『ほしのこえ』をはじめ、『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』などのアニメーション作品で高い評価を得てきた新海誠監督の新作劇場映画『言の葉の庭』が5月31日より公開される。美しく鮮やかに作りこまれた映像と繊細なストーリー、音楽とのマッチングもピッタリで、観る人の心を揺さぶる力作に仕上がっている。同作へ込めた想いを、監督に直撃した。
靴職人を目指す高校生・タカオ(CV:入野自由)は、雨の朝は決まって学校をさぼり、公園の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。ある日、タカオは、ひとり缶ビールを飲む謎めいた年上の女性・ユキノ(CV:花澤香菜)と出会う。二人は約束もないまま雨の日だけの逢瀬を重ねるようになり、次第に心を通わせていく。
「“雨の中で歳の離れた男女が出会う”という着想から始まった企画ですが、雨は3人目のキャラクターといっていいくらいウエイトがありますね。実際に雨宿りをしているお話であることと、人生の途中で立ち止まっている象徴としての雨宿りを描いているからです」。
劇中、ほとんどのシーンで雨が降っている。降り方の違うさまざまな雨や、水面に広がる無数の波紋、コンクリートに跳ね返った飛沫(ひまつ)、雨にけむる東京の街並み、雨上がりのきらめきなど、これまで観たことがないような美しい映像は期待を裏切らない。
「この作品に取りかかったのがちょうど1年前の今ごろ。雨が降ってきたらカメラを持って急いで外に出て、降り始めから強くなりやがて止むまでを撮影したり、しゃがんで水たまりをじっと見ていたりしていましたね。雨は、気象現象でもありますし、物語の中で使う道具としてはとても便利なんです。過去の作品の中でもなんとなく元気がないシーンで雨を降らせたりしていたんですが、今回はきちんと物語の展開に沿った、さらに踏み込んだビジュアル表現にチャレンジしました」。
例えば、最初に出会った時は、やや強めの雨が2人の間の距離を隔てるカーテンのように見え、2人の心が近づくにつれ雨も穏やかになって行き、やがて2人を祝福するかのように雲間から差した光を受けて雨がキラキラと光るシーンが登場する。映画を見終わったあと、実際の雨も綺麗に見えてくるはずだ。
「どしゃ降りの雨と小雨ではコンクリートの地面の様子もだいぶ違うじゃないですか。アニメーションはそれを改めて人の手で描くことで、どういう雨が美しいと思うのか、僕はこんなふうに世界が見えているんだよというのを、作り手が1カット1カット、伝えることができるんです。そして自然と観てくれる人も何か受け取ってくれる、それが絵の力なんだと思います。普段、あまりアニメーションを観ない人にも、今のアニメってこんなに綺麗なの? と単純に思ってもらえれば、それで十分なので、多くの人に観てもらいたいですね」。
人生、晴れの日もあれば、雨の日もある。ちょっとした雨宿りでの出会いがその後の人生に大きな影響を与えることだってある。「タカオにとってのユキノ、ユキノにとってのタカオに代わるものが、人によってアニメーションだったり、漫画だったり、小説だったり、映画だったりすると思うんですよね。この作品が誰かのそういうものになってくれたら本望です」。
靴職人を目指す高校生・タカオ(CV:入野自由)は、雨の朝は決まって学校をさぼり、公園の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。ある日、タカオは、ひとり缶ビールを飲む謎めいた年上の女性・ユキノ(CV:花澤香菜)と出会う。二人は約束もないまま雨の日だけの逢瀬を重ねるようになり、次第に心を通わせていく。
「“雨の中で歳の離れた男女が出会う”という着想から始まった企画ですが、雨は3人目のキャラクターといっていいくらいウエイトがありますね。実際に雨宿りをしているお話であることと、人生の途中で立ち止まっている象徴としての雨宿りを描いているからです」。
劇中、ほとんどのシーンで雨が降っている。降り方の違うさまざまな雨や、水面に広がる無数の波紋、コンクリートに跳ね返った飛沫(ひまつ)、雨にけむる東京の街並み、雨上がりのきらめきなど、これまで観たことがないような美しい映像は期待を裏切らない。
「この作品に取りかかったのがちょうど1年前の今ごろ。雨が降ってきたらカメラを持って急いで外に出て、降り始めから強くなりやがて止むまでを撮影したり、しゃがんで水たまりをじっと見ていたりしていましたね。雨は、気象現象でもありますし、物語の中で使う道具としてはとても便利なんです。過去の作品の中でもなんとなく元気がないシーンで雨を降らせたりしていたんですが、今回はきちんと物語の展開に沿った、さらに踏み込んだビジュアル表現にチャレンジしました」。
例えば、最初に出会った時は、やや強めの雨が2人の間の距離を隔てるカーテンのように見え、2人の心が近づくにつれ雨も穏やかになって行き、やがて2人を祝福するかのように雲間から差した光を受けて雨がキラキラと光るシーンが登場する。映画を見終わったあと、実際の雨も綺麗に見えてくるはずだ。
「どしゃ降りの雨と小雨ではコンクリートの地面の様子もだいぶ違うじゃないですか。アニメーションはそれを改めて人の手で描くことで、どういう雨が美しいと思うのか、僕はこんなふうに世界が見えているんだよというのを、作り手が1カット1カット、伝えることができるんです。そして自然と観てくれる人も何か受け取ってくれる、それが絵の力なんだと思います。普段、あまりアニメーションを観ない人にも、今のアニメってこんなに綺麗なの? と単純に思ってもらえれば、それで十分なので、多くの人に観てもらいたいですね」。
人生、晴れの日もあれば、雨の日もある。ちょっとした雨宿りでの出会いがその後の人生に大きな影響を与えることだってある。「タカオにとってのユキノ、ユキノにとってのタカオに代わるものが、人によってアニメーションだったり、漫画だったり、小説だったり、映画だったりすると思うんですよね。この作品が誰かのそういうものになってくれたら本望です」。
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2013/05/31