『半分、青い。』はトレンディドラマ? プロデューサーが語る北川悦吏子脚本“昭和平成史”への期待
平成が終わろうとしている今、昭和平成史を振り返りたかった
が、中盤を迎えても勢い衰えず、好調だ。『ロングバケーション』(CX 系)などのヒット作を生みだし、“ラブストーリーの神様”の異名を持つ北川悦吏子氏のオリジナル作品。病気で左耳を失聴した永野芽郁演じるヒロイン・楡野鈴愛が、故郷の岐阜と東京を舞台に、高度成長期の終わりから現代までを七転び八起きで駆け抜けるおよそ半世紀の物語。時代を1971(昭和46)年からの半世紀に設定した狙いを、制作統括の勝田夏子氏はこう語る。
「ここ最近60年代以前を舞台にした作品が多かったので、平成も終わろうとしている今、トレンディドラマの女王と言われた北川さんに、バブル期を描いていただきつつ、昭和平成史を振り返るのは面白いのではないかと考えました」
ドラマでは、当時を知る世代が「懐かしくてうれしい」と声をあげる小物や言葉、ヒット曲、過去映像に加え、過去の人気番組のパロディもふんだんに登場。SNSを中心に話題となっている。なかでも今の時代ならではの反応と勝田氏が驚いたのが、第4話にてヒロインが特撮ドラマ『マグマ大使』の真似をしたシーン。「71年生まれの鈴愛が『マグマ大使』を知っているのはおかしい」という声がSNSに多数あがり、ネットニュースでも「時代考証をめぐり論議」と報じられたのだ。第6話で、鈴愛が知っていたのは父の影響だったことが明かされ、一件落着となったのだが。
「少し待っていただければ、謎が解決できるよう、普通にストーリーを作っていただけたのですが、今の時代、みなさん待ってくれないんだなと(笑)。炎上商法とか、バズったと言われることがすごく意外でした」
個性あふれる登場人物も話題となっているが、「東京・胸騒ぎ編」では、豊川悦司演じる偏屈な天才少女漫画家・秋風羽織と、秋風の秘書・菱本若菜役の井川遥が人気に。
「豊川さんも井川さんもあそこまでコメディを振り切って、真面目にやってくださるとは思っていなかったのですごく嬉しいです」
時代の気分を視聴者とキャッチボールできるのが朝ドラ制作の醍醐味
「朝ドラのヒロインには奥ゆかしさが求められますが、鈴愛はまったく奥ゆかしくありません。でも、思っていることをハッキリ言ったり、これだと思ったことに邁進するバイタリティは、とかく縮こまりがちな今の日本人に必要ではないかと思うんです。躾の悪い子とか、わがままな子と言う方もいらっしゃいますが、もう少し皆わがままになってもいいんじゃないですかという思いも含めて、描いている面があります」
本作での勝田氏のモットーは「極力ブレーキをかけずに作ること」。
「私は朝ドラをすごくジャーナルなものだと思っているんです。時代の空気を意識しながら作って、視聴者もそれを感じ取って毎日を過ごす。時代の気分を視聴者とキャッチボールできるのが朝ドラを制作する醍醐味だと思っています」
「東京・胸騒ぎ編」に続く「人生・怒涛編」では、斎藤工など漫画家時代の顔ぶれに負けず劣らず個性的で芸達者な役者が登場。史上初、ヒロインの胎児時代からスタートし、朝ドラに革命を起こす挑戦を続けている本作に、後半も大いに期待したい。
(文/河上いつ子)
[18年6月25日号 コンフィデンスより]
日本放送協会 制作局 第2制作センター ドラマ番組部 チーフ・プロデューサー
勝田夏子(かつたなつこ)氏
1992年、NHK入局。
主な演出作品に、『抱きしめたい』『浪花の華 〜緒方洪庵事件帳〜』『下流の宴』連続テレビ小説『風のハルカ』『ちりとてちん』『ゲゲゲの女房』『梅ちゃん先生』など。プロデュース作品に、『破裂』『コントレール〜罪と恋〜』、大河ドラマ『軍師官兵衛』など。