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ヒットメーカー・Shusuiが提唱する“育音”の真意

 音楽ユニット・cannaとしての活動、さらに「青の時代」(KinKi Kids)や「青春アミーゴ」(修二と彰)など、数多くの名曲を世に送り出してきたソングライター・Shusuiが、自身第2弾となる楽曲&朗読CD付き絵本『アフリカゾウのなみだ』を発売。常に最先端のJ-POPを生み出してきた彼が、なぜ幼児向けの作品を制作するに至ったのか? 自身が推し進めるプロジェクト“育音”の真意について話を聞いた。

数多くの名曲を世に送り出してきたソングライター・Shusui

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■15分に一頭アフリカゾウが殺されている現状

――『トムテの森のクリスマス』に続いて、CD付きの絵本最新作『アフリカゾウのなみだ』は発売されましたが、今作はどのような経緯で誕生したのでしょうか?
【Shusui】たまたま僕の学友と話していた際、彼女がゾウの保護活動を行っていると聞きまして。「今、15分に一頭アフリカゾウが殺されているって知ってる?」って言われたんですね。もちろん僕は知る由もなかったんです。詳しく聞いたら、ワシントン条約で禁止になっているにもかかわらず、象牙の乱獲がいまだに行われているのが現状なんです。

――いまだに密猟が横行してるんですね。
【Shusui】そうなんです。このままでいくと10年後、15年後にはアフリカゾウは絶滅してしまう可能性が高い。人間の欲のためだけにゾウが滅んでしまう危険性があるという事実を広く知ってほしいという思いが強くなっていったんです。僕の三女もゾウが大好きで、いま4歳の彼女が中学生くらいになったときにゾウが絶滅してしまったら凄く悲しむだろうなって……そこからでしたね。

――“野生のゾウ”は存在せず、「ゾウは動物園にいるもの」という間違った認識を子どもたちが持ちかねないですね。
【Shusui】実は僕自身、12年前に新婚旅行でアフリカに行ったんですね。妻の方から「アフリカのヨハネスブルクに行きたい!」と提案されて。当時、外務省のHPを見たら危険レベルもかなり高かったんですけど(笑)。

――Shusui自身も実際にアフリカに行かれてたんですね。
【Shusui】はい。ですから、友人からアフリカゾウの現状を聞いたときに他人事に思えなかったんです。あと、MISIAさんのプロデュースをずっとやらせてもらってたんですけど、MISIAさんもアフリカに精通されていて様々な運動を行っているんです。レコーディング現場とかでもたくさんアフリカの情報聞かせてもらっていて。彼女はそれこそ観光で行くのではなく、貧困地域などに赴いて歌を届けたりしているんですね。そんなMISIAさんに共鳴した部分もありますね。

――そう考えると、今回の『アフリカゾウのなみだ』を制作したのも、必然性を感じますね。
【Shusui】そうですね。ホントにたまたまなんですけど、でも、改めて思うと必然だったんだなぁって思いますね。

――今作は3姉妹がアフリカの“ゾウの楽園”を探し求める冒険活劇ですね。実際Shusuiさんには3人の娘さんがいらっしゃって、その3人による冒険劇。さらに奥様であるRUIさんがストーリーと朗読も担当されました
【Shusui】完全なファミリープロジェクトですね(笑)。彼女たちにもアフリカの現状を知ってほしいために、教科書のように堅苦しくない形で表現したかったんです。

■育児に専念して生まれた“今奏でたいから奏でる音楽”

――Shusuiは現在、自身のアーティスト活動の延長線として、育児と音楽を融合させた“育音”というプロジェクトを推し進めています。当然『アフリカゾウのなみだ』もそのライン上にある作品ですが、きっかけは?
【Shusui】11年前に長女が生まれたのと同時期、僕はスウェーデンを行ったり来たりしていて、現地のアーティストと楽曲制作をしていたんですけど、ソングライターとしてのスランプに陥ったんです。コンペに出してもなかなか通らなかった。スウェーデン人とのコラボレーションした楽曲って、たぶん初めてだったと思うんですけど、食いつきが悪かったんです。じゃあいっそ、1年くらい音楽活動を辞めて育休をとろう!ってなりまして(笑)。

――いまでは日本でも男性が育休を取れる環境が徐々に整いつつありますけど、当時は……。
【Shusui】ただの無職ですね(笑)。で、一切のアーティスト活動、楽曲提供、プロデュース活動を停止して育児と家事に没頭したんです。そこで感じたのは、育児や家事と音楽というのはあながち遠くないなってことだった。子どもは歌うのが大好きだし、子どもが通う幼稚園とかでも“歌のおにいさん”みたいな感じで、即興で作ったりしていたんです。仕事としてではなく。

――リアル“歌のおにいさん”だ(笑)。
【Shusui】子どもたちも先生方も凄く喜んでくれて。そこで感じたのは、「もしかしたら教育現場で音楽ってもっともっと重要になってくるんじゃないか」ってことだったんです。それが“育音”のスタートでした。

――子どもたちのために音楽を作っている過程で、音楽家としての新たな発見もあった?
【Shusui】ありましたね。子どもたちは、心から楽しめる音、心から感動できる音にしか反応しないんです。ですから、自分の経験で培ってきたモノでも引っかからないものは全く引っかからない。

――シビアですね(笑)。
【Shusui】めちゃくちゃシビアですよ(笑)。でも、凄く自然でピュアなんですね。今歌いたいから歌ったという衝動を大事にする。だから僕も、今奏でたいから奏でる音楽というものを大事にしたんです。それは僕にとって凄く大きな成長だったんです。

――それってある意味、肉付けしていく作業ではなく、そぎ落としていく作業ですよね。
【Shusui】原点といったら大げさかもしれないですけど、“純粋な音楽”にしていくという部分はすごく大事にしてますね。ですから、今回の『アフリカゾウのなみだ』に付いているCDも」リアルなアフリカゾウの声やゴリラの声をSEとして使用したんです。

■今、スロベニアの音楽が凄く面白いんですよ

――より、自然の音を子どものうちに知るということは大事なことですよね。育児とご自身の生業である音楽活動を融合させたことで、どちらにもプラス効果がはたらいている印象を受けます。
【Shusui】そうですね。なによりも僕にとって大きかったのは、20代でCANNAというグループでデビューして、アーティストとしての欲求をある程度は叶えることができた。でも、そこから様々な苦悩にも直面して挫折があったんですね。そこで家族をもったこと、育児をしたことで、改めて音楽に向き合えた。そこから“育音”というものを生むことができた。そして絵本と音楽の融合物を作るまでに至ったことが出来たことは本当に幸せなことだったなって。

――すごく地続きな感じがありますね。ただ、さきほど挫折とおっしゃいましたが、ソングライターとしては誰もが知っている大ヒット曲を多数生み出しているじゃないですか! って思うんですけど(笑)。
【Shusui】うーん。きっと、ひとつのことで満足できないんでしょうね(笑)。人生って自分に課した目標に届かないことの方が多いじゃないですか? でも、そこが楽しいんですよね。開拓することが楽しい。例えば、修二と彰の「青春アミーゴ」を筆頭にスウェーデンのサウンドを日本の歌謡曲に昇華させるということは自分の手で出来た。そうなると次を探そうと(笑)。で、一昨年くらいから定期的にスロベニアに行き来してるんですけど、スロベニアの音楽も凄く面白い!

――正直、スロベニアの音楽シーンって日本人には全然ピンときませんね(笑)。
【Shusui】そうですよね(笑)。でも、凄く刺激的な音楽があるんです。それを如何に日本仕様にするかを試行錯誤してるんですけど、すっごく楽しい! それはきっと“育音”の発展形である今回の『アフリカゾウのなみだ』もそうなんです。ひとつのカテゴリーに満足できないからこその“衝動”なんです。

 育音CD付き絵本『アフリカゾウのなみだ』(小学館)は現在発売中。

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