中高生恋愛バラエティ番組がヒット曲を生むワケ 背景にTikTok&インスタ
SNSサービスを活用し、中高校生のハートをつかむ
「恋愛バラエティはこれまでにもあったので、ほかにはない尖った企画を考えなければいけませんでした。そこで今までになかった10代のピュアで予定不調和な恋愛を追うようなリアリティーショーが良いと思いました」(『今日、好きになりました。』プロジェクトマネージャー 翁長朝弥氏)
「中高校生の恋愛を描いたドラマや映画は、青春をメインとしたものが多く、世代関係なく甘酸っぱい気持ちになれますよね」(『今日、好きになりました。』宣伝担当 玉田理沙氏)
制作にあたって何よりこだわったのは、「視聴する女子中高校生たちにとって身近であること」だった。
「視聴者は出演者に自己投影して、“自分が番組に出演したら”という気持ちで観てもらえるよう、そして、“もしかしたら自分も出演できるのではないか”と思えるように、本当に恋がしたい普通の高校生にフォーカスして、なるべく制作側で色をつけてしまわないように意識しました」(翁長氏)
2泊3日の旅先を舞台にしているのも、「日常と少し離れた場所で気分が盛り上がって自然とに恋に落ちやすい状況を生むため」だった。
「修学旅行や夏の留学など、限られた時間の中だからこそ友情が深まったり、恋愛をしたり、気持ちが動くと思います」(翁長氏)
出演者を選ぶにあたっては、募集のほかSNSでのスカウトも実施。
「普通の高校生だけど可愛いからフォローしていた人が『今日好き』に出演すると、番組をより身近に感じてもらえます」(玉田氏)
ほかにも、中高校生を中心とする視聴者層に合わせて、SNSを活用したさまざまな取り組みを行っているのだが、スタッフも驚きのデジタルネイティブ世代ならではの新しい現象が生まれていると言う。
「出演者たち特にこちらから働きかけなくても、積極的に自分のフォロワーとコミュニケーションを取るのですが、最近は、放送が終わった直後に出演者全員がそれぞれInstagramでライブ配信を行い、その日の放送についてそこで話すようになりました。視聴者はそれがわかっているので、番組を観た後、ライブ配信を観てからSNSに番組や出演者の名前などのハッシュタグをつけてで感想などのコメントを投稿する。それが当たり前の流れになっています。その日の行動について出演者に聞きたいとか、感想を言いたいとか、出演者とコミュニケーションがリアルに取れるので、コメントの数はとても多く、出演者たちはそれらに即座に返答しています。彼女たちのコミュニケーション能力やレスポンスの良さには本当に驚かされています」(玉田氏)
TikTokの活用、歌詞への共感で主題歌もヒット
「足立さんはTwitterに投稿した弾き語りで歌う15秒動画がバズって、フォロワー数が30万人以上とSNSでブレイクしていました。デビューして1年ほどと番組と同じくらいのキャリアで、高校を卒業したばかりという点も番組に合っていたし、今の高校生が好きなのではと思い、お願いしました」(翁長氏)
それまで応援ソングをベースに明るく元気なテイストの楽曲を作ってきた足立佳奈にとって番組主題歌となった「私今あなたに恋をしています」は、初のラブソングとなった。
「曲は中学時代に好きな人に告白したいと思ったときに作ったものでした。でも、歌詞がその人にしか当てはまらず、皆に共感してもらうには書き直さなければいけなかったのですが、自分の経験では、それ以上、出せるものがなくて(笑)。ただ、私はいつも現実味のある歌を歌いたいと思っているので、大好きな漫画家の幸田もも子先生の『あたしの!』の世界観をもとに書きました。幸田先生にもご協力いただき、歌詞の一部は一緒に作らせていただいています」(足立佳奈)
歌詞に対してリアルを追求する思いは同年代の番組の視聴者層の心に刺さり、配信開始以降、「気持ちがわかる!やばい泣ける」「私がモデルになった歌かと思った」など、歌詞に共感するコメントが多数。さらに、ヒットを後押ししたのが、番組から生まれた“今日好きダンス”だった。
「オファーした際に、音楽配信サービスで上位だったのが、DA PUMPの「U.S.A.」や倖田來未の「め組のひと」などTikTokで流行している曲でした。そこで、番組に出ていた高校生たちに曲を聴いて振り付けをしてもらい、そのダンス映像をTik Tokに投稿しました」(翁長氏)
「実際に番組出演している高校生たちが発信したほうが、視聴する中高校生たちが自然に受け入れてくれると考えました」(玉田氏)
流行の発信源である中高校生のパワーはすごいと再確認
“今日好きダンス”が流行ったことは、「視聴数への影響もそうですが、番組のブランディング的に良い結果となった」と翁長氏は語る。「中高校生のなかには恋愛番組に興味がない子もいるので、僕たちとしては、観てくれていない人も含めて、中高校生全員に番組名を知ってもらいたかった」(翁長氏)
10月8日からの『今日、好きになりました。』新シリーズでも足立佳奈の新曲「You Your Yours」を主題歌に起用。番組内容にマッチした歌詞が詰め込まれた本楽曲にも共感の声が集まりそうだ。また、10月1に配信スタートした足立佳奈の失恋ソング「あの日に戻れるなら…」のYouTubeコメント欄には歌詞への共感コメントに加え、リスナーたちが歌詞に照らし合わせた自らの体験談を書きこみあうといった、共感から生まれる新たな動きもみられている。
「今回のTik Tokの例もそうですが、流行の発信源である中高校生のパワーはすごいと再確認しました」(翁長氏)という制作陣。中高校生向け番組で、再びどんなムーブメントが起きるか注目したい。
(文/河上いつ子)