浦田直也のソロアーティストとして成長した今を感じる最新作
覚悟の上で自作した本音を歌った歌詞
「康兵くんとは10年ほど前から友だちだったんですけど、ふと音楽でもつながりたくなって、昨年発売したアルバム『unlock』を携えたツアーのバンドマスターをお願いしました。僕は譜面の読み書きができるわけではないので、ほしいサウンドを言葉で伝える。それを康兵くんは的確に読み取ってくれました。声に関する感想やアドバイスもハッキリ言ってくれた。友だちだからこその率直なやりとりでずっとワクワクしていられたので、その流れでアルバムも一緒に作りたいと思ったんです」
前出の『unlock』で浦田は初めて全作詞を担当。「心を解放して本音を吐き出す」という決意を実行した。当然歌詞には心をえぐる鋭い言葉も多い。もちろん覚悟はあったが、実は聴き手がそれをどう受け止めるか不安もあったという。
「ライブで直接お客さんの反応を見たときに、その不安は一気に消えました。キツい言葉で本音を吐き出した作品なのに、誰も引かずにいてくれた。そういう関係になれているんだとわかったんです。もう、これから先も何も怖がることはない。自分はすごく強いものを手に入れたと思えました。すぐに「強い心」、「破れない心」とパソコンで叩き、『unbreakable』という言葉を見つけ、次のアルバムのタイトルにしようと思ったんです」
『unlock』と『unbreakable』は、ライブでの気づきがつないだいわば連作。「本音を吐き出す」と肩をいからせていた前者はある意味冷たくも感じたことから、後者は体温を感じてもらえる作品にしたかったと語る。たしかに、『unbreakable』は、楽曲も歌詞も歌声も、芯に強さを湛えたやわらかさに包まれている。
「歳を重ねて、“強い”の意味が180°変わった気がします。怖いくらいいかつい強さは実は案外脆くて、逆にやわらかいほうが強いのかもしれないなと。たぶん、以前はもっとカッコつけてたんですよ。みんなに引かれることを怖がって、無難な言葉で折り合いをつけようともしてた。今はどれだけ自分を裸にしても恥ずかしくないと思えます」
ソロ活動は頼るものナシだからめちゃくちゃ鍛えられる
「昔だったら最後は、“ずっと永遠に”とか“これから先も”と書いてたと思うんです。でも、それだとカッコつけてるだけの男。そう思って“君も言ってね”と弱いところを見せちゃいました(笑)。それくらいが今の自分の等身大なのかも」
躊躇なくハイトーンも使った魅力的な楽曲は、浦田の声と心を知り尽くした宗本のプロデュース力と言える。だからこそ浦田は、メロディーの波間を心からノドを開ききって気持ちよく泳ぐことができるのだろう。歌う前はできるだけしゃべらないとか、温かいものしか飲まないとか、どこか力んで自分に課していたことも、今はもうしていないという。
「ケアは大事ですが、声は生もの。以前はひっくり返ったりすると、「なんで?」と自分を許せなかったんですけど、今はくよくよすることなく、“ひっくり返った声は今日しか聴けない”と思うようになってます。以前よりシンプルに楽しいと思って歌えてますね」
何事もやわらかく受け止めてプラスに変える強さを得た浦田直也は、ソロとしてより魅力を増すと同時に、AAA のリーダーとしても今まで以上の力を発揮することだろう。
「13年もグループをやっていると、他メンバーがフォローしてくれることも。でも、ソロ活動は頼るものナシだからめちゃくちゃ鍛えられる。6人6様にそういう経験をしてるので、グループに戻ったときは余裕だと思います。よりハイレベルな競演が見られるようになるんじゃないかな」
(文/藤井美保)
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