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プロデューサーが語る『紅白』の使命と選考基準 「活躍を紹介し、名曲を未来へ」

 平成最後となる『第69回NHK紅白歌合戦』の出場歌手が出揃った。2016年から東京五輪を目前とした2019年まで、4年間共通で「夢を歌おう」を掲げている。音楽市場も多様化するなか、今年から出場歌手選考の参考データについて時代に即した見直しも行われた。『オリコン年間デジタルシングル(単曲)ランキング 2018』で首位を獲得した米津玄師をはじめ、ストリーミングが好調なあいみょん、YouTubeで高い再生回数を誇るDAOKOら、今の時代を映し出すアーティストたちが、大みそかの夜を賑わす。一方、健康ランドやスーパー銭湯で地道な活動を続けてきた歌謡コーラスグループの純烈も、初出場を決めた。そうしたなか、“平成最後の紅白”で制作統括を務める渋谷義人チーフ・プロデューサーに、出場歌手の選考から音楽シーンを取り巻く環境について話を聞いた。
『第69回NHK紅白歌合戦』出場歌手&曲目一覧

例年以上にMCが重要となる平成最後の紅白歌合戦

──まずは2016年より4年連続で掲げるテーマ「夢を歌おう」について。3年目となる今年はこのテーマをどのように捉え、紅白を作っていかれるのかをお聞かせください。
渋谷 この共通テーマは2020年東京五輪・パラ五輪の前年、そして紅白としては第70回という節目である来年の2019年まで4年連続で掲げているもので、さらに今年は“平成最後の紅白”という要素もあります。そのなかで平成の30年間を総括する企画は確実に入ってくるとは思うのですが、全体としては振り返るよりもむしろ新しい時代へと一歩を踏み出す、そんな未来へのワクワクとした気持ちを喚起できる紅白にしたいと考えています。

──司会についてはどのような意図で起用されたのでしょうか。
渋谷 今年の紅白は番組からお伝えするメッセージが、例年に増して多くなると想定しています。平成という時代を総括するにあたっては、良いことばかりでなく、悲しい出来事に触れることも避けられません。そんな紅白を作る上で、昨年も総合司会として暖かく柔らかく、ときにはユーモア溢れる言葉で紅白を包んでくださった内村光良さんの存在は欠かせないと考えました。また白組司会の櫻井翔さんは幅広いジャンルの番組のMC経験が豊富。安定感、信頼感という意味でも、今の日本のMCではトップクラスだと思います。そして紅組司会の広瀬すずさんは来春放送のNHK連続テレビ小説・第100作『なつぞら』ヒロインですが、すでに多くのドラマや映画で活躍されている新しい世代を象徴する存在として選出いたしました。

──司会のみなさんには、どのような期待をされていますか?
渋谷 紅白は何かと段取りっぽいと揶揄されることもありまして、ただ今のバラエティ慣れした視聴者はそれだと飽きてしまいます。そこを昨年の内村さんは流れを理解された上で、さらにTWICEに「うちの娘もTTポーズで踊ってるんだよ」と声をかけたり、安室奈美恵さんの歌唱後の「ありがとう」という実感の籠ったひと言が涙を誘ったりと、人柄の滲み出た自然なMCで数々の記憶に残る場面を生み出してくださいました。また櫻井さん、広瀬さんもご自身の言葉でメッセージを届けられる方々です。そしてこの3人のやりとりをサポートする桑子真帆アナウンサーと、最高の布陣が揃ったと思っています。

──紅白のメインコンテンツはもちろん歌ですが、トークも盛り上がりを左右する大切な要素ですね。
渋谷 はい。特に近年は、紅白におけるMCの重要性が増していると感じます。かつては歌手名や楽曲名の紹介だけで十分伝わったのですが、ヒット指標の多様化で国民の誰もが知っている楽曲やアーティストも少なくなっているのが事実です。しかし世代や嗜好を超えて日本を繋ぐのが紅白の使命ですから、アーティストの今年の活躍や楽曲の魅力をお伝えするトークパートは丁寧に作っていきたいと考えています。

ヒットの指標の多様化で新たな選考基準を追加

──ところで今年の出場歌手の選考については、参考資料に新たなデータが加わったようですが。
渋谷 具体的に昨年まではパッケージの売上の指標について「CD・カセット・DVD」までを調査していましたが、今年から「Blu−ray」も追加しました。またデジタル関連について、昨年までは「インターネットのダウンロード」まででしたが、今年より「ストリーミング・ミュージックビデオ再生数・SNSの調査」も加えました。実は僕は昨年までの10年間、紅白のデジタル企画のディレクションを担当してきまして、そうした経験も踏まえて見直しを図ったところです。

──この新た指標によって選出に至った例としては?
渋谷 今年はサブスクリプションが一気に普及し、(今年の紅白初出場の)あいみょんさんやDAOKOさんといった新しい才能が世に出てきました。SNSの話題も含め、もはやデジタル関連の指標抜きに「今年の活躍」は語れなくなっています。しかし基本的にデジタルメディアは1人で触れるものであり、世代や嗜好を超えにくいという側面もあるかと思います。そうしたデジタルヒットに今まで触れていなかった方々に「今年の活躍」をご紹介するのも、紅白の役割です。

──DA PUMPの「U.S.A.」がSNSやTik Tokをきっかけに大ヒットし、16年ぶりの出場を果たすことも注目を集めています。
渋谷 そうですね。平成と昭和の音楽との一番の違いは、ポップスにおけるダンス・ミュージックの隆盛だったと思います。さらに現代はTikTokのブームに代表されるように、ダンスを“共有”する時代になりました。そういう意味でも皆で踊りたくなる要素が満載の「U.S.A.」は、平成最後の紅白を飾るのに象徴的なヒット曲だったと思います。ちなみに僕は、DA PUMPさんにもよくご出演いただいていた『ポップジャム』という番組を担当していまして、個人的にもとても感慨深いですね。

──そうしたデジタルの盛り上がりの一方で、演歌・歌謡ジャンルは今も昔も“現場”でファンをつかみ、ヒットに繋げるケースが目立ちます。今年はスーパー銭湯を主戦場としてきた歌謡コーラスグループ・純烈が悲願の初出場を果たします。
渋谷 純烈さんは結成から11年、一貫して紅白出場を目標に活動を続けてこられ、今年は演歌チャートでも非常に好成績を残されました。純烈さんもそうですが、制作統括という立場になって改めて実感するのは、音楽業界の皆さんが紅白という番組を実に大切されていて、惜しみない協力をしてくださっていることです。そのご期待というのは、何より世代や嗜好を繋ぐことができる番組であるからだ思います。視聴者のなかには、普段は演歌・歌謡曲をまったく聴かない方もいるでしょう。しかし演歌歌手の皆さんの歌唱力はやはり圧倒的なものがあり、例えば昨年、島津亜矢さんが歌唱した後もSNSで「鳥肌が立った」等といった声が数多く上がりました。日本の素晴らしい歌をじっくり聴いていただくパートとして、演歌・歌謡曲は今後も紅白において重要な位置付けであり続けると考えています。

日本のポピュラーミュージックの宝物を未来に継承していくことも紅白の役割

──曲目についてはこれからの発表とのことですが、近年は「今年のヒット曲」ではなく、往年の名曲が披露されるケースも増えています。
渋谷 昭和の頃は“懐メロ”と呼ばれていたような曲ですよね。ただ平成も終わりに近づいた今は、やや意味合いが変わってきていると感じています。例えば今年は松任谷由実さんが全楽曲をサブスクに解放され、デジタル技術によって昔のユーミンの名曲に容易にアクセスできるようになりましたが、若い世代にとってそれは新曲と同じ感覚だと思うんですね。そうしたなかで紅白の醍醐味は何かというと、やはり生の歌唱。『グラミー賞』でトニー・ベネットとレディー・ガガがスタンダードを披露したように、“日本のポピュラーミュージックの宝物”を未来に継承していくことも、これからの紅白の大切な役割だと思っています。

──では紅白のデジタル活用について、今年の取り組みを伺えますか?
渋谷 今年初の試みとしては、11月14日の記者会見直後にアーティストのコメント動画を公式Twitterに公開しました。デジタルネイティブ世代にとっては、SNS動画を共有する楽しみ方はごく普通のこととなっています。今年はリハーサルや生放送中にもできる限り、アーティストのメッセージやオフショットなど番組と連動して楽しんでいただける動画をSNSで発信したいですね。

──最後にテレビの視聴スタイルも多様化した今、紅白が求められているものとはなんだと思いますか?
渋谷 平成に入って以降、ひとり暮らしや個室化が進み、今や家族揃って紅白を観る方も随分少なくなったと思います。それでもやはり、同じ番組を観ながら皆で話をするのは楽しいんですよね。紅白の生放送中はTwitterがとても盛り上がりますが、今はタイムラインがバーチャルなお茶の間を担っていると思います。時代とともに視聴スタイルは変わっても、そこに人との繋がりが生まれること。それが視聴者の方々が紅白に期待してくださってることだと思いますし、今年もそんな皆で語りたくなる企画をたくさん用意したいです。

(文/児玉澄子)
【プロフィール】
日本放送協会
制作局 第2制作センター エンターテインメント番組部 チーフ・プロデューサー
渋谷義人氏

1993年、NHKに入局。以降『ポップジャム』、『ふたりのビッグショー』、『SONGS』などの制作を担当。『ミュージック・ポートレイト』でチーフ・プロデューサーを務める。過去10年にわたり『紅白歌合戦』のデジタル・SNS施策を担当し、『第69回NHK紅白歌合戦』で制作統括を務める。

提供元: コンフィデンス

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