ORICON NEWS

家入レオが考える人の“愚かさ”とは? 10代最後に直面した葛藤

 歌手の家入レオが11月19日、湊かなえ原作の純愛ミステリードラマ『Nのために』(TBS系)の主題歌としても話題の新曲「Silly」をリリース。シングルとしては初のバラード作品で、これまでとは違った一面を見せてくれているが、今回、20歳を目前にして今まで感じたことがなかった答えの出ない問いに直面し、そのリアルな想いを曲に込めたのだという。ORICON STYLEでは、一貫して“愛”を歌ってきた19歳の彼女を揺さぶる新たな葛藤と悩みについて迫った。

TBS系ドラマ『Nのために』主題歌の「Silly」をリリースした家入レオ

TBS系ドラマ『Nのために』主題歌の「Silly」をリリースした家入レオ

写真ページを見る

■前作までは“愛が全て”だと信じてたけど…

――「Silly」は『Nのために』の世界観と、家入さんの今の心境が重なって生まれた曲だと聞きました。
【家入】『Nのために』は主人公たちが嘘や秘密を重ねながら、大切な人やものを守ったり慈しんでいく作品なんですけど、つまり罪を犯すことと人を守るっていう対極の行為をイコールで結んでしまっているという話で、そこに人間の愚かさや寂しさをすごく感じたんですね。それはきっと、誰かを守ることで自分を満たそうとしている、つまり自分自身の空虚を埋めようとしている行為なんじゃないかなと。それがサビの<Oh It’s so silly 何かを求め 確かめたくて>って歌詞に繋がるんですけど、実は私自身もいますごく“何か”を求めていて、でもその答えが見つからない状態なんですね。デビューしてから「サブリナ」でも「Bless You」でも一貫して愛を求めてきたけど、20歳を目前にして改めて考えたとき、“じゃあ愛って何だろう?”と壁にぶつかってしまったというか。本当は愛をも包み込む“何か”を自分は求めていたんじゃないかなって気づいたんです。

――自分を満たす“愛”を目指していたら、その先にはもっと大きな何かを求める“空虚”があったと。
【家入】私は子供の頃は愛さえあれば大丈夫と思っていて、それを得るために音楽をはじめたからいまここにいるんですけど、いざその環境に置かれると、やっぱりまだ満たされない何かがある。じゃあどうやったら、この感情=空虚は埋まるんだろうって、曲を書きながらすごく考えてしまったんです。

――それは今までの曲作りでは湧いてこなかった感情ですか?
【家入】湧いてこなかったですね。前作の「純情」までは愛がすべてだと信じていて、そこを突き詰めて“純情宣言”したわけですけど、頑張れば頑張るほど、答えがぼやけることもあるんだなって身体でわかったというか。今まで私は大人が曖昧な言い方をしたり、黒白つけずにグレーでいることをすごく責めていたんですよ。歌詞でもそこに牙をむけるみたいなところがあって、だから筆圧もすごく強かったんですけど(笑)、もがいても、もがいても答えが見つからない、曖昧なままにするしかないことってあるんだなって初めてわかりましたね。

■家入レオが考える人間の“愚かさ”とは?

――歌い方も今までとはちょっと違いますね。声と声の間の吐息――音のない部分――に、
すごくニュアンスを込めている気がしました。
【家入】今回は静かな狂気というか、“歌いあげないこと”にすごく重点を置いたんですよ。歌おう!と思ってテクニックを見せようとするとこの曲は壊れてしまう。コップから水が溢れる寸前の表面張力みたいな、ちょっとでも揺らしたらこぼれちゃうっていう、ギリギリ感を表現するためには抑えて歌う必要があるなと思ったんです。だからライブでこの曲を歌うと、すごくエネルギーを使って疲れるんですよ。歌う前はすごく気合いがいるのに、歌ってるときは頑張っちゃダメっていう、不思議な曲なので(笑)。

――何度も出てくるサビの<Oh It’s so silly>も、すべて歌い方を変えていますね。
【家入】気づいていただいて嬉しいです。言葉こそ同じですが、歌詞の流れで持っている感情が全部違うんですよ。1回目は人間に絶望している<Oh It’s so silly>、2回目以降はちょっとずつ温かみが出てくる。最後は悲しみの連鎖の中で生きていこうって決めている女性の横顔をイメージして歌っていて、すべて表情が違うんです。

――家入さん自身は自分に対して、愚かだなって思うことありますか?
【家入】ありますよ、すごく。それこそ空虚になってしまったり、感情のままに動いて相手を傷つけてしまったり…。

――では人間の一番の愚かさって何だと思います?
【家入】自分も含めて“過去から学ばない”こと。仮に前世があるとして、私が前の人生の記憶を持って生まれ変わっていたら、もう少し素敵な人間になってると思うんです。でも神様は消してしまうじゃないですか、記憶を。それって何でだろう?と思うし、消すことに意味があるのかなとも思ったりして……。さっきも言いましたけど、20歳を前にして最近すごく、そういういろんなことを考えちゃうんですよね。

(文/若松正子)

オリコントピックス

あなたにおすすめの記事

>

メニューを閉じる

 を検索