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『ACEアワード』第1回グランプリはKDDI・三原毅さん 企業で活躍する障がい者を表彰

 障がい者に対する就労支援などを目的とする一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム(ACE)が、企業で活躍する障がい者の方々を表彰する『ACEアワード』を設置。障がいを持つ人と持たない人の共存を促進するロールモデルとして、KDDIの旗艦店『au NAGOYA』の三原毅さんが第1回グランプリ受賞者に選ばれた。三原さんは、自らも聴覚障がいを持っていることから、店頭での手話による接客サービスを企画・実施。聴覚に障がいを持つ多くのお客様のニーズに応えた点が評価された。11月19日、東京イイノホール&カンファレンスセンターで行なわれた『第2回ACEフォーラム』にて、授賞式当日の三原さんにお話をうかがった。

『ACEアワード』授賞式にて。KDDIの旗艦店『au NAGOYA』に勤める三原毅さん(中央)

『ACEアワード』授賞式にて。KDDIの旗艦店『au NAGOYA』に勤める三原毅さん(中央)

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◆コミュニケーションの手段が広がっている

――受賞おめでとうございます。まず現在のお気持ちをお聞かせ下さい。
【三原】 第1回の表彰ということで非常に名誉に感じています。多くの障がい者の代表といった意味でプレッシャーもありますが、これからもこの賞に恥じないよう活動していきたいと思います。

――手話による接客サービスをはじめようと思ったきっかけは?
【三原】 手話スタッフを始める前は、接客とは無関係の部署で働いていました。KDDIでは、ほとんどの部署で手話をできるスタッフがおらず、筆談などでコミュニケーションをとっている状況でした。聴覚障がいのお客様から使い方を尋ねられたり、料金についての相談などを受けたとき、スタッフもうまく説明ができていないというところにもどかしさを感じていました。そこで、4年前に初の直営店『au NAGOYA』のオープニングスタッフの社内公募に応募し、手話の接客応対を始めると、不安そうな顔をしていたお客様が、手話による説明で安心していただける姿が見られました。最初は驚かれるお客様が多いのですが、帰るときには「また来るよ」と、嬉しそうな表情を見せていただけたのが、私にとっても嬉しいことでした。

――具体的にはどのような接客を行なわれているのですか?
【三原】 まず聴覚障がいをお持ちのお客様が来店したときのスマートフォン購入の手続き、そして使い方の説明、それから修理などのサポート。この3つについて手話での応対をしております。とくにご購入していただいたお客様への使い方の注意点など丁寧な説明が必要ですので、そこが一番難しいところです。

――スマートフォンの登場によって、聴覚障がいの方々にとってはどのような点が便利になりましたか?
【三原】 様々なアプリのおかげで、コミュニケーションの手段が広がってきています。聴覚障がい者にとって、携帯電話というのはメールと写真の使い道しかなかったのですが、スマートフォンを使えば、動画、地図なども入れて送ることができ、チャットやテレビ電話なども可能です。こういった機能について説明するととても喜んでいただけます。使い方も難しくなっていますし、SNSでもテレビ電話などのアプリでもたくさんの種類がありますから、お客様の要望に沿って、使いやすいアプリなどをお勧めしております。また、手話のできない方、わからない方が、筆談でやりとりできるアプリもあります。離れた場所同士で筆談が可能なので、健常者の方にも便利なアプリが増えたと思います。

◆企業内での大きな変化

――三原さんが手話による接客を始めてからどのような変化がありましたか?
【三原】 KDDIでも大きな変化がありました。最初は手話による接客が必要なのかと社内で疑問に思われる部分もありましたが、実際に応対を始めるとお客様も増え、必要性が認められていきました。現在は名古屋だけではなく東京・大阪の直営店にも手話スタッフがおり、今後は各店にもスタッフが増えていけばと思っております。

――三原さんはアメリカにも研修視察に行かれたそうですが、日本との違いは感じられましたか?
【三原】 アメリカには、耳が聞こえなくても重要なポストに就いている方がたくさんいます。政府の次官や弁護士、映画俳優など、幅広い分野で活躍されている方々にお会いする機会があり、お話もさせていただきました。聴覚障がい者のための大学もあり、学長も障がいをお持ちでした。日本ではまだまだそういったポストに就くことは難しいと感じています。また、サービス面では、日本にはまだなかった電話リレーサービスが浸透していたことに驚きました。これは聴覚障がい者が電話をしたいときに、文章をタイプしてオペレーターに送り、そこでオペレーターから口頭で伝えるというサービスです。日本ではファックスなどのやりとりはありましたが、最近始められるようになりました。ただ、私がアメリカに行ったのは25年前なので、日本ではかなり時間がかかったことを感じます。

――三原さんの心境にも変化がありましたか?
【三原】 アメリカ研修は私のターニングポイントになったといえます。アメリカでお会いした方々は非常にポジティブに、聞こえなくても何でもできると言っていました。「自分がろう者であること」に誇りを持つということを教えてもらったと思います。「耳は聞こえないけれど、他のところでできることがある」と考えられるようになりました。

――今後、三原さんとKDDIが取り組んでいきたいこと、やってみたいことは?
【三原】 まず、手話スタッフをもっと増やすことです。私のことを聞いて県外からわざわざ来店してくださる客様もいらっしゃいますので、今後はあらゆる地域で、簡単に手続きができるようになるよう働きかけていきたいと思います。これがサービスの向上につながるのではないでしょうか。それから、私の仕事のことですが、1対1での会話であれば、筆談もできますし、わからないことがあっても確認しあうことができます。ただ、多数の中に入っての会議などは、発言者が誰かわかりにくく、唇も読み取れません。話すスピードも速いので意見を言おうと思ってもタイミングを逃し、そこで苦労することがあります。周りの方にも気を使っていただいていますが、多数の方を相手にしたときにスムーズなやりとりができるようになれば良いと思います。

 近年、障がい者の雇用者数は10年連続で過去最高を更新し、数・率ともに最高の伸び幅を見せている。障がい者の方々に対する雇用への土壌は着実に進展している。今回の『ACEアワード』にはACE参加企業24社から16社の応募があった。今後、ダイバーシティを活かした新たな価値観を、多くの企業が共有することが求められる。
(文:菊池昌彦)

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