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坂本真綾、20年を振り返る 結婚がもたらした穏やかな平和

 1996年4月にシングル「約束はいらない」でデビューした坂本真綾が、今年で音楽活動20周年目を迎えた。4月のさいたまスーパーアリーナでのコンサートやトリビュートアルバムなど様々な周年プロジェクトを実施してきた中、9月30日に9thオリジナルアルバム『FOLLOW ME UP』を発売。歌手、声優、舞台、エッセイ執筆など多方面で活躍するなか、20周年の今だからこそ感じること、私生活の変化など、様々な話を聞いた。

音楽活動20周年目を迎えた坂本真綾

音楽活動20周年目を迎えた坂本真綾

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■私がグラグラしていては何も始まらない

――デビュー20周年を迎えた今、どのような心境ですか?
【坂本真綾】 生まれた子どもが成人するまでの時間ですから……当時私は16歳でしたけど、まさに右も左もわからず業界に飛び込んだ赤ん坊がたくさんの人と出会うことでたくさんのことを学び、それがいつの間にか今に至ったという感覚ですね。まさに自分の成人式のことを思い出してもそうなのですが、20歳になったからって、突然変わるわけではないじゃないですか。しっかりしたところを見せなきゃと思う自分と、まだまだこれからだと思う自分がいて、今もそれがずっと続いている心境というか。

――アルバム『FOLLOW ME UP』というタイトルは今年の4月のさいたまスーパーアリーナ公演ともつながっていますね。
【坂本】 “FOLLOW ME”は、私の好きな『フォロー・ミー』という古い映画にインスパイアされて決めたものだったんですよ。そしてそのライブが達成感のあるものになって、20周年記念プロジェクトのキーワードにしてもいいかなと思って。というのも、あれだけたくさんのお客さんと共演者の方たちに囲まれて、よくも悪くも「ついてきてね」って言えるような自分にならなきゃいけないと思ったんですね。活動の規模が大きくなればなるほど私がグラグラしていては何も始まらない、前からも後ろからもプレッシャーのかかる場面が増えてきて。昔はそれを怖いなと感じていましたけど、今はハッタリだろうがなんだろうが、「ついてこい!」って言ってみせないといけないんです。

■いろんな節目に途方に暮れたこともあった

――アルバム1曲目を飾る表題曲「FOLLOW ME」は、坂本さんからファンへ向けたメッセージなのでしょうか?
【坂本】 ライブのすぐあとに作った曲なので、あのときの影響は受けています。実はここまではっきりとリスナーに向けたメッセージ性のある歌詞って今まで書いたことがなくて、なんとなくはぐらかしてきたんですよね(笑)。けど、さいたまスーパーアリーナという大きな会場にいろんな世代の方々が集まってくれているのを見て、きっとこの方々は坂本真綾を知ったタイミングも思い入れのある曲もみんなバラバラだけど、何か重なる部分があるから私の歌を聴きにきてくれているんだなと感じて。そしたら「この人たちに向けて曲が書きたい」という気持ちが湧いてきたんです。

――今回のアルバムには坂本さんが作詞・作曲された曲があと2つありますが、「これから」には何を込めたのでしょうか?
【坂本】 「これから」は劇場作品のタイアップ曲になっていて、“卒業”というテーマありきで作り始めたわけですけど、そのとき監督さんに言われたのが、「さよならは大丈夫」というキーワードだったんです。これがすごくいい言葉で私も同感だなと思って。渦中にいるときはそう思えなくても、大人になって振り返ってみるとすべての出会いや別れにはちゃんと意味があったなと思える自分がいて、10代の目線でただ卒業を歌うだけじゃなくて、今の私だから言える卒業ソングを書けたらいいなと。10代20代の頃の自分自身に聴かせたい、実はいちばん20年という時間を感じながら作った曲でもあるんですよね。

――「FOLLOW ME」とは逆に、自分に向けられた曲?
【坂本】 例えば菅野(よう子)さんのプロデュースを離れるときとか、学校を卒業して本当の意味で社会人になったときとか、いろんな節目に途方に暮れたこともあったけど、こうして20周年を迎えると、それがあったからこそ今があるんだと思えるんですね。この曲はさいたまスーパーアリーナで初めて歌ったのですが、1番を弾き語りにして2番からバンドと一緒にという演出は制作の段階から決めていたことでした。いろんな出会いと別れが私を作ってきたしこれからもそう。過去の自分とこれからの自分をつなぐような曲ができたと思っています。

■じわじわと“生活”が自分のベースになってきたことを感じる

――新曲の制作が穏やかな曲に傾いたのは、坂本さんのこの5年の大きな変化である結婚も影響していたのでしょうか?
【坂本】 自分では分析してないですけど、結婚生活も5年目になって、じわじわと“生活”というものが自分のベースになっていることは感じています。昔は“生活”というものを考えたことがなくて、100%“仕事”の人生だったんですよね(笑)。それが今は“生活”があってその上に“仕事”があるという考えになってきて、それがいい意味で私にとっての余白になっていると思います。だから「Be mine!」みたいなガツガツした歌詞を書く自分もいれば、「That is To Say」のようなとても身近な、すでに手の中にある幸福を大事にしてきたいという歌詞を書く自分もいて。こうした穏やかな平和は、結婚という自分の変化によるものなのかなとは思います。

――20周年記念プロジェクトもあとはツアーを残すのみですね。
【坂本】 当然今回のアルバムがメインになりますけど、20周年のツアーなので、それを感じさせるものにもしたいですね。さいたまスーパーアリーナでは3時間を超える長いライブをやりましたけども、それでも20年を振り返るには時間が足りなくて、泣く泣くセットリストに入れられなかった曲もたくさんあって。今回のツアーには、そうした楽曲たちも盛り込んでいけたらなと思っています。

(文/西原史顕)

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