サザンや星野源ら所属、レーベル長語るヒットの理由「まず音楽でしょ」
第一に優先すべきはアーティストの意志と作品
小野 入社して最初に東北エリアの宣伝担当だった頃から、ずっと変わらずに宣伝マンだと私自身は思っています。担当アーティストはその時々で変わっても、スピードスターというレーベルは、アーティストがやりたいことをどうやってスムーズに実現させられるかを第一に考える。アーティスト・オリエンテッドな気風がそれこそ20年以上、変わらずに存在しているんです。
ゼロから音楽をクリエイトするのはアーティストですから、一番大事にすべきは当然、彼らの意志と作品。宣伝マンであるならば、彼らのやりたいことが上手くセールスにつながるか、作品の価値を高めることにつながっていくかということに最大限、留意する必要もあります。世の中に宣伝することで、アーティストや作品がよりわかりやすく知られていくサポートをする。そういう意味では、レーベルの人間は宣伝マンであり、翻訳者にも近い立場なのかもしれません。
小野 私が配属されたばかりの頃は、社内でも新興レーベルとして扱われることが多くあり、タスクの課し方や成果を求める雰囲気にはより厳格なものがありました。厳しい目で育ててもらい、成長してきた音楽レーベルだと思います。その基本は、先ほども申し上げた“アーティスト第一の姿勢”で、これはレーベル設立者の高垣健さんも折に触れて何度も話をしていました。明文化されていなくとも、風土として確実に定着している。もちろん、アーティストとレーベルも、結局は人と人との関係ですから大小の波はあります。ですが、20年以上キャリアのあるアーティストがこれだけ活動してくれているなら、結果としてはその姿勢がアーティストの皆さんにも伝わっているのではないかなと感じます。
その時々のアーティストの状況を理解し、寄り添う
それならば、現在進行形の彼らが、次に何をやろうとしているのかを含めて、よりわかりやすく提示できる形を模索する。今のアーティストの状態、状況をしっかりと理解し寄り添って、一緒に最適解を導き出していきます。短期的な売上ももちろん大切ですから瞬発力を出せる方法論も必要なのですが、サザンに限らず、より長い目でアーティストと向き合っていく。そうした、アーティスト優先の考え方の習性や姿勢こそが、実はスピードスターらしさの正体なのかもしれません。
プロフィール
1970年7月生まれ。1994年、大学卒業後ビクターエンタテインメントへ入社。エリアプロモーターとして東北6県を担当、2年目よりスピードスターレコーズ専任のエリア担当として宣伝全般に携わる。1996年、スピードスターへ異動後、THE MAD CAPSULE MARKETS、つじあやの、WINOなど、さまざまなアーティスト担当を歴任。2006年よりサザンオールスターズも担当している。2010年よりスピードスターのレーベル長。ベテランから新人まで分厚いアーティスト層を備えたレーベルの新たなピークを創出している。