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【編集長の目っ!】aikoが愛され続ける理由

■例え見たことがなくても、同じ体験をしたことがなくても共感できるaikoの世界

 デビューから14年、毎年コンスタントにシングル、アルバムを発表し続け、しかも詞・曲をすべて自分で手がけ、どれもヒットさせている。ライブは常に満杯で、動員も増え続け、その裾野はどんどん若い人に広がっている。これがaikoの凄さ。特にシンガー・ソングライターにとっての生命線でもある“生産力”の高さは特筆すべき点。前作の初ベスト『まとめI』『まとめII』には、世に出ている160曲のなかから32曲がピックアップされているが、世に出ていない曲も含めると、これまでに相当数の楽曲を生み出している。その“創造の泉”はデビューから10数年経っても湧出量豊富で、6月20日に発売される約2年半ぶり10枚目のオリジナルアルバム『時のシルエット』を聴くと、どんどん、さらに質が上がったイイ曲が湧きあがってきているようだ。

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 1999年にリリースした1stアルバム『小さな丸い好日』から、14年でオリジナルアルバムは10枚目。先日aikoにインタビューした時、デビュー当時からのお付き合いということもあり、「10枚目のオリジナルアルバムかぁ……お互い歳とるはずだよな〜」と本人に言ったものの、目の前に座っている彼女は、本当に変わらない。あの頃、20代前半だったaikoと空気感や雰囲気はなんら変わらない。そして、そのスタンスも変わらない。自分の心模様をそのまま歌にして伝える。

 彼女は写真をあまり撮らないという。日記を書いたりもしないという。aikoが感じたこと、目に映る風景、情景、その一瞬を切り取ってそれを歌にしている。だから写真も、日記も必要ない。写真や日記よりもより現実的でリアルで、現実的すぎて聴く人によっては痛みさえ伴うような、そんな、aikoが感じた切なさが純度100%で伝わってくる。だから、例え同じ経験をしたことがなくても、同じ風景を見たことがなくても、どこかで感じたような、体験したような気持ちになるのではないだろうか?

 今回の作品はどの曲の詞も、いつもに比べて心のなかにある「情念」が強いように思う。1曲目の「Aka」からいきなり<あたしが今日を楽しく生きて行くさじ加減もあなたが握っている>、さらに2曲目の「くちびる」では<あなたのいない世界にはあたしもいない>と歌い出し、男性が読むと一瞬ひるむ人もいると思う(笑)。でも“想い”ってやっぱり“重い”ものです。恋愛中や、恋愛を経験したことが女性は、誰もが心の内側で持っている素直な気持ち、考え方だ。文字だけで読むと“重い”と感じる人もいるかもしれないけど、aikoの良さはどこまでもメロディアスでポップな曲に乗せてそれをさり気なくというか、逆に瑞々しささえプラスして歌ってくれるから、いい“塩梅”で聴き手に伝わってくるのではないだろうか。

 さらにaiko独特の、行先不明のコード進行、抑揚の幅がものすごいメロディに彼女の言葉が重なると、切なさ、哀しみ、愛おしさ、喜びと、喜怒哀楽が増幅して伝わってくるのだと思う。そこに感動する女性ファンが多いのではないだろうか。

 それと今回の作品、1曲1曲のアレンジの素晴らしさは、感動的でさえある。島田昌典氏の手による“aikoの温度感”を、ストレートに聴き手に伝えるためのアレンジは見事のひと言。今回も超一流のミュージシャンの協演による音は本当に素晴らしく、これまでの作品に比べて、より鍵盤の音が立っていて、これがポップさと切なさをより際立たせてくれる。そして、ストリングスも印象的で、素晴らしい弦の音、アレンジがいつまでも感動の余韻を楽しませてくれる。

 これも毎度言っている事だけど、相変わらずどの曲もイントロが良い!これは本当に大切なことだと思う。頭からその世界に引き込まれて、ライブでもイントロを聴いた瞬間の気持ちの高まりが、より感動を深くしてくれたりもする。

 インタビューで彼女は、「やっぱり歌がないとダメなんだと思った。アルバムを作れることが何よりの喜びで、ライブができて歌を歌えることが、こんなにも大切なことだと、今までももちろん感じていたけど、心から思い知った」と語っていた。そして、聴いてくれるファンはもちろん、このアルバムの制作に携わっている人、CDのプレス工場の関係者にまで、感謝の気持ちを表していた。縁や出会いに感謝し、だからこそリアルに、そして素直に、正直に今感じていること、思っていることを表現し、歌わなければいけないと思ったのだと思う。だから“濃くて”、良い意味で“生々しい”アルバムに仕上がったのではないだろうか。

 人として、そしてシンガー・ソングライターとして、“伝える”ことを生業としているアーティストとして、彼女がこの時代に生きている証として、その“想い”をすべてこの1枚にパッケージしたのだ。そんな1枚だからこそ、手に取ったすべての人のそばで、嬉しい時も哀しい時も、寄り添ってくれるはずだ。

⇒ 『編集長の目っ!!』過去記事一覧ページ

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  • aiko
  • 10thアルバム『時のシルエット』(初回限定仕様盤)
  • 10thアルバム『時のシルエット』(通常仕様盤)

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