ラスボス・R-指定とDJ松永、昨今のラップ“バブル”語る 若者へ「努力をしないと化石化する」

MCバトル“バブル”で勘違いする若年層も 時代が変化しても耐えられる体力や実力が必要

──楽曲制作にあたって、聴き手のことは意識されます?どういう風に思われたいだとか
R-指定常にファイティング・ポーズをとらなアカン、みたいな気持ちがあるので。そこはある程度想定して書きますよね。
DJ松永物作りにおいて、受け手の存在を全く意識しないのも、なかなか難しい。でも、僕らは自分たちのやりたくないものを表現してまで、多くの人に響くような音楽は作れないから、自分たちのやりたい範囲内で、みなさんに楽しんでいただけるようなものを制作しています。なので、まずは自分たちが楽しめる音楽であるかどうかが前提ですよね。

──現在は、『フリースタイルダンジョン』などの影響で、HIP HOPやラップに興味を持ち始めた人が増えている状況にあると思います。現在の人気になる前から活動しているおふたりは、今の状況をどう感じていますか?
R-指定1990年代〜2000年代にかけてのHIP HOPはメジャーな存在だったと思う。でも2010年代になる頃から「冬の時代」が訪れて、その頃に大阪(R-指定の出身地)と新潟(DJ松永の出身地)でのめり込んでしまったのが、僕らという感じですよね。
DJ松永当時はラップ選手権みたいなものが少なかった。そこで高校生だったR-指定は大人たちを次々と倒して優勝していましたからね。
R-指定あの当時、『高校生ラップ選手権』とかあったら、モテたんだろうな(笑)。当時は優勝したって、大金がもらえるわけでもないし、知名度が上がるわけでもなかった。でも、めげずに常にマイクを持ち話し続けることが、自分のアイデンティティーだと信じて活動していくうちに、徐々に環境が変化していく様子を肌で感じましたね。
DJ松永地に足がのめり込んだ状態で活動していましたよ。
R-指定でも、そういう時代を経験したことで、今後また「冬の時代」が訪れたとしても、耐えられる体力や実力をつけたいと思えるようになったし。
DJ松永今はやはりMCバトルがバブルだから、全く経験の無い子が実力以上にスポットライトを浴びてしまい、冷静でいられなくなってるケースも多々ありますからね。
R-指定だから、僕らはライブを続けていきたい。お客さんが生で観て、そこで感動や興奮していただいた経験って、どんなに時代が変化しようとも、ずっと変わらないものだと思うから。それが今後の自分たちの活動の足腰になっていくはず。

HIP HOPはリアルを吐き出すカルチャー 自分の今を正直に伝えていきたい

──またHIP HOPだけでなく、音楽全体も聴かれ方が変化しつつあります。そこにはどう対応を?
DJ松永自分自身もアルバムを曲順どおりに聴かなくなって、プレイリストを駆使して国内外の楽曲を並列で耳にする機会が増えたんです。ゆえに、1曲単位で他と比較されながら聴かれる、という意識を持って曲作りをしていかねば、という気持ちです。
R-指定とは言え、これまで通り起承転結のある作品を大切にしたい思いはあるのですが。
DJ松永現在の日本は、CDというパッケージ文化を大切にする傾向が強いですからね。そこは大切にしたい部分。
R-指定またサブスクリプション全盛のアメリカでも、パッケージや起承転結を意識してアルバム制作するミュージシャンも多数いますし。そこは、今後も両立できるのかなって思う。

──今後は、どんな活動をしていきたいですか?
DJ松永HIP HOPはリアルを吐き出すカルチャー。だから、今後も感受性やアンテナを磨いて、自分の今を正直に伝えていきたい。また常に自分たちが新鮮で楽しいものを作り続けているという実感を得ながら活動をしていきたいですね。
R-指定今を大切にしながらも、10年後に聴いても色あせない音楽を作りたい。年齢を重ねて、考え方に変化は生まれると思うけど<あの頃はこういう気持ちだったのか、面白い>と振り返られるような楽曲を。
(文/松永尚久)

提供元: コンフィデンス

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