1つの発見でしたね」(同/鈴木大介氏)
その「〜アルペジオ」TV版についての熱烈なファンである人物が、10周年記念作『ブブキ・ブランキ』監督の小松田大全氏だったという。
「手描きアニメの作画で有名な方。実はそれまでCGはまだ発展途上、という印象を持っておられたそうですが、「〜アルペジオ」でファンになってくださいました。今回、製作でご一緒するKADOKAWAから推薦された時も、この方なら信頼してお任せできると思いました。いわゆる2D作画アニメでは、どうしてもあるクオリティまでしか到達できない壁のようなものがあるのですが、セルルック3DCGなら突破できるかもしれない。この可能性も信じていただけています」(松浦氏)
最新作『ブブキ・ブランキ』では、普遍的な親と子のテーマを描く。とはいえ、異能力者のバトルアクションなど娯楽要素も満載。海外進出も大いに期待できそうだ。
「作品を重ねるごとに、映像のクオリティは上がっています。制作フローやノウハウが会社の中に蓄積されてきていて、うまく機能しているからかもしれません。物語は、まずは人間ドラマありき。それが海外の多様な文化圏で理解してもらえる王道でしょう。日本独自のセルルック3DCG技術で、日本のアニメに親しみを持ってくれている海外ファンの感覚をリファインする。そこから海外で日本アニメ市場を広げていければとも考えています」(松浦氏)
「極端な話、CGはボタンを押せば自動生成される。ただし、それが良い絵かどうかはまた別ですけどね」と笑う鈴木氏。自分たちの仕事への強烈な自負に満ちた言葉だ。新たなサンジゲンの映像は、日本のアニメーションそのものをさらに進化させる原動力になっていきそうだ。
(文/及川望)
(コンフィデンス 12月28日号掲載)
■フル3DCGを“セル画アニメ風”に表現
「セルルック」とは、3DCGでモデリングされたキャラクターなどを2Dの手描きのように見せ、動かす手法。動きのタイミングは昔ながらの手描きアニメのノウハウを継承しながらも、自在なカメラアングルや空間表現が可能になるため、近年注目されている。サンジゲンでは、設立当初からこの手法に挑戦してきた。
「ロボットなど3DCGが必要な部分を下請けで作りながら、機会があるごとにキャラクターも作らせてほしいとお願いしていました。『咲 Saki-』という麻雀がテーマのアニメでは、最初は牌だけCG化するオファーだったものを、それを扱う手の部分までも担当。結果、手と牌が映るカットはほぼすべて、CGで作らせてもらいました」(サンジゲン/松浦裕暁社長)
試行錯誤しながらも、次第に業界内での評価が高まり、12年公開の映画『009 RE:CYBORG』でこの手法を一般に認知させることになる。続くTV版および劇場版「蒼き鋼のアルペジオ」では、さらにその表現の可能性を大きく開花させた。特に「〜アルペジオ」TV版は、放送ごとに表現力が豊かになっていくこともファンの間で話題となった。
「2Dの作画は全カット、ゼロから描かれますが、3DCGは、例えばキャラクターの表情を最初に数十パターン作ります。そこからカットごとに微妙な修正をかけ、それも保存する。結果的にどんどん映像表現が豊かになっていくわけです。もちろん、最初のCGモデルは、時間をかけて入念に設計する必要があります。「〜アルペジオ」では、今まで3DCGでは見たことがないような表情も演出できていました。手描きにも通じる揺らぎというか、そうした領域まで3DCGでも包摂できるというのが、1つの発見でしたね」(同/鈴木大介氏)
その「〜アルペジオ」TV版についての熱烈なファンである人物が、10周年記念作『ブブキ・ブランキ』監督の小松田大全氏だったという。
「手描きアニメの作画で有名な方。実はそれまでCGはまだ発展途上、という印象を持っておられたそうですが、「〜アルペジオ」でファンになってくださいました。今回、製作でご一緒するKADOKAWAから推薦された時も、この方なら信頼してお任せできると思いました。いわゆる2D作画アニメでは、どうしてもあるクオリティまでしか到達できない壁のようなものがあるのですが、セルルック3DCGなら突破できるかもしれない。この可能性も信じていただけています」(松浦氏)
最新作『ブブキ・ブランキ』では、普遍的な親と子のテーマを描く。とはいえ、異能力者のバトルアクションなど娯楽要素も満載。海外進出も大いに期待できそうだ。
「作品を重ねるごとに、映像のクオリティは上がっています。制作フローやノウハウが会社の中に蓄積されてきていて、うまく機能しているからかもしれません。物語は、まずは人間ドラマありき。それが海外の多様な文化圏で理解してもらえる王道でしょう。日本独自のセルルック3DCG技術で、日本のアニメに親しみを持ってくれている海外ファンの感覚をリファインする。そこから海外で日本アニメ市場を広げていければとも考えています」(松浦氏)
「極端な話、CGはボタンを押せば自動生成される。ただし、それが良い絵かどうかはまた別ですけどね」と笑う鈴木氏。自分たちの仕事への強烈な自負に満ちた言葉だ。新たなサンジゲンの映像は、日本のアニメーションそのものをさらに進化させる原動力になっていきそうだ。
(文/及川望)
(コンフィデンス 12月28日号掲載)
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2015/12/28