VERBAL、激動の音楽業界で企業家としての手腕を発揮 日本人アーティストの海外進出の可能性と問題点

世界進出時に必要なのは、それぞれのストーリーを作ること

――さらにPKCZ(R)は、アフロジャック、ラッパーのCLをフィーチャーした「CUT IT UP feat. CL & AFROJACK」を88risingからリリース。88risingはアジアのアーティストの世界進出の可能性を大きく上げていると思いますが、VERBALさんは88risingの成功をどう捉えていますか?
VERBAL アジアのアーティストが世界進出時に必要なのは、ストーリーだと思います。88risingの場合は、インドネシア在住だったリッチ・ブライアンがきっかけになっています。彼がYouTubeにアップしていたおもしろ動画が話題になり、88risingがフックアップする形でラップ曲の「Dat $tick」を出したら、いきなり大ヒットした。さらに中国のハイヤー・ブラザーズ、韓国のキース・エイプなども話題になり、“アジアのアーティストを世界に発信するプラットフォーム”というストーリー展開したこと。K-POPに関して言えば、国策としてそれを推し進めたことで、いまやアジア全域、アメリカでも人気になっていて。

――日本のエンターテインメントは完全に後れを取っていると思います。
VERBAL 世界に浸透させるためのストーリーを作れていないのが原因だと思います。ただ、一方では既にシーンの土台が出来上がっている場所もあります。アニメ系のフェスがまさにそうで、『Anime Expo』は4日間で約12万人が集まりますが、正直、日本の企業が目立っていません。せっかく海外の人たちが日本のカルチャーを楽しんで、盛り上げてくれてるのだから、そこに乗っからないのはもったいないですよね。

――m-floも海外のジャパニーズカルチャーの盛り上がりの恩恵を受けていると?
VERBAL そういう面も強いと思います。最初にそのことを教えてくれたのは、☆Takuです。彼はここ数年、海外のアニメ系イベントやコンベンションなどで頻繁にDJをしているので、海外の状況をよく知っている。『ビートマニア』にm-floの「been so long」が使われていたことも大きいですし、海外でも温かく迎えられる。アニメ、ゲームが突破口になるでしょうね。

――その状況を活かして、日本のアーティストをさらに浸透させるためのポイントは?
VERBAL 『KCON』は1つのヒントになるでしょうね。韓国文化が好きな人たちが集まり、一度に楽しめる。日本で同じことをやろうとすると、レコード会社や事務所が1つにならず、各々でやろうとする傾向がある。1つの企業だけで海外に行こうとするのではなく、いくつかの企業でチームを作れば、もっと大きなイベントができるはずだし、ビジネス規模も広がると思います。日本文化が好きで、待ち望んでいる人がたくさんいるのに、もったいないですよね。“日本カルチャーのために”という気持ちを持って、一緒に出ていくことが必要だと思います。

アーティストをブランディングする能力はこれからのA&Rに不可欠

――楽曲やパフォーマンスのクオリティについてはどうですか? コアなファン以外のリスナーを魅了できるレベルに至っていると思いますか?
VERBAL もちろん。楽曲やパフォーマンスのレベルも高いですし、テクノロジーの使い方も上手だと思います。例えば嵐のツアー『ARASHI Anniversary Tour 5×20』にはチームラボとライゾマティクスが両方参加していますが、そこまで演出に予算とをかけてこだわるアーティストは世界中、どこにもいないと思います。日本のアーティストが世界になかなか出ていけないのは、楽曲やパフォーマンスの問題というより、ビジネスとして成立しづらいことが大きいと思います。特にビッグアーティストの場合、ステージの規模が大きすぎるという問題があります。あとはスケジュールの問題もありますよね。若手の人気アーティストが海外で2週間のツアーを組むとなると、よっぽどの理由がないと難しいです。

――日本の国内のマーケットも依然として 大きいですからね。
VERBAL はい。ただ、このままではシュリンクする一方ですよね。CDセールスの低下もそうですし、興行でやっていけない場合はプロとして活動するのは非常に厳しくなります。サブスクが浸透していないのも大きな問題ですが、それはユーザーの責任ではなく、音楽業界やメディアに原因があるのではないでしょうか。CDを売るためにサブスク解禁に積極的でなかったことを含め、今は大きな痛手を受けている状態。ここからいち早く脱却するべきだと個人的には思っています。世界的ブレイクを果たしたビリー・アイリッシュもそうですが、アーティストの評価はサブスクの再生回数やインスタのフォロワー数で計るのが当たり前になっている。

――そこはワールドスタンダードに準じたほうがいい、と。
VERBAL 成功しているモデルは取り入れたほうがいいと思います。例えばライブプロモーション企業「AEG Presents」は、もともとアリーナクラスのスポーツ施設を扱う不動産会社が基盤になっています。そういう会社がブラック・アイド・ピーズなどのビッグアーティストとコンサート契約を結ぶことは、双方にとってメリットがある。カルヴィン・ハリスがラスベガスのクラブと契約しているのも同じ。多額の契約金が発生しますが、毎週彼がプレイすることで、大勢の観客が集まり、結果的に利益が出る。日本でもそういう提案をしている方がいますが、なかなか実現しないですね。

――最後にこれからのA&R、マネージメントに必要な条件について聞かせてもらえますか?
VERBAL A&Rに求められるのは、ブランディング力でしょう。担当アーティストの個性、他とは違う部分を理解して、どういうストーリーで伝えるのか。ユーザーからの見え方、聴こえ方、イベントやフェスへのブッキングを含めて、アーティストをブランディングする能力はこれからのA&Rに不可欠だと思います。マネージメントにとって大切なのは、やはりビジネスの部分。アーティスト自身が「この仕事は儲かるのかどうか」ばかり考えていないといけない状態は、本来、赤信号だと思います。そこはマネージメントがしっかり判断して、アーティストは創作活動に専念することが理想です。それができるのが本来の意味でのマネージャーですよね。日本におけるマネージャーはアーティストの身の回りのお世話をする人だから、お仕事内容によっては、アシスタントと呼ぶべき。言葉の定義から改めたほうがいいかもしれないですね。

(文/森朋之 写真/草刈雅之)

プロフィール

VERBAL(アーティスト)

1999年7月にm-floのメンバーとしてシングル「the tripod e.p.」でメジャーデビュー以降、TERIYAKI BOYZ(R)やPKCZ(R)、HONEST BOYZ(R)のメンバーとしても活躍。独自のコネクションを活かし、数多くのアーティストとコラボレーションを実現している。また、ファレルやカニエ・ウェスト、アフロジャックなど、海外アーティストとの交流も深い。音楽活動をする一方、2008年よりファッションブランド「AMBUSH(R)」を立ち上げ、自らCEOも務める。2016年より株式会社LDH JAPAN 執行役員及び国際事業部プロデューサーに就任。

提供元: コンフィデンス

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