権利侵害を防ぐブロックチェーンIP管理への高まる関心
コンテンツ価値を高める独自経済圏の構築
そんななか、本セミナーでは、講師として慶應義塾大学・SFC研究所上席所員の斉藤賢爾氏、ブロックチェーンのコンサルティングを手がけるGinco代表取締役の森川夢佑斗氏が登壇。本誌編集委員の椎葉克宏がモデレーターを務め、2氏がそれぞれの専門分野を解説した。
森川氏は、仮想通貨コミュニティなど最近の日本におけるサービス事例を取り上げながら、コンテンツホルダーのブロックチェーン活用方法として、仮想通貨によるコンテンツ価値を高める独自経済圏の構築とその決済、収益分配を挙げ、ブロックチェーンの特性を活かしたサービスのメリットを「独自のルール付けをした電子マネー発行によるファンのロイヤリティ向上」と解説した。
一方、斉藤氏は「今、マネーに何が起きているか」をテーマに、ブロックチェーンによる仮想通貨の台頭や、銀行による新たなデジタル通貨や地域通貨の発行といったトピックを取り上げ、キャッシュレス社会が急速に広がってきていることを説明。すでに中国の都市部では電子マネーによるキャッシュレス社会が現実のものとなっているが、それが徐々に進んでいる日本でも、この先、確実に訪れることを力説した。
出版社などIPホルダーがその堅牢性に熱い視線
この日は、大手をはじめ出版社が多く来場していたのだが、彼らが関心を持っていたのが上述の特性を活かしたIP管理。最近のホットワードになっている『漫画村』など違法サイト問題が後を絶たない出版界において、早急な対応が業界全体に迫られるなか、その1つの対策としてブロックチェーンが着目されているようだ。
海外ではすでに、イラストの著作権管理サービスを提供する『Binded』や写真家の著作権管理を行うプラットフォーム『KODAKOne』など、ブロックチェーンのスマートコントラクトのメリットを活用したサービスが生まれている。日本でも音楽著作権管理を担うシステムとしての利用は議題に上がっているが、インディペンデントを含めた音楽シーンではまだ具体的な動きは見えてきていない。そんななか、出版社などIPホルダーが現状の課題の解決のために、漫画のほかさまざまなコンテンツの管理ツールとして注目し始めていることが、今の傾向としてうかがえた。
(文:編集部・武井保之)